6階建て以上の事務所ビルや工場で、避難はしごや救助袋などの避難器具が要るかどうかは、その階に何人いるかで決まります。
国の基準では、事務所や工場の6階なら収容人員150人以上になってはじめて避難器具が要ります。
ところが堺市では、火災予防条例第69条が、6階以上の階に30人以上で避難器具を求めています。
この記事では、堺市の条例の上乗せを国の条文から順にたどり、東大阪市と大阪市の条例とどこが違うかを比べます。
堺市で8階建ての事務所ビルを借りて、6階に40人の部署を入れる予定です。
ビルの管理会社から「避難器具が要るかもしれない」と言われました。
国の基準なら、事務所の6階は150人からです。
堺市には、それより少ない人数で求める条例があります。
40人でも避難器具が要るということですか。
はい、条例では30人以上の階が対象です。
根拠を一つずつたどってみましょう。
- 国の消防法施行令第25条では、事務所や工場の6階に避難器具が要るのは収容人員150人以上(無窓階は100人以上)のときです
- 堺市火災予防条例第69条は、6階以上10階以下の階で収容人員が30人以上なら避難器具を設けるとしています
- 条例第62条第2項の読替えで、複合用途の建物でも用途ごとに分けず、その階全体の人数で数える書き方になっています
- 設ける避難器具の種類や個数を減らす規定は、国の令第25条と規則第26条・第27条の例によります
- 東大阪市火災予防条例第49条も6階以上・30人以上という同じ線を引いています
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目次
国の基準では6階の事務所や工場に避難器具は何人から必要なのか

避難器具を設ける階は、消防法施行令第25条第1項が用途ごとに決めています。
三 別表第一(一)項から(四)項まで及び(七)項から(十一)項までに掲げる防火対象物の二階以上の階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の二階を除く。)又は地階で、収容人員が五十人以上のもの
四 別表第一(十二)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の三階以上の階又は地階で、収容人員が、三階以上の無窓階又は地階にあつては百人以上、その他の階にあつては百五十人以上のもの
飲食店や物品販売店舗などの(1)項から(4)項と、学校や図書館などの(7)項から(11)項は、50人以上です。
このほか、同じ条の第5号が、直通階段が2以上ない3階以上の階((2)項・(3)項などは2階以上)について、収容人員10人以上で避難器具を求めています。
(13)項の車庫や(14)項の倉庫は、第1号から第4号に名前が出てこないので、国の基準では第5号に当たる階だけが対象です。
工場の用途の考え方は工場や映画スタジオの記事で解説しています。
直通階段が2つある事務所ビルなら、国の基準では150人までは要らないのですね。
はい、国の基準は150人です。
次は、堺市の条例を見ましょう。
堺市の条例は6階以上のどの階に避難器具を求めているのか

避難器具は第69条です。
1 第1 項の規定は、6 階以上の階でその収容人員が30人以上となる場合に避難器具を設置しなければならないことを規定したものである。なお、政令第25 条第1 項の規定の適用のない避難階(建基政令第13 条の3 第1 号に規定する避難階をいう。)については適用されないものであること。
条文から外れる階は3つです。
- 11階以上の階(国の令第25条も11階以上を除いています)
- 国の令第25条第1項第5号がすでに当たる階(直通階段が2以上ない階は、国の基準で10人以上から求められています)
- 避難階(解説1で適用しないとしています)
| 用途(6階から10階の階) | 国の令第25条 | 堺市条例第69条 |
|---|---|---|
| (1)項〜(4)項 劇場・飲食店・店舗など | 50人以上 | 30人以上 |
| (7)項〜(11)項 学校・図書館・浴場など | 50人以上 | 30人以上 |
| (12)項 工場など・(15)項 事務所など | 150人以上(無窓階は100人以上) | 30人以上 |
| (13)項 車庫など・(14)項 倉庫 | 第5号に当たる階だけ | 30人以上 |
| (5)項 共同住宅など・(6)項 福祉施設など | 国の基準(30人以上・20人以上など) | 条例の対象外(国の基準による) |
6階から10階までの階が、ちょうど上乗せの対象なのですね。
はい、11階以上と避難階は外れます。
次は、30人をどう数えるかです。
複合ビルや工場では30人をどう数えるのか

その最初の項目が、数える単位を決めています。
人数の数え方そのものは、消防法施行規則第1条の3の表によります。
工場などの(12)項は従業者の数、事務所などの(15)項は従業者の数に、従業者以外の人が主に使う部分の床面積を3平方メートルで割った数を足します。
従業者の数え方は、同じ第7が次のように決めています。
次に、複合用途の建物です。
国の令第9条は、(16)項の複合用途の建物の各部分を、用途ごとに一つの建物とみなして基準を当てはめると決めています。
堺市の条例は、第62条第2項で、この令第9条を条例の付加基準にも準用しつつ、第69条第1項を外しています。
たとえば6階に事務所20人と飲食店15人が入っていれば、合わせて35人で30人以上に当たる、と読めます。
令第9条のみなしの考え方は複合用途の建物と令第9条の記事で解説しています。
テナントごとに少なくても、階で合わせると30人を超えることがあるのですね。
はい、階全体で数えるのがポイントです。
次は、どんな避難器具を設けるかです。
堺市の条例の避難器具は国の基準の何を借りて設けるのか

4 政令別表第1(13)項及び(14)項に掲げる防火対象物にあっては、滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機及び避難橋のいずれかを設置すること。
国の令第25条第2項第1号の表は、6階以上の階に適応する避難器具を、(6)項以外の用途では滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋としています。
(13)項と(14)項は令第25条第1項第1号から第4号の区分に入らないので、解説4が同じ5種類をはっきり書いていると読めます。
個数を減らす規定は、消防法施行規則第26条です。
一 特定主要構造部を耐火構造としたものであること。
二 直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものが二以上設けられていること。
2 令第二十五条第一項各号に掲げる防火対象物の階に建築基準法施行令第百二十条、第百二十一条及び第百二十二条の規定により必要とされる直通階段で、建築基準法施行令第百二十三条及び第百二十四条に規定する避難階段(屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る。)又は特別避難階段としたものが設けられている場合は、当該階に設置する避難器具の個数は、令第二十五条第二項第一号本文又は前項の規定により算出して得た数から当該避難階段又は特別避難階段の数を引いた数以上とすることができる。この場合において、当該引いた数が一に満たないときは、当該階に避難器具を設置しないことができる。
屋外避難階段や特別避難階段があれば、その数を引いて1に満たなければ設置しないことができます。
ただし、令第25条第2項第1号は号ごとに100人・200人・300人までごとに1個と数え方を分けていて、条例第69条はどの号の数え方によるかを書いていません。
何個置くかは、設計の段階で所轄の消防署に確かめます。
規則第26条の各項は第1項の読替えの記事、第2項の引き算の記事、第5項の免除の記事で、屋内避難階段の「消防庁長官が定める部分」は屋内避難階段の開口部の記事で解説しています。 高さ31メートルを超えるか地階を除く階数が11以上の建物では、堺市の高層建築物に係る指導指針が、階段の側からも求めています。
- 消防法施行令第25条第1項が、事務所や工場の6階は150人以上などと、用途ごとに国の線を引く
- 堺市火災予防条例第69条第1項が、6階以上10階以下の階で30人以上なら避難器具を設けると上乗せする
- 条例第62条第2項が、令第9条のみなしから第69条第1項を外し、複合用途の建物も階全体の人数で見る
- 審査基準 第7 収容人員の算定 1(1)◆①が、条例第69条の人数は階単位で数えるとする
- 条例第69条第2項が、器具の種類・個数の減らし方・細目を令第25条と規則第26条・第27条の例によるとし、解説4が(13)項・(14)項の5種類を示す
- 条例第72条が、消防長又は消防署長が認めるときの基準の特例を置く
30人の線は堺市の条例で、器具の選び方と減らし方は国の基準なのですね。
はい、線は条例、設け方は国の例です。
次は、近くの市と比べてみましょう。
東大阪市や大阪市の条例と堺市の条例はどこが違うのか

2 前項の規定により設ける避難器具は、次に掲げる区分に従い、令第25条第2項並びに規則第26条及び第27条の規定の例により設置し、及び維持しなければならない。
(1) 令別表第1(1)項から(4)項まで、(7)項から(11)項まで、(13)項及び(14)項に掲げる防火対象物にあっては、令第25条第1項第3号に適応するものとされる避難器具
(2) 令別表第1(12)項及び(15)項に掲げる防火対象物にあっては、令第25条第1項第4号に適応するものとされる避難器具
(3) 令別表第1(16)項に掲げる防火対象物にあっては、当該階の用途に応じて令第25条第1項各号に適応するものとされる避難器具
違うのは第2項で、東大阪市は用途ごとに、国の表のどの区分の避難器具を使うかを条文で書き分けています。
堺市は、(13)項・(14)項の器具を「解説及び運用」の4で示しています。
また、東大阪市の第5章の通則(第42条)には、堺市の第62条第2項のような令第9条の準用の規定は見当たりませんでした。 大阪市については、大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」の避難器具の節には、条例の付加基準に当たる6階以上・30人のような記述は見当たりませんでした。大阪市火災予防条例の原文は今回確認できなかったため、大阪市で同じ線があるかどうかは所轄の消防署で確かめてください。 3市で確かめた範囲を並べます。
| 項目 | 堺市 | 東大阪市 | 大阪市 |
|---|---|---|---|
| 6階以上・30人以上の付加 | 条例第69条第1項 | 条例第49条第1項(同じ線) | 今回は条例原文を確認できず |
| 11階以上・国の第5号の階 | 除く | 除く | ― |
| 複合用途の建物の数え方 | 令第9条のみなしから外す(第62条第2項) | 通則に同じ規定は見当たらない | ― |
| 器具の区分の書き方 | 国の例による・(13)(14)項は解説4で5種類 | 用途ごとに国の表の区分を条文で指定 | ― |
| 個数を減らす規定 | 規則第26条の例 | 規則第26条の例 | ― |
書き方の違いは、複合用途の建物の扱いと、器具の区分をどこに書くかにあります。
どの市でも、最終的な判断は所轄の消防署なので、テナントを入れる前やレイアウトを変える前に確かめます。
堺市と東大阪市は、同じ30人の線なのですね。
はい、線は同じで書き方が少し違います。
建物のある市の条例を確かめましょう。
よくある質問
まとめ
6階の人数を数えて、30人を超えるなら避難器具と階段を確かめます。
まずは階ごとの収容人員を出してみます!
人数と階段の数がはっきりすれば、消防署との相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第2章 第1節 第7 収容人員の算定 1 共通的取扱い(1)(5)/第2章 第2節 第3 高層建築物に係る指導指針 5 避難対策(3)エ/第5章 火災予防条例審査基準 堺市火災予防条例 第62条・第69条・第72条(解説及び運用を含む) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市火災予防条例 第42条・第49条(東大阪市例規集)/東大阪市消防局「避難器具の設置に係る運用基準」 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令第9条、第25条
- 消防法施行規則第1条の3、第26条、第27条
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。3市の比較は、各市の火災予防条例の原文と公開されている基準で確かめた範囲のものです。個々の建物で避難器具が要るかどうかや何個置くかは、所轄消防署にご確認ください。





