地下の駐車場は、建物の中でも火が出ると煙と熱がこもりやすい場所です。
国の基準では、防火区画の面積は1,500平方メートルごとが基本で、泡消火設備などの自動式の消火設備を付けた部分は、床面積の2分の1を除いて数えられます。
ところが堺市の「消防同意・消防用設備等審査基準」は、地階の駐車場について、泡消火設備があっても概ね1,500平方メートル程度以下ごとに区画するよう求めています。
この記事では、国の基準と堺市の指導基準を分けて読み、区画・避難経路・前室・防火戸の感知器まで順にたどって、大阪市・東大阪市の公開資料と比べます。
堺市で、地下1階をまるごと駐車場にするビルを計画しています。
泡消火設備を付けるので、防火区画は大きく取れますか?
国の基準だけなら、泡消火設備を付けた部分は床面積の2分の1を除いて数えられます。
ただし堺市は、地階の駐車場は泡消火設備があっても概ね1,500平方メートル程度以下ごとに区画するよう指導しています。
国の基準と堺市の指導で、区画の大きさが変わるのですね。
はい、国の基準と堺市の★印の指導基準を分けて読むと整理できます。
順にたどっていきましょう。
- 地階で駐車場の床面積が200平方メートル以上なら、消防法施行令第13条で泡消火設備などの設置が求められます
- 建築基準法施行令第112条第1項は1,500平方メートルごとの区画が基本で、自動式の泡消火設備などを付けた部分は床面積の2分の1を除いて数えます
- 堺市の審査基準は、地階の駐車場に泡消火設備があっても概ね1,500平方メートル程度以下ごとに区画し、区画ごとに2以上の避難経路を確保するよう求めています
- 避難階段などが地階の駐車場に直接面する場合は、防火区画された前室を設けるのが堺市の指導です
- これらは★印の堺市独自の指導基準で、大阪市・東大阪市の公開されている運用基準には同じ記載が見当たりません
▼

目次
国の基準で地下駐車場の防火区画は何平方メートルごとか

消防法施行令第13条は、駐車の用に供する部分の床面積に応じて、泡消火設備などの設置を求めています。
一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの
水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備
- 消防法施行令第13条で、地階の駐車場の床面積が200平方メートル以上なら、泡消火設備などが必要になると確かめる
- 建築基準法施行令第112条第1項で、防火区画は床面積の合計1,500平方メートル以内ごとが基本だと読む
- 同じ項のかっこ書きで、スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備などの自動式のものを付けた部分は、床面積の2分の1を除いて数えると読む
- その結果、自動式の泡消火設備が全体にある区画は、実際の床面積で3,000平方メートルまでが1つの区画に収まる計算になる
区画の構造やスプリンクラー緩和の全体像は、防火区画1,500平方メートルの記事で詳しく解説しています。
泡消火設備を付けると、区画が2倍の広さまで取れる計算なのですね。
国の条文の上ではそうです。
ただし自動式のものに限られるので、移動式の泡消火設備では床面積を除けません。
堺市の審査基準は地階の駐車場の防火区画をどう指導しているのか

なお、この場合、当該防火区画ごとに2以上の避難経路を確保すること。
- 国の基準(建築基準法施行令第112条第1項)では、自動式の泡消火設備を付けた部分は床面積の2分の1を除いて数えられる
- 堺市の審査基準 第9 1(3)は、地階の駐車場について、泡消火設備等の自動消火設備があってもと、その緩和を前提にしない書き方をしている
- そのうえで、概ね床面積1,500平方メートル程度以下ごとに防火区画を設けるよう求めている
- なお書きで、区画ごとに2以上の避難経路を確保するよう求めている
- 凡例で、文末の★は堺市消防局が防火安全性の向上のために定めた指導基準だと確かめる
堺市の指導基準に沿うなら、概ね1,500平方メートル程度以下ごとに2つ以上の区画に分ける計画になります。 同じ第9は、建築基準法施行令第112条第1項でスプリンクラー設備等の消防用設備等を設ける場合の扱いも★で書いています。
※ 設置に係るスプリンクラーヘッドの個数は、省令第13条の6第1項第1号表中「その他のもの」とする。
| 防火対象物の区分(消防法施行規則 第13条の6第1項第1号の表) | 標準型ヘッドの個数 |
|---|---|
| その他のもの(地階を除く階数が10以下) | 10(高感度型ヘッドで有効散水半径2.6のものは8、2.8のものは7) |
| その他のもの(地階を除く階数が11以上) | 15(高感度型ヘッドで有効散水半径2.6のものは12、2.8のものは11) |
国の基準で区画が広げられても、堺市では地下の駐車場は1,500平方メートルが目安なのですね。
はい、★印は堺市独自の指導基準です。
設計の早い段階で所轄の消防署に相談しておきましょう。
堺市で区画ごとの避難経路と避難階段の前室はどう考えるのか

一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
- 建築基準法施行令第122条第1項で、地下2階以下の階に通じる直通階段は、避難階段か特別避難階段にすると読む(同項かっこ書き・ただし書の例外あり)
- 同じ項で、地下3階以下の階に通じる直通階段は、特別避難階段にすると読む
- 第123条第3項第1号で、特別避難階段は屋内と階段室をバルコニーか付室を通じて連絡する構造だと確かめる
- 堺市の審査基準 第9 1(4)★は、地階の駐車場に避難階段等が直接面する場合に、その避難階段等に防火区画された前室を設けるよう求めている
- あわせて1(3)のなお書きで、区画ごとに2以上の避難経路を確保する
どの階段が「避難階段等」に当たるか、前室の広さや扉の仕様をどうするかは審査基準に書かれていないので、所轄の消防署で確かめてください。
駐車場から階段室にいきなり入る間取りは、堺市では見直しが必要になりそうですね。
はい、前室をはさむと、駐車場の煙が階段に入りにくくなります。
区画を分けたら、区画ごとに逃げ道が2つあるかも確かめましょう。
堺市で地下駐車場の防火戸や防火シャッターの感知器はどう選ぶのか

オ 排気ガスが多量に滞留する場所
なお、アからキまでの場所に煙感知器を設置する場合は次のいずれかによること。★
(ア) 煙感知器を蓄積型とする。★
(イ) 非蓄積型の煙感知器を設ける場合は、二の感知器の作動の組合せにより連動させる。★
- (8)の柱書で、煙で自動的に閉まる防火設備から10メートル以内に、煙感知器の設置に不適当な場所があるかを確かめる
- アからキの場所の一つに、オ 排気ガスが多量に滞留する場所が挙がっている(審査基準は昭和48年建設省告示第2563号を出典として示している)
- 車の排気ガスがたまりやすい地下駐車場の車路まわりがオに当たるかどうかを、計画の段階で所轄と確かめる
- そこに煙感知器を設けるなら、なお書き★で、蓄積型の煙感知器にするか、非蓄積型を2つの感知器の作動の組合せで連動させる
- 監視する防火設備が多くなるときは、(9)★で防災センター等で閉鎖や作動の状態も監視できる集中制御方式にする
駐車場の防火シャッターは、感知器の種類まで気を付けるのですね。
はい、蓄積型にするか2つの感知器の組合せにするのが堺市の指導です。
設備業者と設計者で、早めにすり合わせておきましょう。
大阪市と東大阪市では地下駐車場の防火区画はどう扱われているのか

堺市の審査基準は、建築確認の消防同意で見る建物の構造や防火区画まで含んでいます。一方、大阪市の「消防用設備等の設置に係る運用基準」と、東大阪市が公開している6つの運用基準(消火器具・避難器具・自動火災報知設備・誘導灯等・連結送水管・非常コンセント設備)は、消防用設備等の設置の取扱いが中心です。 大阪市の運用基準には、加圧防排煙設備の節に、建築基準法の面積区画にふれた次の例があります。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 地階の駐車場の泡消火設備など | 消防法施行令第13条(国の基準) | 同じ | 同じ |
| 面積区画1,500平方メートルと2分の1の緩和 | 建築基準法施行令第112条第1項(国の基準) | 同じ | 同じ |
| 地階の駐車場を泡消火設備があっても概ね1,500平方メートル程度以下ごとに区画 | 審査基準 第9 1(3)★ | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている6つの運用基準に記載は見当たらない |
| 区画ごとに2以上の避難経路 | 同 1(3)なお書き | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている6つの運用基準に記載は見当たらない |
| 地階の駐車場に面する避難階段等の前室 | 同 1(4)★ | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている6つの運用基準に記載は見当たらない |
| 防火設備の連動用の煙感知器(蓄積型か2つの組合せ) | 同 4(8)★ | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている6つの運用基準に記載は見当たらない |
建築確認の消防同意や事前相談で求められることもあるので、地下駐車場の計画は、各市の所轄の消防署で早めに確かめてください。
堺市は、消防同意で見る建物の区画まで審査基準に書いているのですね。
はい、3市の中で地階の駐車場の区画を明文で書いているのは堺市です。
ほかの市でも、計画の段階で確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
地下駐車場は概ね1,500平方メートルごとに区画して、階段との間に前室をはさむ計画にします。
感知器の種類も設計の段階で確かめます!
堺市では、泡消火設備があっても区画の目安は変わらないのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 総論 第1 審査上の留意事項 1(7)・(12)、第9 防火区画 1 面積区画 (3)・(4)、4 防火戸 (8)・(9)・(11)、8 その他 (6) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/setubikijun.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第6節 加圧防排煙設備 第3 2 (4) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(消火器具・避難器具・自動火災報知設備・誘導灯及び誘導標識・連結送水管・非常コンセント設備) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第13条、消防法施行規則 第13条の6、建築基準法施行令 第112条・第122条・第123条
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の防火区画は、所轄の消防署と建築確認の窓口にご確認ください。





