ビルや工場の灯油ボイラーや電気炉は、火災予防条例で点検と整備を求められています。
四日市市の条例は、その点検整備を消防長が指定する者に行わせるよう定めています。
指定の中身は消防本部の告示にあり、石油機器技術管理士や電気工事士などの資格が名指しされています。
四日市市の告示を設備ごとに読み、堺市と埼玉県央広域消防本部(鴻巣市など)の指定と比べます。
四日市市の工場で、灯油のボイラーと電気炉を使っています。
点検を頼む業者は、どこでも同じだと思っていました。
四日市市では、点検整備を任せる相手を消防長が資格で指定しています。
業者を選ぶ前に、その資格を確かめておくと安心です。
資格まで決まっているとは知りませんでした。
設備の種類ごとに、指定された資格が違います。
ほかの市の指定とも並べて、順に見ていきましょう。
- 施行令第5条は対象火気設備等の点検及び整備を求めるが、誰に行わせるかは書いておらず、それを定めているのは市の火災予防条例と告示
- 四日市市の告示は、液体燃料の設備に石油機器技術管理士とボイラー技士、電気の設備に電気主任技術者と電気工事士を指定している
- 変電設備などには電気主任技術者と電気工事士に加え、発電設備・蓄電池設備・ネオン管灯設備に限って専門の資格者が加わる
- 四日市市は液体燃料の設備と器具で資格者に任せる点検整備の範囲を告示の表で決めており、送風機・バーナー・安全装置・燃料配管などが並ぶ
- 堺市と埼玉県央広域も同じ資格を指定しているが、ボイラー技士が使える設備の範囲と点検範囲の表の置き方が違う
▼

目次
灯油ボイラーや電気炉の点検整備はなぜ資格者に任せるのか

国が決めているのは「点検と整備を行うこと」までで、その先は市の条例です。
かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理(略)その他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
消防法施行令 第5条第1項第11号
対象火気設備等については、必要な点検及び整備を行い、その周囲の整理及び清掃に努める等適切な管理を行うこと。
(2)炉及びその附属設備は、必要な点検及び整備を行い、火災予防上有効に保持すること。
(3)液体燃料を使用する炉及び電気を熱源とする炉にあっては、前号の点検及び整備を必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに行わせること。
消防法第9条は、火を使う設備の管理を市町村条例で定めるとし、施行令第5条第1項第11号は「必要な点検及び整備を行い」と書くだけです。
総務省令(平成14年総務省令第24号)にも、点検整備を行う人の資格を定めた条文は見当たりません。
各市の条例は、炉の管理の基準に「液体燃料を使用する炉及び電気を熱源とする炉」の点検整備を消防長が指定する者に行わせる号を置いています。
四日市市の告示は、その根拠を四日市市火災予防条例の第3条第2項第3号・第13条第1項第9号・第20条第1項第13号と書いています。
灯油や重油を燃やす設備と電気で熱をつくる設備があるなら、まず点検を頼んでいる業者の資格を確かめます。
社内の設備担当が点検するだけでは足りないのですか。
条例は指定された者に行わせると書いています。
次は四日市市が誰を指定しているかを見ます。
四日市市の消防長はどの資格を指定しているのか

平成10年4月1日消防本部告示第1号で、平成23年2月7日に改正されています。
1 条例第3条第2項第3号(略)に規定する必要な知識及び技能を有する者は、次に掲げる者又は当該設備の点検及び整備に関しこれらと同等以上の知識及び技能を有する者とする。
(1)液体燃料を使用する設備にあっては、次に掲げる者
ア 財団法人日本石油燃焼機器保守協会が行う石油機器技術管理士試験に合格した者(石油機器技術管理士)
イ ボイラー及び圧力容器安全規則(略)に基づく特級ボイラー技士免許、1級ボイラー技士免許、2級ボイラー技士免許又はボイラー整備士免許を有する者(条例第4条第2項、第9条及び第10条において条例第3条第2項第3号を準用する場合に限る。)
(2)電気を熱源とする設備にあっては、次に掲げる者
ア 電気事業法(略)に基づく電気主任技術者の資格を有する者
イ 電気工事士法(略)に基づく電気工事士の資格を有する者
灯油や重油を使う設備は石油機器技術管理士、電気を熱源とする設備は電気主任技術者か電気工事士です。
ボイラー技士とボイラー整備士の免許は、条例第4条第2項(ボイラー)と第9条・第10条で炉の基準を準用する設備に限って使えます。
告示の1は、条例第3条の2から第10条の2までのいくつもの条で第3条第2項第3号を準用する場合も含むと書いています。
どの資格にも「同等以上の知識及び技能を有する者」という受け皿が付いていますが、告示に具体例はありません。
名指しの資格を持たない業者に頼むときは、同等以上と扱えるかを事前に消防本部へ相談します。
ボイラー技士の免許は、どの設備にも使えるわけではないのですね。
はい、使える設備が条番号で絞られています。
灯油の暖房機なら石油機器技術管理士を探すのが近道です。
発電機や蓄電池やネオンには誰が加わるのか

3は、液体燃料を使用する器具の号(条例第20条第1項第13号)の指定です。
2 条例第13条第1項第9号(略)に規定する必要な知識及び技能を有する者は、次に掲げる者又は当該設備の点検及び整備に関しこれらと同等以上の知識及び技能を有する者とする。
(1)電気事業法に基づく電気主任技術者の資格を有する者
(2)電気工事士法に基づく電気工事士の資格を有する者
(3)(略)自家用発電設備専門技術者(条例第14条第2項及び第3項において条例第13条第1項第9号を準用する場合に限る。)
(4)(略)蓄電池設備整備資格者(条例第15条第2項及び第4項において(略)準用する場合に限る。)
(5)(略)ネオン工事技術者(条例第16条第2項において(略)準用する場合に限る。)
3 条例第20条第1項第13号に規定する必要な知識及び技能を有する者は、(略)石油機器技術管理士(略)とする。
変電設備とそれを準用する設備は、電気主任技術者と電気工事士が共通の指定です。
そのうえで、発電設備には自家用発電設備専門技術者、蓄電池設備には蓄電池設備整備資格者、ネオン管灯設備にはネオン工事技術者が、それぞれの準用の場合に限って加わります。
告示の4が「液体燃料を使用する設備及び器具」と書くとおり、3は液体燃料を使う器具の指定で、石油機器技術管理士だけが名指しされています。
公開されている告示の文面では、試験や講習を行う団体名が「財団法人」「社団法人」のままです。
非常用発電機や蓄電池の点検を頼むときは、業者の資格証にどの資格が書かれているかを見ます。
| 設備 | 四日市市の告示が指定する資格 |
|---|---|
| 液体燃料を使う炉など | 石油機器技術管理士/ボイラー技士・ボイラー整備士(条例第4条第2項・第9条・第10条の準用に限る) |
| 電気を熱源とする炉など | 電気主任技術者・電気工事士 |
| 変電設備など | 電気主任技術者・電気工事士 |
| 発電設備(条例第14条の準用) | 電気主任技術者・電気工事士・自家用発電設備専門技術者 |
| 蓄電池設備(条例第15条の準用) | 電気主任技術者・電気工事士・蓄電池設備整備資格者 |
| ネオン管灯設備(条例第16条の準用) | 電気主任技術者・電気工事士・ネオン工事技術者 |
| 液体燃料を使う器具(条例第20条第1項第13号) | 石油機器技術管理士 |
つまり電気の設備は、電気工事士がいれば足りるのですね。
基本はそうですが、発電機や蓄電池には専門の資格者も認められています。
点検票に資格名を書いてもらうと確かめやすいです。
資格者に任せる点検整備はどの部分なのか

液体燃料を使う設備と器具について、資格者が行う点検整備の範囲を表で決めています。
4 前1及び3の必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものが行うべき液体燃料を使用する設備及び器具の点検及び整備の範囲は、下表に掲げる部分の点検及び整備とする。
| 大分類 | 小分類(告示の表のとおり) |
|---|---|
| 送風関係 | 燃焼用送風機(フィルターを除く。)・温風用送風機(ガードを除く。) |
| 点火・燃焼関係 | 油量調節器・油ポンプ・ノズル・バーナー(芯式を除く。)・点火変圧器・点火電極・点火ヒーター(乾電池を熱源とするものを除く。)・熱交換器 |
| 安全装置関係 | 炎監視装置・制御機構・温度調節器・加熱防止装置・空たき防止装置・停電時安全装置・耐震自動消火装置 |
| 油タンク・燃料配管関係 | 油タンク(芯式及びカートリッジ式を除く。)・電磁弁・燃料配管・燃料バルブ |
| 電装品類 | スイッチ類・ランプ類・タイマー類・ヒューズ類 |
| その他 | 消音器 |
表は6つの大分類に、小分類が送風2・点火と燃焼8・安全装置7・油タンクと燃料配管4・電装品4・その他1の計26項目並んでいます。
フィルターの掃除や乾電池式の点火ヒーター、芯式のバーナーと油タンクは、表のかっこ書きで外されています。
堺市の解説は、同じ範囲を「使用者が日常行う清掃、手入れ等の簡易な点検、整備をいうものではない」と説明しています。
表の「加熱防止装置」「耐震自動消火装置」は告示の表記のままで、堺市の表では「過熱防止装置」「対震自動消火装置」と書かれています。
日々のフィルター清掃は自社で続け、バーナーや安全装置の点検整備は資格者に任せると分けて考えます。
フィルターの掃除まで業者に頼む必要はないのですね。
表で外されている部分は、日常の手入れとして自社で続けられます。
燃焼まわりと安全装置は資格者の担当です。
堺市や埼玉県央広域の指定とはどこが違うのか

名指しの資格はほぼ同じですが、条文の範囲と点検範囲の表の扱いが違います。
液体燃料を使用する炉及び電気を熱源とする炉又はかまどにあっては、前号の点検及び整備を必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに行わせること。
| 項目 | 四日市市 | 堺市 | 埼玉県央広域(鴻巣市など) |
|---|---|---|---|
| 指定の形 | 消防本部告示第1号(平成10年・平成23年改正) | 消防局告示第1号(平成20年) | 火災予防規程 第7条(平成20年消防本部告示第1号) |
| 炉の管理の号 | 条例第3条第2項第3号 | 条例第2条第2項第3号(液体燃料の炉・電気の炉) | 条例第3条第2項第3号(電気の炉又はかまど) |
| ボイラー技士が使える設備 | 条例第4条第2項(ボイラー)・第9条・第10条の準用 | 条例第6条(ボイラー)・第12条(給湯湯沸設備)の準用 | 条例第4条第2項(ボイラー)・第8条(簡易湯沸設備)・第8条の2(給湯湯沸設備)の準用 |
| 点検整備の範囲の表 | 告示の4で「とする」 | 条例の解説の第2-2-9表で「考えられる」 | 規程に表なし |
| 表の安全装置 | 7項目 | 9項目(点火安全装置・プレパージ・ポストパージを含む) | - |
三つとも、液体燃料は石油機器技術管理士、電気は電気主任技術者と電気工事士、発電・蓄電池・ネオンに専門の資格者という並びは同じです。
埼玉県央広域の条例は、電気を熱源とする「炉又はかまど」と書き、かまどまで対象に含めています。
ボイラー技士は、堺市では簡易湯沸設備が外れ、埼玉県央広域では簡易湯沸設備も含むなど、使える設備が市ごとに違います。
点検範囲の表は、四日市市は告示そのものに置き、堺市は条例の解説に置き、埼玉県央広域の規程には表がありません。
鈴鹿市・津市・行田市・羽生市の指定は今回確かめられていないので、建物のある市の告示か規程で確認します。
同じ資格でも、使える設備は市で違うことがあるのですね。
はい、ボイラー技士の扱いが一番ずれやすいところです。
建物のある市の告示を一度読んでおきましょう。
よくある質問
まとめ
点検業者の資格証を見せてもらって、告示と照らし合わせます!
設備ごとに資格をそろえて、点検の記録も残しておきましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第9条、消防法施行令第5条第1項第11号(e-Gov法令検索)
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市火災予防条例に基づく炉等の点検及び整備を行わせるために必要な知識及び技能を有する者の指定について」(平成10年4月1日消防本部告示第1号・改正 平成23年2月7日) 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 四日市市火災予防条例の一部を改正する条例(令和5年9月22日条例第23号・令和8年3月24日条例第21号)四日市市
- 堺市消防局 審査基準(堺市火災予防条例 第2条【解説及び運用】40、必要な知識及び技能を有する者の指定について(平成20年10月1日消防局告示第1号)) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 埼玉県央広域事務組合火災予防条例 第3条・第4条・第8条・第8条の2、埼玉県央広域消防本部火災予防規程 第7条(平成20年3月31日消防本部告示第1号) 埼玉県央広域事務組合例規集
※本記事は公表されている法令および各消防本部の告示・規程・審査基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部でご確認ください。個々の業者が同等以上の知識及び技能を有する者に当たるかは、所轄の消防署にご確認ください。





