津市消防本部の「津市予防事務審査検査基準」には、高さ45mを超える建築物向けの指導基準があります。
その中の非常用エレベーターの項には、乗降ロビーを避難階にも設ける、緑のキセノンランプを付けるなど、建築基準法施行令第129条の13の3に書かれていない項目が並んでいます。
この記事では、国の条文が決めていることと、津市が足していることを分けて読みます。
堺市の高層建築物の指導指針とも、乗降ロビーの項目を見比べます。
津市で高さ50mほどのビルを計画しています。
非常用エレベーターの乗降ロビーは、国の基準だけ見ておけばよいのでしょうか。
いいえ、津市の指導基準が国の条文に上乗せしている項目があります。
まず国の条文で、何が決まっているかを確かめましょう。
上乗せというのは、法令の義務とは違うのですか。
津市の2-3は「指導基準」と題され、関係者と協議したうえで指導する決まりです。
項目ごとに義務か指導かの印は付いていないので、協議が前提になります。
- 国の条文は、乗降ロビーを屋内と連絡させる階から避難階を除いており、津市の指導基準は、その規定にかかわらず避難階にも設けるよう求めている
- 堺市も避難階にも設ける指導を市独自(★)で置き、さらに廊下と特別避難階段以外に直接通じないことまで求めている
- 津市は乗降ロビーの出入口を2以下(特別避難階段への出入口を除く)とし、特別避難階段・屋外避難階段・屋内避難階段・避難バルコニーのいずれかと接続させる
- 床上0.5mの壁に緑のキセノンランプ、乗降ロビーに非常電話と火災階表示盤、階数表示、0.5m平方以上の平面略図を求めている
- 呼び戻し階は避難階か防災センターの階を最優先とし、運行状況表示盤を防災センターに置く。ただし適用は高さ45m超で、協議が前提になる
▼

目次
国の条文は非常用エレベーターの乗降ロビーに何を求めているのか

根拠の条文は次のとおりです。
高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。
乗降ロビーの構造は、その政令である建築基準法施行令の第129条の13の3第3項に書かれています。
抜粋を見ます。
乗降ロビーは、次に定める構造としなければならない。
一 各階(屋内と連絡する乗降ロビーを設けることが構造上著しく困難である階で次のイからホまでのいずれかに該当するもの及び避難階を除く。)において屋内と連絡すること。
二 バルコニーを設けること。
三 出入口(特別避難階段の階段室に通ずる出入口及び昇降路の出入口を除く。)には、第百二十三条第一項第六号に規定する構造の特定防火設備を設けること。
(略)
七 床面積は、非常用エレベーター一基について十平方メートル以上とすること。
(略)
九 乗降ロビーには、見やすい方法で、積載量及び最大定員のほか、非常用エレベーターである旨、避難階における避難経路その他避難上必要な事項を明示した標識を掲示し、かつ、非常の用に供している場合においてその旨を明示することができる表示灯その他これに類するものを設けること。
設置階は避難階を除く各階で、広さは非常用エレベーター1基につき10㎡以上です。
表示灯の形や平面図、出入口の数の上限は、この項には書かれていません。
津市の高層建築物の指導基準は、この条文の上に項目を足しています。
まず適用範囲から確かめます。
本指導基準は、高さ45mを超える高層の建築物に対し適用するものとする。ただし、指導基準によるものは関係者と協議を行ったうえで指導すること。
31mを超えて45m以下の建築物は、国の条文の対象にはなっても、この指導基準の適用範囲には入りません。
指導する項目は、関係者と協議したうえで示される決まりです。
乗降ロビーは、国の条文だけでもかなり細かく決まっているのですね。
はい、設置階や広さ、標識まで書かれています。
津市の基準は、そこにこの条文に書かれていない項目を足しています。
乗降ロビーは避難階にも設けるのか

津市の基準は、そこを足す書き方です。
⒁ 非常用エレベーターの乗降ロビーは、建基政令第129条の13の3第3項第1号の規定にかかわらず避難階にも設置すること。
国の条文が除いている避難階に、乗降ロビーを足す形です。
堺市の高層建築物に係る指導指針にも、同じ趣旨の項目があります。
乗降ロビーは、避難階にも設けることとし、廊下及び特別避難階段以外の部分に直接通じないこと。★
この項目に付いた★は、堺市消防局が市として独自に定めた指導を表します。
津市の乗降ロビーの項には、「廊下と特別避難階段以外に直接通じない」にあたる文言は見当たりません。
避難階の歩行距離の条文も、乗降ロビーの有無で読み方が変わります。
避難階においては、非常用エレベーターの昇降路の出入口(第三項に規定する構造の乗降ロビーを設けた場合には、その出入口)から屋外への出口(道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路、空地その他これらに類するものに接している部分に限る。)の一に至る歩行距離は、三十メートル以下としなければならない。
津市や堺市の指導どおりに避難階にもロビーを設ければ、起点はロビーの出入口になると読めます。
設計の段階で、避難階のロビーの位置と屋外への出口までの距離を一緒に確かめておきましょう。
避難階にもロビーを置くと、ほかの条文との関係も変わりますか。
歩行距離の起点がロビーの出入口になります。
避難階の図面で、屋外までの距離を確かめましょう。
乗降ロビーの出入口は2つまでで何と接続させるのか

原文を見ます。
⑶ 乗降ロビーの出入口は、2以下(特別避難階段への出入口は除く。)とすること。(例図2)
⒂ 非常用エレベーターの乗降ロビーは、特別避難階段、屋外避難階段、屋内避難階段又は避難バルコニーのいずれかと接続させること。
国の条文も、出入口の防火設備を定めるところで、特別避難階段の階段室に通ずる出入口と昇降路の出入口を別扱いにしています。
津市の数え方でも、特別避難階段への出入口は別扱いです。 接続先は、特別避難階段・屋外避難階段・屋内避難階段・避難バルコニーのいずれかです。
国の条文は、乗降ロビーにバルコニーを設けることを求めています。
津市の⒂は、バルコニーだけでなく、三種類の階段も接続先に挙げています。
なお国の条文には、昇降路又は乗降ロビーの構造が、煙がロビーを通じて昇降路に流入することを有効に防止できるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は認定を受けたものである場合は、バルコニーの規定を適用しない第13項があります。 堺市の指針も、乗降ロビーの通じ方と扉を決めています。
(イ) 乗降ロビーは、避難経路としないこと。ただし、特別避難階段の附室と共用する場合はこの限りでない。★
(オ) 特別避難階段の附室を兼ねない乗降ロビーの扉は、外開きとすること。★
津市の乗降ロビーの項には、扉の向きと避難経路の扱いについての記載は見当たりません。
同じ乗降ロビーでも、出入口の数を書く津市と、扉の向きを書く堺市とで、決めている点が違います。
出入口の数を絞って、階段などにつなぐ、という二つの指導なのですね。
はい、出入口は2以下と接続先の四つが津市の項目です。
図面で数えて確かめましょう。
乗降ロビーには何を表示し何を付けるのか

国の条文は標識と表示灯までで、形や色は決めていません。
⑸ 非常用エレベーターの乗降ロビーの出入口付近の床上0.5mの高さの壁部には、キセノンランプ(緑色)による点滅装置を設けること。(当該キセノンランプは消防隊活動時に活用することから、防災センターからの手動による遠隔起動とすること。)
⑹ 非常用エレベーターの乗降ロビーには、非常電話及び火災階表示盤等を設けること。
⑼ 非常用エレベーターの乗降ロビーには、階数を表示すること。
⑽ 非常用エレベーターの乗降ロビーには、大きさ0.5m平方以上の当該階の平面略図(消火活動上必要な設備等の位置を簡記したもの。)を設けること。
国の条文は、非常の用に供している旨を明示する「表示灯その他これに類するもの」を求めるだけです。
その表示灯と津市のキセノンランプの関係は、基準には書かれていません。
同じ装置で兼ねるのか別に設けるのかは、事前に消防本部と協議しておくと確実です。
⑴ 非常用エレベーターの各階乗降ロビーには、自動火災報知設備と連動した火災階表示盤(例図5)又は、火災階表示盤と同等の機能を有し、かつ、防災センターの各種監視盤に表示される防災情報の一部が表示できる表示盤(CRT等)を設けること。
15⑹は「非常電話及び火災階表示盤等」を乗降ロビーに設けると書き、8⑴は自動火災報知設備と連動した表示盤か、同等の機能を持つ表示盤(CRT等)と、形を少し広げて書いています。
堺市の指針は、同じ場所に案内板を求めています。
乗降ロビーには、当該階の案内板(消火活動上必要な施設等の位置を示したもの)を設けること。★
津市は「消火活動上必要な設備等の位置を簡記したもの」、堺市は「消火活動上必要な施設等の位置を示したもの」と、中身の書き方はほぼ同じです。
大きさが数字で書かれているのは、読んだ範囲では津市だけです。
緑のランプや略図まで書いてあるのですね。
はい、消防隊が使う前提の項目です。
ランプは防災センターからの遠隔起動と書かれています。
呼び戻しと運行表示は防災センターとどうつながるのか

非常用エレベーターには、籠を呼び戻す装置(各階の乗降ロビー及び非常用エレベーターの籠内に設けられた通常の制御装置の機能を停止させ、籠を避難階又はその直上階若しくは直下階に呼び戻す装置をいう。)を設け、かつ、当該装置の作動は、避難階又はその直上階若しくは直下階の乗降ロビー及び中央管理室において行うことができるものとしなければならない。
⑵ 非常用エレベーターの非常呼戻し階は、避難階又は防災センターの設けられる階を最優先呼戻し階とすること。
⑾ 非常用エレベーターの運行状況表示盤を防災センターに設けること。
⒀ 非常用エレベーターの電源が遮断した場合、内部にいる者が安全に脱出できるよう最寄階に着床できる措置をすること。
防災センターの位置は、津市が同じ指導基準の第2 6⑴イで「避難階又はその直上階若しくは直下階」と定めています。
電源についても、国の条文は予備電源を設けると定め、津市の⒀は電源が遮断したときに最寄階に着床できる措置まで書いています。
法令等で定めるもののほか、次に掲げる機能又は装置を有すること。
ウ 非常用エレベーターのかご運行表示(作動、停止状況等)及び通話装置
エ 非常用エレベーターのかごの呼び戻し装置
防災センターとのつながりを、津市は⑵と⑾で、堺市は総合操作盤の機能で書いている、という違いです。
用途によって足される項目もあります。 津市の⑴は、(5)項イ・(6)項・(16)項イ((5)項イ又は(6)項の用途に供される部分が含まれるものに限る。)の防火対象物に設ける非常用エレベーターのうち、1基以上を救急用担架が収容できる奥行2m以上のものとするとしています。
国の条文は、かごの寸法を日本産業規格に定める数値以上と定めるだけです(第6項)。 国・津市・堺市の項目を表で並べます。
| 項目 | 国(建築基準法施行令 第129条の13の3) | 津市(2-3 第2 15) | 堺市(指導指針 7⑵イ・総合操作盤) |
|---|---|---|---|
| 乗降ロビーを設ける階 | 避難階を除く各階(第3項第1号) | 避難階にも設置⒁ | 避難階にも設ける(カ)★ |
| 出入口の数 | この項に上限の定めは見当たらない | 2以下(特別避難階段への出入口は除く)⑶ | 見当たらない |
| つなぐ先・通じ方 | バルコニーを設ける(第3項第2号) | 特別避難階段・屋外避難階段・屋内避難階段・避難バルコニーのいずれか⒂ | 廊下と特別避難階段以外に直接通じない(カ)★ |
| 表示と設備 | 標識と、表示灯その他これに類するもの(第3項第9号) | 緑のキセノンランプ⑸・階数⑼・0.5m平方以上の平面略図⑽ | 案内板(キ)★ |
| 呼び戻しと運行表示 | 呼び戻し装置は避難階又はその直上階若しくは直下階の乗降ロビーと中央管理室で作動(第7項) | 最優先は避難階か防災センターの階⑵・運行状況表示盤を防災センターに⑾ | 運行表示・通話装置・呼び戻し装置を総合操作盤の機能に★ |
物件が津市で高さ45mを超えるなら、次の順に図面と突き合わせましょう。
- 適用範囲:高さが45mを超えるかを確かめ、消防本部と協議する
- 避難階:乗降ロビーを設ける階に避難階を含め、屋外までの歩行距離を確かめる
- 出入口と接続先:出入口を2以下に数え、階段かバルコニーのどれとつなぐかを決める
- 表示と設備:緑のキセノンランプ、非常電話、火災階表示盤、階数表示、平面略図
- 防災センター:呼び戻し階、運行状況表示盤、停電時の最寄階着床
つまり、ロビーそのものだけでなく、防災センターとのつなぎまで見ておくのですね。
はい、呼び戻し階と運行状況表示盤まで確認しましょう。
図面の段階で協議しておくと手戻りが減ります。
よくある質問
まとめ
津市の高層ビルでは、避難階のロビーと防災センターのつなぎを図面で確かめます!
迷う点は、早めに消防署へ協議しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法 第34条、建築基準法施行令 第129条の13の3(e-Gov法令検索)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」2-3 高層建築物における指導基準 第1・第2 6・8・15(津市消防本部)
- 堺市消防局「高層建築物に係る指導指針」7⑵、「総合操作盤」第26 Ⅱ 2⑶(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している基準等と、建築基準法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域・大阪市・東大阪市の基準は、乗降ロビーを放水口や消火活動拠点の項で扱っており、この記事の項目(避難階・出入口の数・キセノンランプなど)と同じ記載は確認できなかったため、比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





