木造モルタルの店舗や事務所に付ける漏電火災警報器は、変流器で漏れた電流をとらえ、受信機で警報を鳴らす設備です。
国の規則は「定格電流以上の変流器」「誤報が生じない適正な設定値」と書くだけで、具体的に何アンペアの変流器を選び、何ミリアンペアで鳴らすかまでは決めていません。そこを各消防本部の基準が補っています。
この記事では、大阪市消防局の運用基準が変流器の容量・検出漏えい電流設定値(感度)・電源の取り方をどう決めているかを、国の基準と市の運用に分けてたどります。運用基準が国の規則の号をどう具体化しているかを番号つきの手順で示し、堺市の審査基準とも比べます。
大阪市の店舗に漏電火災警報器を付けます。
感度は何ミリアンペアにすればよいですか?
大阪市は警戒電路なら100〜400ミリアンペアを標準としています。
国の条文から順に見ていきましょう。
変流器の大きさや電源の取り方も決まっているのですか?
はい、大阪市は変流器の定格電流値と電源の回路も決めています。
堺市とも比べます。
- 国の消防法施行規則第24条の3は、変流器を警戒電路の定格電流以上とし、検出漏洩電流設定値を誤報が生じない適正な値とするだけで、数値は置いていません
- 大阪市の運用基準は、変流器を負荷電流の総和としての最大負荷電流値以上、B種接地線に設けるものは定格電圧の数値の20パーセント以上の電流値としています
- 検出漏えい電流設定値は、警戒電路で100〜400ミリアンペア、B種接地線で400〜800ミリアンペアを標準に、誤報が生じない範囲で設定します
- 電源は主開閉器の一次側から専用回路とし、開閉器には白地に赤文字で漏電火災警報器の電源である旨を表示します
- 堺市は、B種接地線の設定値を400〜1,000ミリアンペアとし、変流器を契約電流容量の125%以上で選べる決まりがある点が大阪市と違います。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では漏電火災警報器の変流器と設定値はどう決まっているのか

二 変流器は、建築物に電気を供給する屋外の電路(建築構造上屋外の電路に設けることが困難な場合にあつては、電路の引込口に近接した屋内の電路)又はB種接地線で、当該変流器の点検が容易な位置に堅固に取り付けること。
四 検出漏洩電流設定値は、誤報が生じないように当該建築物の警戒電路の状態に応ずる適正な値とすること。
- 変流器は警戒電路の定格電流以上、B種接地線に設けるものはその接地線に流れることが予想される電流以上の電流値を持つものにする(第1号)
- 変流器は、建物に電気を送る屋外の電路(難しければ引込口に近い屋内の電路)かB種接地線に、点検しやすく堅固に付ける(第2号)
- 検出漏洩電流設定値は誤報が生じない適正な値とするが、何ミリアンペアという数値は書かれていない(第4号)
どんな建物に設置義務があるかは漏電火災警報器の設置対象の記事で、契約電流容量の数え方は鴻巣市の契約電流容量の記事で解説しています。
国の規則には、感度の数値は書かれていないのですね。
はい、「適正な値」とだけ書かれています。
大阪市がどう具体化しているかを見ます。
大阪市は変流器の容量と付ける位置をどう決めているのか

(1) 警戒電路に設ける場合は、当該警戒電路における負荷電流(せん頭負荷電流を除く。)の総和としての最大負荷電流値以上とすること
(2) 電気設備に関する技術基準を定める省令(略)に定めるB種接地工事における接地線(以下「B種接地線」という。)に設ける場合は、当該警戒電路の定格電圧の数値の20パーセントに相当する数値以上の電流値とすること
6 変流器を屋外の電路に設ける場合は、屋外型のものを設けるものとする。ただし、防水上有効な措置を講じた場合にあっては、この限りでない。
- 国の規則第24条の3第1号は、変流器を警戒電路の定格電流以上(B種接地線は予想される電流以上)とする
- 大阪市の第3 柱書は、規則第24条の3の規定によるほか、運用基準の各項によるとする
- 第3 4(1)は、警戒電路の「定格電流」を負荷電流の総和としての最大負荷電流値で測るとし、せん頭負荷電流(起動時などの一時的な大電流)は除くとしている
- 第3 4(2)は、B種接地線に付ける変流器を定格電圧の数値の20パーセントに相当する数値以上の電流値とする。B種接地線の意味は、国の電気設備の技術基準(電気設備技術基準省令等)のB種接地工事の接地線を借りている
- 位置は、規則第24条の3第2号の「屋外の電路」を受けて、第3 5が引込部の外壁等に近接した電路又はB種接地線と具体化し、屋外なら屋外型(第3 6)とする
点検のときに変流器の容量をどう判定するかは変流器の容量の判定の記事で解説しています。
「定格電流」は、起動のときの一瞬の大電流は数えないのですね。
はい、大阪市はせん頭負荷電流を除いた最大負荷電流値で見ます。
次は感度の数値です。
大阪市は検出漏えい電流設定値を何ミリアンペアにしているのか

(1) 誘導防止用コンデンサを、受信機の変流器接続用端子及び操作電源端子に入れること
(2) 変流器の二次側配線は、次によること
ア 配線にはシールドケーブルを使用するか、配線相互間を密着して設けること(略)
ウ 大電流回路からできる限り離隔すること
- 国の規則第24条の3第4号は、設定値を誤報が生じない適正な値とだけ定める
- 大阪市の第3 11は、負荷電流・使用電線・電線の長さなどを考えたうえで、警戒電路なら100〜400ミリアンペアを標準とする
- B種接地線に付けるものは400〜800ミリアンペアを標準とする
- どちらも「標準」であり、最終的には誤報が生じない範囲内に設定する
- 高周波による誘導障害のおそれがあれば、第3 3◆の誘導防止用コンデンサ・シールドケーブル・大電流回路からの離隔などの措置をとる
| 変流器を付ける場所 | 大阪市の標準の設定値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 警戒電路 | 100〜400ミリアンペア | 第3 11 |
| B種接地線 | 400〜800ミリアンペア | 第3 11 |
点検で設定値をどう確かめるか、誤報のときに設定値を上げてよいかは漏電火災警報器の設定値の記事で解説しています。
誤報が多いからといって、標準の幅を超えて上げてよいわけではないのですね。
はい、まず標準の幅の中で、誤報の原因を確かめるのが先です。
次は電源です。
大阪市は漏電火災警報器の電源をどこから取るのか

1 電源は、主開閉器の一次側から専用回路とし開閉器(定格15アンペアのヒューズ付開閉器又は定格20アンペアの配線用遮断器)を設けるものとする(図2-3-3)。
4 電源の開閉器には、白地に赤文字で、漏電火災警報器の電源である旨の表示をするものとする。
- 大阪市の第4 柱書は、電源と配線を電気工作物に係る法令の規定によるほか、運用基準の各項によるとする
- 第4 1は、電源を主開閉器の一次側から専用回路で取るとする。主開閉器より上流で分けるので、建物の主開閉器を切っても警報器の電源が残る形になる
- 専用回路には定格15アンペアのヒューズ付開閉器か、定格20アンペアの配線用遮断器を付ける
- その開閉器には白地に赤文字で、漏電火災警報器の電源である旨を表示する(第4 4)
電源の開閉器の表示は、ほかの分岐のブレーカーと見分けて、誤って切られないようにするためのものです。改修工事のときに、表示が残っているかも確かめておきましょう。
電源の開閉器は、色まで決まっているのですね。
はい、大阪市は白地に赤文字と指定しています。
最後に堺市と比べます。
堺市と比べると漏電火災警報器の決まりは何が違うのか

※ B種接地線に設けるもので、当該接地線に流れることが予想される電流値が不明な場合にあっては、当該接地抵抗値を5Ωとして算定した値とすること。
(2) 操作電源は、専用回路とし、開閉器及び15A以下の自動遮断器(配線用遮断器にあっては、20A以下の両切のもの)を設けること。
(3) 操作電源の開閉器には、漏電火災警報器である旨の表示をすること。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 警戒電路の変流器 | 負荷電流(せん頭負荷電流を除く)の総和としての最大負荷電流値以上 | 定格電流以上。契約電流容量の125%以上なら定格電流以上とみなせる |
| B種接地線の変流器 | 定格電圧の数値の20パーセント以上 | 予想される電流以上。不明なら接地抵抗値を5Ωとして算定 |
| 設定値(警戒電路) | 100〜400ミリアンペアを標準 | 100〜400ミリアンペアの範囲以内 |
| 設定値(B種接地線) | 400〜800ミリアンペアを標準 | 400〜1,000ミリアンペアの範囲以内 |
| 電源の分岐 | 主開閉器の一次側から専用回路 | 電流制限器の一次側から分岐する等、他の遮断器で遮断されない専用回路 |
| 電源の開閉器 | 定格15アンペアのヒューズ付開閉器か定格20アンペアの配線用遮断器 | 開閉器と15A以下の自動遮断器(配線用遮断器は20A以下の両切) |
| 開閉器の表示 | 白地に赤文字で漏電火災警報器の電源である旨 | 漏電火災警報器である旨(色の指定は見当たらない) |
| 高周波の誘導障害の対策 | コンデンサ・シールドケーブル等の措置(◆) | 影響を受けるおそれのある場所に設けない決まりはあるが、対策の項目は見当たらない |
| 屋外の変流器 | 屋外型(防水上有効な措置なら例外) | 屋外型(防水上有効な措置なら屋内型も可・★) |
違いが出るのは、B種接地線の設定値の上限(大阪市は800、堺市は1,000ミリアンペア)と、変流器の容量の確かめ方(大阪市は最大負荷電流値、堺市は契約電流容量の125%でもよい)の2点です。たとえば契約電流容量が60アンペアなら、堺市では125%の75アンペア以上の変流器を付ければ、定格電流以上とみなせます。 大阪市で漏電火災警報器を計画するときは、次の順に確かめると抜けが出ません。
- 変流器を引込部の外壁等に近い電路に付けるか、B種接地線に付けるかを決め、屋外なら屋外型にする
- 警戒電路ならせん頭負荷電流を除いた最大負荷電流値以上、B種接地線なら定格電圧の数値の20パーセント以上の変流器を選ぶ
- 設定値は、警戒電路で100〜400ミリアンペア、B種接地線で400〜800ミリアンペアを標準に、誤報が出ない値にする
- 高周波の機器が多い建物では、コンデンサ・シールドケーブル・大電流回路からの離隔を検討する
- 電源は主開閉器の一次側から専用回路で取り、開閉器に白地に赤文字で表示する
堺市の基準に慣れている人は、大阪市のB種接地線の上限に注意ですね。
はい、大阪市は800ミリアンペアが標準の上限です。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず変流器を付ける場所と容量を図面で確かめます。
そのうえで消防局に協議します!
大阪市はB種接地線の設定値と電源の表示が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第2章 第3節 漏電火災警報器 第3 設置場所及び設置方法 3・4・5・6・10・11、第4 電源及び配線 1・4 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 凡例/第14 漏電火災警報器 Ⅱ 細目 2・3・4、同 検査の基準 第14 漏電火災警報器 Ⅰ 外観検査 2(3) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第22条、消防法施行規則 第24条の3(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。大阪市と堺市がB種接地線の設定値の上限をそれぞれ800ミリアンペア・1,000ミリアンペアとした理由は、運用基準・審査基準に書かれていないため、この記事では断定していません。





