平成23年9月21日、茨城県内のナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所で火災が起き、鎮火までに15日間かかりました。
8か月余り後の平成24年6月7日、消防庁は消防危第154号で、この火災の原因と当面の火災対策を都道府県に伝えました。
通知は、延焼防止のための追加対策や、消火活動での留意事項も示しています。
この記事では、火災の経緯と対象、通知が示した対策と見落としやすい点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
大きな蓄電池の火災で、消防庁が通知を出したと聞きました。
どんな火災だったのでしょうか。
ナトリウム・硫黄電池の火災で、鎮火までに15日間かかりました。
平成24年6月に、消防庁が対策を通知しています。
通知は、原因も示しているのでしょうか。
はい。
第三者機関の評価で明らかになった発生原因と延焼拡大要因を示しています。
- 消防庁は平成24年6月7日の消防危第154号で、ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策を通知しました。
- 火災は平成23年9月21日に茨城県内で発生し、モジュール電池40台のうち10台が全焼、20台が半焼して、覚知から鎮圧まで約8時間、鎮火まで15日間かかりました。
- 原因は、単電池の1本の製造不良による開放破壊と、溶融物が砂層をまたいだことによる短絡で、ヒューズが無い回路で1,000アンペアを超える循環電流が続いたことです。
- 通知は、停止運転か待機運転を前提に、通常運転ではヒューズ・短絡防止板・延焼防止板の追加を示し、既存施設には消火装置や防毒マスクなどの安全強化対策を示しました。
- 見落としやすいのは、ナトリウムと硫黄が反応している間に膨張ひる石等で消火すると、反応熱が蓄熱されて延焼を助長する可能性があるという留意点です。
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目次
ナトリウム・硫黄電池の火災はなぜ通知が出るまでになったのか

第三者機関の評価で、火災の原因と延焼の要因が明らかになったためです。
先般、茨城県内のナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所(以下「ナトリウム・硫黄電池施設」という。)において火災が発生しました。この火災は、火災発生から短時間で延焼拡大し、幅約2.2メートル、奥行約1.8メートル、高さ約0.7メートルのモジュール電池10台が全焼した上、その他のモジュール電池も一部焼損しました。この火災に対し、消防隊は乾燥砂による消火を行いましたが、覚知から鎮圧までに約8時間、鎮火までに15日間という期間を要しました。
火災は、短時間で延焼拡大し、モジュール電池10台が全焼しました。
消防隊は乾燥砂で消火しましたが、覚知から鎮圧までに約8時間、鎮火までに15日間を要しました。
通知は、第三者機関の評価で発生原因と延焼拡大要因が明らかになり、他の施設を含めた当面の延焼防止対策がまとまったため、情報提供するとしています。 別紙の時系列は、次の表のとおりです。
| 年月日・時刻 | 内容 |
|---|---|
| 平成23年9月21日 7時10分頃 | 火災発見 |
| 7時23分 | 遠隔監視システムにおいて異常による警報発生 |
| 7時31分 | 覚知日時 |
| 8~12時 | モジュール電池延焼拡大 |
| 13時10分頃 | 乾燥砂8トンが現地到着、消火開始 |
| 15時55分 | 鎮圧 |
| 平成23年10月5日 15時25分 | 鎮火 |
鎮火まで、ずいぶん長くかかったのですね。
はい。
覚知から鎮火まで15日間を要したと、通知に書かれています。
対象になるのはどんな施設で火災はどう広がったのか

通知は、この施設を「ナトリウム・硫黄電池施設」と呼んでいます。
一般取扱所(硫黄23,962キログラム、ナトリウム11,981キログラム。設置完成年月日は平成16年11月18日)で、モジュール電池40台により構成(定格出力2,110キロワット、容量15,200キロワット時、電圧615ボルト)されており、満充電状態で放電待機中だった。
この章の規定は、製造所等について、市町村長等が、(略)予想しない特殊の構造若しくは設備を用いることにより、この章の規定による製造所等の位置、構造及び設備の基準による場合と同等以上の効力があると認めるときにおいては、適用しない。
火災のあった施設は、硫黄23,962キログラム、ナトリウム11,981キログラムを扱い、モジュール電池40台で構成されていました。
通知の第2は、平成11年6月2日付け消防危第53号(以下「53号通知」)の別添で、単電池を強制的に破壊、発火させても周囲に連鎖せず自己消火することを、位置、構造及び設備の技術上の基準の特例要件として求めていると述べています。
危険物の規制に関する政令の第23条は、こうした特殊な設備について、市町村長等が基準の適用を外す特例の枠組みです。
通知は、既存のモジュール電池の一部に、特殊な条件が重なると自己消火性を満たさないものが存在する可能性があるとも述べています。 火災の発生と延焼拡大の原因は、通知の別紙で次の5段階に整理されています。
| 段階 | 通知に書かれた原因 |
|---|---|
| 1 | モジュール電池を構成する単電池の1本に製造不良があり、開放破壊したことで、高温の溶融物が流出した |
| 2 | 溶融物がモジュール電池内のブロック間にある砂層をまたぎ、砂層をまたいだ単電池間で短絡が発生した |
| 3 | 短絡した単電池間には電気回路的にヒューズが設置されておらず、1,000アンペアを超える循環電流が継続的に発生した |
| 4 | 周囲の単電池が、循環電流と高温溶融物との接触で温度上昇し、高抵抗化してジュール熱が発生し続け、多数の単電池が開放破壊して延焼拡大した |
| 5 | 約2,000度の火炎が上部のモジュール内の単電池容器を溶解させ、同時に高温の溶融物が下部のモジュール電池内へ大量に流出して、さらに延焼拡大した |
製造不良の単電池が1本あっただけで、広がったのですか。
通知は、溶融物と短絡電流が延焼拡大の要因だったと整理しています。
通知は当面の運転と安全強化にどんな対策を示したのか

通常運転に戻すには、製造メーカによる自主的な改修と、追加の安全対策が挙げられています。
従来設置してあった消火設備に加え、各ナトリウム・硫黄電池施設に膨張ひる石、乾燥砂等を積載した消火装置を設置するとともに、速やかに使用することができるよう体制を整備すること。また、ナトリウム・硫黄電池施設の設置場所の近辺に40キログラム(400リットル)の膨張ひる石を設置し、常時消火を行うことのできる状態とすること。さらに、ナトリウム・硫黄電池が万一延焼拡大した場合には、追加で40トンの乾燥砂を、3時間以内を目途に火災現場へ搬送できるよう配備すること。
第2は、現在設置されているほぼ全ての施設が、製造メーカの要請で停止運転か待機運転をしていると述べています。
第3は、通常運転を行うために、製造メーカによる自主的な改修として、モジュール電池の延焼防止対策が予定されているとしています。
第4は、その対策が講じられるまでの間に、消火装置や防毒マスク、ガス濃度の監視、避難体制などを整えるよう示しています。
運転の必要性の高い設置者から暫定的な運転の相談があったときは、屋外か屋内か、人の出入管理がされているか等の設置環境に留意して、通常運転の可否を判断するとしています。 通知の対策を整理すると、次の表のとおりです。
| 区分 | 通知が示した内容 |
|---|---|
| 停止運転・待機運転 | 停止運転は充電状態で常温静置、待機運転は最小限の充電容量で行い、連鎖的な単電池の開放破壊による延焼拡大の可能性は極めて低いと考えられる |
| 製造メーカの自主改修(通常運転) | 単電池間にヒューズを追加、溶融物がブロック間をまたがないよう短絡防止板を追加、モジュール電池間に延焼防止板を追加 |
| 消火体制(第4の1) | 膨張ひる石・乾燥砂等を積載した消火装置の設置、近辺に40キログラム(400リットル)の膨張ひる石、追加で40トンの乾燥砂を3時間以内を目途に搬送できるよう配備 |
| 有毒ガス対策(第4の2・3) | 二酸化硫黄、硫化水素等に対応した防毒マスクと簡易的な防火服の設置、二酸化硫黄ガス濃度の測定等による早期の火災発見 |
| 予防規程(第4の4) | 緊急時の連絡体制と対応体制に、周辺の人を適切な場所へ即座に避難させる体制を追加し、風下と上方への流動を考慮した避難経路を策定 |
停止運転と待機運転が、前提だったのですね。
はい。
通常運転には、ヒューズなどの追加が予定されていました。
実務で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、消火のタイミング、有毒ガス、当面の対策の位置づけの3点です。
⑴ 1本の単電池から火災が発生した場合において、万一自己消火しなかった場合、ナトリウムと硫黄の反応時間は約3分から20分であり、その間、約2,000度の高温反応が起こること。
⑵ 単電池の破裂音の停止が10分以上継続し、かつ火炎がモジュール電池の外部に噴出していない場合、ナトリウムと硫黄の反応が終了したものと想定されること。
⑶ ナトリウムと硫黄の反応中に膨張ひる石等による消火を行うと、当該反応の反応熱が蓄熱されることにより、延焼を助長する可能性があること。
⑷ 鎮圧後、焼損部分の温度が下がり、二酸化硫黄ガスの発生がなくなった時点をもって鎮火したものと想定されること。
第1に、反応が続いている間は、膨張ひる石等による消火が反応熱を蓄熱して延焼を助長する可能性があります。
一方で、通知は反応の終了の目安として、破裂音の停止が10分以上続き、火炎が外へ出ていないことを挙げています。
第2に、火災では二酸化硫黄、硫化水素等の有毒ガスが発生します。
通知は、消防隊にガス検知器の活用と防護衣、空気呼吸器の着装を求め、施設側にも防毒マスクの設置とガス濃度の監視を求めています。
第3に、これは平成24年時点の当面の対策です。通知は、製造メーカの自主改修が行われるまでの間の対応として書かれており、現在の運転の可否は設置環境と所轄の判断によります。
消火の材料を用意しておけば、すぐ掛けてもよいのでしょうか。
いいえ。
通知は、反応中の消火が延焼を助長する可能性に触れています。
明日から何を確認し、どう備えればよいのか

自分の施設に当てはめて、次の5点を確かめてみてください。 確認は、運転状態・消火体制・有毒ガス・監視・避難の順に進めます。
施設の運転が、停止運転、待機運転、通常運転のどれかを、まず確かめましょう。
準備した資機材は、実際に使える状態かも見ておきます。
- 施設が停止運転・待機運転・通常運転のどれかを確かめ、通常運転なら延焼防止対策(ヒューズ・短絡防止板・延焼防止板)の状況を製造メーカに確認する
- 消火装置と、近辺の膨張ひる石40キログラム(400リットル)、追加の乾燥砂40トンを3時間以内を目途に搬送する配備が、実際に機能するかを見る
- 二酸化硫黄、硫化水素等に対応した防毒マスクと簡易的な防火服が、初期に使える場所にあるかを確かめる
- 二酸化硫黄ガス濃度の測定等による火災の早期発見の監視が、動いているかを確かめる
- 予防規程の緊急時の対応体制に、周辺の人を即座に避難させる体制と、風下と上方への流動を考慮した避難経路が入っているかを見る
まず、うちの施設が今どの運転状態かを確かめます。
避難経路と資機材の置き場所も、一緒に確認してください。
よくある質問
まとめ
運転状態と避難の体制を見直して、いざというときに備えます!
防火管理や消防設備の備えの相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策について」(平成24年6月7日 消防危第154号 消防庁危険物保安室長通知。別紙:ナトリウム・硫黄電池施設火災の概要ほか)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第23条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





