防災街区整備地区計画の区域では、広場や道路に接する建物の高さについて、最低でも5メートルは必要と条例で定められることがあります。
高さの上限ならよく聞きますが、下限が定められると聞くと、意外に思うかもしれません。
建築基準法施行令第136条の2の5第2項は、特定防災機能の確保の観点から必要があるとき、条例で、特定地区防災施設に面する部分の高さの最低限度を5メートルとする制限を定められると定めています。
決め手になるのは、どの区域で、どこから測って、地盤が低い場合をどう扱うかです。
今回は施行令第136条の2の5第2項・第6項・第7項と、沿道地区計画の第3項・第8項・第9項が定める、高さの最低限度5メートルの制限について、条文の中身と、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
建物の高さに下限が定められることがあると聞きました。
どこから測る決まりなのでしょうか。
条文は、特定地区防災施設からの高さと書いています。
まず、第2項から見ていきましょう。
高さの下限は、条文のどこに書かれていますか。
条例で定める場合の話ですよね。
施行令第136条の2の5に書かれています。
順に確認していきますね。
- 施行令第136条の2の5第2項は、防災街区整備地区計画の区域で特定防災機能の確保の観点から必要があるとき、条例で、特定地区防災施設に接する建築物の高さの最低限度を5メートルとする制限を定められると定めています。
- 測るのは、特定地区防災施設の敷地との境界線からの高さで、特定地区防災施設に面する方向の各部分が対象です。
- 第6項は、第1項第十二号・第十三号の制限と、この5メートルの制限を、全て定めるものとしています。
- 第7項は、敷地の地盤面が境界線より低く、高さが通常の高さを超える建築物について、適用除外に関する規定を条例に定めるものとしています。
- 沿道地区計画の区域では、第3項・第8項・第9項が、遮音上の観点から沿道整備道路の路面の中心からの高さで、同じ仕組みを定めています。
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目次
特定地区防災施設に接する建築物の高さの最低限度はなぜ5メートルと定められるのか

まず、条文を確認しましょう。
対象になるのは、防災街区整備地区計画の区域で、特定建築物地区整備計画の内容として定められた、敷地が特定地区防災施設に接する建築物です。
見るのは、特定地区防災施設に面する方向の各部分の、特定地区防災施設からの高さです。
特定地区防災施設に係る間口率の最低限度を超える部分は、対象から除かれます。
条文の書き方は「定めることができる」で、必ず定めなければならないという書き方ではありません。 特定地区防災施設という語は、施行令第136条の2の5第1項第十二号の中で、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第32条第2項第1号に規定するものと定められています。
特定防災機能の確保という観点が、この制限の出発点です。 仮の例で、読み方を確かめます。
敷地の地盤面が境界線と同じ高さで、階高が3メートルの建築物があったとします。
1階建てなら高さは3メートルで、5メートルに足りません。
2階建てなら高さは6メートルで、5メートルを超えます。
数値は、あくまで読み方の例です。
5メートルという数字が、条文に書かれているのですね。
ほかの制限とは、切り離して定められるのでしょうか。
第6項が、全て定めると書いています。
次に、その条文を確認します。
高さの最低限度5メートルの制限はなぜ間口率などの制限と一緒に全て定めなければならないのか

条文を、確認しておきましょう。
対象の区域は、特定建築物地区整備計画の区域内です。
条文は「全て定めるものとする」で、一部だけを選んで定める書き方ではありません。
間口率の算定に使う長さは、第4項が、建築物の周囲の地面に接する外壁又はこれに代わる柱の面で囲まれた部分の水平投影の長さなどによると定めています。 第6項に並べられている制限を、表にまとめます。
| 条文 | 定められる制限 | 条文の主な表現 |
|---|---|---|
| 第1項第十二号 | 特定地区防災施設に係る間口率の最低限度 | 10分の7以上10分の9以下の範囲内の数値 |
| 第1項第十三号 | 建築物の構造に関する防火上必要な制限 | 耐火建築物等又は準耐火建築物等など、イ・ロで型が分かれる |
| 第2項 | 特定地区防災施設からの高さの最低限度 | 5メートル |
| 第6項 | 上の制限の定め方 | 全て定める |
ただし、実際にどの数値が定められているかは、市区町村の条例を読んで確かめる必要があります。
三つの制限は、そろえて定められるのですね。
地盤が低い敷地では、どうなりますか。
第7項に、その場合の定めがあります。
適用除外を定めることになっています。
地盤面が特定地区防災施設の境界線より低い建築物にはなぜ適用除外を定めなければならないのか

条文を、確認しておきましょう。
「前項の場合」とは、第6項の制限を条例で定めようとする場合です。
高さは境界線から測りますから、敷地の地盤面が境界線より低いと、地盤面から見て必要な高さが大きくなります。
適用除外の対象は、第6項に規定する制限です。
第1項第十三号の制限のうち、同号イ(1)に掲げる、耐火建築物等又は準耐火建築物等であることという制限は、適用除外の対象から除かれています。
「通常の高さ」の具体的な数値は、第7項には書かれていません。 仮の例で、適用除外が必要になる場面を確かめます。
地階を除く階数が2である建築物の通常の高さを、7メートルと仮定します。
敷地の地盤面が境界線より3メートル低いとすると、境界線から5メートルの高さは、地盤面から見て8メートルです。
8メートルは7メートルを超えますから、適用除外の規定が問題になる場面です。
数値は、あくまで読み方の例です。
低い敷地では、必要な高さが大きくなるのですね。
道路に面する場合も、同じ扱いですか。
沿道地区計画には、別の項があります。
観点と起点が違います。
沿道整備道路に接する建築物にはなぜ路面の中心から高さの最低限度5メートルが定められるのか

第8項・第9項とあわせて、条文を確認しましょう。
(同条第八項)沿道地区計画の区域内において法第六十八条の二第一項の規定に基づく条例で第一項第十四号若しくは第十五号の制限又は第三項に規定する高さの最低限度が五メートルとされる制限を定めようとするときは、これらを全て定めるものとする。
(同条第九項)前項の場合においては、当該条例に、建築物の敷地の地盤面が沿道整備道路の路面の中心より低い建築物について第三項に規定する高さの最低限度が五メートルとされる制限を適用した結果、当該建築物の高さが地階を除く階数が二である建築物の通常の高さを超えるものとなる場合における前項に規定する制限の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
第2項が「特定防災機能の確保の観点」であるのに対し、第3項は遮音上の観点と書かれています。
測る起点は、境界線ではなく、沿道整備道路の路面の中心です。
第8項は、沿道地区計画の区域内で、第1項第十四号若しくは第十五号の制限又は第3項の制限を定めようとするときは、これらを全て定めるものとしています。
第9項は、敷地の地盤面が沿道整備道路の路面の中心より低い建築物の、適用除外に関する規定を条例に定めるものとしています。
防災の観点の第2項と、遮音の観点の第3項があるのですね。
二つの違いを、整理したいです。
一覧の表で、比べてみましょう。
あわせて防火管理者の確認事項も見ておきます。
特定地区防災施設と沿道整備道路の高さの最低限度はなぜ観点と起点が違うのか

違いは、観点と、高さを測る起点です。
| 区分 | 制限を定める項 | 計画の区域 | 観点 | 高さを測る起点 | 全て定める項 | 適用除外を定める項 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 特定地区防災施設 | 第2項 | 防災街区整備地区計画(特定建築物地区整備計画の区域) | 特定防災機能の確保 | 特定地区防災施設の敷地との境界線 | 第6項 | 第7項 |
| 沿道整備道路 | 第3項 | 沿道地区計画 | 遮音上 | 沿道整備道路の路面の中心 | 第8項 | 第9項 |
共通するのは、条例に定める制限であることと、全て定めるものとされていること、地盤面が低い場合の適用除外を定めるものとされていることです。
第7項は、第1項第十三号イ(1)に掲げる制限を適用除外の対象から除いています。
第9項には、この除く旨の書きぶりは、ありません。 これらは建築基準法に基づく条例の話で、防火管理者の義務を直接決めるものではありません。
ただし、該当する区域で建物を借りたり、増築や改修を考えたりするときには、関係する場面があります。
判断に迷うときは、市区町村の窓口への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 建物のある区域が防災街区整備地区計画や沿道地区計画の区域かどうかを、市区町村の窓口で確認して記録する。
- 条例に、高さの最低限度と適用除外の定めがあるかを、市区町村に照会しておく。
- 特定地区防災施設や沿道整備道路に接する場合は、高さの起点が境界線か路面の中心かを、図面で確かめておく。
- 増築や改修で外壁や階数を変える話が出たら、条例の制限に関わらないかを、市区町村に事前に確認する。
- 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建築の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
区域の指定と、条例の内容を、まず確認します。
高さの起点も、図面で確かめておきます。
状況が分かれば、あとの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
区域の指定と、条例の内容を、確認しておく必要があるんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!
区域の指定と高さの最低限度の内容が分かれば、増築や改修の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第百三十六条の二の五(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。高さの最低限度の内容は市区町村の条例と地区計画ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





