窓がたくさんある建物でも、消防法令では無窓階として扱われることがあります。
無窓階かどうかは、窓の数ではなく、消防隊や避難する人が使える開口部があるかどうかで決まります。
消防の実務書には、昭和50年代に示された、開口部の扱いについての質疑応答が収められています。
この記事では、その中から5つの論点を取り上げ、現行の規則に照らして読みます。ガラスの種類から二重の戸、ひさしまで、順に確かめます。
窓があるのに、無窓階になることがあるんですか。
はい。
窓の数ではなく、有効な開口部があるかどうかで決まります。
どんな窓が有効になるんですか。
ガラス、シャッター、ひさしなど、よく迷う場面を順に見ていきます。
- 質疑では、はめごろしの線入りガラス(15ミリメートル)や、施錠できる開閉ハンドル付きの鉄扉は、有効な開口部と認められないと答えています
- 普通ガラスは、厚さが6ミリメートル程度までなら容易に破壊できるものとして取り扱ってよいと答えています
- シャッターと両開き戸が二重になった開口部は、そのままでは認められませんが、どちらも手動で開放できるなら、戸の部分をそれぞれ開口部と認めてよいと答えています
- ひさしが0.5メートル程度出ていても、ひさしの先端から1メートル以上の空地があれば、有効な開口部になると答えています
- 通路だけに使う入口に、容易に開放できるパイプシャッターと戸が二重にある場合も、同じ考え方で扱うと答えています
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目次
無窓階とはなにか、有効な開口部は何で決まるのか
消防法施行令第10条第1項第5号は、地階、無窓階又は3階以上の階で床面積が50平方メートル以上のものに、消火器具を設けるよう定めています。この無窓階は、建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階のことです。
総務省令は、消防法施行規則第5条の5です。10階以下の階では、直径1メートル以上の円が内接できる開口部、又は幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上の開口部を、二以上有する階が普通階で、それ以外の階が無窓階になります。
また、その開口部は、床面から下端までの高さが1.2メートル以内であること、道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面していること、内部から容易に避難することを妨げる格子などがなく、かつ外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できること、常時良好な状態に維持されていること、が求められます。
質疑は、この要件を現場の窓や扉に当てはめるとどうなるのか、という問い合わせに、消防庁が答えたものです。質疑が引いている規則の条番号は当時のもので、現行では第5条の5にあたります。
はめごろしの線入りガラスや施錠できる鉄扉は、有効な開口部になるのか

(消防庁の質疑応答・昭和53年9月9日・消防予第174号)
質疑は理由を書いていませんが、現行の規則第5条の5第2項が求める、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるという要件に照らして考えると、開かないうえに厚い線入りガラスや、施錠された鉄扉は、この要件を満たすとは言いにくいのが分かります。
アの網入りガラスは、回答が別の質疑を参照するよう答えているので、この記事では判断を示しません。ガラスの種類ごとの扱いは、後で紹介する記事もあわせて確かめてください。
開かない窓は、大きくても数に入らないんですね。
そうですね。
外から開けるか、破って入れるかが確かめどころです。
普通ガラスは、厚さ何ミリまで有効な開口部になるのか

(消防庁の質疑応答・昭和53年9月9日・消防予第174号)
規則第5条の5第2項は、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できることを求めています。この質疑は、その「容易に破壊」を、普通ガラスの厚さで目安を示したものです。
ただし、答えているのは普通ガラスの場合です。防犯対策で入れる合わせガラスや、低放射ガラスなどは、別に破壊試験の考え方が示されているので、この目安をそのまま当てはめないでください。
防犯ガラスに替えたら、目安が変わるかもしれませんね。
はい。
ガラスの種類が違えば、確かめ方も変わります。
シャッターと両開き戸が二重になった開口部は、どう数えるのか

(消防庁の質疑応答・昭和54年4月27日・消防予第91号)
条件は二つあります。シャッターが屋内からも手動で開けられること、そして両開き戸が屋内からも屋外からも手動で開けられることです。夜間や休日に施錠していても、この条件を満たす構造が確保されているかが、判断のもとになります。
回答は、二つの戸を、それぞれ一つの開口部として数えることを認めています。つまり、無窓階の判定で必要な「二以上」の数え方にも関わります。実際の施錠の運用は、所轄の消防署に確かめてください。
シャッターを開けた面積で数えるわけではないんですね。
はい。
手動で開く戸の部分が開口部になります。
ひさしが出ていても、その上下の窓は有効な開口部になるのか

(消防庁の質疑応答・昭和54年4月27日・消防予第91号)
空地は、ひさしの先端から1メートル以上あるかどうかで見る、という答えです。ひさしが張り出しているだけで、その窓がすべて無効になるわけではないことが分かります。
一方で、ひさしの先端から1メートル以上の空地が確保できない建物では、この考え方は使えません。増築や看板の設置でひさしが伸びるときは、空地の幅を測り直しておくと安心です。
ひさしがあるだけで、窓が使えなくなるわけではないんですね。
はい。
先端から1メートル以上の空地があるかを見ます。
通路だけに使う入口の二重の戸も、同じ扱いなのか

(消防庁の質疑応答・昭和54年4月27日・消防予第91号)
前の質疑の条件と同じく、パイプシャッターが容易に開放できること、戸が手動で開けられることが土台になります。
回答は、図の使い方が通路だけであっても、開口部の扱いは変わらないと答えています。ただし、質疑は図の条件に対する回答なので、実際の建物では、所轄の消防署に図面を見てもらって確かめてください。
使い方が通路だけでも、考え方は同じなんですね。
はい。
手動で開けられることが土台です。
よくある質問
まとめ
無窓階の判定は、窓ごとに条件があるんですね。
まずは、うちの建物の窓と扉を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第10条第1項第5号
- 消防法施行規則第5条の5
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





