自動火災報知設備は、感知器だけでなく、受信機や音を出す装置がそろって働く設備です。
ただ、学校や飲食店のビルでは「受信機の代わりに職員室のベルではだめか」「管理する人がいない建物はどうするか」といった疑問が昔から出ていました。
この記事では、消防庁が昭和52年から昭和55年に示した質疑応答から五つを選び、現行の消防法施行規則第24条 と照らして読みます。
受信機、地区音響装置、発信機、放送設備、屋外ベルの扱いを、順に確かめます。
うちの建物は小さいので、ベルが鳴れば受信機はなくてもいい気がします。
本当にそれで足りるんでしょうか。
そこは昔から問われてきた点です。
五つの質疑応答で、答えを見ていきます。
昔の回答は、今の条文とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 職員室に地区音響装置と連動するベルを置いて受信機を省く案は、昭和52年の回答で認められないとされ、現行の第24条第2号イも受信機に作動した警戒区域の表示を求めています
- 地区音響装置は、昭和52年の回答で原則として設置の義務があるとされ、回路の末端には発信機、押しボタン又は終端器のどれかを付けます
- 放送設備と連動する場合の地区音響装置の省略は、当時は令第32条の特例でしたが、現行の第5号が条文の中で除外を認めており、押しボタンなどは省略できないと答えられました
- 管理する人がいないテナントだけの飲食店ビルでも、守衛室を置くよう命じることはできないが、放送の操作部をテナントの一部に置く指導を求めました
- 閉店後に無人になる飲食店ビルは、補助受信機や警備会社との契約がとれない場合に限り、屋外ベルもやむを得ないと答えられました
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目次
受信機を設けず、職員室のベルが鳴れば足りるという方法は認められるのか

感知器と地区音響装置は設けるが、受信機は設けたくない、という案が示されました。
別の問 この方法は、火災が発生した部分の地区音響装置と同時に職員室の主ベルが鳴動し、火災を感知することができるため、受信機の設置を省略することができるか。
別の答 前の答により承知されたい。
(昭和52年3月15日 消防予第41号 消防庁予防救急課長から山形県生活福祉部長あて回答)
回答に理由は書かれていません。ただ、現行の消防法施行規則第24条第2号イは、受信機を「感知器、中継器又は発信機の作動と連動して、当該感知器、中継器又は発信機の作動した警戒区域を表示できるもの」と定めています。ベルが鳴るだけでは、どの警戒区域で作動したかが分からない、と読めます。
同じ号のニは、受信機を防災センター等に設けると定めています。防災センター等は、規則第12条第1項第8号で、防災センター、中央管理室、守衛室その他これらに類する場所(常時人がいる場所に限る)と書かれています。
受信機を省く扱いは、消防長又は消防署長が特別に認める令第32条の判断が前提になります。自分の建物で省けるかは、所轄の消防機関に確かめます。
ベルが鳴っても、どこで作動したのかが分からないんですね。
はい。
受信機は場所を示す役目があります。
地区音響装置と、回路の末端の発信機や押しボタンは必ず付けなければならないのか

あわせて、回路の末端に付ける機器の扱いも問われました。
別の問 自動火災報知設備の発信機は、押ボタン又は終端抵抗等の選択設置であり、義務設置でないと解するがどうか。
別の答 設問の場合、押ボタン、発信機、終端抵抗等(P型1級受信機(1回線用のものを除く。)を設置する場合は押ボタン及び発信機を除く。)のいずれか一つを設置すれば足りる。
(昭和52年6月28日 消防予第125号 消防庁予防救急課長から兵庫県生活福祉部長あて回答)
現行の規則第24条第5号も、地区音響装置を設けるのを原則とし、除く場合を書いています。除かれるのは、P型2級受信機で回線数が1のもの、P型3級受信機など、又は放送設備を第25条の2に定めるところにより設置した場合です。当時の回答が挙げたP型2級のほかにも、現行は除く範囲が広く書かれています。
回路の末端の機器は、第1号イが「感知器の信号回路は、容易に導通試験をすることができるように、送り配線にするとともに回路の末端に発信機、押しボタン又は終端器を設けること」と定めています。導通試験のための機器です。
発信機そのものの設置は、別に第8号の2が定めています。各階の各部分から歩行距離50メートル以下、床面から0.8メートル以上1.5メートル以下の高さ、直近に表示灯を付けることが基本です。発信機の設置位置は、末尾の関連記事でも解説しています。
末端の機器と、発信機は別のものなんですね。
はい。
導通試験のための機器と、手で押す発信機を分けて考えます。
放送設備が自動火災報知設備と連動していれば、地区音響装置は省略できるのか

その放送設備が自動火災報知設備と連動する場合の扱いが問われました。
また、発信機又は押ボタンについては、規則第24条第1号イの規定により設けるものであれば、省略することはできない。
(昭和52年6月28日 消防予第125号 消防庁予防救急課長から兵庫県生活福祉部長あて回答)
当時は令第32条を適用する個別の特例でしたが、現行の規則第24条第5号は、放送設備を第25条の2に定めるところにより設置した場合を、地区音響装置の規定の除外に条文で書いています。
ここでいう放送設備は、第25条の2第1項が「非常ベル又は自動式サイレンと同等以上の音響を発する装置を附加した放送設備」と定めています。放送設備であれば何でもよいわけではありません。
発信機の除外は、第8号の2が別に書いています。非常警報設備を第25条の2第2項に定めるところにより設置した場合は、発信機の規定の対象から除かれます。回路の末端の機器を定める第1号イは別の規定で、答えの後半と同じ考え方です。
放送設備があれば、地区音響装置はいらなくなるんですね。
条件を満たせば、そうなります。
放送設備の設置基準を満たすことが前提です。
管理する人が誰もいないテナントだけの飲食店ビルで、守衛室を置くよう命じられるのか

放送設備の操作部の置き場所が、問われました。
命じることができない場合、増幅器及び操作部は1階廊下等に設けることになるが、酔客のいたずら防止のため、壁体に鉄製ボックスを設けてその内部に増幅器、操作部及び受信機を併設し、テナント関係者だけが取り扱うようにしてよいか。
別の問 管理者の常駐がなく火災時に有効な放送が期待できないので、令第32条を適用し、放送設備に代えて、自動火災報知設備のベルとは異質の音色のサイレン等を発する非常警報設備を設けたのみでよいか。
別の答 令第32条の規定を適用することは適当でない。
(昭和54年10月31日 消防予第208号 消防庁予防救急課長から山口県総務部長あて回答)
現行の規則第25条の2第2項第3号ルは、操作部又は遠隔操作器のうち一つを防災センター等に設けると定めています。ただし、総合操作盤が設けられている場合は除かれます。
同じ号のヲは、操作部が二つ以上あるとき、その場所の間で同時に通話できる設備を設けることも求めています。
放送設備に代えて、ベルと違う音色のサイレンだけを設ける案は、令第32条の適用が適当でないと答えられました。令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと判断した場合の規定です。管理者がいない建物ほど、放送による案内が大切になる、という考え方だと読めます。
管理人がいなくても、放送設備は必要なんですね。
はい。
操作部の置き場所を工夫して指導を受けます。
閉店後に無人になる飲食店ビルでは、受信機の代わりに屋外ベルでもよいのか

受信機を常時人がいる場所に置けない場合の扱いが、問われました。
(1) 受信機は規則第24条第2号ニで守衛室等の常時人がいる場所に設けることになっているが、他に方法がない場合、屋外ベルで令第32条を適用し、認めてさしつかえないか。
(2) (1)が認められる場合、現状で消防法第17条第1項のとおり維持していると解してよいか。
なお、屋外ベルを鳴らしても内部が火災かどうかの確認が改善されるわけではないので、消防隊が到着したとき容易に内部を確認できる方法を関係者と協議しておくことが必要である。
(2) (1)により承知されたい。
(昭和55年9月1日 消防予第174号 消防庁予防救急課長から秋田県民生部長あて回答)
現行の規則第24条第2号ニは、受信機を「防災センター等」に設けるとし、その定義は先に見たとおり常時人がいる場所に限られています。閉店後に無人になる建物は、この条件と合いません。
回答は、屋外ベルを鳴らすだけでは、内部が火災かどうかの確認は改善されないとも指摘しています。消防隊が到着したとき、鍵の預け先や入り方をあらかじめ協議しておくことが求められました。
この回答は、他に方法がない場合の例外です。現在の建物で同じ扱いにできるかは、令第32条の判断を含めて、所轄の消防機関に確かめます。
屋外ベルだけでは、中の様子は分からないんですね。
はい。
消防隊が中を確認する方法まで考えます。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの受信機の置き場所も確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条
- 消防法施行令第21条・第24条・第32条・第33条
- 消防法施行規則第12条・第24条・第25条の2
- 消防法施行令及び同法施行規則に関する質疑応答(昭和52年3月15日 消防予第41号 消防庁予防救急課長から山形県生活福祉部長あて回答)
- 自動火災報知設備及び非常警報設備の設置に関する技術上の基準についての質疑応答(昭和52年6月28日 消防予第125号 消防庁予防救急課長から兵庫県生活福祉部長あて回答)
- 消防用設備等の設置基準及び設置単位に関する疑義についての回答(昭和54年10月31日 消防予第208号 消防庁予防救急課長から山口県総務部長あて回答)
- 消防用設備等の疑義についての回答(昭和55年9月1日 消防予第174号 消防庁予防救急課長から秋田県民生部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





