劇場の客席や百貨店の売場で見かける「禁煙」「火気厳禁」の標識には、市の火災予防条例という根拠があります。
ただ、条例が並べるのは場所の種類だけで、実際にどこを禁止場所にするかは消防長の指定で決まります。
四日市市は、条例の条番号も、指定の告示の中身も、喫煙所についての書き方も、国の条例(例)や近隣の消防本部と少しずつ違っています。
四日市市の条例・規則・告示をたどり、埼玉県央広域・羽生市・鈴鹿市と比べます。
四日市市で小さなホールを管理しています。
客席が禁煙なのは分かるのですが、ロビーや楽屋まで決まりがあるのか分かりません。
どこが禁止場所になるかは、四日市市消防本部の告示に一つずつ書いてあります。
ロビーは喫煙ではなく、危険物品の持込みが禁止される場所に入っています。
よその市でも、同じ場所が指定されているのですか。
骨組みは同じですが、駐車場や駅の待合を入れるかどうかなど、指定の中身は本部ごとに違います。
条例から順にたどってみましょう。
- 四日市市では喫煙等の禁止を火災予防条例第25条が定め、国の条例(例)や鈴鹿市・埼玉県央広域の第23条と条番号が違う
- 実際の禁止場所は、平成10年の四日市市消防本部告示第2号が、劇場の客席から文化財の周囲まで8つ並べている
- 埼玉県央広域は自動車車庫・駐車場と駅などの待合を指定に入れ、羽生市も駅の待合を入れているが、四日市市の告示には出てこない
- 四日市市の条例には、条例(例)にある「全面禁煙の措置か喫煙所の設置か」の二択や、劇場の喫煙所を階ごとに客席の30分の1以上とする規定が見当たらない
- 禁止を解いて火を使うときは、四日市市では規則第9条第2項により、あらかじめ消防署長への届出をする
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目次
四日市市で喫煙や裸火が禁止される場所はどう決まるのか

四日市市の条例では、それが第25条に置かれています。
次に掲げる場所で、消防長が指定する場所(以下この条において「指定場所」という。)においては、喫煙し、若しくは裸火を使用し、又は当該場所に火災予防上危険な物品を持ち込んではならない。ただし、消防署長が火災予防上支障がないと認めたときは、この限りでない。
(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂若しくは集会場(以下「劇場等」という。)の舞台又は客席
(2)百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗若しくは展示場(以下「百貨店等」という。)の売場又は展示部分
(3)文化財保護法(略)の規定によって重要文化財(略)として指定され(略)た建造物の内部又は周囲
(4)第1号及び第2号に掲げるもののほか、火災が発生した場合に人命に危険を生ずるおそれのある場所
どの建物のどの部分を禁止場所にするかは、条例が「消防長が指定する場所」と書いて、消防長の指定に任せています。
この条例の土台は消防法第9条で、火の使用に関して火災予防に必要なことは市町村条例で定めるとしています。
国が示す火災予防条例(例)では同じ内容が第23条にあり、鈴鹿市・埼玉県央広域事務組合・羽生市の条例も第23条ですが、四日市市は第25条です。
条文から現場の標識までは、次の順につながっています。
- 消防法 第9条:火の使用に関し火災の予防に必要な事項は市町村条例で定める
- 四日市市火災予防条例 第25条第1項:場所の種類(第1号〜第4号)と「消防長が指定する場所」
- 四日市市消防本部告示 平成10年第2号:禁止場所を具体的に指定
- 条例第25条第2項と四日市市火災予防規則 別表第1:指定場所の標識(大きさと色)
- 条例第25条第1項ただし書と規則第9条第2項:禁止を解くときの届出
条例を読んだだけでは、うちのホールが入るかどうか決まらないのですね。
そうなんです、決め手は告示のほうです。
四日市市消防本部のサイトに載っているので、まずそれを手元に置いてください。
四日市市の告示はどの場所を指定しているのか

告示は「三つとも禁止の場所」と「持込みだけ禁止の場所」を分けて並べています。
1 喫煙等の禁止場所は、次の各号のとおりとする。
(1)喫煙し、若しくは裸火を使用し、又は火災予防上危険な物品を持ち込んではならない場所
ア 劇場、映画館又は演芸場の客席及び舞台部
イ 観覧場の客席(屋外観覧場の客席を除く。)及び舞台部
ウ 公会堂又は集会場(特定の地域で管理しその住民が使用するものを除く。)の客席及び舞台部
エ キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール又は飲食店の舞台部
オ 百貨店(延べ面積が1,000平方メートル以上の小売店舗を含む。)の売場
カ 屋内展示場の展示部分
キ テレビスタジオの撮影用セットを設ける部分
ク 文化財保護法(略)の規定によって重要文化財(略)として指定され(略)た建造物の内部又は周囲。ただし、当該場所において行われる伝統的行事、宗教的行事等及び生活に必要な行為による場合は、この限りでない。
(2)火災予防上危険な物品を持ち込んではならない場所
ア 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場(第1号アからウまでに掲げる場所を除く。)の公衆の出入りする部分
イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、ダンスホール又は飲食店で公衆の出入りする場所
2 前項の規定は、体育館、講堂その他の防火対象物を一時的に同項各号に掲げる場所の用途に供する場合について準用する。
劇場・映画館・演芸場は客席と舞台部、観覧場は屋内の客席と舞台部、公会堂・集会場は客席と舞台部で、地域の住民が使う集会所は外れています。
物品販売の店舗は「百貨店」の売場で、延べ面積1,000平方メートル以上の小売店舗も百貨店に含めると書いています。
劇場等のロビーや廊下のような公衆の出入りする部分と、飲食店などで公衆の出入りする場所は、持込みだけが禁止される場所です。
第2項があるので、体育館や講堂を一時的にコンサートや集会に使うときも、同じ禁止がかかると読めます。
うちのホールのロビーは、持込みだけが禁止される場所に当たるのですね。
告示の書き方ではそうなります。
客席と舞台、ロビーの範囲を図面に色分けしておくと、標識の置き場所も決めやすくなります。
埼玉県央広域と羽生市の指定は四日市市とどこが違うのか

並べると、指定に入る場所と除く場所がかなり違います。
条例第23条第1項に規定する消防長が指定する場所は、次に掲げるものとする。
(1)喫煙し、若しくは裸火を使用し、又は危険物品を持ち込んではならない場所
(略)
オ 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場で売り場、展示部分及び通常顧客が出入りする部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上のもの(喫煙にあっては、喫煙設備のある場所を除く。)
カ 自動車車庫及び駐車場(自動車の燃料タンク内の燃料については除く。)で、消防法施行令(略)第13条第1項の規定により同項の表に規定する消火設備を設置すべきものとされているもの
(略)
(2)危険物品を持ち込んではならない場所
(略)
ウ 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場(旅客の乗降又は待合の用に供する建築物に限る。)
四日市市は「百貨店の売場」を指定し、延べ面積1,000平方メートル以上の小売店舗を百貨店に含めます。
埼玉県央広域は売場・展示部分・通常顧客の出入りする部分の床面積の合計で、羽生市は百貨店等の床面積の合計で、1,000平方メートル以上かどうかを見ています。
埼玉県央広域だけが自動車車庫・駐車場を三つとも禁止の場所に入れ、駅などの待合は埼玉県央広域と羽生市が持込み禁止に入れています。
また、埼玉県央広域と羽生市は、観覧場の屋外の客席や全部の床が不燃材料の客席、公会堂や集会場の喫煙設備のある客席を「喫煙にあっては」除くと書き、喫煙だけを外す場所を細かく分けています。
| 項目 | 四日市市(告示 平成10年第2号) | 埼玉県央広域(規程第9条) | 羽生市(要綱第8条) |
|---|---|---|---|
| 物品販売の店舗 | 百貨店の売場(延べ面積1,000平方メートル以上の小売店舗を含む) | 売場・展示部分・顧客の出入りする部分の合計1,000平方メートル以上(喫煙は喫煙設備のある場所を除く) | 床面積の合計1,000平方メートル以上の百貨店等の売場と顧客の出入りする部分(喫煙は食堂部分の喫煙設備のある場所を除く) |
| 展示場 | 屋内展示場の展示部分 | 店舗と同じ枠で合計1,000平方メートル以上 | 屋内展示場で公衆の出入りする部分 |
| 観覧場の客席 | 屋外観覧場の客席を除く | 喫煙について屋外の客席・全部の床が不燃材料の客席を除く | 埼玉県央広域と同じ |
| 自動車車庫・駐車場 | 記載なし | 政令第13条第1項の消火設備が要るもの | 記載なし |
| スタジオ | テレビスタジオの撮影用セット | 映画スタジオ又はテレビスタジオの撮影用セット | 埼玉県央広域と同じ |
| 文化財 | 指定あり(伝統的行事・宗教的行事・生活に必要な行為を除く) | 規程第9条の列挙には記載なし | 指定あり(裸火は日常の火気・宗教的行事等、喫煙と持込みは住宅部分を除く) |
| 持込みだけ禁止 | 劇場等の公衆の出入りする部分・飲食店等で公衆の出入りする場所 | 左の2つ+車両の停車場・船舶や航空機の発着場 | 左の2つ+車両の停車場 |
| 一時転用 | 体育館・講堂等に準用 | 規程第9条には記載なし | 体育館・講堂等に準用 |
同じ駐車場でも、鴻巣市にあれば禁止場所になることがあるのですね。
はい、消火設備が義務になる規模の駐車場なら指定場所に入ります。
複数の市に施設がある会社は、市ごとの告示を必ず見比べてください。
指定場所のある建物は喫煙所をどう扱えばよいのか

四日市市の第25条は、ここの書き方が国の条例(例)とはっきり違います。
3 第1項の消防長(消防署長)が指定する場所(同項第3号に掲げる場所を除く。)を有する防火対象物の関係者は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次の各号に定める措置を講じなければならない。
一 当該防火対象物内において全面的に喫煙が禁止されている場合 当該防火対象物内において全面的に喫煙が禁止されている旨の標識の設置その他の(略)消防長(消防署長)が火災予防上必要と認める措置
二 前号に掲げる場合以外の場合 適当な数の吸殻容器を設けた喫煙所の設置及び当該喫煙所における「喫煙所」と表示した標識の設置(略)
5 第3項第2号に掲げる場合において、劇場等の喫煙所は、階ごとに客席及び廊下(略)以外の場所に設けなければならない。(略)
6 前項の喫煙所の床面積の合計は、客席の床面積の合計の30分の1以上としなければならない。(略)
指定場所(第1項第3号に掲げる場所を除く。)を有する防火対象物に喫煙所を設ける場合は、「喫煙所」と表示した標識を設けなければならない。ただし、健康増進法(略)第33条第2項に規定する喫煙専用室標識を設ける場合においてはこの限りでない。
条例(例)、鈴鹿市、埼玉県央広域の条例には、全面禁煙のときの措置と、それ以外のときの喫煙所の設置という二択があり、劇場等の喫煙所は階ごとに置き、床面積を客席の30分の1以上とする規定まであります。
四日市市の条例全文を見ても「喫煙所」が出てくるのは第25条だけで、この二択と、階ごと・30分の1の規定に当たる文は見当たりませんでした。
埼玉県央広域は規程第9条第2項で、全面禁煙のときの措置として入口の標識・定期的な館内巡視・館内放送などを具体的に挙げています。
四日市市でも、第2項の禁煙等の標識と第5項の制止の義務はかかるので、喫煙所を設けない建物でも標識と巡回の手順は決めておくのが確実です。
四日市市なら、喫煙所の広さを客席から計算しなくてよいのですか。
条例の文には30分の1の規定はありませんが、指導の有無までは条文から分かりません。
喫煙所を作り直すときは、図面を持って四日市市消防本部に確かめてください。
指定場所で火を使う演出をするにはどうすればよいのか

四日市市では、条例のただし書と規則の届出が組み合わさっています。
条例第25条第1項ただし書の規定の適用を受けようとする者は、あらかじめ、喫煙・裸火の使用・危険物品持込届出書(第8号様式)により消防署長に届け出なければならない。
条例第25条第1項のただし書は「消防署長が火災予防上支障がないと認めたとき」と書き、国の条例(例)・鈴鹿市・埼玉県央広域が「消防長」と書く所を消防署長にしています。
埼玉県央広域は規程第10条で、消防長に申請して承認を受けるものとし、行為の7日前までに正本と副本の2部を出すと決めています。
指定場所の標識は、四日市市では規則の別表第1が幅0.25メートル以上・長さ0.5メートル以上、地を赤・文字を白としており、鈴鹿市は条例の第23条第2項に地を赤色・文字を白色と書いています。
文化財の周囲は、四日市市の告示が伝統的行事や宗教的行事などを最初から除いているので、行事の火がどちらに当たるかを先に確かめると手戻りがありません。
つまり、演出でろうそくを使う公演は、前もって届出書を出しておくのですね。
そうです、使う火の種類と消火の準備を書けるよう、主催者と早めに打ち合わせておきましょう。
日程が詰まってからでは間に合わないことがあります。
よくある質問
まとめ
ホールの図面に指定場所を色分けして、標識の位置を見直してみます!
喫煙所や演出の火の扱いも、消防計画とあわせて整えておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 四日市市消防本部告示 平成10年第2号「四日市市火災予防条例に基づく喫煙等の禁止場所の指定について」 掲載PDF(四日市市消防本部)
- 四日市市火災予防条例 第25条・四日市市火災予防規則 第9条・別表第1(四日市市例規集) 四日市市例規集
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第23条 掲載PDF(総務省消防庁)
- 鈴鹿市火災予防条例 第23条(鈴鹿市例規集)
- 埼玉県央広域事務組合火災予防条例 第23条・埼玉県央広域消防本部火災予防規程 第9条・第10条(埼玉県央広域事務組合例規集)
- 羽生市火災予防要綱 第8条(羽生市例規集)
- 消防法 第9条(e-Gov法令検索)
※本記事は四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域事務組合・羽生市が公表している条例・規則・告示と、火災予防条例(例)・消防法に基づく一般的な解説です。長い条文は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





