ホテルや旅館の収容人員は、洋室ならベッドの数、和室なら床面積で数えるのが国の規則です。
ところが、ダブルベッドを1台と数えるのか2人と数えるのか、ソファーベッドを入れるのかまでは規則に書かれていません。
宿泊客しか使わない宴会場やレストランを足すかどうかも、防火管理者の判定と設備の判定で扱いが分かれます。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、ダブルベッドサイズ以上を2人、ソファーベッドをベッドとして数え、宿泊者だけが使う宴会場は防火管理者の判定で数えないと定めています。
鈴鹿市でビジネスホテルを開業する準備をしていて、収容人員の計算を任されました。
ダブルの部屋やソファーベッドのある部屋をどう数えればよいか迷っています。
鈴鹿市なら、消防本部の審査基準に答えが書いてあります。
ベッドの種類ごとに何人と数えるかが決まっています。
最上階の宴会場は宿泊客しか使わない予定ですが、それも数えるんですか。
防火管理者と避難器具では扱いが違います。
埼玉県央広域・堺市・四日市市・津市とも比べながら見ていきましょう。
- 消防法施行規則第1条の3は、ホテルの宿泊室を洋式ならベッドの数、和式なら床面積6㎡(団体客向けなどは3㎡)ごとに1人と数えると定めている
- 鈴鹿市はダブルベッドサイズ以上を2人、二段ベッドを2台、ソファーベッドをベッドとして数える
- 和室の前室の畳部分は宿泊室に含め、和洋が併存する部屋は合算するが、同時に使わないスイートルームは合算しない
- 宿泊者だけが使う宴会場などは、防火管理者の判定(法第8条)では階収容人員を算定しない
- セミダブルは四日市市が2人、堺市が1人と分かれ、補助ベッドを足す市もある
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目次
国の規則はホテルの収容人員をどう数えるのか

ホテルや旅館は消防法施行令別表第一の(5)項イに当たります。
令別表第一(五)項に掲げる防火対象物 イに掲げるもの 次に掲げる数を合算して算定する。
一 従業者の数
二 宿泊室ごとに次のイ及びロによつて算定した数の合計数
イ 洋式の宿泊室については、当該宿泊室にあるベッドの数に対応する数
ロ 和式の宿泊室については、当該宿泊室の床面積を六平方メートル(簡易宿所及び主として団体客を宿泊させるものにあつては、三平方メートル)で除して得た数
三 集会、飲食又は休憩の用に供する部分について次のイ及びロによつて算定した数の合計数(略)
洋室はベッドの数、和室は床面積で数え、宴会場やレストランはいす席の数か床面積3㎡ごとに1人で数えます。
ただ、規則にはダブルベッドやソファーベッドが何人分かは書かれていません。
施行令第1条の2第3項では、(5)項イは収容人員30人以上で防火管理者が必要になります。
境目に近いホテルほど、ベッド1台の数え方で結論が変わるので、消防本部の審査基準を見ておく必要があります。
国の規則は「ベッドの数」とだけ書いているのですね。
そうです、そこを鈴鹿市の審査基準が細かく決めています。
次はベッドの種類ごとの数え方を見ます。
鈴鹿市ではダブルベッドやソファーベッドを何人と数えるのか

「3 政令別表第1の各項ごとの取扱い」の⑷が(5)項イのホテルや旅館の扱いです。
ア 「ベッドの数」は、ダブルベッドサイズ以上のベッドは2人と算定し、二段ベッドはベッドが2つあるものとして扱う。ソファーベッドは、ベッドとして算定する。
イ 和式の宿泊室を単位面積当たりで、除した際に生じる1未満のはしたの数は切り上げる。
クイーンやキングのようにダブルベッドサイズ以上なら2人、二段ベッドは上下で2台と数えます。
ソファーベッドは、ふだんソファーとして置いていても、ベッドとして1台に数えます。
基準の第2-6図のホテルの例は、1階の飲食部分と従業者で86人、2階は20人、3階から7階は各21人とし、棟の収容人員を211人としています。
この⑷のアからケには、行政指導を示す▲も、法令と指導を示す●も付いていません。
客室ごとにベッドの種類と台数を一覧にし、ソファーベッドの部屋も漏らさず書き出しておきます。
ソファーベッドも、ベッドとして1台に数えるのですね。
そうです、ダブル以上の2人と合わせて数え直してください。
次は和室とスイートルームを見ます。
和室の前室やスイートルームはどう数えるのか

鈴鹿市の基準は、同じ⑷のウからカで和室の扱いを決めています。
ウ 和式の宿泊室の前室部分(畳の部分に限る。カにおいて同じ。)は、宿泊室の一部として取り扱う。ただし、押入れ、床の間、浴室及び便所は、含まない。
エ 和式の宿泊室の収容人員の算定は、通常宿泊者1人当たりの床面積がおおむね3㎡程度となるような使用実態にある場合には、「主として団体客を宿泊させるもの」に該当するものとして取り扱う。
オ 一の宿泊室に洋式の部分と和式の部分(前室部分を含む。)が併存する場合、それぞれの部分について算定した収容人員を合算し算定する。ただし、スイートルームなどこれらの部分が同時に宿泊利用されないことが明らかなものは、この限りでない。
押入れ・床の間・浴室・便所は除き、前室の畳の部分は宿泊室の面積に足して6㎡で割ります。
1人当たりおおむね3㎡で泊めている実態があれば、団体客向けとして3㎡で割る扱いになります。
和室と洋室がつながった部屋は両方を足しますが、同時に泊まらないスイートルームは足さなくてよいとしています。
端数が出たときは、和室だけは1未満を切り上げます。
和室の平面図に前室・押入れ・床の間の範囲を書き込み、畳の面積を出しておくと審査がすみやかです。
スイートルームは、和洋を足さなくてよい場合があるのですね。
はい、同時に使わないことが明らかな場合に限られます。
次は宿泊者だけの宴会場を見ます。
宿泊者だけが使う宴会場やレストランは数えるのか

そのうえで、宿泊者だけが使う場合の扱いを⑷のクに書いています。
3 ⑷ キ 「集会、飲食又は休憩の用に供する部分」とは、宿泊者以外の者も利用する次の部分をいう。(ア)宴会場等の部分(イ)レストラン、スナック等の飲食を提供する部分(ウ)いす席を設けたロビー等の部分(通路の用に供する部分を除く。)(略)
ク 「集会、飲食又は休憩の用に供する部分」で、利用者が宿泊者のみに限られる場合は、法第8条の規定の適用については、当該部分の階収容人員は算定しない。
鈴鹿市の基準は総則で、法第8条は棟の収容人員、施行令第24条は棟(地階・無窓階は階)、施行令第25条は階の収容人員で判断するとしています。
第2-7図は、1階から3階が宿泊室各50人、4階が宿泊者と従業者だけの宴会場という例です。
この例では、防火管理者の判定は150人、非常警報設備(施行令第24条)は宴会場の数に150人を足した数、避難器具(施行令第25条)は宴会場で数えた数で判断します。
数えないのは法第8条だけで、設備の判定では宴会場の人数がそのまま効きます。
宴会場やレストランを外部の客にも開くかどうかを、計画の段階で決めておきます。
宿泊客だけの宴会場でも、避難器具の判定では数えるのですね。
そうです、外さないのは設備の判定のほうです。
最後に他の消防本部と比べます。
埼玉県央広域・堺市・四日市市・津市とはどこが違うのか

まずベッドの数え方を並べます。
イ 「ベッドの数」は、ダブルベッド及び二段ベッドについては、2人とすること。
ケ 「集会、飲食又は休憩の用に供する部分」で、利用者が宿泊者のみに限られる場合は、法第8条の規定の適用については、当該部分の階収容人員は算定しないことができる。(昭和48年10月23日消防予第140号消防安第42号)
ただし、政令第24条(地階・無窓階に限る。)及び政令第25条の規定の適用にあたっては、当該部分の階収容人員を算定するものとすること。
| 項目 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 堺市 | 四日市市 | 津市 |
|---|---|---|---|---|---|
| ダブルベッド | ダブルサイズ以上は2人 | 2人 | 2人 | 2人 | 2台として数える |
| セミダブル | 記載なし | 記載なし | 1人 | 2人 | 記載なし |
| 二段ベッド | ベッド2つ | 2人 | 記載なし | 記載なし | 2台として数える |
| ソファーベッド・補助ベッド | ソファーベッドはベッド | 記載なし | 補助ベッドを加算 | 補助ベッドを加算 | 記載なし |
| 項目 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 堺市 | 四日市市 | 津市 |
|---|---|---|---|---|---|
| 和室の前室 | 畳の部分を含める | 畳の部分を含める | 含める | 畳の部分に限る(前室の記載なし) | 畳の部分に限る(前室の記載なし) |
| 団体客の目安 | 1人おおむね3㎡ | 1人おおむね3㎡ | 1人おおむね3㎡ | 構造と利用実態で判断 | 過半が団体客又は1人おおむね3㎡ |
| 和洋併存の部屋 | 合算・スイートは例外 | 合算・スイートは例外 | 合算・スイートは例外 | 洋室を除いた部分を和室の面積とする | 合算・スイートは例外 |
| 宿泊者だけの宴会場等 | 法第8条では算定しない | 法第8条では算定しないことができる | 含まないが他の階の者が使えば階に算入 | 記載なし | 記載なし |
四日市市はセミダブルもダブルも2人とし、堺市はシングルとセミダブルを1人、ダブルを2人としています。
宿泊者だけの宴会場は、埼玉県央広域が「できる」と書き、施行令第24条は地階・無窓階に限って階に数えると明記しています。
堺市は、宿泊者だけの部分でも他の階の者が使うなら、その階の収容人員に入れるとしています。
四日市市と津市は和室を畳の部分に限ると書くだけで、宿泊者だけの宴会場の扱いは確認した基準にありませんでした。
ホテルの所在地の基準で、ベッドの種類と宴会場の利用者を前提に数え直してから届出の準備をします。
セミダブルを何人と数えるかが、市によって違うのですね。
はい、同じ客室でも人数が変わることがあります。
建物のある市の基準で数え直しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは客室ごとにベッドの種類を一覧にしてみます!
宴会場を誰が使うかも計画書に書いておきましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法 第8条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行令 第1条の2・第24条・第25条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第1条の3(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第2章 第2 収容人員の算定(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第2章 第2 収容人員の算定(埼玉県央広域消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第7 収容人員の算定(堺市消防局)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第1章 第2 用途の判定及び収容人員の算定(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 1-2 収容人員の算定(津市消防本部)
※本記事は公表されている法令および各消防本部の審査基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部でご確認ください。個別の判断は管轄の消防署にご相談ください。





