灯油や塗料を少しずつ、工場や作業場のあちこちに置いている建物は珍しくありません。
置き場ごとには指定数量の5分の1に届かなくても、建物全体で足し合わせると届いてしまうことがあります。
津市消防本部の「少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針」は、こうした微量危険物の置き場を、条件つきで場所ごとに数えてよいとしています。
国の火災予防条例(例)から津市の指針の読み替えまで、順番にたどります。
津市の工場で、機械ごとに灯油の缶を少しずつ置いています。
全部を足すと少量危険物になると言われて困っています。
津市の指針には、置き場ごとに数えてよい条件が書いてあります。
まずその条件を確かめましょう。
条件というのは、置き場の造りのことですか。
はい、少量危険物の置き場の条件を読み替えて使います。
空地の幅や壁の材料が少し緩くなります。
- 国の火災予防条例(例)第32条は、品名や指定数量が違う危険物を同一の場所で扱うとき、指定数量の5分の1で割った商を足して1以上なら少量危険物とみなす
- 津市の指針第14は、建物の中の微量危険物の合計が5分の1以上になっても、条件に合えば置き場ごとに数量を算定できるとしている
- 条件は少量危険物の置き場の指針(第3)を準用し、空地の幅を3mから1mに、耐火構造や不燃材料を「不燃材料又は準不燃材料」に読み替える
- 建物の屋内と屋上にある微量危険物の置き場の合計は、指定数量の倍数1未満にしなければならない
- この扱いを使うと所有者等に維持管理の教示が行われるので、置き場の図と数量表をそろえて所轄の消防署と協議する
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目次
指定数量の5分の1に届かない危険物でも建物全体で足し合わせるのか

その条例の手本になっているのが、消防庁が示した火災予防条例(例)です。
(略)指定数量未満の危険物及び(略)指定可燃物その他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
品名又は指定数量を異にする2以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係る危険物の数量を当該危険物の指定数量の5分の1の数量で除し、その商の和が1以上となるときは、当該場所は指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす。
条例(例)第32条は、同じ場所にある危険物を5分の1の数量で割って足し、1以上なら少量危険物として扱うと決めています。
裏を返すと、別の場所と認められれば足し合わせる必要はありません。
ただ、条例(例)は何をもって同一の場所とするかまでは書いていません。
また条例(例)第34条の3の基準の特例は、第32条を対象から外しているので、合算のルールそのものを特例で外すことはできません。
明日やることは、建物の中の危険物の置き場を一覧にし、品名と数量を書き出すことです。
どこまでを同じ場所と見るかで、少量危険物になるかどうかが変わるのですね。
そうです。
その線引きを書いているのが津市の運用指針です。
津市はどんな条件で微量危険物を置き場ごとに数えてよいとしているのか

第14は、その微量危険物が一つの建物にいくつもある場合の数え方です。
一の建築物に複数の微量危険物が存在し、その危険物の数量の合計が指定数量の5分の1以上(第3に規定する少量危険物の貯蔵取扱場所の数量は除く。)となる場合に、当該建築物の個々の微量危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所が、次の各号に掲げる条件のすべてに適合するときは、当該個々の微量危険物の場所を一の貯蔵取扱場所として扱い、当該場所ごとに危険物の数量を算定することができる。
ただしこの場合、所有者等に対し維持管理および遵守すべき基準について必要な教示をすること。
(略)
(2) 当該建築物の屋内又は屋上に設置するすべての貯蔵取扱場所(第3に規定する少量危険物の貯蔵取扱場所の数量は除く。)における危険物の数量の合計は、指定数量の倍数を1未満とすること。
1つ目は、それぞれの置き場が第3(少量危険物の置き場の指針)を読み替えた条件に合うことです(第14⑴)。
2つ目は、建物の屋内と屋上にある置き場の合計を、指定数量の倍数1未満に収めることです(第14⑵)。
例えば指定数量1,000リットルの灯油を150リットルずつ3か所に置くと、合計450リットルで5分の1の200リットルを超えますが、条件に合えば1か所ずつ150リットルとして数えられ、建物全体でも倍数0.45です。
指針は倍数1未満とした理由までは書いていませんが、指定数量以上になると消防法第10条(許可を受けた施設以外での貯蔵・取扱いの禁止)の範囲に入る量です。
明日やることは、置き場ごとの数量と、建物全体の倍数を表にして並べることです。
置き場ごとの数量と、建物全体の合計の両方を見るのですね。
はい、どちらか一方だけでは足りません。
次は置き場の造りの条件を見ます。
少量危険物の置き場の条件は微量危険物ではどう読み替わるのか

借りるときに、いくつかの言葉を差し替えるのが読み替えです。
当該個々の微量危険物の貯蔵取扱場所は、第3に規定する少量危険物の指針を準用すること。準用する場合において、第3の規定中「幅3メートル以上の空地」とあるのは「幅1メートル以上の空地」と、「耐火構造」又は「不燃材料」とあるのは「不燃材料又は準不燃材料」と、「特定防火設備のうち、防火戸とし、随時開けることができる自動閉鎖式」とあるのは「防火設備のうち、防火戸」と読み替えるものとする。また、第3の規定中「出入口以外の開口部を有しない」及び「開口部のない」とある部分は準用しない。
空地の幅は3mが1mになり、壁や柱の耐火構造・不燃材料は「不燃材料又は準不燃材料」になります。
出入口の戸は「防火設備のうち、防火戸」に読み替えるとされています。
ただし読み替え前の文言は、第3の1⑷の「特定防火設備のうち、随時開けることができる自動閉鎖式の防火戸」と一字一句は一致しないので、どこまでが差し替わるかは所轄で確かめてください。
さらに「出入口以外の開口部を有しない」「開口部のない」という壁の開口部の制限は、微量危険物の置き場には持ち込みません。
明日やることは、置き場の図面に第3のどの項を使うかを書き込み、読み替えた後の数字で寸法を当てることです。
| 項目 | 少量危険物の置き場(第3) | 微量危険物の置き場(第14⑴の読み替え後) |
|---|---|---|
| 設備のまわりの屋内空地 | 幅3m以上(第3 1⑵) | 幅1m以上 |
| 空地が取れないときの壁・柱 | 耐火構造(出入口以外の開口部がない壁に限る)(第3 1⑷) | 不燃材料又は準不燃材料(開口部の制限は準用しない) |
| 区画する壁・柱・床・天井 | 出入口以外の開口部がない不燃材料(第3 2⑴) | 不燃材料又は準不燃材料(開口部の制限は準用しない) |
| 隣り合う置き場との区画 | 開口部のない耐火構造の床又は壁(第3 2⑴) | 不燃材料又は準不燃材料(「開口部のない」は準用しない) |
| 出入口の戸 | 特定自閉防火戸(第3 1⑷・2⑵は引火点40度未満のとき) | 「防火設備のうち、防火戸」と読み替える(読み替え前の文言は第3と一字一句は一致しない) |
機械のまわりに1m空ければ、別の置き場として認めてもらえるのですか。
幅だけでは足りず、設備の種類や白線の表示も第3のとおりです。
次でその中身を見ます。
空地で分ける置き場と区画で分ける置き場は何が違うのか

屋内でよく使うのは、設備のまわりに空地を取る1と、壁で区画する2です。
1 屋内に空地を設ける貯蔵取扱場所においては、次の各号に掲げる条件のすべてに適合する場合には、当該場所は、一の貯蔵取扱場所として扱うことができる。
(略)
(2) 貯蔵・取扱設備(危険物を移送するための配管を除く。)の周囲には幅3メートル以上の空地(以下「屋内空地」という。)を保有すること。また、当該屋内空地は、他の貯蔵・取扱設備に係る屋内空地と兼ねることはできないこと。
(3) 屋内空地は、(略)その範囲は、容易に消えない白線等で床面に明示すること。(略)
2 屋内に防火上有効な区画を設ける貯蔵取扱場所(容器又はタンクにより貯蔵し、又は取り扱う場合を含む)においては、次の各号に掲げる条件のすべてに適合する場合には、当該場所は、一の貯蔵取扱場所として扱うことができる。
(1) 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所が、出入口以外の開口部を有しない不燃材料の壁、柱、床又は天井により他の部分と区画すること。(略)
第3の1⑴は、ボイラーやバーナーなどの消費設備、発電設備、塗装設備、焼入れ設備、潤滑油循環設備などを挙げ、これらに類するものか消防署長が認めたものに限っています。
消防署長が認めるものには、その場で開けない密栓した金属製容器を、転倒防止と受け皿付きで置く形も含まれています。
空地は他の設備の空地と兼ねられず、白線などで床に示し、空地の上の天井などは津市火災予防条例第31条の3の2第1号の材料・構造とします。
区画型は、容器やタンクで置く場合も含めて、置き場を壁・柱・床・天井で他の部分と仕切る型で、微量危険物では材料が「不燃材料又は準不燃材料」になります。
明日やることは、各置き場が空地型と区画型のどちらで成り立つかを決め、空地型なら設備の種類が第3の1⑴に当たるかを確かめることです。
缶を床に並べているだけの置き場は、そのままでは空地型に当てはまらないかもしれませんね。
密栓した金属缶なら、転倒防止と受け皿をそろえて消防署長に相談する形になります。
最後に、手続きの流れを確かめます。
置き場を分けて数えるとき明日からなにをすればよいのか

津市の指針の中だけでも、第14から第3、第3から第10へと参照が続きます。
1 第3の各項に規定する一の貯蔵取扱場所が、一の建築物に他の貯蔵取扱場所と設置される場合(略)には、消防法第10条第2項に規定する「同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合」に該当しないものとし、当該一の貯蔵取扱場所に係る危険物の数量は、他の貯蔵取扱場所の数量と合算しないことができる。
- 消防法第9条の4:指定数量未満の危険物の基準は市町村条例で決める
- 火災予防条例(例)第32条:同一の場所の危険物は5分の1で割って足し、1以上なら少量危険物とみなす
- 津市の指針第14の柱書:建物内の微量危険物の合計が5分の1以上でも、条件に合えば置き場ごとに算定できる
- 第14⑴:置き場の条件は第3を準用し、空地1m・不燃材料又は準不燃材料などに読み替える
- 第14⑵:建物の屋内と屋上の置き場の合計(少量危険物の置き場を除く)を指定数量の倍数1未満にする
- 第10の1:第3の型で一つの置き場と扱える場所は、消防法第10条第2項の「同一の場所」に当たらないとして他の置き場と合算しないことができる
なお、今回の比較で読んできた鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域・大阪市の消防用設備等の基準には、微量危険物の置き場を分けて数える項目は見当たりませんでした。
東大阪市は「少量危険物等の運用指針」、堺市は「少量危険物等の審査基準」という別の資料によるとしているので、津市以外で同じ扱いがあるかは、その市の資料で確かめる必要があります。
明日やることは、置き場の一覧表と配置図に、空地の白線・壁の材料・戸の種類を書き込み、所轄の消防署に持って相談することです。
つまり、置き場の図と数量表がそろって初めて、分けて数える話ができるのですね。
そのとおりです。
置き場を増やすときも、建物全体の倍数を毎回足し直してください。
よくある質問
まとめ
まずは工場の缶の置き場を全部書き出して、建物全体の倍数を出してみます!
一覧ができたら、置き場ごとに空地型か区画型かを書き添えると話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法 第9条の4・第10条(e-Gov法令検索)
- 火災予防条例(例)第31条の3の2・第32条・第34条の3(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官通知)
- 少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針(令和5年11月改訂版)第3・第10・第14・第15(津市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準(鈴鹿市消防本部)・四日市市消防同意事務審査基準(四日市市消防本部)・埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準(埼玉県央広域消防本部)・消防用設備等の設置に係る運用基準(大阪市消防局)
※本記事は津市消防本部が公表している指導運用指針と、消防法・火災予防条例(例)に基づく一般的な解説です。津市火災予防条例の条番号は、指針が引用している範囲でのみ記載しています。「見当たらない」としたものは、各本部の消防用設備等の基準を検索した範囲の結果で、少量危険物の別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





