堺市の高層建築物では、特別避難階段の付室の戸や風道や隣の部屋の造り方まで、消防局の審査基準が書いています。
国の建築基準法施行令は、付室から階段室に通じる出入口に防火設備を求めています。堺市の指導指針は、そこに常時閉鎖式の特定防火設備などを書き足しています。
この記事では、国の法令が決めていることと堺市の指導を分けて、借りている基準を番号つきの手順でたどります。大阪市と東大阪市の公開資料とも照らします。
堺市で高層建築物を計画しています。
特別避難階段の付室は、国の基準どおりに造ればよいのでしょうか?
堺市の審査基準は、付室の戸や風道の造りに上乗せを書いています。
順にたどっていきましょう。
上乗せは、必ず守らないといけないのですか?
指導指針は任意の協力として書かれています。
根拠と一緒に見ていきましょう。
- 堺市の高層建築物に係る指導指針は、高さ31mを超える建築物と地階を除く階数が11以上の建築物が対象で、令別表第1(5)項ロは項目3から5まで及び8が除かれています
- 国の令第123条第3項は、屋内から付室に通じる出入口に特定防火設備、付室から階段室に通じる出入口に防火設備を求めています
- 堺市は、付室から階段に通じる出入口に常時閉鎖式の特定防火設備を設けるよう指導しています
- 堺市はさらに、防火シャッター以外の戸、30cm以上のたれ壁、給気用風道の外気取入口、倉庫の出入口を設けないことなどを指導しています
- 大阪市と東大阪市の公開資料には、付室の戸の種類や形を定めた項は見当たりません。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
堺市の高層建築物の指導指針はどんな建物が対象で何を指導するのか

- 対象は、高さ31mを超える建築物か、地階を除く階数が11以上の建築物
- 令別表第1(5)項ロ(共同住宅等)は、項目3から5まで及び8の規定が除かれる
- 特別避難階段の定めは項目5の(4)にあるので、(5)項ロには及ばないと読める
項目の終わりに付いている印の意味は、審査基準の総則に書かれています。
(3) ★ : 指導基準のうち、堺市消防局として防火安全性の向上を図ることを目的として定めたもの
つまり、守らなければ直ちに違反になる基準ではなく、設計の段階で消防署と話し合って決める事項と考えるとよさそうです。
★は堺市が独自に定めた指導なのですね。
はい、任意の協力を前提にした指導です。
次は国の基準を見ます。
国は特別避難階段の付室と階段室の出入口をどう決めているのか

法令は「付室」、堺市の指導指針は「附室」と書きますが、同じ部屋を指します。このあと、法令の引用は「付室」、堺市の引用は「附室」のままにします。
- 屋内と階段室は、バルコニー又は付室を通じて連絡する(第3項第1号)
- 屋内から付室に通じる出入口は特定防火設備(第3項第10号)
- 付室から階段室に通じる出入口は防火設備(第3項第10号)
- どちらの戸も、常時閉鎖か、随時閉鎖できて煙の発生で自動的に閉まるもので、遮煙性能を持つこと(第1項第6号が引く令第112条第19項第2号)
- 付室の屋内に面する壁には、出入口以外の開口部を設けない(第3項第9号)
なお、付室から階段室へ煙が流れ込むのを防ぐ構造は、国土交通大臣が定めた構造方法か認定によるとされています。
令第123条第3項の条文には、防火シャッターを除く文言や、付室の出入口の上部にたれ壁を設ける定めは書かれていません。堺市の指導は、そこに書き足したものです。
国の基準では、付室から階段室の戸は防火設備なのですね。
はい、特定防火設備を求めるのは屋内から付室の戸です。
堺市の指導を見ましょう。
堺市は付室の出入口の防火戸に何を上乗せしているのか

イ 屋内から附室に通じる出入口の防火戸は、防火シャッター以外の防火戸とすること。
ク 屋内から附室に通じる出入口に設ける防火戸が、両開きの扉の場合にあっては、閉鎖調整器等を設け、扉が閉鎖した場合、間隙が生じないこと。
| 場所・項目 | 国(令第123条第3項) | 堺市(指導指針 5(4)) |
|---|---|---|
| 付室から階段室に通じる出入口 | 防火設備(第10号) | 常時閉鎖式の特定防火設備である防火戸(ア★) |
| 屋内から付室に通じる出入口 | 特定防火設備(第10号) | 防火シャッター以外の防火戸とする(イ★) |
| 付室の出入口の上部 | 条文には書かれていない | おおむね30cm以上の防煙上有効な固定のたれ壁(小壁)(ウ★) |
| 両開きの扉 | 条文には書かれていない | 閉鎖調整器等を設け、閉鎖時に間隙が生じないこと(ク) |
国の基準では、常時閉鎖でなくても、随時閉鎖できて煙の発生で自動的に閉まる戸が認められます。堺市の指導指針は、アで「常時閉鎖式」と書いています。
ただし、実際の戸が条文に適合するかどうかは、国土交通大臣が定めた構造方法か認定で決まります。個別の製品は、設計者と消防署に確認します。
堺市は階段室の戸を、国より一段上の仕様で指導しているのですね。
はい、常時閉鎖式の特定防火設備です。
次は付室の形と風道です。
堺市は付室の形と風道と隣の部屋にどんな上乗せをしているのか

オ 附室に設ける給気用の風道は、おおむね10~15階層単位に外気取入口を設け、かつ、排煙口等との離隔を保つこと。
キ 附室内には、非常用エレベーター又はこれに準じたエレベーターの昇降路の出入口以外の出入口を設けないこと。
- エ:付室は廊下から通じるもので、避難経路は単純にする
- オ:給気用の風道は、おおむね10~15階層単位に外気取入口を設け、排煙口等との離隔を保つ
- カ:階段室と付室に面して倉庫・湯沸室の出入口と電線シャフトの点検口を設けない
- キ:付室内には、非常用エレベーター又はこれに準じたエレベーターの昇降路の出入口以外の出入口を設けない
キの背景には、国の第3号が、非常用エレベーターの乗降ロビーを兼ねる付室に昇降路の出入口があることを前提に書いている点があります。ただ、キの文言だけでは、廊下から付室に入る出入口(エの「廊下から通じる」)との関係までは読み取れません。計画の段階で消防署に確認します。
付室は、戸だけでなく風道や隣の部屋にも条件があるのですね。
はい、外気取入口と隣の部屋まで書かれています。
最後は他市の扱いです。
大阪市や東大阪市では特別避難階段の付室をどう扱うのか

付室の言葉が出てくるのは、大阪市では排煙設備の用語(消火活動拠点)・連結送水管の放水口の位置・誘導灯の点滅機能の停止の例外・加圧防排煙設備の消火活動拠点などで、東大阪市では避難器具の標識の位置と誘導灯の例外などです。
付室の戸については、大阪市の連結送水管の運用基準に、放水口がある付室や乗降ロビーの防火戸へホースを通す開放可能な部分を設ける定めがあります(津市の記事で比較しています)。ただし、堺市のア・イ・ウ・クのような戸の種類や形を定めた項は、大阪市・東大阪市の公開資料に見当たりませんでした。
たれ壁については、大阪市の排煙設備の用語に「給気口に設ける垂れ壁」の言葉が出てきますが、付室の出入口の上部に寸法を定めた項は見当たりませんでした。
調べた範囲を表にまとめます。
| 項目 | 堺市 | 大阪市・東大阪市の公開資料 |
|---|---|---|
| 付室から階段室の戸 | 常時閉鎖式の特定防火設備(ア★) | 戸の種類を定めた項は見当たらない |
| 屋内から付室の戸 | 防火シャッター以外(イ★)。両開きは閉鎖調整器等(ク) | 大阪市に連結送水管のホースを通す開放可能な部分の定めあり。戸の種類や形を定めた項は見当たらない |
| 付室の出入口の上部 | おおむね30cm以上の固定のたれ壁(ウ★) | 見当たらない |
| 風道と隣の部屋 | 給気用風道の外気取入口(オ★)、倉庫・湯沸室の出入口を設けない(カ★) | 見当たらない |
- 建物が高さ31mを超えるか、地階を除く階数が11以上か、(5)項ロに当たらないか
- 付室から階段室の戸を特定防火設備か防火設備か、常時閉鎖式か随時閉鎖式かを決めたか
- 屋内から付室の戸が防火シャッター以外か、上部に30cm以上のたれ壁を図面に入れたか
- 給気用の風道の外気取入口と排煙口等の離隔を図面に入れたか
- 付室に面して倉庫・湯沸室の出入口や電線シャフトの点検口がないか
- 設計の段階で管轄の消防署に事前相談したか
堺市のこの指導は、大阪市や東大阪市の公開資料には見当たらないのですね。
はい、堺市の指導基準です。
他市の物件は、その市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず付室の戸の仕様を決めます。
そのうえで消防署に相談します!
堺市は国の基準に上乗せした指導です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第1章 総則(2 運用上の留意事項・4 凡例)、第2章 第2節 第3 高層建築物に係る指導指針(2 適用範囲・5(4)特別避難階段) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」(排煙設備・連結送水管・誘導灯・加圧防排煙設備の各項で付室の言葉が出る部分) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(避難器具・誘導灯の項。付室の戸の基準なし) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項・第19項、第123条第1項・第3項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。





