給油取扱所を新しく作る、あるいは手を加えるとき、現場の事情をくんで基準を緩めてもらえないかと考える関係者は少なくありません。
交差点のそばだから、ガードレールがあるから、壁のない詰替場だから――そうした個別の事情は、許可の判断にどこまで影響するのでしょうか。
消防庁の質疑応答には、給油取扱所や取扱所の基準適合性が争われた具体的な場面が数多く残されています。
今回は消防実務六法の質疑応答編から、給油取扱所まわりの五つの質疑応答を解説します。
うちの給油所、交差点のすぐそばなんですが、それを理由に許可で何か特別な条件を付けられたりするんでしょうか。
政令の基準に適合していれば交通事情は条件にできません。
基準そのものがどこまで厳しく見られるかを確認しましょう。
ガードレールとか詰替場とか、現場にはいろんな事情があるんですが、それぞれどう判断されるんでしょう。
それでは五つの疑問を順番に見ていきましょう。
- 給油取扱所の許可は危険物の規制に関する政令第17条の基準に適合するかどうかだけで決まり、交通上の事情は条件にできない
- 自動車等が出入りする間口十メートル以上の空地を保有できなければ、完成検査で基準適合と認められない
- トラックの荷台に積んだ自動車等への給油は認められるが、セルフ式で顧客自身が給油できるのは自動車と原動機付自転車のみ
- 壁のない詰替場でも、指定数量以上の危険物を取り扱えばポンプ室を含めて一般取扱所として規制される
- 指定数量未満のタンクを連結していても、給油を主な目的とする実態があれば給油取扱所の基準に合わせる必要がある
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目次
交差点そばの給油取扱所に交通上の条件を付けられるか

消防庁の質疑応答にこんなやり取りがあります。
かつては交通取締当局への意見照会がならわしになっていましたが、消防法の改正でこの運用は取り止められ、危険物の規制に関する政令第17条に規定する位置・構造・設備の技術上の基準に適合するかどうかだけで判断されるようになりました。
消防法第11条第2項は、この基準に適合するものには許可を与えなければならないと定めており、交通事情のような政令に無い事情を理由に許可を左右できないという考え方です。
交差点に近いから、何か追加の条件が付くんじゃないかと心配していました。
政令第17条の基準に適合するかどうかだけです。
ガードレールで出入りできない給油取扱所は完成検査に通るか

消防庁の質疑応答にこんな事例があります。
現行の危険物の規制に関する政令第17条第1項第2号は、自動車等が直接給油を受けるために出入りする間口十メートル以上、奥行六メートル以上の空地(給油空地)を保有することを求めており、ガードレールや歩道が障害になって実際に出入りできなければこの基準を満たしません。
許可どおりの図面があっても、完成検査は現地の実態で基準適合を確かめるという考え方です。
許可を受けたとおりに作れば、それで終わりだと思っていました。
完成検査でも間口の実態を確かめます。
トラックの荷台に積んだ自動車等へ給油してよいか

令和5年の執務資料にこんな質疑があります。
危険物の規制に関する政令第3条第1号が定める「自動車等」には、荷台に積載され、又は牽引された状態の自動車等も含まれるため、給油取扱所の固定給油設備から直接給油することができます。
ただしセルフ式の給油取扱所では顧客が自ら給油できるのは自動車と原動機付自転車だけで、積載車両への給油は係員が行い、転倒・動揺の防止と静電気対策に注意する必要があります。
荷台に積んだ車だと、一度下ろさないと給油できないのかと思っていました。
そのまま給油できますが転倒防止と静電気対策が必要です。
壁のない詰替場でドラム缶に詰め替える作業は何の施設になるか

消防庁の質疑応答にこんなやり取りがあります。
危険物の規制に関する政令第3条は、専ら給油のための取扱所やほかの区分に当てはまらない取扱所を一般取扱所として定めており、詰替場に壁という構造上の仕切りが無くても、ポンプ室と一体で危険物を取り扱う施設であることに変わりはありません。
判断の決め手は壁の有無ではなく、1日に取り扱う危険物の数量が指定数量以上かどうかであり、その場合はポンプ室も含めて一般取扱所の基準が及びます。
壁が無い屋根だけの作業場なら、規制も軽くなるのかと思っていました。
数量で決まるので壁の有無は関係ありません。
指定数量未満のタンクを連結すると施設の区分はどう変わるか

消防庁の質疑応答にこんなやり取りがあります。
タンクを連結しても、一日の取扱い(給油)量が指定数量未満で貯蔵が主な目的であれば、市町村の火災予防条例による少量危険物貯蔵所・取扱所として扱われますが、実態として給油を主な目的としているなら話は別です。
その場合は給油取扱所として政令第17条の基準を満たさなければならず、連結タンクのままでは基準に適合しないと回答は念を押しています。
一つずつが指定数量未満なら、いくつ繋いでも平気だと思っていました。
給油が主目的なら給油取扱所の基準が要ります。
よくある質問
まとめ
うちの給油所の間口も、一度きちんと測ってみます!
判断に迷うときは所轄の消防署にご確認ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第11条第2項・第3項
- 危険物の規制に関する政令第3条第1号・第17条第1項
- 危険物の規制に関する規則第28条の2の4
- 道路交差点附近に設置される給油取扱所について(昭和35年3月31日付け国消乙予発第21号 消防庁予防課長)
- 自動車の出入側にガードレールの設けてある給油取扱所の完成検査について(昭和43年4月3日付け消防予第94号 消防庁予防課長)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(令和5年3月24日付け消防危第63号 消防庁危険物保安室長)
- 移動タンク貯蔵所の許可件数は(昭和37年10月9日付け自消丙予発第103号 消防庁予防課長)
- 容量が指定数量未満の屋外タンクによる危険物の貯蔵、取扱いについて(昭和55年6月3日付け消防危第73号 消防庁危険物規制課長)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した質疑応答は発出当時のもので、条文の番号等は現行条文と照らして編集部で確認しています。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





