建設中だった遊園地の中を、水の上の乗り物が走る計画が持ち上がりました。
そのリバーボートは船なので、建物と同じ消防用設備等を揃えるべきか、消防庁に照会が寄せられました。
回答は、建物の消防用設備等の一部を、船舶用の設備で代えてよいというものでした。
質疑応答が示したのは防火対象物の種類が同じでも設備の中身は用途で変わるという考え方です。
遊園地の中に浮かぶ船のアトラクションも、消防用設備等を揃えないといけないんでしょうか。
建物とは違う形なので、どう考えればいいのか分かりません。
それは消防法施行令別表第一の(16)項イに当たる複合用途の防火対象物として扱われます。
ただし設備の中身までは建物とまったく同じにはなりません。
え、船だからといって何か違うんですか。
はい。
実際に東京ディズニーランドのリバーボートについて、消防庁へ照会があった記録が残っていますので、順に見ていきましょう。
- 建設中のリバーボートは、消防法施行令別表第一の(16)項イに掲げる複合用途の防火対象物に該当するとされました
- 屋内消火栓設備と自動火災報知設備は、船舶消防設備規則に定める消火ポンプ・消火栓・ホース・ノズル及び火災探知装置で代えることができるとされました
- 消防機関へ通報する火災報知設備は、設置しないことができるとされました
- 非常警報設備は、船内放送用の拡声装置で代えることができるとされました
- 避難器具は救命ボートで代えることができるとされましたが、消防法第8条の防火管理は必要です
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目次
建設中のリバーボートは消防法上どの防火対象物になるのか

遊園地の中を航行する乗り物も、消防法上は防火対象物として扱われます。
まず、何項の防火対象物に当たるかが問題になりました。
区分は建物と同じ考え方で決まります。
このリバーボートは推進機関を持たず、他の船に曳航されてふ頭に係留された状態でだけ営業する計画でした。
各デッキに娯楽施設や飲食部を備えていたため、複合用途防火対象物として扱われています。
建物でも船でも、収容する用途の組み合わせで項が決まる点は変わりません。
ここから先は、その区分を前提に、設備の中身をどこまで船舶用で代えられるかが問われます。
リバーボートなのに、防火対象物の区分まで建物と同じ考え方なんですね。
はい。
区分が決まったら、次は設備の中身がどこまで変わるかを見ていきましょう。
屋内消火栓と自動火災報知設備はなぜ船舶用の設備に置き換えられるのか

建物であれば屋内消火栓設備と自動火災報知設備を設置します。
船の上ではどうなるのか、具体的な代替が示されました。
船の設備で足りる場面があります。
建物の屋内消火栓設備とほぼ同じ役割を、船舶にもともと備え付けられた消火ポンプ・消火栓・ホース・ノズルが果たすためです。
自動火災報知設備についても、同じ規則が定める火災探知装置で代替が認められました。
船舶の設備はもともと海上での火災に備えて整備されているため、重ねて陸上と同じ設備を積む必要はないという考え方です。
ただし、この代替は令第32条の特例として個別に認められたものである点に注意が必要です。
船にもともと積んである消火設備で代用できるのは意外でした。
はい。
では、消防機関への通報についてはどうなるのか、続けて見ていきましょう。
消防機関へ通報する火災報知設備はなぜ省略できるのか

建物なら消防機関へ通報する火災報知設備を備えます。
この設備についても、回答は明確でした。
この設備は置かなくてよいとされました。
陸上の建物を前提にした通報の仕組みが、ふ頭に係留されたままの船にはなじまないと考えられます。
ただし、これは通報義務そのものが無くなるという意味ではありません。
火災が起きた場合に誰がどう消防へ知らせるかは、防火管理の体制の中で別途確保しておく必要があります。
設備を省く判断は、常にその先の運用とセットで考えるべき論点です。
通報の設備が無くてよいなら、火事のときはどうするんでしょうか。
そこは防火管理の仕組みでカバーします。
次の非常警報設備の話とあわせて見ていきましょう。
非常警報設備はなぜ船内放送用の拡声装置で足りるのか

建物なら非常ベルや放送設備を非常警報設備として備えます。
船の上では、別の設備が充てられました。
放送設備が警報の役割を引き継ぎます。
船内にはもともと案内放送のための拡声装置が備わっており、それを非常時の警報にも使う形です。
建物の非常警報設備が目指す「いち早く知らせる」という目的を、別の手段でも果たせると判断されました。
設備の名前が違っても、果たす役割が同じなら代替を認めるという一貫した考え方がここにも表れています。
次は、避難のための設備がどう扱われたかを見ていきます。
名前は違っても、役目が同じならいいということなんですね。
そのとおりです。
最後に避難器具の扱いを確認しましょう。
避難器具はなぜ救命ボートで足りるのか

建物なら避難はしごや緩降機などの避難器具を備えます。
船にはもともと別の避難手段がありました。
避難の手段も船舶の装備で代えられます。
船には本来、乗船者を安全に退避させるための救命ボートが備えられています。
陸上の避難器具と求める結果が同じであれば、重ねて避難はしご等を備える必要はないとされました。
ただし回答はここで防火管理者による消防計画や訓練が必要だと念押ししています。
設備を代えられることと、火災に備える体制が不要になることは別の話だと分かります。
設備が代わっても、防火管理そのものは必要なんですね。
はい。
ここまでの四つの代替を、よくある質問でも整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
よく分かりました。
うちの建物も、設備の代わりがきく場面がないか、一度確認してみます。
設備の代替や特例の適用は、消防機関ごとの判断が関わる難しい分野です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条・第17条第1項(e-Gov法令検索)
- 消防法施行令第32条・別表第一(16)項イ(e-Gov法令検索)
- 船舶消防設備規則(昭和40年運輸省令第37号)第4条・第7条〜第9条・第29条(e-Gov法令検索)
- 昭和57年5月19日消防予第114号 消防庁予防救急課長から千葉県総務部長あて回答(消防実務六法 質疑応答編収録)
※本記事は昭和57年当時の行政照会への回答を題材に、現行の消防法令と照らして解説したものです。個別の建物・設備の判断は所轄の消防機関にご確認ください。





