窓ガラスに、飛散防止や目隠しのためにフィルムを貼っている建物は少なくありません。
窓のない階(無窓階)かどうかの判定では、フィルムを貼った窓が消防隊が外から入れる開口部に数えられるのかが問題になります。
この記事では、豊中市消防局の運用基準にある「窓用フィルムを貼付したガラス等に係る取扱い」を、吹田市と堺市の基準と並べて読みます。
書かれていることと、読み取れなかったことを分けて解説します。
窓にフィルムを貼ると、無窓階の判定に影響するのでしょうか?
豊中市の運用基準に、基材と厚みの条件が書かれています。
他の市でも、同じ条件なのですか?
吹田市や堺市は、書き方が違います。
順に見ていきましょう。
- 国の規則は、開口部が「容易に破壊することにより進入できるもの」であることを求めますが、フィルムの語も厚みの数字も書いていません
- 豊中市は、窓用フィルムを貼ったガラスを有効な開口部として扱える条件に、基材がPET製であることと基材厚みが100μm以下であることの両方を挙げています
- 豊中市は、PET製で100μm以下のフィルムを貼ったガラスを、貼る前のガラスで判断すると書いています(第6-1表の備考5)
- 吹田市は、フィルムをAとBに分け、塩化ビニル製で400μm以下もAに含めています。堺市は厚みの数字を書かず、CPマーク品を除くと書いています
- 今回読んだ3市のうち、基材の素材と厚みの数字を書いているのは豊中市と吹田市で、条件の中身は同じではありません
▼

目次
国の法令は窓のフィルムについてどこまで決めているのか

その開口部が満たす条件は、同じ条の第2項に並んでいます。ガラスの窓に関わるのは第三号です。
フィルムを貼った窓をどう扱うかは、各消防本部の運用基準が補っています。なお、豊中市の運用基準の本文は「規則第5条の3」と書いていますが、e-Govで確かめた現行の規則では、同じ内容が第五条の五にあります。この記事では、現行の条番号で書きます。
窓のない階になると、屋内消火栓設備や自動火災報知設備の基準も厳しくなります。くわしくは無窓階に該当すると消防用設備等の基準がどう変わるかを扱った記事で解説しています。
国の条文には、フィルムの話は出てこないのですね。
はい、フィルムの扱いは各本部の運用基準に書かれています。
まず豊中市の基準を見てみましょう。
豊中市は窓用フィルムを貼ったガラスをどう扱うのか

この項は、窓用フィルム(ガラス飛散防止、視線制御等)を貼る加工をした開口部について、同じ節の「3(1) ア」と「3(1) イ」で有効な開口部として扱えるガラスのうち、次の加工をしたものは有効な開口部として扱えるとしています。条件は次のとおりです。
- フィルムの基材がPET(ポリエチレンテレフタレート)製であること。
- 基材の厚みが100μm以下であること(μmはマイクロメートル。100μmは0.1mm)。
- 貼る前のガラスが、前の「3(1) ア」(はめ殺しの窓等)か「イ」(屋内でロックされている窓等)に当たるものであること。
| ガラスの種類 | 厚さ | 引き違い戸(足場有り/足場無し) | はめ殺し・FIX(足場有り/足場無し) |
|---|---|---|---|
| 普通板・フロート板・磨き板・型板・熱線吸収板・熱線反射ガラス | 6mm以下 | ○/○ | ○/○ |
| 網入板ガラス・線入板ガラス | 6.8mm以下 | △/△ | ×/× |
| 網入板ガラス・線入板ガラス | 10mm以下 | △/× | ×/× |
| 強化ガラス・耐熱板ガラス | 5mm以下 | ○/○ | ○/○ |
| 合わせガラス | 6.8mm以下 | △/× | ×/× |
| 倍強度ガラス | - | ×/× | ×/× |
また、この項には、塩化ビニル製のフィルム、厚みが100μmを超えるフィルム、CPマーク品の扱いは書かれていません。条件に合わないフィルムを貼った窓がどう扱われるかは、読み取れませんでした。冒頭の文は、別記1「窓ガラス破壊試験方法」に基づく試験の結果等を勘案したと述べていますが、別記1の中身は今回確認していません。
素材と厚みの、両方が条件なのですね。
はい、両方に適合することが条件です。
片方だけでは条件を満たしません。
吹田市のフィルムAとフィルムBは何が違うのか

Aの定義は、次のとおりです。
AとBで、開口部の有効面積の扱いが変わります。表(PDF p12〜p13)の主な内容は次のとおりです。
| 開口部の種類とガラス | 窓ガラス用フィルムA | 窓ガラス用フィルムB |
|---|---|---|
| はめ殺しの開口部(普通ガラス6mm以下・強化ガラス5mm以下) | 全面部分 | 不可 |
| クレセント付きの開口部(普通ガラス6mm以下・強化ガラス5mm以下) | 全面部分 | 片面部分 |
| クレセント付きの開口部(網入り・線入りガラス6.8mm以下) | 片面部分 | 片面部分 |
| クレセント付きの開口部(表に掲げる合わせガラス) | 片面部分(フィルムA・Bともに貼付不可) | 片面部分(フィルムA・Bともに貼付不可) |
表のあとには、取扱い上の留意事項が四つ並んでいます。基材の厚さ100μmは0.1mmであること、貼付した窓ガラス用フィルムは内貼り用か外貼り用かを問わないが貼付面は片面とすること、納品書や出荷証明書等の書類で基材と厚み等を確認すること、事前相談でフィルムの相談を受けたときは基材と厚み等を指導し、確認申請書等に添付する図書で明確にするよう指導すること、です。
豊中市の条件(PET製・100μm以下)は、吹田市のAの(1)と数字が重なります。ただし、吹田市は多積層(数十枚のフィルムを重ねたもの)を除き、豊中市の第4項には多積層の語がありません。
吹田市は、フィルムの種類で扱いが変わるのですか?
はい、AとBの二つに分けています。
Bは、はめ殺しの開口部では不可とされています。
堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域と比べて何が違うのか

堺市の防犯フィルムの扱いは、堺市の防犯フィルムとCPマーク品を扱った記事でも解説しています。
鈴鹿市と埼玉県央広域消防本部の審査基準にも、窓用フィルムの項があります。鈴鹿市は、基材がPET製で100μm以下のもの、塩化ビニル製で400μm以下のもの、という仕様を挙げています。埼玉県央広域は、吹田市と同じように、フィルムAとフィルムBに分けて書いています。
| 本部 | 対象のフィルム | 基材と厚みの数字 | そのほか |
|---|---|---|---|
| 豊中市 | 窓用フィルム | PET製・100μm以下(両方に適合) | 塩化ビニル製・多積層・CPマーク品の記載なし |
| 吹田市 | 窓ガラス用フィルムA・B(JIS A 5759) | A:PET製(多積層以外)100μm以下、塩化ビニル製400μm以下 | B:PET製100μm超400μm以下など。貼付面は片面、書類で確認 |
| 堺市 | 窓ガラス用フィルム(JIS A 5759) | 厚みの数字なし | CPマーク品は除く(★指導基準) |
| 鈴鹿市 | 窓用フィルム | PET製100μm以下、塩化ビニル製400μm以下 | 衝突防止用のフィルムやシールは除く |
| 埼玉県央広域 | フィルムA・B | 吹田市とほぼ同じ区分で記載(Low-Eガラスも含む) | 重ね貼りは不可 |
同じ「窓用フィルム」でも、本部によって条件の書き方は違います。
大阪市・東大阪市の公開資料では、手元で読んだ範囲で、窓用フィルムの項を見つけられませんでした。
堺市は、厚みの数字を書いていないのですね。
はい、堺市はCPマーク品を除くと書いています。
書き方は本部ごとに違います。
明日から自分の建物の窓で何を確かめればよいのか

- フィルムの基材がPET製かを、製品の仕様書や納品書で確かめます。
- 基材の厚みが100μm以下かを、同じ書類で確かめます。
- 貼る前のガラスの種類と厚さを調べ、第6-1表のどの行に当たるかを確かめます。
- 塩化ビニル製のフィルムや、100μmを超えるフィルムを使う場合は、管轄の消防署に事前に相談します。
無窓階の判定は、階ごとの開口部の数や大きさで決まります。窓の前の駐輪場や植木の扱いは吹田市の窓の前の駐輪場や植木を扱った記事、扉の小窓の扱いは豊中市のガラス小窓付き鉄扉を扱った記事で解説しています。
基材と厚みを、まず確かめればよいのですね。
はい、基材と厚みが出発点です。
貼る前のガラスの種類と厚さも確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まずフィルムの基材と厚みを確かめます。
そのうえで消防署に相談します!
ガラスの種類は調べてから確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」第1部 第2章 第1節 第4 無窓階の取扱い 4 窓用フィルムを貼付したガラス等に係る取扱いについて・第6-1表(PDF p70〜p72) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第18節 普通階判定 問23(PDF p12〜p13) https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第5 無窓階の取扱い https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第2章 第4 無窓階の取り扱い https://www.city.suzuka.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/103/r08.07.06musoukai.pdf
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第2章 第4 無窓階の取り扱い https://www.ken-o.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/04/fcecc3d65621772945a1209bcf7fb14e.pdf
- 消防法施行規則 第五条の五(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および豊中市・吹田市・堺市・鈴鹿市・埼玉県央広域消防本部の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。






