廊下が外に開いたマンションは、消防法の特例で開放型特定共同住宅等として扱われることがあります。
開放型と認められるかどうかで、置かなければならない消防用設備等が変わります。
堺市消防局の審査基準には、駐輪場・植栽・防犯格子のように、建ててから増えたり育ったりする物の扱いが書かれています。
この記事では、国の省令と告示から堺市の審査基準までのつながりを順にたどり、大阪市・東大阪市の基準とも比べます。
堺市のマンションの管理組合で理事をしています。
廊下の前に駐輪場を増やす話が出ています。
その建物が開放型特定共同住宅等として扱われているなら、注意が要ります。
廊下の開放性の判定に関わるからです。
駐輪場で消防の扱いが変わるのですか。
はい、堺市の審査基準には駐輪場や植栽の扱いが書かれています。
国の決まりから順に見ていきましょう。
- 開放型特定共同住宅等は、国の省令第2条第9号と構造類型告示第4で決まり、廊下は他の建築物等の外壁との中心線から1メートル以上離します
- 堺市の審査基準は告示に加えて、廊下の前の駐輪場や駐車場の種類ごとに離隔の扱いを示しています
- 平屋の駐輪場や青空駐車場は離隔の規定を適用せず、地上2段以上の機械式駐車装置には適用します
- 廊下から2メートル未満の植栽は、剪定で維持できなければ閉鎖部分として扱われます
- 手すりの上の防犯格子は開放率80パーセント以上なら外気に面する部分として扱えます(堺市消防局の★の指導)
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目次
堺市で開放型特定共同住宅等と認められるには何が要るのか

共同住宅などに、通常の消防用設備等に代えて別の設備を使えるようにした総務省令第40号です。
廊下と隣の建物との距離は、次のように決まっています。
開放型かどうかは、設備の省略に直結します。
たとえば同じ省令の第3条第4項は、開放型特定共同住宅等の14階以下の部分について、内装や防火戸の条件を満たせば共同住宅用スプリンクラー設備を設置しないことができるとしています。
スプリンクラー設備を省略できる条件は、特定共同住宅等のスプリンクラー設備の省略を扱った記事で詳しく解説しています。 堺市消防局の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)は、特定共同住宅等に係る審査基準の中で、この告示の扱いを書いています。
開放型の節の書き出しは、次のとおりです。
堺市の項目の末尾には印が付いていて、総則が意味を説明しています。
(2) ◆ : 指導基準のうち、消防庁の通知等を参考に定めたもの
(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
このあと見る駐輪場・植栽・防犯格子の項目は、多くが★の堺市独自の指導です。
つながりを番号順に並べると、次のとおりです。
- 国の省令第2条第9号が、開放型特定共同住宅等の構造を消防庁長官が定めるとしています。
- 消防庁長官の定めが構造類型告示の第4で、中心線から1メートル以上の離隔や廊下の開放性の数値があります。
- 堺市の審査基準は「構造類型告示第4の規定によるほか、次によること」として、駐輪場・駐車場・植栽・さくや格子の扱いを足しています。
- 足された項目の多くは★で、最終的な判断は所轄の消防署が行います。
告示が土台で、堺市はその読み方を細かく決めているのですね。
はい、建てた後の変化も書かれているのが特徴です。
次は駐輪場と駐車場を見ていきます。
廊下の前に駐輪場や駐車場があると1メートルの離隔はどうなるのか

堺市の審査基準は、廊下の前の駐輪場と駐車場について、次のように分けています。
(ア) 離隔の規定を適用しない場合
a 平屋建ての開放性のある駐輪場
b 平面(青空)駐車場
c 地下1段型機械装置
d 他の建築物(高さが廊下又は階段室の手すり等の上端より低い場合)
(イ) 離隔の規定を適用する場合
地上2段以上の機械装置
| 廊下の前にある物 | 離隔の規定 | 図から読める点 |
|---|---|---|
| 平屋建ての開放性のある駐輪場 | 適用しない | 駐輪場と廊下の間は「距離の規定なし」 |
| 平面(青空)駐車場 | 適用しない | 車と廊下の間は「距離の規定なし」 |
| 地下1段型の機械式駐車装置 | 適用しない | 地上に出るのは1台分だけ |
| 廊下の手すりより低い他の建築物 | 低い階は適用しない | 手すりの上端より低くなる階だけ距離の規定なし |
| 地上2段以上の機械式駐車装置 | 適用する | 中心線から1メートルの離隔が要る。装置の上端が手すりより低い階は規定なし |
平屋の駐輪場や青空駐車場は「開放性がある」「低い」ので、離隔の規定を適用しない扱いです。
一方、地上2段以上の機械式駐車装置は塔のように立つので、他の建築物と同じく離隔が要る扱いになります。 同じ敷地の中の物でも、相手が建物の外壁なら扱いは同じです。
次の項目は◆で、消防庁の通知を参考にした指導です。
- まず装置が地上2段以上かを見ます。平屋の駐輪場・青空駐車場・地下1段型なら離隔の規定は適用しません。
- 地上2段以上なら、廊下との間に中心線から1メートル以上の離隔が要るかを確かめます。装置の上端が手すりより低い階は規定なしです。
- 1メートル未満の部分は外気に面しない部分になり、告示の6メートル以下・幅員の4倍以下に収まるかを見ます。
- 廊下の端を含むかどうかで、さらに堺市の審査基準(2)ウの細かい扱いがあるので、図面を持って所轄の消防署に相談します。
2段の機械式駐車場を足す計画は、先に消防署へ相談したほうがよさそうですね。
はい、高さと廊下までの距離が決め手です。
平屋の駐輪場なら扱いは軽くなります。
廊下の前の植栽はどんなときに閉鎖部分として扱われるのか

堺市の審査基準は、廊下の近くの植栽について次のように定めています。
図の備考を読み取ると、次の2つです。
- 植栽が手すりより低い場合は、手すりの上の高さ(図のH)をそのまま開放部分の高さとして扱います(第4-27図)。
- 植栽が手すりより高く育った部分は、植栽の上端から上の高さ(図のH2)が1メートル以上なら開放部分、1メートル未満なら閉鎖部分として扱います(第4-28図)。
告示は、外気に面する部分の面積が見付面積の3分の1を超えることを求めています(次の見出しで条文を見ます)。
つまり、木が育って閉鎖部分が増えると、開放型の前提がくずれるおそれがあるということです。 植栽の扱いを、管理の流れで並べると次のとおりです。
- 廊下や階段室等から2メートル未満に植栽があるかを、全部の階で確かめます。
- 植栽が手すりより低ければ、手すりの上の高さで開放部分を数えます。
- 手すりより高い部分は、植栽の上から上部までの高さが1メートル以上残っているかを測ります。
- 剪定で維持できない場所は閉鎖部分として扱われるので、植え替えや剪定の計画を管理の予定に入れます。
植栽の剪定が、消防の扱いにまで関わるとは知りませんでした。
木の高さで開放部分と閉鎖部分が入れ替わるのです。
剪定の記録も残しておくと安心です。
手すりの上の防犯格子やさく・金網は外気に面する部分になるのか

まず、国の告示が廊下に求める開放性を見ておきます。
c 手すり等の上端から垂れ壁等の下端までの高さは、一メートル以上であること。
堺市の審査基準は、次のように定めています。
ウ 手すり等の上端に防犯のために設けられる格子の開放率が80%以上あれば、当該部分を外気に面する部分として取り扱うことができる。★(第4-33図、第4-34図参照)
Lは廊下の長さ、Hは手すりの上から上部までの高さです。
読み方を、番号順に並べると次のとおりです。
- 格子やさく・金網の開放率が80パーセント以上かを、製品の寸法から確かめます。
- 80パーセント以上の格子は、手すりの上の部分を外気に面する部分として扱うことができます。
- ただし面積は閉鎖されている部分を除いた有効面積で数えます(L×H×有効開口率)。
- 数え直した面積が、告示の見付面積の3分の1を超えるかを確かめます。足りなければ開放型の前提がくずれます。
格子をつける前に、製品の開放率と廊下全体の計算を消防署に見てもらうのが確実です。
防犯格子でも、80パーセント開いていれば認めてもらえるのですね。
はい、ただし面積は格子の分だけ減らして数えます。
計算書を添えて相談しましょう。
大阪市や東大阪市の基準と比べて何が同じで何が違うのか

同一の建物の外壁などを「他の建築物等の外壁」に準じる点は、堺市と同じ書き方です。
これは、堺市の「他の建築物(高さが手すり等の上端より低い場合)は離隔の規定を適用しない」と同じ考え方です。
一方、さくや金網の数え方は、書き方が違います。
大阪市は運用基準の特定共同住宅等の節、東大阪市は公開されている6つの運用基準を確かめた範囲です。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 同じ建物の外壁・駐車場の外壁・擁壁 | 他の建築物等の外壁に準じる(◆) | 同じ | 公開の運用基準に特定共同住宅等の基準なし |
| 手すりより低い他の建築物 | 離隔の規定を適用しない(★) | 1メートル未満の扱いから除く | 同上 |
| 駐輪場・駐車場の種類ごとの扱い | 平屋の駐輪場など4種は適用しない、地上2段以上の機械装置は適用(★) | 該当する記述は見当たらない | 同上 |
| 2メートル未満の植栽 | 剪定で維持できなければ閉鎖部分(★) | 該当する記述は見当たらない | 同上 |
| さく・金網 | 開放率80パーセント以上、閉鎖部分を除いた有効面積(★) | 開放された部分の下端を床面から1.1メートルとする | 同上 |
| 手すりの上の防犯格子 | 開放率80パーセント以上なら外気に面する部分(★) | 該当する記述は見当たらない | 同上 |
東大阪市は、公開されている運用基準が消火器具・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・連結送水管・非常コンセント設備の6つで、特定共同住宅等の基準は公開されていません。
東大阪市・大阪市で同じ相談をするときは、所轄の消防署に直接確かめてください。
駐輪場や植栽まで書いてあるのは、3市の中では堺市だけなのですね。
公開の基準で確かめた範囲では堺市が最も細かいです。
ほかの市でも考え方は参考になります。
よくある質問
まとめ
駐輪場の増設案と、植栽の剪定の予定を理事会に出します。
防犯格子も開放率を確かめてから決めます!
先に消防署と話しておけば、工事のやり直しを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則(2 運用上の留意事項・4 凡例)、第3章 第2節 第1 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅳ 構造類型告示 2 開放型特定共同住宅等((2)ア・イ・エ、(5)ア・イ・ウ、(6)ア、第4-19図〜第4-28図・第4-33図) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第7節 特定共同住宅等 第4 構造類型告示 2(1)・(4) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 特定共同住宅等の構造類型を定める件(平成17年消防庁告示第3号)第四 https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/post39/
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条第9号・第3条第4項第1号
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物が開放型特定共同住宅等に当たるかの判断は、所轄の消防署にご確認ください。





