屋内消火栓には1号消火栓・易操作性1号消火栓・2号消火栓・広範囲型2号消火栓があり、消防法施行令第11条第3項がどれを選べるかを決めています。
ただ、一つの建物の中で種類を混ぜてよいかは、国の条文には書かれていません。
津市の予防事務審査検査基準は、一つの防火対象物には原則として操作性やホースの長さが異なる屋内消火栓箱を設けないとしています。
津市の基準を軸に、鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市・堺市・大阪市の書き方を比べます。
津市の事務所ビルを増築する計画で、今の建物には1号消火栓が付いています。
増築部分は一人で使える2号消火栓にしたいのですが、混ぜても大丈夫ですか。
津市の基準は原則として混ぜないよう求めています。
まずは国の条文との違いから見ていきましょう。
国の決まりでは混ぜてはいけないことになっていないのですか。
国は種類ごとの距離や水源の量を決めているだけです。
市ごとの書き方を順に比べます。
- 消防法施行令第11条第3項は、(12)項イ・(14)項の一部と指定可燃物を多く扱うものなどを1号消火栓の基準とし、それ以外は1号・2号・広範囲型2号から選べるとしていて、一つの建物で種類をそろえる文は置いていない
- 津市は、一の防火対象物には原則として、操作性又はホースの長さが異なる屋内消火栓箱等を設置しないこととしている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は同じ文で同一操作性を求め、増築したときの増築以外の部分にある既存のものは除いている(どちらも▲=行政指導)
- 四日市市は例外を書かずに同一操作性を求め、堺市は既存の1号消火栓の一部を易操作性1号消火栓に替える場合だけを例外にしている
- 大阪市の屋内消火栓の節には同一操作性の文が見当たらず、1号と2号を併設するときの水源を隣り合う2個で3.8㎥などと定めている
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目次
津市の基準は一つの建物の屋内消火栓をどうそろえるよう求めているのか

種類をそろえる決まりは、その最後の「その他」に置かれています。
9 その他
一の防火対象物には原則として、操作性又はホースの長さが異なる屋内消火栓箱等を設置しないこと。
同 7⑵ア(1号消火栓)
ア ホースは、15m以上のものを2本接続するものとし、その長さはホース接続口からの水平距離が25mの範囲内の当該階の各部分に有効に放水することができる長さとすること。
津市の5-2 9は、一つの防火対象物には原則として、操作性又はホースの長さが異なる屋内消火栓箱等を設けないとしています(津市の基準には記号の凡例が無く、画像でも印は付いていません)。
2号消火栓と広範囲型2号消火栓は、令第11条第3項第2号で一人で操作できるホースの構造が求められています。
易操作性1号消火栓は、開閉弁の開放やホースの延長と連動してポンプが起動する方式の1号消火栓です(消防法施行規則第12条第1項第7号ヘただし書)。
ホースも、津市は1号消火栓を15m以上を2本とし、易操作性1号などは水平距離25m(2号は15m)の範囲に放水できる長さとしているので、種類が変わると箱の中身も変わります。
明日やることは、各階の消火栓箱を開けて、種類の表示とホースの本数を書き出すことです。
「原則として」とあるので、例外もあるということですね。
津市の基準には例外の中身までは書かれていません。
迷ったら計画の段階で所轄の消防署に聞くのが確実です。
国の基準では一つの建物に違う種類の屋内消火栓を設けてはいけないのか

ここでは種類ごとの距離・水源・放水の性能が分けて書かれています。
3 前二項に規定するもののほか、屋内消火栓設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次の各号に掲げる防火対象物又はその部分の区分に応じ、当該各号に定めるとおりとする。
一 第一項第二号及び第六号に掲げる防火対象物又はその部分(別表第一(十二)項イ又は(十四)項に掲げる防火対象物に係るものに限る。)並びに第一項第五号に掲げる防火対象物又はその部分 次に掲げる基準
(イからヘまで略)
二 第一項各号に掲げる防火対象物又はその部分で、前号に掲げる防火対象物又はその部分以外のもの 同号又は次のイ若しくはロに掲げる基準
第1号は、(12)項イの工場や(14)項の倉庫で第1項第2号・第6号に当たるものと、指定可燃物を政令の数量の750倍以上扱う第1項第5号のものに、1号消火栓の基準を当てています。
第2号は、それ以外の防火対象物又はその部分について、第1号の基準のほか、2号消火栓(イ)と広範囲型2号消火栓(ロ)の基準も選べるとしています。
条文は「防火対象物又はその部分」ごとに基準を当てる書き方で、一つの建物の中で種類をそろえよという文は置かれていません。
そのため、混ぜてよいかどうかは各消防本部の審査基準を見ることになります。
明日やることは、建物の用途が(12)項イや(14)項に当たるかと、指定可燃物の量を確かめることです。
| 種類(令第11条第3項) | ホース接続口までの水平距離 | 水源(1個あたり・最大2個) | 放水圧力・放水量 |
|---|---|---|---|
| 1号消火栓(第1号) | 25m以下 | 2.6㎥ | 0.17MPa以上・130L/min以上 |
| 2号消火栓(第2号イ) | 15m以下 | 1.2㎥ | 0.25MPa以上・60L/min以上 |
| 広範囲型2号消火栓(第2号ロ) | 25m以下 | 1.6㎥ | 0.17MPa以上・80L/min以上 |
工場や倉庫でなければ、国の条文だけなら2号消火栓も選べるのですね。
選べる範囲は条文どおりです。
ただし各市の基準がそろえ方を足しています。
鈴鹿市と埼玉県央広域と四日市市は同じ操作性にそろえるよう求めているのか

違いは、例外の書き方と記号の付き方です。
ア 1号消火栓(易操作性1号消火栓を含む。)、2号消火栓又は広範囲型2号消火栓は、同一防火対象物(増築等の防火対象物で、当該増築以外の部分に設けられている既存のものを除く。)には、同一操作性のものを設置する。▲
なお、政令第11条第3項第1号に規定する防火対象物以外のもので、可燃性物品を多量に貯蔵又は取り扱う防火対象物に設ける場合には、1号消火栓(易操作性1号消火栓を含む。)とする。▲
四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第2 屋内消火栓設備 9
政令第11条第3項第1号及び第2号の規定によるほか、屋内消火栓は、易操作性1号消火栓、2号消火栓又は広範囲型2号消火栓を設置すること。
また、同一防火対象物には、同一操作性のものを設置すること。
鈴鹿市(第4章 第2 6⑷ア)と埼玉県央広域(第3章 第2 7⑸ア)は同じ文で、同じ防火対象物には同一操作性のものを設けるとし、増築したときの増築以外の部分にある既存のものはかっこ書きで外しています(どちらも▲=行政指導の印を画像で確かめました)。
両本部とも続けて、令第11条第3項第1号の防火対象物でなくても、可燃性物品を多量に貯蔵し又は取り扱うものには1号消火栓(易操作性を含む)を設けるとしています。
埼玉県央広域は7⑴で、新設するときや既存の1号消火栓を改修するときは、易操作性1号・2号・広範囲型2号を設置指導するとも書いています。
四日市市(第2章 第2 9)は、屋内消火栓を易操作性1号・2号・広範囲型2号とし、同じ防火対象物には同一操作性のものを設けるとしていて、増築の例外は書いていません(行政指導を示す下線は付いていないことを画像で確かめました)。
明日やることは、増築や改修の予定がある建物で、今の消火栓の種類を設計者と共有しておくことです。
鈴鹿市や県央広域なら、既存部分の1号消火栓は残したまま増築部分だけそろえればよいと読めるのですね。
文の上ではそう読めます。
最終的な扱いは所轄の消防署と図面で確かめてください。
大阪市では1号消火栓と2号消火栓を混ぜたとき水源とポンプはどれだけ要るのか

代わりに、放水量の異なる屋内消火栓を併設するときの水源とポンプの量を書いています。
(2) 放水量の異なる屋内消火栓を併設する場合の規定水量は、それぞれ次によること
ア 1号消火栓と2号消火栓を併設する場合にあっては、次により求めた量以上の水量とすること
(ア) 同一階において、1号消火栓が相互に隣接して設けられる場合は5.2立方メートル
(イ) 同一階において、1号消火栓と2号消火栓が相互に隣接して設けられる場合は3.8立方メートル◆
(ウ) 同一階の設置個数が2以上であり、(ア)及び(イ)以外の場合は2.6立方メートル
(エ) 地階を除く階数が5以上の防火対象物で、かつ、各階の設置個数が1であるもので、1号消火栓が設けられる階の直下階に1号消火栓が設けられる場合は、5.2立方メートル。それ以外の場合は3.8立方メートル◆
大阪市は、同じ階で1号消火栓と2号消火栓が相互に隣接して設けられるときの水源を3.8㎥とし、1号消火栓どうしが隣り合えば5.2㎥としています。
3.8㎥は令第11条第3項の1個あたりの水源(1号2.6㎥・2号1.2㎥)を足した数で、5.2㎥は1号2個ぶんにあたります。
同じ考え方で、1号と広範囲型2号なら4.2㎥、2号と広範囲型2号なら2.8㎥と定めています(隣接の場合と5階以上で各階1個の場合に◆=大阪市の行政指導の印)。
加圧送水装置も第4 2(1)アで、相互に隣接する2個を同時に使ったときにそれぞれの種類の放水圧力と放水量を満たすよう求め、ポンプの吐出量を1号+2号で220L/min以上などと表にしています(第4 2(3)◆)。
明日やることは、大阪市で種類を混ぜる計画なら、同じ階で隣り合う消火栓の組み合わせを図面に書き出すことです。
| 屋内消火栓の組み合わせ(大阪市 第4 2(3)ア(イ)の表) | 規定水量 | ポンプの吐出量 |
|---|---|---|
| 1号消火栓×2 | 5.2㎥ | 300L/min以上 |
| 1号消火栓+広範囲型2号消火栓 | 4.2㎥ | 240L/min以上 |
| 1号消火栓+2号消火栓 | 3.8㎥ | 220L/min以上 |
| 広範囲型2号消火栓×2 | 3.2㎥ | 180L/min以上 |
| 2号消火栓+広範囲型2号消火栓 | 2.8㎥ | 160L/min以上 |
| 1号消火栓×1 | 2.6㎥ | 150L/min以上 |
| 2号消火栓×2 | 2.4㎥ | 140L/min以上 |
| 広範囲型2号消火栓×1 | 1.6㎥ | 90L/min以上 |
大阪市では混ぜる場面を想定して、水の量まで決めているのですね。
隣り合う2個の組み合わせで水源とポンプが変わります。
計算は設備業者に図面で出してもらいましょう。
増築や改修で既存の1号消火栓が残るときはどう扱われるのか

この例外の書き方が、消防本部ごとに違います。
ア 原則として同一防火対象物には、同一操作性のものを設けること。(既存の防火対象物の増築、改修等に伴い、防火対象物に設置された既存1号消火栓の一部を易操作性1号消火栓に変更する場合を除く。)★
堺市は原則として同一操作性とし、既存の1号消火栓の一部を易操作性1号消火栓に替える場合だけを除いています(★=堺市独自の指導の印を画像で確かめました)。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、増築したときの増築以外の部分にある既存のものを外していて、例外の形が堺市と違います。
津市は「原則として」とだけ書き、四日市市は例外を書いていません。
堺市の文のうえでは、既存の1号消火栓を残したまま増築部分に2号消火栓を足す形は、例外として挙げられていません。
明日やることは、増築や改修の設計を頼む前に、所轄の消防署へ既存の消火栓をどうするかを相談することです。
| 消防本部 | 種類をそろえる定め | 増築・改修のときの例外 | 記号 |
|---|---|---|---|
| 国(令第11条第3項) | 区分ごとに基準を当てるだけで、そろえる文は無い | - | - |
| 津市 | 原則として操作性又はホースの長さが異なる消火栓箱等を設置しない(5-2 9) | 書かれていない | 凡例なし |
| 鈴鹿市 | 同一操作性(第4章 第2 6⑷ア) | 増築以外の部分に設けられている既存のものを除く | ▲ |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 同一操作性(第3章 第2 7⑸ア) | 増築以外の部分に設けられている既存のものを除く | ▲ |
| 四日市市 | 同一操作性(第2章 第2 9) | 書かれていない | 下線なし |
| 堺市 | 原則として同一操作性(Ⅱ 7(2)ア) | 既存1号消火栓の一部を易操作性1号消火栓に変更する場合を除く | ★ |
| 大阪市 | 節内に見当たらない。併設するときの水源とポンプを定める(第3 2(2)・第4 2) | - | ◆(隣接の場合など) |
増築のときに、どの市でも今の1号消火栓をそのまま残せるわけではないのですね。
例外の範囲は市ごとに違います。
設計を頼む前に所轄の消防署へ相談しておくと手戻りが減ります。
よくある質問
まとめ
まずは今の消火栓の種類を書き出して、増築の前に消防署へ相談してみます!
津市なら操作性とホースの長さの両方をそろえる前提で計画してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第11条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第12条第1項第7号(e-Gov法令検索)
- 津市予防事務審査検査基準 5-2 屋内消火栓設備 7・8・9(津市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第2 屋内消火栓設備 6・第3 スプリンクラー設備 補助散水栓(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章 第2 屋内消火栓設備 7・第3 スプリンクラー設備 14(埼玉県央広域消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第2 屋内消火栓設備 9(四日市市消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第3章 第1節 第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 7・第4 スプリンクラー設備 補助散水栓(堺市消防局)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第1章 第2節 屋内消火栓設備 第3・第4(大阪市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。大阪市の同一操作性の定めは屋内消火栓の節を検索した範囲で見当たらなかったことを示しており、別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





