停電したときに屋内消火栓のポンプや排煙機を動かす非常電源には、発電機のほかに蓄電池設備を使うことがあります。
蓄電池設備で気になるのが容量です。何分間動けばよいのか、いくつもの設備に電気を送るときはどう数えるのか、計画の段階で迷いやすいところです。
堺市消防局の審査基準は、蓄電池設備の容量を決める項目で、自家発電設備(発電機)の容量の規定を一部借りる書き方をしています。
この記事では、堺市の「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3 非常電源の4(4)容量を国の基準と分けて読み、借りている規定をたどったうえで、大阪市の基準とも比べます。
堺市のビルで、非常電源に蓄電池設備を使う計画があります。
容量はどう決めればよいのでしょうか。
堺市の審査基準には、蓄電池設備の容量の項目があります。
その中で発電機の規定を借りています。
発電機の規定を、蓄電池に使うのですか。
はい、一部を除いて借りる書き方です。
国の条文から順番にたどっていきましょう。
- 国の消防法施行規則第12条第1項第4号ハは、蓄電池設備に自家発電設備の容量の規定(ロ(イ))の例によるとしています。国の段階から発電機の規定を借りています
- 堺市の審査基準 4(4)アは、容量を最低許容電圧まで放電→24時間充電→1時間以上監視→第3-1表の時間以上作動で確かめるとしています
- 4(4)イは、自家発電設備の容量の項目 3(4)を、イを除いて借りるとしています。同じ敷地の別棟で共用する場合や、一般負荷を遮断する方式の扱いがここで入ってきます
- 4(4)ウは、1つの蓄電池設備で複数の設備に同時に電気を送るときは使用時分の最も長い設備を基準に算定するとしています
- 大阪市も同じ形で発電機の規定を借りていますが、借りる範囲と計算式の有無が堺市と違います。建物のある市の基準で確かめましょう
▼

目次
堺市の蓄電池設備にはどんな基準がかかるのか

その第4号ハが蓄電池設備の柱書です。
この長官の基準は「蓄電池設備の基準」(昭和48年消防庁告示第2号)で、名前と番号は東大阪市の自動火災報知設備の運用基準にも出てきます。告示の性能や容量の考え方は、蓄電池設備の容量と基本性能の記事で解説しています。
消防用設備等に内蔵する電池(誘導灯の内蔵電池など)は、この項目の対象から外れています。
国の条文の段階で、もう発電機の規定を借りているのですね。
はい、ロ(イ)の例によるという形です。
堺市はその上に容量の項目を足しています。
蓄電池設備の容量はどんな条件で確かめるのか

- 蓄電池を最低許容電圧まで放電する(公称電圧の80%。リチウムイオン蓄電池は性能を保つのに最低限必要な電圧)
- そこから24時間充電する
- 充電をせずに、1時間以上監視状態を続ける
- その直後に、消防用設備等が第3-1表の右欄の時間以上有効に作動できること
| 消防用設備等(第3-1表) | 作動時間 |
|---|---|
| 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・泡消火設備・排煙設備・非常コンセント設備など | 30分間以上 |
| 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備 | 60分間以上 |
| 自動火災報知設備・非常警報設備 | 10分間以上 |
| 連結送水管の加圧送水装置・総合操作盤 | 120分間以上 |
リチウムイオン蓄電池の最低許容電圧を別に書いているのは堺市の表現の特徴で、大阪市の同じ項目にはこの断り書きはありません(後半の大阪市との比較で扱います)。
充電直後の満タンの状態で計算するのではないのですね。
はい、放電して24時間充電し、1時間待機した後で見ます。
余裕をみた容量が必要になります。
発電機の容量の規定をどう借りているのか

- 国の規則第12条第1項第4号ハ柱書で、蓄電池設備はロ(イ)(自家発電設備の容量)の例による
- 堺市の4柱書で、国の第4号ハの規定によるほか、4の各項目による
- 4(4)アで、放電→24時間充電→1時間以上監視の後に第3-1表の時間以上作動できること
- 4(4)イで、自家発電設備の3(4)を、イを除いて例による
- 借りた先の3(4)ア・ウ・エで、同じ敷地の別棟で共用する場合・一般負荷と共用する場合・一般負荷を遮断する方式の扱いが入る
アには◆①の印があります。堺市の凡例では、無印は法令基準とその解釈、◆は次の意味です。
続くウとエは、ふだんの照明やコンセントなど消防用設備等以外の負荷(一般負荷)と共用する場合の項目です。
- (ア) 火災時や点検時に一般負荷が遮断されても、二次的災害の発生が予想されないこと(エレベーターも含めて考える)
- (イ) 常時は消防用設備等に監視電流を流し、原則としてポンプを用いる設備の起動時に一般負荷を遮断する方式。アナログ方式か蓄積機能付きの自動火災報知設備で、建物の全館を警戒している場合は、自動火災報知設備の作動信号で遮断する方式にできる
- (ウ) 遮断は自動、復旧は手動とする
- (エ) 遮断のための操作回路などの配線は、耐火配線か耐熱配線とする
- (オ)(カ) 遮断する機器は不燃材料で区画された電気室などの点検しやすい位置に置き、その旨を表示する
別棟で共用するときや、一般負荷を切る方式の話まで借りてくるのですね。
はい、イ以外のア・ウ・エが入ってきます。
4(4)だけ読むと見落としやすいところです。
複数の設備に給電するときは何分で計算するのか

「基準とし」なので、短い方の設備の負荷を足さなくてよいという意味ではありません。同時に動く負荷を、いちばん長い時間で見込むと考えると分かりやすいでしょう。 堺市の審査基準は、逆向きの借り方もしています。自家発電設備の項目の中で、発電機を動かすための蓄電池を4に合わせるよう求めています。
その4(3)設置場所等は「前2.(3)の例によること」で、非常電源専用受電設備の設置場所の項目までつながります。この設置場所の項目は、堺市の発電機室の換気ダクトの記事でたどっています。
一番長い時間の設備に合わせて、容量を見込むのですね。
はい、同時に使うなら最も長い使用時分が基準です。
発電機の起動用の電池にも4が使われます。
大阪市の容量算定は堺市とどこが違うのか

大阪市の第4.3.には、一般負荷を遮断する方式なら加算しないことができるという(4)もありますが、蓄電池設備の(2)はこの(4)を挙げていません。堺市が借りているエ(遮断方式)に当たる部分です。
さらに大阪市の(4)は、容量の計算式を示しています。C=1/L×[K₁I₁+K₂(I₂-I₁)+…]Ahで、Cは定格放電率換算容量、Lは保守率(0.8として計算)、Kは容量換算時間、Iは放電電流です。最低蓄電池温度は「5度」を標準とし、電池メーカーの容量換算時間表を使うこともできるとしています。 大阪市の凡例では、無印は法令基準(消防庁予防課長通知等で示されている法令解釈基準を含む)、◆は行政指導基準です。容量算定の(1)から(4)は無印です。
◆ :行政手続法上の行政指導に該当する事項(行政指導基準)
| 項目 | 堺市(第3 非常電源 4(4)) | 大阪市(第6章 第5 3) |
|---|---|---|
| 容量の確かめ方 | 最低許容電圧まで放電→24時間充電→1時間以上監視→第3-1表の時間 | 許容最低電圧まで放電→24時間充電→1時間以上監視・制御等→別表6-1の時間 |
| リチウムイオン蓄電池の最低電圧 | 別に書いている | 書いていない |
| ガス漏れ・誘導灯の監視状態 | 書いていない | 必要としない |
| 発電機の規定から借りる範囲 | 3(4)のイを除く(ア・ウ・エ) | 第4.3.の(1)と(3) |
| 同じ敷地の別棟で共用 | 借りる(3(4)アただし書・◆①) | 借りる(第4.3.(1)ア) |
| 同時使用があり得ない設備の群 | 見当たらない | 借りる(第4.3.(1)イ) |
| 一般負荷を遮断する方式 | 借りる(3(4)エ) | 挙げていない |
| 複数の設備に同時給電 | 使用時分の最も長い設備が基準 | 使用時間の最も長い設備が基準 |
| 容量の計算式 | 書いていない | C=1/L[…]Ah・L=0.8・5度 |
東大阪市の公開資料は消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準で、非常電源の章がなく、蓄電池設備の容量算定の項目は見当たりません。記載がないことは、容量の決まりがないという意味ではありません。
蓄電池設備のまわりの保有距離は、大阪市の蓄電池設備の保有距離の記事で堺市とも比べています。
- 蓄電池設備から電気を送る消防用設備等の一覧と、それぞれの作動時間(堺市は第3-1表)
- 複数の設備を同時に使うかどうか、使うなら最も長い時間はどれか
- 同じ敷地の別棟と共用していないか、建物ごとに独立して使うか
- 一般負荷と共用するか、一般負荷を遮断する方式にするか(堺市と大阪市で扱いが違う)
- リチウムイオン蓄電池なら、最低許容電圧の考え方を所轄の消防署と確認したか
同じ「発電機の規定を借りる」でも、借りる範囲が違うのですね。
はい、番号の範囲が2市で違います。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず蓄電池から電気を送る設備と作動時間を一覧にします。
一般負荷との共用の有無も確かめます!
堺市では、4(4)イがどこを借りているかまで読むのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則 4 凡例、第3 非常電源 Ⅱ 細目 1 非常電源の設置(第3-1表)・3 自家発電設備((1)オ・カ、(4) 容量 ア〜エ)・4 蓄電池設備(柱書、(4) 容量 ア〜ウ)・通知一覧 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第6章 非常電源 第4 自家発電設備 3 出力算定・第5 蓄電池設備(柱書、3 容量算定 (1)〜(4)) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 7 電源 ⑴ 常用電源 イ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第12条第1項第4号ロ(イ)・ハ(e-Gov法令検索)
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物の蓄電池設備の容量計算は、設備の設計者と所轄の消防署にご確認ください。





