自動火災報知設備は、感知器を天井に付けて終わりではありません。
温泉地の旅館では、ガスで感知器が傷みます。折版屋根の工場では、天井が波打っていて高さが測りにくくなります。
この記事では、消防庁が昭和56年から昭和61年に示した質疑応答から五つを選び、現行の消防法施行規則第23条 などと照らして読みます。
感知器の種類、取付け面の高さ、付加装置、自動通報機、工事中の代替を、順に確かめます。
うちは古い工場で、天井が波形の屋根なんです。
感知器の高さは、どこから測ればいいんでしょうか。
そこは昔から問われてきた点です。
五つの質疑応答で、答えを見ていきます。
昔の回答は、今の条文とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。
- 温泉地の亜硫酸ガスで感知器が腐食した旅館には、耐酸型又は耐アルカリ型の感知器を付けるよう指導されました。現行の別表第一の二の三では、腐食性ガスの場所に適応するのは差動式分布型と定温式です
- 折版屋根の取付け面の高さは、床面から折版の最頂部と最低部の平均の高さで判定すると答えられました。鋼材のはりが0.4メートルを超えるときは、はりの区画ごとに感知器を設けます
- 感知器の間隔のうちL2は、床面積から必要な個数を出したうえでL2方向に均等に配置すれば足りるとされ、円の直径を間隔とする運用は適当でないと答えられました
- 一過性の非火災報を排除するアダプターは、別記の計画に準じ試験的に設置する場合に限り、令第32条を適用してさしつかえないとされました。製品として認めた回答ではありません
- 無人の建物の自動通報機は、受信機を守る保護装置が付いていれば、規格省令第5条の有害な附属装置に当たらないとされ、工事中の無線式の装置は工事期間中に限り感知器の配線に代えられると答えられました
▼

目次
温泉地の旅館で感知器が腐食したとき、どんな感知器を付けるよう指導されたのか

原因は、温泉地に特有の亜硫酸ガスでした。
(1) 昭和48年当時に検討中とされた取扱いについて、その後の検討の結果はどうか。
(2) 特殊材料による機器があれば教示されたい。
(3) (1)が済んでいないとすれば、差動式スポット型に替えて、防水型の定温式スポット型を設置させてよいか。
受信機及び中継器については、電磁継電器を密封構造(不活性ガス封入)としたものを使用している機種があるので、こうした機種を設置するよう指導されたい。
(2)及び(3) (1)の前段により了承されたい。
(昭和56年10月14日 消防予第250号 消防庁予防救急課長から栃木県総務部長あて回答)
現行の消防法施行規則第23条第4項第1号ニ(ロ)は、煙感知器と熱煙複合式スポット型感知器を腐食性ガスが発生するおそれのある場所に設けないと定めています。熱を感じる感知器なら設けられる、という構造です。
設けられる感知器の種類は、別表第一の二の三が決めています。この場所に○印が付くのは差動式分布型(一種又は二種)と定温式(特種又は一種)の二列で、備考は、定温式を腐食性ガスの性状に応じ耐酸型又は耐アルカリ型のものとしています。
昭和の回答は補償式も挙げていましたが、現行の別表の腐食性ガスの行では、補償式スポット型の欄に○印がありません。回答をそのまま使わず、現行の別表で確かめる必要があります。
ガスの性質に合わせて、耐酸型か耐アルカリ型かを選ぶんですね。
はい。
ガスの性状に応じて選びます。
折版屋根の天井では、感知器の取付け面の高さをどこで測るのか

天井が平らでないため、感知器の高さと個数の数え方が問われました。
(1) 取付け面の高さの算定は、設問の図のH1とするか、H2とするか、H1とH2の平均とするか。
(2) 折版と鋼材の間隔がある場合、鋼材が0.4メートルを超えるときは、はりの区画ごとに設けるか。折版と鋼材に間隔があれば有効に感知できるとみなして面積算定により設けるか。認められる場合、間隔はどの程度以上あれば有効か。
(3) 折版と鋼材の間隔がない場合、はり等の深さをH1とみなしてH1ごとのはりの区画で設けるか、H2とみなして面積算定により設けるか。
別の問 感知器相互の間隔のうちL2について、感知器の受け持つ面積を円形で算定し、円の直径を間隔として設置する方法、又は必要な個数を平均的に配置する方法のいずれによるか。
(2) 設問の熱感知器の場合は、鋼材が0.4メートルを超えるときのはりの区画ごとに設ける方法によるほか、感知面積が小区画の場合は、業界団体の工事基準書の「小区画が連続してある場合」の項を参照されたい。
(3) (2)の方法によられたい。
別の答 円で算定する方法と平均的に配置する方法の運用は適当でない。L2については、床面積に応じて全体に必要な個数を算出した後、L2方向について均等になるように設置することで足りる。
(昭和57年6月7日 消防予第132号 消防庁予防救急課長から群馬県総務部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第1号イは、取付け面を「天井の室内に面する部分又は上階の床若しくは屋根の下面」と定めています。折版屋根の場合は、屋根の下面が取付け面になります。
第2号は、取付け面の高さに応じて感知器の種別を決めます。第3号イは、感知器の下端を取付け面の下方0.3メートル以内に設けると定めています。
第3号ロは、壁又は取付け面から0.4メートル以上突出したはり等で区画された部分を感知区域とし、区域ごとに床面積に応じた個数以上を、火災を有効に感知するように設けると定めています。回答の0.4メートルは、この基準と同じ数字です。
L2の答えも、同じロの「床面積につき一個以上」という書き方と合います。円の直径を間隔とする運用は認められなかったことになります。実際の割付けは、感知区域ごとに確かめます。
波形の屋根でも、はりが深ければ区画ごとに付けるんですね。
はい。
0.4メートルの線が判断の目安です。
一過性の非火災報を消す付加装置は、試験として設置してよいのか

大阪市が、学校施設で一過性の非火災報を排除する装置を試すことを申し出ました。
別記の計画 大阪市学校施設のうち警備保障会社の機械警備を導入している施設に、概ね100個を設置する。工事は第4類の甲種消防設備士免状の交付を受けている者に行わせる。火災信号の受信記録と非火災報の原因調査を行う。
別添の仕様 P型1級又はP型2級の受信機に付加し、(1)受信機が感知器回路から信号を受信した場合、3秒から10秒後に強制的に自己保持機能を解除する。(2)解除後60秒から90秒以内に再度信号を受信しない場合は、正常な監視状態に復帰する。(3)解除後60秒から90秒以内に再度信号を受信した場合は、手動で復帰しない限り火災の表示を保持する。
(昭和57年8月21日 消防予第174号 消防庁予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに、消防用設備等の基準を適用しない規定です。この回答は、装置そのものが基準に適合すると認めたものではなく、条件を付けて試すことを認めたものです。
仕様の要点は、最初の信号から3秒〜10秒で受信機の自己保持を強制的に解除し、60秒〜90秒以内に二度目の信号が来なければ通常の監視に戻すことです。二度目が来れば、手動で復帰するまで火災表示を保持します。
非火災報への今の対策は、受信機や感知器の側の蓄積機能など、別の仕組みが中心です。この点は、末尾の関連記事で説明しています。
試しに付けてよいという回答で、製品として認めたわけではないんですね。
その通りです。
試験に限った特例と読みます。
無人の建物の自動通報機は、受信機に接続して差し支えないのか

受信機に自動通報機をつなぐことが、規格上の問題にならないかが問われました。
自動通報機は、加入電話等の回線に付加して使用し、火災等が発生した場合に受信機の主ベル又は火災灯端子に中継用付加装置を介して接続され、あらかじめ設定された第1通報先に通報する。応答しない場合は第2、第3の通報先を自動的に呼び出し、エンドレステープで出火を通報する。
この自動通報機は、受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)第5条に規定する付属装置として認めてさしつかえないか。
(昭和57年10月15日 消防予第206号 消防庁予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
別の問 夜間無人となる防火対象物の受信機の地区音響装置の外部端子を利用し、受信機の作動と同時に別棟の住宅の一般加入電話機のベルが鳴動するよう電話自動通報システムを接続した場合も、第5条の有害な附属装置に該当するか。
別の答 昭和57年10月15日付け消防予第206号により承知されたい。
(昭和57年12月13日 消防予第207号 消防庁予防救急課長から新潟県総務部長あて回答)
受信機に係る技術上の規格を定める省令の現行の第5条は、「受信機には、その機能に有害な影響を及ぼすおそれのある附属装置を設けてはならない」と定めています。当時の回答が示した趣旨は、今も同じ条文に引き継がれています。
この回答が答えたのは、受信機を傷めないかという一点です。無人の建物で通報を任せたとき、防火管理の責任がどうなるかは、別の話です。遠隔移報システムを扱った通知の解説は、末尾の関連記事にあります。
受信機に何かをつなぐときは、影響が出ないかを見るんですね。
はい。
保護装置の有無が分かれ目でした。
工事中の建物で、感知器の配線を無線式の装置に代えてよいのか

工事期間中の代わりの方法が、問われました。
(1) 装置は、火災が発生した場合、感知器からその旨の信号を確実に受信機に伝達できる機能を有すること。
(2) 装置の受信部は、自動火災報知設備の回線に容易に接続でき、かつ、保守点検が随時行える場所に設置すること。
(3) 工事期間中に送り配線が取り除かれることで受信機との配線が遮断される感知器のうち、送信部を取り付ける感知器に2以上の感知器が送り配線で接続されるものは、一連のいずれの感知器が作動したときも、配線等に係る電圧降下により送信部付感知器からの送信に支障を生じないこと。
(4) 装置の受信部と送信部は、原則として同一階に設置すること。
注 本件は、設問の事例について装置の性能、機能あるいは設置上について詳細に検討した結果、認めたものであるので、本件の事例に準じて特例を認める場合にあっては、当課に照会されたい。
(昭和60年7月29日 消防予第90号 消防庁予防救急課長から東京消防庁予防部長あて回答)
条件は、信号を確実に伝えること、受信部を点検できる場所に置くこと、電圧降下で送信が妨げられないこと、送信部と受信部を同じ階に置くことの四つです。
注に書かれているとおり、これは設問の事例を詳しく検討した結果の回答で、似た事例に広げるときは消防庁への照会が求められていました。
現在は、感知器と受信機を無線でつなぐ自動火災報知設備が、規格や設置の基準の中に位置付けられています。工事中の代替に使えるかは、令第32条の判断を含めて、所轄の消防機関に確かめます。
工事中の配線の切れ目を、無線で埋めるという考え方なんですね。
はい。
期間を工事中に限るところが条件でした。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの感知器の種類と高さも確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第23条・別表第一の二の三
- 受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)第5条
- 腐食性ガスが発生する場所における消防用設備等の設置についての回答(昭和56年10月14日 消防予第250号 消防庁予防救急課長から栃木県総務部長あて回答)
- 自動火災報知設備の感知器の設置方法の疑義についての回答(昭和57年6月7日 消防予第132号 消防庁予防救急課長から群馬県総務部長あて回答)
- 自動火災報知設備の非火災報防止対策の実施についての回答(昭和57年8月21日 消防予第174号 消防庁予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
- 無人防火対象物における自動火災報知設備の監視システムについての回答(昭和57年10月15日 消防予第206号 消防庁予防救急課長から大阪府生活環境部長あて回答)
- 自動火災報知設備の受信機に接続する附属装置についての回答(昭和57年12月13日 消防予第207号 消防庁予防救急課長から新潟県総務部長あて回答)
- 工事中の防火対象物に設ける自動火災報知設備の特例適用についての回答(昭和60年7月29日 消防予第90号 消防庁予防救急課長から東京消防庁予防部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





