学校の夜間宿直をやめたら、自動火災報知設備の受信機はどこに設置すればよいのでしょうか。
簡易宿所や民宿のような小さな宿泊施設にも、自動火災報知設備は必要なのでしょうか。
発信機の表示灯や精神病院の煙感知器の設置は、どこまで省略が認められるのでしょうか。
これらはいずれも昭和の時代に示された回答があり、現行の条文と照らし合わせると今も変わらない部分と大きく変わった部分がはっきり見えてきます。
うちの中学校、去年から夜間の宿直をやめたんです。
自動火災報知設備の受信機って、このままでいいんでしょうか。
受信機の設置基準を定めた規則の条文自体は、実は宿直を強制していません。
ただ、せっかくの設備を活かす設置の仕方は昭和の時代から同じ悩みとして聞かれてきました。
それに簡易宿所や民宿、精神病院のような建物も、同じように古い判断が今も通用するのか気になります。
ちょうど良いタイミングです。
今回は五つの昭和の質疑応答を、現行の条文と照らし合わせて整理してみましょう。
- 発信機の表示灯は、昭和当時は通達による運用だったが現行の省令本文で設置が義務化されている
- 簡易耐火構造は、感知区域の構造区分でいう「その他の構造」に含まれる扱いが今も続いている
- 旅館・簡易宿所は、かつての300平方メートルという面積基準が無くなり面積を問わず設置義務に厳格化された
- 受信機の設置場所は「守衛室等常時人がいる場所」から防災センター等へ規定そのものが変わった
- 精神病院のような無窓階の煙感知器義務は、条項番号がずれながらも今も有効である
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目次
自動火災報知設備の発信機に表示灯は省略できないのか

これは今では省略できない正式な設備です。
昭和42年当時は通達による運用に過ぎませんでしたが、現行の消防法施行規則第24条第8号の2には「発信機の直近の箇所に表示灯を設けること」とはっきり明記されています。
赤色の灯火で、取付け面と15度以上の角度・10メートル離れた位置からでも点灯が識別できることまで、規則本文で求められるようになりました。
一方で表示灯の電源を非常電源とする義務が無いという昭和の回答は、現行の条文でも覆されていません。
点検のときは、発信機の直近に表示灯があるか、赤い灯火がきちんと点灯するかを確かめるのが実務の最初の一歩です。
表示灯をつけ忘れている物件、意外とありそうですね。
次の点検でまず確認してみます。
赤い灯火が発信機のすぐそばで光っているか、それだけでも違います。
気になる箇所があれば遠慮なくご相談ください。
感知区域の建物構造はどこまで「その他の構造」に含まれるのか

その境目を確かめた質疑が残っています。
現行の規則第23条第4項第3号の表も、感知区域の床面積の基準を「特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物又はその部分」と「その他の構造の防火対象物又はその部分」の二区分に分けており、簡易耐火構造のような中間的な構造は後者に含める扱いが今も続いています。
耐火構造とそれ以外とでは、1つの感知器が受け持てる床面積や感知器どうしの間隔の基準が変わるため、この区分を取り違えると設置個数が不足しかねません。
区分そのものの名称は「主要構造部」から「特定主要構造部」へ変わっていますが、簡易耐火構造の位置づけという結論の部分は昭和の回答のまま現行法に引き継がれています。
増改築で壁の仕様が変わったときほど、まず建物がどちらの区分に当たるかを確かめておくと安心です。
うちの建物、増築のときに壁を軽くしたと聞いています。
その場合もその他の構造に入るんでしょうか。
はい、耐火構造でない以上はその他の構造として扱われます。
図面と一緒に感知器の配置も見直しておきましょう。
民宿のような小規模な宿泊施設にも自動火災報知設備は要るのか

面積の線引きがどう変わったかを見ていきます。
昭和45年当時のこの回答は、宿泊部分の延べ面積が300平方メートル以上かどうかで設置義務の範囲を区分していましたが、現行の消防法施行令第21条第1項第1号イは、令別表第一(5)項イに当たる旅館・ホテル・民宿等について、延べ面積の要件を設けずすべての建物に自動火災報知設備の設置を義務付けています。
つまり300平方メートルという当時の線引きそのものがもう無く、宿泊部分と居室部分の区分にかかわらず、民宿や簡易宿所であれば原則として設置が必要という、より厳格な基準に変わっています。
背景には宿泊施設の火災による被害が繰り返されたことがあり、面積の小さな施設ほど人手が薄く発見が遅れやすいという事情が基準の厳格化につながったとみられます。
自宅の一部を民泊や民宿に使う計画があるときは、面積にかかわらずまず設置の要否を消防署に確認するのが安全です。
うちは延べ面積が300平方メートルより小さい民宿なんですが、それでも要るんですか。
昔の基準だと免除されそうな気がしていました。
今は面積を問わず設置が必要な扱いに変わっています。
昔の基準のまま判断すると、そこで見落としが起きやすい箇所です。
夜間の宿直をやめた学校の受信機はどう設置すればよいのか

現行法では別の形に整理されています。
昭和45年当時の規則第24条第2号イは受信機を「守衛室等常時人がいる場所」に設けると定めており、宿直を廃止した学校ではこの前提が崩れるため、近隣施設への補助受信機の設置という工夫が認められていました。
現行の規則第24条第2号ニは、受信機を「防災センター等」に設けることと定めており、常時人がいることを前提にした当時の文言そのものは条文から姿を消しています。
防災センター等は建物の規模や用途に応じて設置が求められる防災活動の拠点なので、昔のように「近くの宿直施設に頼る」という発想とは別の枠組みで受信機の置き場所を考える必要があります。
宿直体制を見直す学校や福祉施設は、受信機の設置基準が当時と変わっている可能性を踏まえて、現在の防災センター等の考え方から設置方法を確認し直すとよいでしょう。
夜間の管理体制を見直したいんですが、受信機の置き場所に悩んでいます。
防災センターなんて、うちの規模だと無いんですが。
規模によって防災センター等の扱いが変わってきますので、まずは現状の建物区分を確認しましょう。
設置基準に合わせた見直しをご提案できます。
無窓階の病院では煙感知器の設置はどこまで義務なのか

精神病院の質疑がその典型です。
窓に格子がある精神病院の病棟は消防法施行令第10条第1項第5号にいう無窓階に該当し、既存の建物にも新しい基準を遡って適用する遡及適用の対象になるため、改修が難しくても煙感知器の設置は避けられないという昭和の回答の骨格は、現行法でも変わっていません。
ただし根拠条文の番号はそのままではなく、遡及適用の根拠は当時の法第17条の2から現行の法第17条の2の5へ、煙感知器を義務付ける号は規則第23条第5項第5号から現行の第5項第6号へとそれぞれ条項が繰り下がっています。
令第34条第3号には自動火災報知設備が今も遡及適用の対象として明記されており、既設だから対応しなくてよいという理屈は成り立ちません。
古い通達を根拠に説明するときは、結論が今も正しいかだけでなく、引用する条項の番号が現行のものに合っているかまで確認する必要があります。
窓に格子がある部屋、うちの建物にもいくつかあります。
無窓階かどうかなんて、意識したことがありませんでした。
格子や小さな窓は無窓階の判定に関わる重要なポイントです。
一度まとめて確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
昭和の回答がそのまま使えるところと、条文ごと変わっているところがあるんですね。
自分の建物がどちらに当たるか、一度きちんと確認してみます。
条文は少しずつ番号も中身も変わっていくので、古い資料だけで判断すると思わぬ見落としにつながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第10条・第21条・第34条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則第23条・第24条(e-Gov法令検索)
- 昭和44年11月20日消防予第265号(消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
- 昭和45年9月14日消防予第187号(消防庁予防課長から長野県消防主管部長あて回答)
- 昭和45年11月21日消防予第227号(消防庁予防課長から鹿児島県消防主管部長あて回答)
※本記事は昭和期の質疑応答を現行の消防法令と照らし合わせて解説したものです。個別の建物への適用は、所轄の消防署にご確認ください。





