ビルを建てたり用途を変えたりするときは、屋内消火栓設備がいるかどうかを、まず消防法施行令第11条で確かめます。
ところが堺市では、国の基準ではいらない規模の建物にも、堺市火災予防条例第65条で屋内消火栓設備が求められることがあります。
対象は、複合用途の建物((16)項)と、地階を除く階数が5以上の建物の2つです。
この記事では、国の条文から堺市の条例と審査基準の解説までを順にたどり、大阪市と東大阪市の条例とも比べます。
堺市で5階建ての小さな事務所ビルを計画しています。
延べ面積は小さいのに、屋内消火栓がいると言われました。
堺市の火災予防条例に、階数で決まる上乗せがあります。
国の基準とは別の条文です。
国の基準だけなら、いらない規模なのですか。
国の基準は、延べ面積や階の床面積で決まります。
国と堺市を分けて見ていきましょう。
- 国の消防法施行令第11条は、用途ごとの延べ面積と、地階・無窓階・4階以上の階の床面積で屋内消火栓設備の要否を決めています
- 堺市火災予防条例第65条は、消防法第17条第2項に基づく上乗せとして、複合用途の建物((16)項)と地階を除く階数が5以上の建物に屋内消火栓設備を求めています
- 複合用途の建物は、構造と内装に応じて延べ面積1,000・2,000・3,000平方メートル以上が対象で、用途ごとに分けず建物全体の延べ面積で判定します
- 5階建て以上でも、5階以上の部分の床面積の合計が100平方メートル以下(耐火構造で内装を難燃材料にすれば200平方メートル以下)か、100平方メートル以内ごとに区画されていれば対象外です
- 大阪市と東大阪市の条例にも同じ2つの上乗せがありますが、200平方メートルに広げる内装の条件や水源の水量、屋上の放水口に違いがあります
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目次
堺市は国の基準に屋内消火栓をどう上乗せしているのか

屋内消火栓設備を付ける建物は、消防法施行令第11条第1項が用途ごとに決めています。
三 別表第一(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
六 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十二)項まで、(十四)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上の階で、床面積が、同表(一)項に掲げる防火対象物にあつては百平方メートル以上、同表(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物にあつては百五十平方メートル以上、同表(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物にあつては二百平方メートル以上のもの
ただし、「地階を除く階数が5以上」という基準はなく、複合用途の(16)項も号として挙がっていません。
(16)項の建物は、消防法施行令第9条で、用途ごとの部分をそれぞれ一つの防火対象物とみなして判定します。
これに上乗せする根拠が、消防法第17条第2項です。
条例の条文と【解説及び運用】は、堺市消防局の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」の第5章に収められています。
第65条の【解説及び運用】は、冒頭で「政令第11条第1項の適用を受けない防火対象物に対して」設置の基準を定めたものと説明しています。
つまり、国の第11条では対象にならない建物を、堺市の条例で拾っているという関係です。
国の基準は、全国共通の最低基準なのですね。
はい、そこに堺市が条例で上乗せしています。
次は、5階建て以上の基準を見ましょう。
5階建て以上の建物で屋内消火栓がいらないのはどんな場合か

【解説及び運用】は、これを(1)から(5)に分けて説明しています。読みやすく並べ直すと次のとおりです。
| 対象外になる場合 | 建物の構造 | 壁と天井の仕上げ | 5階以上の部分 |
|---|---|---|---|
| (1) | 耐火構造か、主要構造部が不燃材料 | 問わない | 床面積の合計100平方メートル以下 |
| (2) | 耐火構造 | 難燃材料 | 床面積の合計200平方メートル以下 |
| (3) | 耐火構造 | 問わない | 100平方メートル以内ごとに耐火構造の床・壁か防火戸で区画 |
| (4) | 耐火構造 | 難燃材料 | 200平方メートル以内ごとに(3)と同じ区画 |
| (5) | (3)と(4)を満たすもの | - | 100平方メートルの区画と200平方メートルの区画が混在してもよい |
5階以上の部分が小さいか、細かく区画されていれば、5階建て以上でも対象外になるというしくみです。
例として、1階が店舗150平方メートル、2階から5階が各150平方メートルの事務所という、延べ750平方メートルの5階建てを考えます(地階と無窓階はないものとします)。
- 国の基準:店舗の部分は150平方メートルで700平方メートルに届かず、事務所の部分も600平方メートルで1,000平方メートルに届きません。4階と5階の事務所も各150平方メートルで、第6号の200平方メートルに届かないので、国の第11条では対象外です
- 堺市の第1号:複合用途ですが、延べ750平方メートルなので1,000平方メートルに届きません
- 堺市の第2号:5階建てで、5階以上の部分は150平方メートルです。100平方メートルを超えるので、原則として屋内消火栓設備が必要になります
- 耐火構造で壁と天井の仕上げを難燃材料にしていれば、基準が200平方メートルになり、150平方メートルは対象外の範囲に入ります
(2) 次に掲げる部分については、内装制限の対象としないこと。
ア 押入、物入その他これらに類するもの(収納のために人が内部に出入りするような規模及び形態を有していないものに限る)
イ ユニットタイプの浴室及びそれに付随する便所
建築基準法の内装制限の感覚で腰壁を木の板にしていると、消防法令上は難燃材料の内装と認められないおそれがあります。
区画のほうは、審査基準 第2章 第1節「第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い」の7が扱っています。
(1) 1の防火対象物で100㎡以内ごとの区画と200㎡以内ごとの区画が存在しても支障がないものとする。
準用先の細部(区画の構造や開口部の扱い)はこの記事では扱わないので、区画で対象外にしたいときは、設計の段階で所轄の消防署に確かめてください。
5階の床面積が小さければ、いらないこともあるのですね。
はい、100平方メートルか200平方メートルが分かれ目です。
次は、複合用途の建物を見ましょう。
複合用途の建物は延べ面積をどう数えるのか

構造と内装の組み合わせで、延べ面積の基準は次の3段階になります。
| 建物の構造と内装 | 対象になる延べ面積 |
|---|---|
| 耐火構造で、壁と天井の仕上げが難燃材料 | 3,000平方メートル以上 |
| 耐火構造(内装は問わない)、または準耐火建築物で壁と天井の仕上げが難燃材料 | 2,000平方メートル以上 |
| それ以外 | 1,000平方メートル以上 |
国の第11条では、(16)項の建物は第9条で用途ごとに分けて判定しました。
堺市の条例は、第62条第2項で第9条を準用しつつ、読み替えで第65条第1項第1号を外しています。
なお、3,000・2,000・1,000平方メートルの並びは、国の(15)項などの1,000平方メートルに、第11条第2項の3倍・2倍の倍読み(内装と倍読みの記事)を当てはめた数字と同じです。
例として、1階が飲食店400平方メートル、2階が事務所400平方メートル、3階が共同住宅400平方メートルの、延べ1,200平方メートルの3階建てを考えます(地階と無窓階はないものとします)。
- 国の基準:飲食店の部分400平方メートルも共同住宅の部分400平方メートルも700平方メートルに届かず、事務所の部分も1,000平方メートルに届かないので、国の第11条では対象外です
- 堺市の第1号:準耐火建築物で壁と天井の仕上げを難燃材料にしていなければ「それ以外」に入り、1,200平方メートルは1,000平方メートル以上なので屋内消火栓設備が必要になります
- 耐火構造なら基準は2,000平方メートル以上になり、1,200平方メートルの建物は対象外です
(16)項の考え方は複合用途の建物の判定の記事でも解説しています。
複合ビルは、用途ごとではなく建物全体で数えるのですね。
はい、延べ面積の合計で判定します。
次は、付けるときの基準を見ましょう。
設置するときはどの基準で付けるのか

国の第11条第3項は、第1号が1号消火栓、第2号が2号消火栓(イ)と広範囲型の2号消火栓(ロ)の基準です。
イ 屋内消火栓は、防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が二十五メートル以下となるように設けること。
二 (略)
イ 次に掲げる基準
(1) 屋内消火栓は、防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。
消防法施行規則第12条第2項・第3項は、第2号イ・ロ(2号消火栓)の細目です。
したがって、工場や倉庫の部分は2号消火栓を選べず、1号消火栓の基準で付けると読めます。
これは、国の第11条第3項第1号が(12)項イと(14)項を1号消火栓に限っているのと同じ考え方です。
また、第4項の例によるので、スプリンクラー設備などを基準どおりに付けた部分は、その有効範囲内で屋内消火栓設備を省けることになります。
ここまでの流れを、番号つきでまとめます。
- 消防法第17条第1項が、国の政令の技術上の基準に従って消防用設備等を設置・維持させる
- 同条第2項が、市町村は条例で政令と異なる規定を設けることができるとする
- 堺市火災予防条例第62条が、第5章をその付加基準とし、令第8条・第9条を準用する。読み替えで第65条第1項第1号には第9条の用途ごとのみなしが働かない
- 第65条第1項が、複合用途の建物の延べ面積と、地階を除く階数5以上で設置対象を決める
- 第65条第2項が、国の第11条第3項・第4項と規則第12条の例で付けさせる(工場・倉庫の部分は2号消火栓を除く)
- 審査基準の【解説及び運用】3が、内装の判定に第2章 第1節 第10を借り、区画は同じ節の第6 7が扱う
- 第72条が、消防長又は消防署長が認めるときは条例の基準を適用しない特例を置く
工場や倉庫の部分は、2号消火栓を選べないのですね。
はい、1号消火栓の基準で付けると読めます。
最後に、大阪市と東大阪市と比べましょう。
大阪市や東大阪市の条例とは何が違うのか

大阪市は例規データベース、東大阪市は例規集で、それぞれ条文を確かめました。
どちらも、複合用途の建物の延べ面積と、地階を除く階数5以上という堺市と同じ2つの柱を持っています。
違いが出るのは、5階以上の部分の基準を200平方メートルに広げる条件です。
準不燃材料は難燃材料より燃えにくい材料なので、材料の条件は大阪市のほうが高く、そのかわり範囲は5階以上の部分に限られています。
どちらが厳しいかは建物によって変わるので、市ごとの条文で確かめるのが確実です。
東大阪市の第45条第1項第2号も、大阪市と同じく準不燃材料です。
さらに、大阪市と東大阪市には、5階建て以上の水源の量と、東大阪市には屋上の放水口の規定もあります。
5 第1項又は令第11条第1項及び第2項の規定により設ける防火対象物の屋内消火栓設備には、その屋上に1以上の放水口を設けなければならない。
大阪市の第39条第3項も、条例と国の第11条のどちらで付ける場合も、5階建て以上の建物の水源を同じ数値以上にするとしています。
確かめた範囲を表にまとめます。
| 項目 | 堺市(第65条) | 大阪市(第39条) | 東大阪市(第45条) |
|---|---|---|---|
| 複合用途の延べ面積 | 1,000・2,000・3,000平方メートル(構造と内装で区分) | 同じ区分(小規模特定用途複合防火対象物で(13)項の部分が延べ面積の10分の9以上のものを除く) | 同じ区分 |
| 5階建て以上が対象外になる基本の条件 | 5階以上の部分が100平方メートル以下か、100平方メートル以内ごとに区画 | 同じ | 同じ |
| 200平方メートルに広がる内装の条件 | 耐火構造で、壁と天井の仕上げが難燃材料 | 耐火構造で、5階以上の部分の壁と天井が準不燃材料 | 大阪市と同じ(準不燃材料) |
| 設置の技術上の基準 | 国の第11条第3項・第4項と規則第12条の例(工場・倉庫の部分は2号消火栓を除く) | 同じ | 同じ |
| 5階建て以上の水源の上乗せ | 条例と審査基準の水源の項に見当たらない | 1号消火栓5.2立方メートル以上など | 大阪市と同じ数値 |
| 屋上の放水口 | 屋内消火栓設備の条文には見当たらない | 第39条には見当たらない | 屋上に1以上 |
| 基準の特例 | 第72条(消防長又は消防署長) | 第47条(消防長) | 第52条(消防長) |
同じ大阪府内でも、市が変わると条文の細部が変わります。
大阪市の屋内消火栓設備の特例は大阪市の屋内消火栓の特例の記事で、堺市の複合用途の建物の自動火災報知設備は堺市の複合用途の自火報の記事で解説しています。
似た条文でも、内装の条件や水源で違いがあるのですね。
はい、市ごとに条文の細部が違います。
図面がまとまったら、所轄の消防署に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
5階以上の床面積と内装を図面で確かめてみます。
まずは条例の対象になるかどうかを整理します!
対象かどうかが早く分かれば、設計の手戻りを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第2章 第1節 第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い 7・第10 内装制限・防火材料 7/第5章 火災予防条例審査基準(堺市火災予防条例 第62条・第65条・第72条と各条の【解説及び運用】) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市火災予防条例 第39条・第47条(大阪市例規データベースで確認)
- 東大阪市火災予防条例 第45条・第52条(東大阪市例規集で確認)
- 消防法第17条
- 消防法施行令第8条・第9条・第11条
- 消防法施行規則第12条
- 建築基準法第2条
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。条例や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。大阪市・東大阪市との比較は、各市の条例で確かめた範囲のものです。個々の建物に屋内消火栓設備が必要かどうかは、所轄消防署にご確認ください。





