誘導灯は、停電しても非常電源で点き続けるよう決められた設備です。そのため、どの分電盤から、どんな回路で電気を送るかにも決まりがあります。
国の基準は、誘導灯の電源を自動火災報知設備の電源の規定の例により設けるとしていますが、回路を階でどう分けるかまでは書いていません。
東大阪市消防局の運用基準は、非常電源を内蔵しない誘導灯について、分電盤からの専用回路とし、1つの回路を2つ以上の階にまたがらせないことなどを定めています。
この記事では、国の基準と東大阪市の運用を分けて読み、どの規定がどこを借りているのかを順にたどります。大阪市と堺市の基準とも比べます。
東大阪市でビルの改修をしています。
誘導灯の回路を1本にまとめてよいか迷っています。
東大阪市の運用基準には、誘導灯の電源と配線の項目があります。
まず国の基準から確かめましょう。
非常電源が中に入った誘導灯でも同じですか?
階段の照明との関係も気になります。
内蔵型と階段の扱いも同じ第6にまとめて書かれています。
順に見ていきます。
- 国の基準は、誘導灯の電源を自動火災報知設備の電源の規定(規則第24条第3号)の例により設けるとし、回路の階の分け方は書いていません
- 東大阪市は、非常電源を内蔵しない誘導灯の常用電源を配電盤又は分電盤からの専用回路とし、非常用の照明装置とは同じ回路にできるとしています
- 1つの専用回路は2以上の階にわたらないこととされ、階段・傾斜路の通路誘導灯の回路は例外です(行政指導の印◆)
- 停電は専用回路ごとに検出して自動で非常電源に切り替えることとされ、非常電源を内蔵した誘導灯にも専用回路の決まりがかかります
- 大阪市は同じ文で、堺市には階で回路を分ける項目が見当たりません。最新の内容は管轄の消防署で確認します
▼

目次
国の基準は誘導灯の電源をどう決めているのか

十一 配線は、電気工作物に係る法令の規定によること。
イ 電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとること。(略)
ロ 電源の開閉器には、自動火災報知設備用のものである旨を表示すること。
条文のつながりを順に並べると、次のとおりです。
- 消防法施行令第26条第2項第4号が、誘導灯に非常電源を附置するよう求める
- 消防法施行規則第28条の3第4項第9号が、電源を第24条第3号の規定の例により設けるとする
- 第24条第3号イで、電源は蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる、ロで開閉器にその設備用である旨を表示する
- 第28条の3第4項第10号が非常電源の種類と容量を、第11号が配線は電気工作物に係る法令によることを定める
国の基準は、自動火災報知設備の電源の規定を借りているのですね。
はい、第9号が第24条第3号の例によると書いています。
回路の分け方は市の運用基準で確かめます。
東大阪市は誘導灯の回路をどう決めているのか

(1) 常用電源の配線は、配電盤又は分電盤から専用回路とすること。ただし、非常用の照明装置と同一回路とすることができる。
ただし書で、建築基準法の非常用の照明装置とは同じ回路にできるとされています。どちらも停電時に避難を助ける設備なので、まとめることを認めていると考えられます。
同じ1の(3)は、停電したときの切り替えです。
ただし書の常時浮動充電方式の別置型蓄電池設備は、ふだんから蓄電池を充電しながらつないでおく方式です。この方式で点灯するものは、回路ごとの検出と切り替えの決まりから外れます。
分電盤から誘導灯だけの回路を出して、停電は回路ごとに見るのですね。
はい、専用回路と回路ごとの停電検出が東大阪市の基本です。
次は階の分け方を見ましょう。
1つの回路を2つ以上の階にまたがらせてはいけないのか

例外は、階段又は傾斜路に設ける通路誘導灯の回路です。階段は上下の階をつないでいるので、階段の誘導灯を縦に1つの回路でつなぐことは認められています。
末尾の◆は、運用基準の凡例で次のように説明されています。
運用基準は(2)の理由を書いていません。回路を階ごとに分けておけば、ある階で回路が止まっても、ほかの階の誘導灯に影響が及びにくいという効果があると考えられます。
ここまでのつながりを順に並べます。
- 国の規則第28条の3第4項第9号から第11号が、誘導灯の電源・非常電源・配線を定める
- 東大阪市の第6の柱書が、これらの規定によるほか、次によるとする
- 1の(1)で、非常電源を内蔵しない誘導灯の常用電源を配電盤又は分電盤からの専用回路とする(非常用の照明装置との同一回路は可)
- 1の(2)で、1つの専用回路は2以上の階にわたらないとし、階段・傾斜路の通路誘導灯は例外とする(◆行政指導基準)
- 1の(3)で、停電の検出と非常電源への切り替えを専用回路ごとに自動で行うとする
印が◆なら、守らなくてもよいということですか?
行政指導基準でも、東大阪市が求めている内容です。
外したいときは設計の段階で所轄に相談しましょう。
非常電源を内蔵した誘導灯や階段の照明はどう扱うのか

書かれているとおりに読むと、内蔵型には(2)の階の決まりと(3)の回路ごとの停電検出は借りられていないことになります。内蔵型は器具ごとに蓄電池を持っているので、(3)の切り替えを器具の中で行う仕組みだからと考えられます。階で回路を分けるかどうかは、計画の段階で所轄に確かめると確実です。
3は、階段の誘導灯を建築基準法の非常用の照明装置で代える場合です。
イ 照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。(略)
ハ 予備電源を設けること。
内蔵型も専用回路で、階段の照明は二つの法令をまたいで読むのですね。
はい、容量は60分間、構造は建築基準法の非常照明です。
条番号のずれにも気をつけましょう。
大阪市や堺市と比べると何が違うのか

堺市消防局の審査基準は、誘導灯の節の5に電源及び配線を置いています。
(2) 電源の開閉器には、誘導灯用のものである旨を表示すること。
(3) 誘導灯の非常電源(別置形のものに限る。)及びその配線は、第3 非常電源の例によること。
(5)と(6)が、回路と切り替え装置の項目です。
(6) 非常電源と常用電源との切替装置及び常用電源の停電検出装置の取付場所は、原則として誘導灯回路を分岐している分電盤、配電盤又は誘導灯器具内とすること。ただし、切替装置を内蔵する浮動充電方式の蓄電池設備を用いるものにあっては、これによらないことができる。
(5)の地絡(漏電)で遮断する装置の扱いは、堺市の非常電源回路の漏電遮断器の記事で解説しています。5には印がなく、凡例の「無印」(法令基準及びその解釈)に当たります。
堺市の誘導灯の節を全文で検索したところ、1つの回路を2以上の階にまたがらせないとする項目は見当たりませんでした。比べると次のとおりです。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 柱書の根拠 | 令第26条第2項第4号・規則第28条の3第4項第9号〜第11号 | 同じ+第6章「非常電源の基準」 | 項目ごとに国の規定や第3 非常電源の例による |
| 常用電源の回路 | 配電盤又は分電盤から専用回路(非常用の照明装置と同一回路は可) | 同じ | 蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる |
| 回路と階 | 1の専用回路は2以上の階にわたらない(階段・傾斜路の通路誘導灯は例外)◆ | 同じ(◆) | 項目は見当たらない |
| 停電の検出と切り替え | 専用回路ごとに自動で行う(常時浮動充電方式の別置型蓄電池設備は例外) | 同じ | 切替装置と停電検出装置は分電盤・配電盤・誘導灯器具内に付ける(切替装置を内蔵する浮動充電方式は例外) |
| 非常電源を内蔵した誘導灯 | 1の(1)により専用回路 | 同じ | 内蔵型を名指しした項目は見当たらない |
| 開閉器の表示 | 第6には書かれていない(国の規則第24条第3号ロの例による) | 同じ | 誘導灯用のものである旨を表示 |
| 階段の非常用の照明装置 | 60分間以上のものを建基令第126条の5の基準で設ける | 同じ | 予備電源も(4)の容量と同様とする |
- 誘導灯が非常電源を内蔵しない型(別置型)か、内蔵した型かを分ける
- 常用電源を配電盤又は分電盤からの誘導灯の専用回路にしているか(非常用の照明装置との共用は可)
- 別置型の回路が2以上の階にまたがっていないか(階段・傾斜路の通路誘導灯は例外)
- 停電の検出と非常電源への切り替えが専用回路ごとに自動で行われるか(常時浮動充電方式の別置型蓄電池設備なら例外)
- 単線結線図に回路の範囲を書き、所轄の消防署と事前に協議したか
大阪市は同じで、堺市は回路の階の分け方を書いていないのですね。
はい、東大阪市と大阪市は◆で階ごとの回路を求めています。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず誘導灯ごとに別置型か内蔵型かを図面で分けます。
回路の範囲も単線結線図に書き込みます!
東大阪市では、専用回路と階ごとの分け方をそろえるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「誘導灯及び誘導標識の運用基準」凡例、第6 電源及び配線(柱書・1(1)〜(3)・2・3) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例、第3章 第2節 誘導灯及び誘導標識 第6 電源及び配線(柱書・1(1)〜(3)・2・3) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例、第3章 第1節 第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 5 電源及び配線((1)〜(6)) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第26条第2項第4号/消防法施行規則 第24条第3号、第28条の2第2項第5号、第28条の3第4項第9号〜第11号/建築基準法施行令 第126条の5(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および東大阪市・大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で誘導灯の電源回路をどう構成するかは、設計の段階で所轄の消防署にご確認ください。





