使われなくなった金鉱山の坑道を見学施設として公開するとき、消防法の上では、なにとして扱うのでしょうか。
ホール棟とコミュニティ棟が、通路と屋外のステージでつながっているとき、それは一つの建物なのでしょうか、二つの建物なのでしょうか。
消防庁は昭和57年に、そうした特殊な形態の建物についての疑問へ回答しており、その回答は昭和58年に消防予第32号で各都道府県へ示されています。
この記事では、その質疑を、現行の令別表第一に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
坑道や、いくつもの棟でできた施設も、消防法の対象になるんですか。
消防法の防火対象物には、建築物のほかに「その他の工作物」も入ります。
どの項に入るかで、必要な消防用設備等が変わります。
その質疑には、どんな問いが載っているんですか。
展示用の旧坑道についての三つの問いと、ホール棟とコミュニティ棟についての二つの問いです。
順に、現行の令別表第一と見比べます。
- 年間15万人以上の見学者が見込まれる展示用の坑道は防火対象物に該当し、令別表第一の(15)項に該当すると答えています
- 消防用設備等のうち、消火器・非常警報設備・誘導灯を除き、令第32条を適用して免除してもさしつかえないと答え、電話等の通報設備や自給式呼吸保護具等を備えるよう指導することも求めています
- その坑道でも、消防法第8条の防火管理者の選任と消防計画の作成は必要と答えています
- ホール棟、コミュニティ棟、屋外ステージ裏の便所や切符売場等は、資料から判断すれば全体が一棟と解され、令別表第一の(16)項イに該当すると答えています
- 一棟であっても、コミュニティ棟について令第32条を適用してスプリンクラー設備の設置を緩和することは適当でないと答えています
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目次
展示用の旧坑道は、消防法の対象になるのか、何項になるのか

(消防庁予防救急課長から大分県福祉生活部長あての回答・昭和57年7月21日・消防予第157号。昭和58年3月1日消防予第32号「1」で示されたもの)
照会は、展示の坑道を令別表第一の(8)項(博物館などの類)とする案を示しましたが、答えは(15)項です。なぜ(8)項ではなく(15)項なのかという理由は、答えは述べていません。
答えが防火対象物と認めているのは、坑道に不特定多数の者が入場するという点で、消防法第2条第2項が「建築物その他の工作物」を防火対象物に挙げていることと向きが合います。
坑道は、建物じゃなくても防火対象物になるんですね。
見学者が入る展示用の坑道は、答えでは(15)項です。
博物館などの(8)項ではありません。
坑道では、どの消防用設備等を令第32条で免除できるのか

(消防庁予防救急課長から大分県福祉生活部長あての回答・昭和57年7月21日・消防予第157号。昭和58年3月1日消防予第32号「1」で示されたもの)
現行では、消火器の基準は令第10条に、非常警報設備は令第24条に、誘導灯は令第26条にあります。答えは、この三つは令第32条で免除する対象から外しています。
そのうえで答えは、坑道の特殊性から、必要に応じて電話等の通報設備と自給式呼吸保護具等を備えるよう指導することを求めています。免除を認めるのは消防長又は消防署長で、答えは、どの設備をどの範囲で免除するのかという細かな点までは示していません。
坑道の中は、消防用設備等が要らなくなるんですか。
三つを除いて、免除してもさしつかえないという答えです。
消火器・非常警報設備・誘導灯は免除の対象外です。
坑道でも、防火管理者と消防計画は必要なのか

(消防庁予防救急課長から大分県福祉生活部長あての回答・昭和57年7月21日・消防予第157号。昭和58年3月1日消防予第32号「1」で示されたもの)
現行の令第1条の2第3項第1号ハは、令別表第一の(15)項について、収容人員が50人以上のものを防火管理者を定める対象にしています。答えは、収容人員の数字には触れていません。
設備を令第32条で一部免除してもよいと答える一方で、防火管理は、人による備えとして必要だという答えです。免除の対象は消防用設備等で、防火管理者の選任は別の話です。
設備を免除しても、防火管理者は必要なんですね。
答えは、選任も消防計画も必要です。
免除できるのは、消防用設備等のほうです。
ピロティでつながるホール棟とコミュニティ棟は、一棟なのか別棟なのか

(消防庁予防救急課長から熊本県総務部長あての回答・昭和57年8月12日・消防予第168号。昭和58年3月1日消防予第32号「2」で示されたもの)
照会は、ピロティ部分を渡り廊下として、別棟として扱えないかと尋ねていました。答えは、添付された資料から判断すれば全体が一棟と解されるとし、令別表第一の(16)項イに該当すると答えています。
別棟として扱えた場合にコミュニティ棟が何項になるのかという三つ目の問いは、答えは「1により承知されたい」とだけ述べています。なぜ一棟になるのかという理由は、答えは詳しくは述べていません。
渡り廊下でつながっていても、別の建物にはならないんですか。
この質疑では、資料から判断すれば全体が一棟で、(16)項イという答えです。
理由までは述べていません。
一棟なら、令第32条でスプリンクラー設備を緩和できるのか

(消防庁予防救急課長から熊本県総務部長あての回答・昭和57年8月12日・消防予第168号。昭和58年3月1日消防予第32号「2」で示されたもの)
令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ被害を最少限度に止めることができると認めるときの規定です。答えは、この施設についてはその認められる場合に当たらないという向きです。
どの号に当たるスプリンクラー設備なのか、なぜ適当でないのかという理由は、答えは述べていません。前の坑道の質疑が、三つの設備を除いて免除してもよいと答えていたのと結論が分かれています。
同じ建物だからといって、緩和はできないんですね。
答えは、令第32条での緩和は適当でないというものです。
理由までは述べていません。
よくある質問
まとめ
特殊な建物も、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの敷地の棟のつながり方を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第2条、第8条、第17条、消防法施行令第1条の2、第10条、第12条、第24条、第26条、第32条、別表第一
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





