緩降機や避難はしごは、火災のときに窓やバルコニーから地上へ降りるための避難器具です。使う場面は夜や停電のさなかかもしれません。
国の告示は、避難器具を「明るさが確保される場所」に設置するとだけ定め、照度の数値は書いていません。
これに対して大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、床面で1ルクス以上という数値と、使ってよい照明装置の種類まで決めています。
では大阪市では、避難器具の置き場所にどんな照明が必要なのでしょうか。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、東大阪市・堺市の扱いとも比べます。
大阪市のビルで、緩降機を置いている部屋の照明を見直したいです。
普通の天井灯があれば足りますか。
大阪市の運用基準は、停電しても床面で1ルクス以上の明るさを求めています。
普通の天井灯だけでは足りません。
懐中電灯を置いておく、では駄目なのでしょうか。
電池式の照明で足りるのは、避難ロープ・すべり棒・避難はしごなどに限られます。
器具の種類で分かれます。
- 国の告示(平成8年消防庁告示第2号)の第六は、避難器具を明るさが確保される場所に設置するとだけ定め、照度の数値はありません
- 大阪市の運用基準は、常用電源が止まっても避難器具の設置場所の床面で1ルクス以上となる照明装置を設けるとしています(◆=行政指導基準)
- 照明装置は非常用の照明装置か、避難ロープ・すべり棒・避難はしご(3階以下の階に設けるもの)を設ける場合の4つの条件を満たす電池式照明装置です
- バルコニーや屋上など屋外にあって、自然採光等で避難上支障がないものは照明装置がいりません
- 東大阪市は条例で夜間使用する建物に非常電源付きの照明設備を求め、堺市の審査基準は国の告示と同じ文言です
▼

目次
国の基準は避難器具の置き場所の明るさに何を求めているのか

昭和50年の国の質疑応答では、夜間に器具を扱うための照明設備は義務づけられていないものの、夜間の取扱いが困難な場所には設置するよう指導するとされていました。この質疑は避難器具の夜間の照明と標識の記事で解説しています。
大阪市の火災予防条例も、避難器具設置場所の管理として照度を挙げています。
(1) 安全かつ速やかに、避難器具を操作できる広さを保有すること
(2) 避難器具設置場所に容易に到達できる通路を保有すること
(3) 避難器具を操作するに必要な照度を保有すること
国の告示には何ルクスという数字はないのですね。
はい、数値を決めているのは大阪市の運用基準です。
次の見出しで読んでいきます。
大阪市の運用基準は避難器具の照明について何を決めているのか

1 照度は、避難器具設置場所の床面で1ルクス以上となるよう設けること
2 照明装置は、次のいずれかに該当するものが設けられていること
(1) 非常用の照明装置
- 土台は国の告示第2号の第六(明るさが確保される場所に設置)。第7は「告示第2号第6によるほか」と書き、告示の上に具体的な条件を足している
- 求める明るさは、常用電源が遮断された場合においても確保できるもの。ふだんの照明が消えた停電時が基準になる
- 照度は避難器具設置場所の床面で1ルクス以上。建築基準法施行令第126条の5が非常用の照明装置に求める「床面において一ルクス以上」と同じ数値になっている
- 照明装置は2(1)の非常用の照明装置か、2(2)の電池式照明装置のどちらか(電池式は次の見出し)
- ただし書で、屋外にあって自然採光等で避難上支障のないものは照明装置を設けなくてよい(4つ目の見出し)
停電のときに1ルクスが出るかどうかがポイントなのですね。
はい、常用電源が遮断された場合の明るさで見ます。
ふだんの天井灯は数に入りません。
電池式の照明で足りるのはどんな避難器具のときか

ア 照度は、30センチメートル前方でおおむね50ルクスのものであること
イ 照射方式が、散光式のものであること
ウ 壁に掛けた状態で点灯できるものであること
エ 器具本体に乾電池の取替年月日を記入したラベルが貼付されていること
- 設ける避難器具が避難ロープ・すべり棒・避難はしごのどれかか。緩降機や救助袋、すべり台は(2)に挙がっていないので、(1)の非常用の照明装置を設けることになると読める
- 括弧書きのとおり3階以下の階に設けるものか
- 照度が30センチメートル前方でおおむね50ルクスあるか(ア)
- 照らし方が散光式か(イ)。一点だけを照らすスポット型ではなく、まわりを広く照らすもの
- 壁に掛けた状態で点灯できるか(ウ)。手に持たなくても手元を照らせることが条件
- 器具本体に乾電池の取替年月日のラベルが貼ってあるか(エ)
なお、同じ「30センチメートル前方でおおむね50ルクス」「散光式」「乾電池の取替年月日のラベル」という条件は、東大阪市の誘導灯の運用基準にも出てきます。こちらは旅館やホテルなど((5)項イ)の就寝室に置く携帯用照明器具の条件で、避難器具とは別の場面です。
大阪市で認められるさるばしごなど、低い階の避難器具の特例はさるばしごの記事で解説しています。
2階の避難はしごなら、条件を満たす電池式のライトを壁に掛けておけばよいのですね。
はい、4つの条件をすべて満たすものに限ります。
電池の日付のラベルも忘れずに。
バルコニーや屋上の避難器具にも照明はいるのか

大阪市の運用基準は、器具そのものだけでなく器具の場所を示す標識の明るさにも触れています。
バルコニーの避難ハッチなら照明はいらないと思っていました。
屋外でも自然採光等で支障がないことが条件です。
夜の暗さを一度見ておきましょう。
東大阪市と堺市では避難器具の照明の扱いは違うのか

ア 照度は、避難器具設置場所の床面で1ルクス以上であること。
イ 条例第60条第2項第3号に規定する非常電源を付置した照明設備は、階段に設ける通路誘導灯の基準に準じて設けること。ただし、建基令第126条の4に規定する非常用の照明装置を設置した場合は、この限りでない。
- 条例第60条第2項第3号で、夜間使用する防火対象物には非常電源を付置した照明設備がいる(条例の義務)
- 運用基準の⒀アで、照度は床面で1ルクス以上(大阪市と同じ数値)
- ⒀イで、その照明設備は階段に設ける通路誘導灯の基準に準じて設ける。国の基準では、階段の通路誘導灯は消防法施行規則第28条の3第4項第4号で照度が決められている
- ⒀イのただし書で、建築基準法施行令第126条の4の非常用の照明装置を設置した場合は、通路誘導灯の基準に準じなくてよい
- ⒀のただし書で、屋外で自然採光等により支障がないもののほか、操作のいらないすべり台等と、自主設置の避難器具は除かれる
堺市の審査基準は、「第17 避難器具」の細目に明るさの項目を置いていますが、文言は国の告示第六と同じで、★や◆の印もありません。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 条例 | 必要な照度を保有(第54条第2項第3号) | 必要な照度+夜間使用は非常電源付きの照明設備(第60条第2項第3号) | 必要な照度を保有(第81条第2項第3号) |
| 照度の数値 | 床面1ルクス以上(◆) | 床面1ルクス以上(▲) | 数値の記載なし |
| 照明の種類 | 非常用の照明装置か電池式照明装置 | 階段の通路誘導灯の基準に準じる照明設備か非常用の照明装置 | 確保できなければ非常照明等(条例の解説) |
| 電池式照明 | 避難ロープ・すべり棒・避難はしご(3階以下)で4条件 | 記載なし | 記載なし |
| 照明がいらない場合 | 屋外で自然採光等により支障なし | 屋外で自然採光等・操作不要のすべり台等・自主設置 | 屋外で自然採光等により操作できる場合が「必要な照度」 |
| 避難器具専用室 | 建基令第126条の5の例+常用の照明と連動 | ⒀イの照明装置 | 非常照明(告示と同じ) |
「記載なし」は、その市で照明がいらないという意味ではありません。東大阪市の避難器具の降りる場所の扱いは東大阪市の避難空地の記事で解説しています。
同じ大阪府の中でも、条例で求めているかどうかまで違うのですね。
はい、東大阪市は夜間の非常電源付き照明が条例です。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず停電させた状態で床が見えるかを確かめます。
器具ごとに照明の種類も見直してみます!
大阪市では、床面1ルクスと照明装置の種類が決め手です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第3章 避難設備 第1節 避難器具 第4 2・第6・第7 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第54条第2項(大阪市例規データベース)
- 東大阪市消防局「避難器具の設置に係る運用基準」凡例・2 共通事項 ⒀、公開の誘導灯の運用基準 第3 通路誘導灯 4 特例(1)サ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 東大阪市火災予防条例 第60条第2項(東大阪市例規集)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第17 避難器具 Ⅱ 細目 4、堺市火災予防条例 第81条第2項及び解説及び運用 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)第四・第六 消防庁ホームページ(告示PDF)
- 消防法施行規則 第27条・第28条の3(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令 第126条の4・第126条の5(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各市の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で必要な照明設備は、所轄の消防署にご確認ください。





