二酸化炭素消火設備は、人のいない駐車場や電気室で火を消す頼もしい設備ですが、使い方を誤ると酸欠事故につながる危険な設備でもあります。
自動的に閉まる防火戸や、放出後に必ず働く非常電源など、細かい技術基準が設けられているのはそのためです。
昭和50年に消防庁が示した質疑応答は、設置場所の判断から配管の太さの決め方まで、現場で迷いやすい論点を具体的に整理しました。
当時の回答と今の条文を並べて読むと、基準がどこまで明文化されてきたかが分かります。
電気室の二酸化炭素消火設備を点検したら、防火戸や非常電源のことまで聞かれて戸惑いました。
どこまでが決まりなのでしょうか。
二酸化炭素消火設備は放出した消火剤が人に害を及ぼしうるので、付帯設備にも細かい基準があります。
設置場所や非常電源の容量まで、どこまで細かく条文に書いてあるのか気になります。
昭和50年の質疑応答が土台を作り、今の条文がそれを引き継いでいます。
順番に見ていきましょう。
- 移動式は、常時外気に開放されているか随時容易に開放できる開口部がある場所でなければ置けません
- 自動閉鎖装置は、随時閉鎖でき感知器と連動するか遠隔・手動で閉鎖できる防火戸であることが条件です
- 電動式の防火シャッターも自動閉鎖装置に該当すれば、非常電源の附置が必要です
- 非常電源は、設備を有効に一時間作動できる容量以上と現行の条文で明文化されています
- 配管径は、消防庁長官が定める基準による圧力損失計算で決まります
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目次
移動式はどんな場所になら置けるのか

煙が充満しやすい場所には設置できないという決まりがあります。
現行の消防法施行規則第19条第6項第5号も「火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所に設置すること」と定めるだけで、具体的な数値基準は条文に書かれていません。
そこでこの質疑応答は、常時外気に開放された開口部、または随時容易に開放できて排煙に有効な大きさを持つ開口部があれば、この場所には当たらないという判断の目安を示しています。
通風のための壁がないこと、開口部の面積が床面積の20パーセント以上あることなどは、この目安を具体化した条件です。
移動式を計画する部屋があれば、開口部の面積と常時開放の有無を図面で確認してください。
窓の大きさまで見られるとは思いませんでした。
うちの電気室は窓がほとんどありません。
その場合は全域放出方式になっている可能性が高いです。
設計図書で方式を確認してみましょう。
自動閉鎖装置はどこまで細かい構造が求められるのか

閉め方と漏れへの強さの両方が条件になります。
自動閉鎖装置に使う防火戸は、感知器の作動と連動するか、遠隔操作・手動のいずれかで随時閉鎖できる構造でなければなりません。
さらに、消火剤が放射された圧力に耐え、著しく漏洩しない強度も求められます。
現行の消防法施行令第16条第一号は、自動閉鎖装置を建築基準法上の防火設備(防火戸)または総務省令で定めるものと定義しており、消防法施行規則第19条第1項も「令第16条第一号の総務省令で定める防火設備は、防火戸とする」としています。
防火戸を選ぶときは、この圧力と漏洩への強さが確認された製品かどうかをカタログで確かめてください。
ただのドアだと思っていました。
消火剤の圧力に耐える戸だったのですね。
そのとおりです。
点検のときは閉鎖の動作だけでなく、戸自体の仕様書も確認してみてください。
電動式の防火シャッターにも非常電源は必要なのか

電動式のシャッターが使われている現場もあります。
電動式の防火シャッターであっても、規則が定める自動閉鎖装置の要件を満たすものであれば、非常電源の附置が必要になります。
現行の消防法施行令第16条は、非常電源の附置を定める号が第七号に当たります(当時は号の並びが異なり第六号として引用されていました)。
停電時にシャッターが閉まらなければ、防護区画の気密性が保てず消火剤が外へ漏れてしまいます。
シャッターを採用する設計では、非常電源の系統がシャッター側まで届いているかを電気設備図で確認してください。
シャッターと防火戸で扱いが違うと思っていました。
同じ自動閉鎖装置なら同じ扱いなのですね。
はい、形が違っても役割は同じだからです。
停電時の動作試験も点検項目に含めてもらいましょう。
非常電源は何を賄う容量が必要なのか

どの動作を賄う容量なのかが問われます。
当時の回答は、低圧式の貯蔵容器の保冷、設備の起動、音響警報装置の鳴動、放出表示、消火剤の排出という個別の動作を挙げたうえで、それらを有効に行える容量を求めていました。
現行の消防法施行規則第19条第5項第20号は、これを引き継いで「非常電源は、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備によるものとし、その容量を当該設備を有効に一時間作動できる容量以上とする」と明文化しています。
個別の動作を積み上げて判断していた当時に比べ、今は一時間という具体的な数値で基準が整理されています。
非常電源設備を選ぶときは、カタログの連続作動時間が一時間を満たしているかを確認してください。
非常電源の容量にも昔と今で違いがあるのですね。
一時間という数字は覚えやすいです。
そのとおりです。
点検報告書に作動時間の実測値が載っているか確認してみましょう。
配管の太さはどうやって決まるのか

計算に基づいて決める、という考え方が当時から示されていました。
当時の回答は、計算方法そのものは「追って告示される予定」として保留にしたまま、考え方だけを示していました。
現行の消防法施行規則第19条第5項第22号は「消火剤放射時の圧力損失計算は、消防庁長官が定める基準によること」と定めており、当時保留にしていた計算方法が消防庁長官が定める基準として確立しています。
あわせて同項第7号では、配管に使う鋼管や銅管の材質・強度・スケジュール番号まで具体的な規格が示されています。
配管工事の見積りを受け取ったら、使用する配管の規格と圧力損失計算の根拠資料がそろっているかを確認してください。
当時は計算方法すら決まっていなかったのですね。
今は基準があると聞いて安心しました。
はい、今は数値まで基準化されています。
設計書に計算根拠が添付されているか確認してみてください。
よくある質問
まとめ
非常電源や配管まで条文で決まっていることが分かって安心しました。
迷ったときは設計図書と現行条文を照らし合わせるのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第16条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第1項第3号イ・第19条第1項・第6項第5号・第5項第4号・第7号・第20号・第22号
- 二酸化炭素消火設備に関する基準について(昭和50年6月16日消防安第65号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





