ふつうの厨房や調理室は、消防法施行規則で煙感知器を付けない場所とされ、熱感知器を選ぶのが基本です。
ところが鈴鹿市消防本部の「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」には、グループホームなどの台所を一般住宅の台所に近いものとして扱う文が2か所あります。
1つはスプリンクラー設備を免除する構造の節、もう1つは特定小規模施設用自動火災報知設備の節で、読み替える先が違います。
国の条文から鈴鹿市の取扱いまでを順にたどり、埼玉県央広域・大阪市など他の消防本部の書き方と比べます。
鈴鹿市で平屋のグループホームを計画していて、台所の感知器をどうするかで迷っています。
厨房には煙感知器を付けないと聞いたのですが、本当ですか。
一般の厨房はそのとおりですが、グループホームの台所には別の扱いが書かれています。
どの規定で見るかによって結論が変わるので、順番に確かめましょう。
同じ台所なのに、規定によって感知器が変わることがあるのですね。
スプリンクラーの免除で見るときは煙感知器、特小自火報で見るときは熱感知器が前提になります。
まず、ふつうの厨房の決まりから見ていきます。
- 消防法施行規則第23条第4項第1号ニ(ハ)は、厨房その他正常時において煙が滞留する場所を煙感知器を設けない場所としている
- スプリンクラー設備を免除する規則第12条の2第2項第2号の構造では、この場所を除いて感知器を煙感知器にすることが要件になっている
- 鈴鹿市の審査基準は、(6)項ロの台所は一般住宅に類するとして煙が滞留する場所に原則該当しないと扱ってよいとし、特定住戸部分の台所も同じ扱いにしている
- 特定小規模施設用自動火災報知設備の節では、(6)項ロ・ハの台所は高湿度の場所に原則該当しないとして、防水型にしなくてよい扱いにしている
- 同じ扱いは埼玉県央広域が同文で載せ、大阪市は特小自火報の(6)項ロだけを書き、東大阪市・堺市・四日市市・津市の資料には記載が見当たらない
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目次
ふつうの厨房にはなぜ煙感知器を付けないのか

消防法施行規則は、煙感知器を付けてはいけない場所を列挙しています。
自動火災報知設備の感知器の設置は、次に定めるところによらなければならない。
一 感知器は、次に掲げる部分以外の部分で、点検その他の維持管理ができる場所に設けること。
ニ 煙感知器及び熱煙複合式スポット型感知器にあつては、イからハまでに掲げる場所のほか、次に掲げる場所
(ハ) 厨房その他正常時において煙が滞留する場所
厨房、調理室等で高湿度となるおそれのある場所に設ける感知器は、防水型を使用すること。
調理の煙や湯気でいつも反応してしまうため、規則第23条は厨房を煙感知器を設けない場所に入れています。
鈴鹿市の第10-1表も、この行は煙感知器を付けず、熱感知器を選ぶ並びになっています。
さらに備考欄で、高湿度になるおそれのある厨房や調理室の感知器は防水型にするよう求めています。
つまり一般の厨房は「熱感知器で、湿気が多ければ防水型」が出発点になります。
うちの台所も、この決まりどおりなら熱感知器で防水型になるのですね。
一般の厨房ならそうなります。
ただしグループホームの台所には、この出発点を変える読み替えが2つあります。
スプリンクラーを免除するグループホームでは台所の感知器はどうなるのか

そのうち延べ面積100㎡未満の平屋向けの構造に、感知器の種類を指定する要件が入っています。
第2項 (略)令別表第一(6)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる防火対象物のうち、入居者等の利用に供する居室が避難階のみに存するもので、延べ面積が100平方メートル未満のもの(略)においては、(略)次の各号のいずれかに定めるところによるものとする。
二 (略)イ 第23条第4項第1号ニに掲げる場所を除き、自動火災報知設備の感知器は、煙感知器であること。
第3項第6号 居室及び通路に煙感知器を設けたものであること。
(6)項ロに存する台所は、特に一般住宅における規模及び環境に類するものであることにかんがみ、省令第23条第4項第1号ニ(ハ)「厨房その他正常時において煙が滞留する場所」には、原則該当しないものとして取り扱って差し支えない。
鈴鹿市の文は、国の条文を次の順でつないで読むと意味がはっきりします。
- 消防法施行令第12条第1項第1号は、(6)項ロなどのスプリンクラー設備から総務省令で定める構造を有するものを外している
- その構造の1つが規則第12条の2第2項第2号で、居室が避難階だけにある延べ面積100㎡未満の施設が対象になる
- 同号イは「規則第23条第4項第1号ニの場所を除き、感知器は煙感知器」としている
- 規則第23条第4項第1号ニ(ハ)には厨房が入っているので、ふつうなら台所は除かれる側になる
- 鈴鹿市の⑷イ(ア)aは、(6)項ロの台所をこの(ハ)に原則該当しないものとして扱ってよいとしている
鈴鹿市は、(16)項イの建物の中にある特定住戸部分(規則第12条の2第3項)でも、⑸イ(カ)で各住戸の台所を同じように扱っています。
なお、鈴鹿市の文は「差し支えない」という書き方なので、台所に煙感知器を付けるかどうかは計画の段階で消防本部と詰める項目になります。
避難時間の計算でスプリンクラーを外すなら、台所も煙感知器で考えておく必要があるわけですね。
そう読めます。
設計図の感知器の凡例に、台所も煙感知器で描いてあるかを最初に見てください。
特定小規模施設用自動火災報知設備なら台所の感知器は防水型でなくてよいのか

鈴鹿市はこの節で、台所の感知器の選び方にもう1つの読み替えを置いています。
第10 自動火災報知設備第4⑴を準用する。この場合において、特定小規模施設のうち(6)項ロ又はハに存する台所は、一般住宅における規模及び環境に類するものであることに鑑み、第10-1表の備考欄中に掲げる「厨房、調理室等で高湿度となるおそれのある場所」には、原則として、該当しないものとして取り扱う。
特小自火報の感知器の選び方は、第10の第4⑴をそのまま借りて、第10-1表で決める仕組みです。
そのうえで⑴ウは、(6)項ロ・ハの台所だけを表の備考の高湿度から外しています。
外しているのは備考の防水型の部分だけで、厨房の行そのもの(煙感知器を付けない並び)は残っています。
そのため特小自火報で見る台所は熱感知器のままで、防水型までは求めない、という結論になります。
壁に定温式を付ける場合は、⑴イのとおり公称作動温度65℃以下の特種にする点もあわせて確かめておきます。
つまり特小自火報なら熱感知器のままで、防水型の指定だけが外れるということですね。
そのとおりです。
スプリンクラー免除の煙感知器の要件とは向きが違うので、両方を当てる建物では取り違えに気をつけてください。
ほかの消防本部でも台所の扱いは同じなのか

書いてあるかどうかが、スプリンクラー免除と特小自火報で分かれています。
自動火災報知設備の基準を準用する。ただし、特定小規模施設のうち令別表第1(6)項ロに存する台所は、別表2-1-1備考欄中の「厨房、調理室等で高湿度となるおそれのある場所に設ける感知器は、防水型を使用すること」とある場所に、原則該当しないものとして取り扱うこと。
埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市)の審査基準は、鈴鹿市とほぼ同じ文を2つの節に置いています。
大阪市は特小自火報の節だけに書き、対象は(6)項ロの台所で、(6)項ハには触れていません。
東大阪市・堺市・四日市市・津市は、今回確認した資料の該当する節に台所の扱いが見当たりませんでした。
| 消防本部 | スプリンクラー免除(規則第12条の2)の台所 | 特小自火報の台所 |
|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 第3章 第9 ⑷イ(ア)a=(6)項ロの台所は煙が滞留する場所に原則該当しない/⑸イ(カ)=特定住戸部分の台所も同じ(記号なし) | 第10の3 6⑴ウ=(6)項ロ・ハの台所は高湿度に原則該当しない(記号なし) |
| 埼玉県央広域 | 第9 ⑷イ(ア)a・⑸イ(カ)=鈴鹿市とほぼ同文(記号なし) | 第10の3 6⑴ウ=(6)項ロ・ハの台所(記号なし) |
| 大阪市 | 該当する記述は見当たらない | 第4節 第5 2(1)=(6)項ロの台所だけ(◆なし) |
| 東大阪市・堺市・四日市市・津市 | 該当する記述は見当たらない | 該当する記述は見当たらない |
書いていない本部では、台所はふつうの厨房と同じ扱いになるのでしょうか。
資料に書いていないだけで、扱いまで違うとは言い切れません。
その本部で計画するときは、台所の扱いを事前相談で確かめるのが確実です。
自分の施設の台所はどこから確かめればよいのか

鈴鹿市の文を手がかりに、確かめる順番を並べます。
省令第12条の2第1項第1号ロただし書き及び第2項第2号を適用できる防火対象物は、入居者等の利用に供する居室が避難階のみに存するもので、延べ面積が100㎡未満の(6)項イ(1)及び(2)並びにロに掲げる防火対象物などとする。
1つ目に、施設が(6)項ロか(6)項ハかを確かめます(スプリンクラー免除の台所の文は(6)項ロ、特小自火報の文はロとハが対象です)。
2つ目に、スプリンクラー設備を避難時間の算定などの構造で外すのか、自動火災報知設備を特小自火報にするのかを決めます。
3つ目に、台所が一般住宅並みかを見ます。審査基準は一般住宅に類することを理由にし、「原則」と書いているので、大きな業務用の厨房に近い場合はこの扱いに当たるかを消防本部に確かめます。
最後に、感知器の種別(煙・熱・防水型)を台所ごとに図面へ書き込み、事前相談で示すと手戻りが減ります。
入居者の食事をまとめて作る広い台所だと、扱いが変わるかもしれないのですね。
その可能性があります。
台所の広さと調理機器の一覧を用意して、一般住宅並みと言えるかを相談してください。
よくある質問
まとめ
スプリンクラーの外し方と自火報の種類を決めてから、台所の感知器を図面に書き込んでみます!
台所が一般住宅並みと言えるかの資料もそろえておくと、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第9 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造の取り扱い ⑷・⑸、第4章 第10 自動火災報知設備 第10-1表、第10の3 特定小規模施設用自動火災報知設備 6⑴ https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 消防法施行令 第12条、消防法施行規則 第12条の2・第23条(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第9 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造の取り扱い、第10の3 特定小規模施設用自動火災報知設備 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第4節 特定小規模施設用自動火災報知設備 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」 審査基準・告示・ガイドラインのページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-11 自動火災報知設備 https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は鈴鹿市消防本部などが公表している審査基準と、消防法令に基づく一般的な解説です。審査基準の文章は要旨を自分の言葉でまとめ、鈴鹿市と埼玉県央広域の該当箇所に行政指導の記号が無いことは原本の画像で確かめました。「見当たらない」としたものは、各本部の資料のうち確認できた節の範囲の結果です。東大阪市は今回確認した資料にスプリンクラー設備の免除や特小自火報の節が無かったため、記述なしとして扱いました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。





