階段やエレベーター、吹き抜けのように上下の階をつなぐ部分は、火災のときに煙の通り道になります。
そのため建築基準法施行令は、こうした部分のまわりを区画する「竪穴区画」を求めています。
一方で、建物全体の避難の安全を計算で確かめる「全館避難安全検証法」を使うと、竪穴区画の規定が適用されなくなります。
では堺市で建てるときも、検証法を使えば竪穴区画をなくしてよいのでしょうか。
この記事では、国の条文と堺市消防局の審査基準を分けて読み、エスカレーターや吹き抜けの扱いまで順にたどります。
堺市で商業ビルを計画しています。
全館避難安全検証法で吹き抜けの区画を減らせると聞きました。
国の条文ではそのとおりです。
ただ堺市の審査基準は、検証法を使っても竪穴区画を設けることとしています。
国の緩和と市の基準で、扱いが違うのですね。
はい、堺市独自の指導基準(★印)です。
国の条文から順に確かめましょう。
- 国の建築基準法施行令第112条第11項は、階段・昇降機の昇降路・吹き抜けなどの竪穴部分を、ほかの部分と区画するよう求めています
- 同施行令第129条の2第1項は、全館避難安全検証法で確かめた建物について、第112条第11項から第13項までの規定を適用しないとしています
- 堺市の審査基準は、検証法で竪穴区画の適用除外が認められた階段や吹き抜けでも、竪穴区画を設置することとしています(★印)
- エスカレーターは昇降路に当たるとして水平引きシャッターでなく竪穴区画とし、側面は可能な限り耐火構造の壁、まわりには避難用の扉を設けます
- 感知器と連動する防火設備は、階段は作動した階だけ、吹き抜けは全階閉鎖します。大阪市・東大阪市の公開の運用基準には竪穴区画の取扱いは見当たりません
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目次
国の基準では竪穴区画はどこに必要で検証法を使うと何が外れるのか

この竪穴区画の規定は、建物全体の避難の安全を確かめた場合に外れます。それを決めているのが第129条の2第1項です。
つまり国の条文では、検証法で確かめた建物は第112条第11項の竪穴区画を設けなくても法令違反にはなりません。検証法の計算の中身は全館避難安全検証法を解説した記事で読めます。
国の条文では、検証法を使えば竪穴区画は外れるのですね。
はい、第112条第11項から第13項までが適用されません。
次の見出しで堺市の扱いを読みます。
堺市で全館避難安全検証法を使っても竪穴区画を求めるのはなぜか

- 建築基準法施行令第112条第11項が、階段や吹き抜けなどの竪穴部分の区画を求める
- 同施行令第129条の2第1項が、全館避難安全検証法で確かめた建物には第11項から第13項までを適用しないとする
- 堺市の審査基準 第9 2(8)が、適用除外が認められた階段・吹き抜けでも竪穴区画を設置することとする(★)
- ★は堺市消防局独自の指導基準で、審査要領 第1 1(7)により主旨を説明し理解を得て指導する扱いになる
検証法を前提に吹き抜けや階段を開放する計画なら、設計の早い段階で堺市消防局に事前相談しておくと手戻りを防げます。
法令の義務ではないけれど、消防同意の場で指導されるのですね。
はい、★印は堺市消防局の指導基準です。
検証法を使う計画は早めに相談しましょう。
堺市でエスカレーターのまわりはどう区画するのか

(5) エスカレーター部分は建基政令第112 条第9 項の昇降路に該当するので、区画は水平引きシャッターとせず竪穴区画とすること。
(6) エスカレーターは法令上避難経路として扱えないが、火災の際に区画内に人が残ることが考えられるため(昭和44 年11 月7 日建設省全建行連発第7 号)エスカレーター周囲を区画する場合、避難用の扉を設けること。
(5)の※には、エスカレーターの乗り口の床下に防火上弱い部分があることが理由として書かれています。床の開口を水平のシャッターでふさぐのではなく、まわりを縦に囲みます。エスカレーターのまわりを囲むときの手順は、次のとおりです。
- エスカレーター部分を昇降路=竪穴部分として扱う((5))
- 区画は水平引きシャッターにせず、まわりを囲む竪穴区画にする((5))
- 百貨店やマーケットでは、通行に必要な部分を除き、側面を可能な限り耐火構造の壁にする((4)★)
- 防火シャッターで区画する面には、線入ガラス等のガラススクリーンを併設する((4)★)
- 区画の中に人が残ることを考えて、避難用の扉を設ける((6))
エスカレーターは、床の穴をふさぐのではなく縦に囲むのですね。
はい、昇降路として竪穴区画にします。
避難用の扉はシャッターと別に設けましょう。
堺市で吹き抜けや階段の防火設備は感知器でどこまで閉まるのか

(7) 竪穴区画に係る防火設備(感知器の作動と連動するもの)の閉鎖又は作動については次によること。
ア 階段については、感知器(当該部分を区画する防火設備の連動によるものに限る。)が作動した階のみとすること。
イ 吹き抜け部分については、感知器(吹き抜け部分を区画する防火設備の連動によるものに限る。)が作動した場合には全階作動すること。
階と階のあいだの範囲は、階段と吹き抜けで違います。
| 竪穴の種類 | 感知器が作動したときに閉まる範囲 | 審査基準の項目 |
|---|---|---|
| 同じ階に防火設備が2以上 | 一の感知器の作動ですべて | 第9 4(6) |
| 階段 | 感知器が作動した階のみ | 第9 4(7)ア |
| 吹き抜け | 全階 | 第9 4(7)イ |
| 二の階にのみわたる部分階段 | 下の階で区画すれば足りる | 第9 2(7) |
また2(2)は、避難階と直上階か直下階だけに通じる吹き抜け(3階層にわたるものは含まない)で内装と下地を不燃材料にする場合、その範囲を吹き抜けを含めて耐火構造の床や壁、特定防火設備などで区画された部分のすべてとしています。感知器そのものの設置場所の国の基準は防火設備の感知器の設置基準を解説した記事で読めます。
吹き抜けは全階、階段は作動した階だけなのですね。
はい、吹き抜けは全階、階段は作動した階のみです。
連動の設定を図面で確かめましょう。
大阪市や東大阪市では竪穴区画の取扱いは書かれているのか

大阪市の基準でエスカレーターが出てくるのは、自動火災報知設備の感知器(階段・エスカレーター等の上部の垂直距離15m)や、放水型ヘッド・排煙設備の項目です。東大阪市も自動火災報知設備の感知器の項目に出てくるだけです。
そのため、3市を同じ物差しで比べることはできません。公開の資料で確かめられた範囲をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 堺市 | 大阪市・東大阪市 |
|---|---|---|
| 検証法で適用除外の階段・吹き抜け | 竪穴区画を設置(★) | 公開の運用基準に記載なし |
| エスカレーターの区画 | 昇降路として竪穴区画・側面は耐火構造の壁(★) | 公開の運用基準に記載なし |
| 避難用の扉 | エスカレーター周囲の区画に設ける | 公開の運用基準に記載なし |
| 感知器連動の閉鎖範囲 | 階段は作動階のみ・吹き抜けは全階 | 公開の運用基準に記載なし |
堺市の第9 防火区画のうち、地下駐車場の面積区画と前室は堺市の地下駐車場の防火区画の記事で解説しています。
大阪市や東大阪市の基準には、竪穴区画の話は載っていないのですね。
はい、公開の運用基準には見当たりません。
国の条文と所轄の指導で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず検証法で外す予定の竪穴を図面で洗い出します。
堺市なら早めに消防局へ相談します!
堺市では、検証法を使っても竪穴区画を設けることが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第2章 第1節 総論 第1 審査上の留意事項 1(7)、第9 防火区画 2 竪穴区画(2)・(4)〜(8)、4 防火戸(5)〜(7)・第9-1図 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 建築基準法施行令 第112条第11項・第129条の2第1項・第3項
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の防火区画や避難安全検証法の扱いは、所轄の消防署と建築確認の窓口にご確認ください。





