救助袋の点検票を書いていると「告示前救助袋」という聞き慣れない言葉に出会うことがあります。
古い救助袋は現行の基準ができる前から設置されているものが多く、今でも特例でそのまま使われています。
ただし特例には条件があり、経年劣化で生地の強度が落ちている例も報告されています。
今回は告示前救助袋の扱いと点検票の書き方を解説します。
うちの校舎にある救助袋、ずいぶん古そうなんです。
そのまま使い続けてよいのか心配になってきました。
古い救助袋には「告示前救助袋」という特別な区分があります。
すぐに使用禁止になるわけではありませんが、確認すべき点がいくつかあります。
告示前だと分かったら、点検票にはどう書けばよいのでしょうか。
生地の強さまで毎回調べるのか気になります。
備考欄への記載方法と、劣化が疑われたときの対応を順番に説明します。
小中学校に多いという調査結果も合わせてお伝えしますね。
- 救助袋には「告示前救助袋」と呼ばれる旧基準の器具が今も残っている
- 不備が無ければ特例でそのまま設置を続けられるが、不備が見つかれば使用できない
- 下部出口と降着面の間隔は無荷重の状態で50cm以下、経年劣化で縮むことがある
- 本体布の引張強さを試験すると十分な強度が無いものが多数見つかっている
- 点検票の備考欄には「告示前救助袋」又は「認定前救助袋」と記入する
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目次
「告示前救助袋」とはどんな救助袋なのか

まずはこの言葉が指す範囲を確認します。
避難器具の基準自体は昭和53年消防庁告示第1号で定められましたが、救助袋の構造・材質・強度に関する技術基準が整ったのはその後の昭和56年消防庁告示第8号でした。
このため、告示第8号ができる前にすでに設置されていた救助袋が、現行基準に完全には沿っていない旧基準品として残ることになります。
根拠は消防法施行規則第27条・第31条の6(避難器具の設置及び維持の技術上の基準)です。
点検票を書くときは、まず目の前の救助袋がこの「告示前」に当たるかどうかを確認するところから始めます。
つまり昭和56年より前からある救助袋は、みんな告示前ということですね。
設置年が分かれば判断できそうです。
そのとおりです、製造銘板や過去の点検記録で設置年を確認してください。
次は告示前でも使い続けられる理由を見ていきましょう。
告示前救助袋はなぜ今も設置し続けられるのか

特例の仕組みを確認します。
告示前救助袋をすべて撤去・交換させるのではなく、点検で不備が確認されない限りはそのまま設置を続けられる、という現実的な運用になっています。
一方で、ひとたび点検項目のどこかで不備が見つかれば、その時点で告示前であることを理由に使い続けることはできなくなります。
つまり「古いから即アウト」でも「古くても永久に使える」でもなく、毎回の点検結果がそのまま可否を左右する仕組みです。
点検者は告示前救助袋ほど、ふだん以上に丁寧に点検項目を確認する必要があります。
不備が1つでも見つかったら、その場で使えなくなるということですか。
思ったより厳しい条件なんですね。
はい、その代わり不備さえなければ無理に交換する必要もありません。
次は具体的な点検項目の1つを見てみましょう。
下部出口と降着面の間隔はなぜ50cm以下でなければならないのか

数値の基準と、劣化で起きる変化を確認します。
救助袋を展張したとき、下部出口は無荷重の状態で地盤面等より50cm以下であることが点検基準として定められています。
点検では、乗ったときに下部出口が地盤面等に接触するようであれば張設ロープを更に引っ張って接触しないよう修正し、降着面の高さが50cmを超える場合はいったん出口に体重をかけてから離れ、あらためて降着面の高さを測り直します。
告示前救助袋の中には長年の使用で本体布が収縮し、この50cmの基準そのものを満たさなくなっているものが確認されています。
生地の伸び縮みは目視だけでは気づきにくいため、実測で確かめることが欠かせません。
生地が縮んで出口が高くなるなんて、見ただけでは分かりませんね。
毎回きちんと測らないといけないんですね。
はい、見た目が古いだけでなく生地そのものの強度も気になるところです。
次は実際に行われた強度試験の結果を見てみましょう。
告示前救助袋の本体布はなぜ強度不足が疑われるのか

試験の結果を確認します。
日本消防設備安全センターの検討会が告示前救助袋の本体布について引張強さの試験を行ったところ、綿製とナイロン製の試料はほぼすべてが不合格となり、ポリエステル製は約41.7%、ビニロン製は約71.4%が不合格という結果でした。
製造から年数が経つほど、素材を問わず強度が低下している試料が目立ったことになります。
劣化が進行していると判断されるものについては、補修により対応できない場合は器具の取替えを検討することになります。
見た目の汚れや色あせだけでなく、生地の劣化そのものが安全性に直結する点に注意が必要です。
素材によって不合格の割合がこんなに違うんですね。
うちの救助袋がどの素材か確認してみます。
製造者名や材質の表示はラベルで確認できることが多いです。
最後に、告示前救助袋がどこに多く残っているかを見ておきましょう。
告示前救助袋はどこに多く残っているのか

校舎の増改築や建替えのタイミングが遅く、設置から長い年数が経っている救助袋が残りやすいことが背景にあるとみられます。
点検を行った結果、対象の救助袋が告示前のものであると判明した場合は、点検票の備考欄に「告示前救助袋」又は「認定前救助袋」と記入します。
あわせて下部出口の高さや本体布の状態を重点的に確認し、劣化が強く疑われる場合は関係者へ速やかに報告してください。
古い器具だからと後回しにせず、むしろ優先して確認する器具として扱うのが実務の基本です。
学校に多いというのは意外でした。
備考欄への書き方もよく分かりました。
次は、よくある質問にまとめてお答えします。
備考欄の書き方と合わせて確認してください。
よくある質問
まとめ
告示前救助袋の扱いがよく分かりました。
まずは設置年と備考欄の記載を確認してみます。
古い救助袋ほど、丁寧な点検が器具を長く安全に使う近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第27条・第31条の6(避難器具の設置及び維持の技術上の基準)
- 避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)
- 避難器具の基準を定める件の一部を改正する件(昭和56年消防庁告示第8号)
- 消防用設備等の点検要領(平成14年6月11日消防予第172号)第15 避難器具
- 消防用設備等の点検及び報告の実施に係る留意事項について(消防庁。日本消防設備安全センター「消防用設備等の経年劣化等に対応した点検方法等検討会」の調査検討結果を踏まえたもの)
※本記事は一般的な解説であり、個別の防火対象物における判定は所轄消防署にご確認ください。





