3階以上にスナックや飲食店が入り、階段がひとつしかないビルは、消防法令で特定一階段等防火対象物と呼ばれます。
こうしたビルの避難器具は、国の規則で「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」に設けるなど、3つの型のどれかに合わせることになっています。
では、どんなバルコニーなら「安全かつ容易」といえるのでしょうか。大阪市消防局の運用基準は、この言葉の意味を避難器具の節の別の項目から借りて説明しています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、東大阪市・堺市の扱いとも比べます。
大阪市内で、階段がひとつの5階建てのビルを管理しています。
4階にスナックが入りました。
その場合、ビル全体が特定一階段等防火対象物に当たるかもしれません。
避難器具の置き方に決まりが増えます。
ベランダに避難はしごを置いてあれば、それで足りますか。
大阪市はどんなバルコニーならよいかを運用基準で示しています。
広さと開放性と手すりを確かめましょう。
- 国の消防法施行規則第27条第1項第1号は、特定一階段等防火対象物の避難器具をバルコニー等に設ける・常時使える状態で設置する・一動作で使えるのどれかに合わせるよう求めています
- 大阪市の運用基準は、「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」を、つり下げはしごの項目(第3 1(4)ア)の例によるものとしています
- 借りた先の項目は、直接外気に開放された部分を有する煙が充満しない構造で、床面積がおおむね2平方メートル以上のバルコニー等です。大阪市はこれに手すりなどの転落防止を加えています
- 「常時、容易かつ確実に使用できる状態」は、緩降機等を常時、組み立てられた状態で設置する等のことだとしています
- 東大阪市は同一フロアの屋上や地階のドライエリアも含めると書き、堺市はドライエリアを含めると書いています。組み立てた状態の解釈は東大阪市が大阪市と同じ文です
▼

目次
国の基準は階段がひとつのビルの避難器具に何を求めているのか

ここでいう避難階以外の階は、消防法施行令第4条の2の2第2号で1階と2階を除くとされています。つまり、特定の用途が3階以上か地階にあることが前提です。該当するかどうかの詳しい判定は特定一階段等防火対象物の記事で解説しています。
このビルに設ける避難器具について、消防法施行規則第27条第1項第1号は次のように定めています。
イ 安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等に設けるもの。
ロ 常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの。
ハ 一動作(開口部を開口する動作及び保安装置を解除する動作を除く。)で、容易かつ確実に使用できるもの。
同じ「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」という言葉は、第27条第1項第4号ホ(4階以上の固定はしご)と第5号ニ(4階以上のつり下げはしご)にも出てきます。
この言葉の中身を、大阪市は運用基準で埋めています。
イ・ロ・ハのどれかに合えばよいのですね。
はい、どれか1つで足ります。
ただ、言葉の中身は国の規則に書かれていません。
大阪市はバルコニー等の意味をどの項目から借りているのか

つり下げはしごは規則第27条第1項第5号ニの規定によるほか、次によること
ア つり下げはしごを設けるバルコニー等は、直接外気に開放された部分を有する煙が充満しない構造のもので、当該床面積がおおむね2平方メートル以上のものとすること
- 消防法施行規則第27条第1項第1号で、特定一階段等防火対象物の避難器具はイ・ロ・ハのどれかに合わせる
- イの「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」の意味を、大阪市の運用基準第5 1で引く
- 第5 1は「第3.1.(4).アの例による」としているので、4階以上のつり下げはしごの項目へ移る
- 第3 1(4)アから、直接外気に開放された部分を有する煙が充満しない構造で、床面積がおおむね2平方メートル以上という条件を持ってくる
- 第5 1に戻り、手すりその他の転落防止のための措置を講じたバルコニーその他これらに準ずるものであることを加える
また、第3 1は見出しに◆(行政指導基準)が付いていますが、第5には印がありません。大阪市の凡例で、印のない項目は法令基準(法令解釈基準を含む)とされています。
消防法、消防法施行令、消防法施行規則及びこれらに基づく消防庁長官告示並びに大阪市火災予防条例により規定されている消防用設備等の設置及び維持に関する技術上の基準並びに電気設備等の位置、構造及び管理の基準(消防庁予防課長通知等で示されている法令解釈基準を含む。)
バルコニーの条件は、つり下げはしごの項目に書いてあるのですね。
はい、第5 1が第3 1(4)アを借りています。
そこに手すりなどの条件が加わります。
常時容易かつ確実に使用できる状態とはどんな置き方か

「等」とあるので、緩降機に限りません。どの器具でも、いつでもそのまま使える状態で設置されていることがロの中身です。
これに対してハの「一動作」は、開口部を開ける動作と保安装置を外す動作を除いて、ひとつの動作で使える器具を指します。ハに当たるとされた国の質疑応答の例は、避難器具の質疑応答の記事で解説しています。
ロで設置したのなら、ふだんの点検や片付けのあとに器具を外したり折りたたんだりしたままにしないことが大切です。組み立てた状態でなくなれば、ロとして設置した前提が崩れます。
点検のあとにアームをたたんで片付けてしまいそうです。
ロで設置したなら、組み立てた状態に戻すのが前提です。
点検業者にも伝えておきましょう。
東大阪市と堺市はバルコニー等をどう定めているのか

ロの言葉については、東大阪市も「7 特定一階段等防火対象物の取扱い」で、大阪市と同じ文を置いています。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 決め方 | 第3 1(4)アの例による(別の項目を借りる) | 共通事項⒅に直接記載 | 第17 Ⅱ 1(6)に直接記載 |
| 広さ | おおむね2平方メートル以上 | おおむね2平方メートル以上 | 概ね2㎡以上 |
| 開放性 | 直接外気に開放された部分を有する煙が充満しない構造 | 直接外気に開放されたバルコニー | (バルコニー等とだけ記載) |
| 転落防止 | 手すりその他の転落防止の措置 | 手すりその他の転落防止の措置 | 手すりその他の転落防止の措置 |
| 屋上・ドライエリア | (記載なし。「これらに準ずるもの」) | 同一フロアの屋上・地階のドライエリア | 地階のドライエリア |
| 常時使用できる状態(ロ) | 緩降機等を常時、組み立てられた状態で設置する等 | 大阪市と同じ文(7⑵) | 項目は見当たらない |
| 印 | 第5は無印(法令基準) | ⒅は▲(法令基準に行政指導を加えた基準) | (1(6)に印なし) |
大阪市の文には屋上やドライエリアの語はありませんが、「その他これらに準ずるもの」とあります。これらが当たるかどうかは、大阪市の建物では管轄の消防署に確認しましょう。東大阪市のハッチの置き場所は東大阪市の避難ハッチの記事で解説しています。
大阪市だけ、別の項目を借りる書き方なのですね。
はい、中身は3市ともほぼ同じ骨格です。
屋上などの扱いは所轄で確かめましょう。
大阪市の階段がひとつのビルで避難器具を見直すときは何から確かめるのか

- 3階以上か地階に飲食店などの特定の用途が入っていて、地上へ通じる階段が1つかどうかを確かめ、特定一階段等防火対象物に当たるかを判定する
- 避難器具ごとに、イ(バルコニー等)・ロ(常時使える状態)・ハ(一動作)のどれで合わせるかを決める
- イで合わせるなら、置き場所が直接外気に開放され、煙が充満しない構造かを確かめる
- 物置や荷物を除いた床がおおむね2平方メートル以上あるか、手すりなどの転落防止があるかを確かめる
- ロで合わせるなら、緩降機などが組み立てられた状態のまま置かれているか、点検のあとも元に戻っているかを確かめる
また、避難器具を置いた場所には表示や標識の決まりもあります。避難器具の照明については大阪市の避難器具の照明の記事で、2階などを外せる特例を他の市と比べた話は津市の特定一階段の特例の記事で解説しています。
ベランダに置いた物置で、広さが足りなくなるかもしれません。
はい、物を除いた広さで見るのが安全です。
まず巻き尺で測ってみてください。
よくある質問
まとめ
まずベランダの広さと手すりを確かめます。
緩降機の置き方も見直してみます!
大阪市では、借りた項目の条件まで読むのが決め手です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第3章 避難設備 第1節 避難器具 第3 設置位置等の基準 1 避難はしご (4)ア、第5 特定一階段等防火対象物又はその部分に設ける避難器具の取り扱い 1・2 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「避難器具の設置に係る運用基準」凡例、2 共通事項 ⒅、7 特定一階段等防火対象物の取扱い ⑵ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第17 避難器具 Ⅱ 細目 1 設置位置等 (6) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第4条の2の2(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第23条・第27条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各市の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物の避難器具の置き方は、所轄の消防署にご確認ください。





