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従業員宿舎や鶏舎や展望タワーは消防法上どの用途になるのか|自衛隊の隊舎まで昭和の質疑五問を解説

海辺の公園に白く細長い展望塔が立つ様子を撮影した写真

病院や旅館の従業員が泊まる宿舎は、建物のなんの用途として数えるのでしょうか。
鶏舎や公園の展望タワー、自衛隊の隊舎のように、令別表第一のどの項に入るのか迷いやすい建物もあります。
消防庁は昭和53年に、そうした疑問への回答を各都道府県に示しており、その中に昭和38年の回答も別添として残っています。
この記事では、その質疑を、現行の令別表第一に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。

そもそも、建物の用途は、なにで区分されるんですか。

消防法施行令の別表第一が、防火対象物を(1)項から(20)項までに分けています。
どの項に入るかで、必要な消防用設備等が変わります。

その質疑には、どんな問いが載っているんですか。

従業員の宿舎、飲食店の宿舎、鶏舎、展望タワー、自衛隊の隊舎についての、五つの問いです。
順に、現行の令別表第一と見比べます。

この記事の結論
  • 病院の医師等の当直室と、旅館やホテルの従業員の利便を目的とした宿泊室は、通達の別表の(イ)欄の用途部分に該当し、勤務に直接関係のない者が泊まる部分は(イ)欄にも(ロ)欄にも該当しないと答えています
  • 飲食店の宿舎は、通達の別表の(3)項ロの(イ)欄にも(ロ)欄にも該当しないと答えています
  • 木造平屋建て延べ面積3,000平方メートルの鶏舎は(15)項に該当し、周囲に十分な空地があれば令第32条を適用して消火器で足りると答えています
  • 展望室のあるタワーは(15)項に該当し、階は踊場ごとに1階層とみなし、収容人員は規則の表の(15)項の欄で算定すると答えています
  • 自衛隊の一般隊舎は、宿舎の部分があれば(5)項ロと(15)項の二つの防火対象物と考え、医務室やボイラー室などは主たる用途で判断すると答えています

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宿舎や鶏舎や展望塔の五つの区分として、病院の当直室は病院の一部、飲食店の宿舎は別の扱い、鶏舎は事業場、展望タワーも事業場、隊舎の宿舎部分は別の用途、を並べた図解

病院や旅館の従業員宿舎は、建物の一部として数えるのか

ベージュの病院の建物の横に、小さな窓が並ぶ従業員宿舎の棟がつながっているイメージ
最初の質疑は、病院、旅館、ホテル、飲食店で、従業員の宿舎が同じ建築物の中にある場合です。令別表第一の(6)項イは病院や診療所など、(5)項イは「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」、(3)項ロは「飲食店」です。照会が挙げている「令別表第1に掲げる防火対象物の取扱いについて」(昭和50年4月15日消防予第41号・消防安第41号)の別表には、用途ごとに(イ)欄と(ロ)欄が設けられており、質疑は、宿舎がそのどちらに含まれるのかを尋ねています。
問(要旨) 病院、旅館、ホテル、飲食店等において従業員の宿舎が同一建築物内にある場合、当該宿舎は「令別表第1に掲げる防火対象物の取扱いについて」(昭和50年4月15日付消防予第41号、消防安第41号)の別表(イ)又は(ロ)のいずれに含まれるか。また、含まれる場合は、当該部分の面積及び延べ面積に対する比率等に関係するか否か。
答(要旨) 前段については、病院における医師等の当直室及び旅館又はホテルの従業員の利便を目的とした宿泊室は、令別表第1通達別表(6)項イ又は(5)項イに掲げる防火対象物の用途のそれぞれ(イ)欄に掲げる用途部分に該当する。なお、病院の医師等の当直室及び旅館又はホテルの従業員の宿泊施設で勤務に直接関係のない者が宿泊する用途に供される部分は、それぞれ(イ)欄及び(ロ)欄に掲げるいずれの用途部分にも該当しない。後段については、前段により承知されたい。
(消防庁予防救急課長の回答・昭和53年9月9日・消防予第179号〔3〕の(1))
医師の当直室と、従業員の利便のための宿泊室は、(イ)欄の用途部分に該当すると答えています。
一方で、勤務に直接関係のない人が泊まる部分は、(イ)欄にも(ロ)欄にも当たらない、という答えです。
質問の後半にある「面積や延べ面積に対する比率に関係するか」については、答えは「前段により」とだけ述べており、面積や比率の数字は示していません。
現行の令第1条の2第2項後段は、ある用途が、管理についての権原、利用形態その他の状況から見て他の用途の従属的な部分を構成すると認められるときは、その用途は他の用途に含まれる、と定めています。質疑の答えは、通達の別表の欄に当たるかどうかで、宿泊の部分を病院やホテルの一部として扱えるかを分けています。欄の詳しい中身は、通達の別表で確かめてください。

従業員の宿舎は、病院やホテルの一部になるんですね。

当直室や、従業員の利便のための宿泊室ならその答えです。
ただし、勤務に直接関係のない人が泊まる部分は別です。

飲食店の宿舎は、飲食店の一部になるのか

ベージュの小さな飲食店の建物の後ろに、二階建ての宿舎の棟が別に建っているイメージ
次は、同じ質疑のうち、飲食店の宿舎についての答えです。令別表第一の(3)項ロは「飲食店」で、(5)項ロには「寄宿舎、下宿又は共同住宅」が挙がっています。
答(要旨) 飲食店の宿舎の用途に供される部分は、令別表第1通達(3)項ロに掲げる防火対象物の用途の(イ)欄及び(ロ)欄に掲げるいずれの用途部分にも該当しない。
(消防庁予防救急課長の回答・昭和53年9月9日・消防予第179号〔3〕の(1))
飲食店の宿舎は、飲食店の(イ)欄にも(ロ)欄にも当たらないと答えています。
飲食店の一部としては扱わない、という答えです。では何項になるのかまでは、答えは述べていません。(5)項ロに当たるという答えでもありません。
項が変わると、基準の入り口も変わります。たとえば令第1条の2第3項は、防火管理者を定めなければならない防火対象物を、項ごとの収容人員で定めており、(3)項は30人以上、(5)項ロは50人以上です。

飲食店の宿舎は、飲食店の中に入らないんですね。

答えは、飲食店の(イ)欄にも(ロ)欄にも当たらないというものです。
何項になるのかまでは、述べていません。

木造平屋建ての鶏舎は、何項になり、設備はどうなるのか

波型の青灰色の屋根と壁の細長い平屋の建物が、広い草地の真ん中に一棟だけ建っているイメージ
3つ目は、鶏舎の質疑です。令別表第一の(1)項から(14)項までに、鶏舎は挙がっていません。(15)項は「前各項に該当しない事業場」です。照会の形態は、木造平屋建てで延べ面積3,000平方メートル、屋根と壁は波型トタン、窓はビニール張りで、内部の照明設備には過電流しゃ断器を付け、所有は農協、作業する人は4名程度というものです。
問(要旨) 次のような形態の鶏舎に対する消防用設備等の設置はどうすべきか。ア 木造平屋建て延べ面積は3,000平方メートルである。イ 屋根及び壁は波型トタンで仕上げる。ウ 窓はビニールで張る。エ 建築物内部には照明設備が設けられるが、過電流しゃ断器を設置する。オ 所有は農協で、作業するものは4名程度である。
答(要旨) 設問の防火対象物は令別表第1(15)項に掲げる防火対象物に該当するものと解する。なお、当該防火対象物の位置が、周囲に十分な空地を保有する等出火した場合他への延焼のおそれが少ないと認められるものにあっては、令第32条の規定を適用し、消火器を基準どおり設置すれば足りるものと解する。
(消防庁予防救急課長の回答・昭和53年9月9日・消防予第179号〔3〕の(2))
鶏舎は、(15)項に該当すると答えています。
現行の基準では、消火器は令第10条第1項第3号が(15)項に延べ面積300平方メートル以上で、屋内消火栓設備は令第11条第1項第3号が1,000平方メートル以上で、自動火災報知設備は令第21条第1項第6号が1,000平方メートル以上で求めています。3,000平方メートルの鶏舎は、いずれの入り口も超えます。
そのうえで答えは、周囲に十分な空地があり、延焼のおそれが少ないと認められるものは、令第32条を適用して消火器だけで足りるとしています。令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ被害を最少限度に止めることができると認めるときは、基準を適用しないと定めています。認めるのは消防長又は消防署長で、答えは空地の広さの数字までは示していません。
なお、作業する人が4名程度の場合、令第1条の2第3項が(15)項に防火管理者を求める収容人員の50人には届きません。質疑は、この点には触れていません。

鶏舎は、消防法のどの項になるんですか。

答えは、(15)項です。
空地が十分なら、令第32条で消火器だけで足りるとしています。

展望室のあるタワーは、建物として数えるのか

細い白い塔の上に丸い展望室が載り、足元に小さな入口の建物がある断面のイメージ
4つ目は、公園の展望タワーの質疑です。タワー自体は建築基準法上の工作物で、頂部へエレベーターで昇り、雨天のときに物見のために使う展望室があります。高さは52メートル、展望室は41平方メートルで固定用の椅子はなく、耐火構造で、職員は3名、物見客は150名、通常は20〜30名とされています。消防法第2条第2項は、防火対象物に「建築物その他の工作物」を挙げています。照会は三つを尋ねています。
問(要旨) 1 この部分(頂部の展望室)を建築物と解してよいか。建築物とした場合、防火対象物のとらえ方として令別表第1に掲げる(1)項イ及び(15)項のいずれに該当するのか。2 タワーの階数算定は、エントランスホールから階段室までを1階としてとらえ、展望室を2階とみなしてよいか。3 建築物とした場合、展望室の床面積を立見席と解して、収容人員の算定をしてよいか。
答(要旨) 1 設問の防火対象物は令別表第1(15)項に該当するものと解する。2 階の算定は、踊場毎に1階層とみなし算出されたい。3 消防法施行規則第1条の表の令別表第1(15)項の欄により算定されたい。
(消防庁予防救急課長から茨城県総務部長あての回答・昭和53年7月14日・消防予第130号)
展望タワーは、(15)項に該当すると答えています。
(1)項イは劇場や映画館などですが、答えは(15)項です。階の数え方について答えは、踊場ごとに1階層とみなして算出するよう求めています。
階の数え方は、設備の基準に効いてきます。たとえば令第21条第1項第14号は、別表第一に掲げる防火対象物の11階以上の階に自動火災報知設備を求めています。
収容人員は、展望室を立見席として数える案ではなく、規則の表の(15)項の欄で算定するよう求めています。現行では規則第1条の3第1項の表が、(15)項について、従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで除して得た数とを合算する方法を定めています。立見席は、(1)項で床面積を0.2平方メートルで除して数える方法です。

展望室は、立見席として数えなくていいんですね。

答えは、規則の表の(15)項の欄で算定するというものです。
階は、踊場ごとに1階層とみなします。

自衛隊の一般隊舎や医務室は、どの項になるのか

ベージュの二つの棟がつながった隊舎で、片方に小さな窓が並び、もう片方に大きな窓が並び、横に小さなボイラー室があるイメージ
最後は、自衛隊の建築物についての回答です。昭和38年に防衛庁が、自衛隊の施設建築物の区分を別表にして消防庁に照会し、消防庁長官が回答しました。この回答は、昭和53年6月27日の消防予第113号でも別添として示されています。照会の別表では、一般隊舎、部隊本部、医務室、ボイラー室、受配電室、食厨が(15)項に挙げられています。
答(要旨) 1 「一般隊舎」は、一般執務の用に供する建築物であると解されるが、宿舎の用に供する部分があれば、当該部分と一般執務を行なう部分とは独立の用途に供されていると解さざるをえないので、当該建築物は令別表第1(5)ロ及び(15)の用途に供される二つの防火対象物と考えられる。2 「医務室」、「ボイラー室」、「受配電室」及び「食厨」は、一般的には、独立の用途に供されているといえない場合があり(例・病院のボイラー室、工場の受配電室等)、これらの場合には、それぞれその主たる用途(前掲例では、それぞれ病院、工場)により判断すべきであると考えられる。
(消防庁長官の回答・昭和38年12月3日・自消甲予発第53号。昭和53年6月27日消防予第113号で別添として示されたもの)
宿舎の部分がある一般隊舎は、(5)項ロと(15)項の二つの防火対象物と答えています。
一般執務を行う部分と宿舎の部分は、独立の用途に供されていると解さざるをえない、という理由です。
医務室、ボイラー室、受配電室、食厨は、独立の用途とはいえない場合があり、その場合は主たる用途で判断します。答えは、病院のボイラー室や工場の受配電室を例に挙げています。現行の令第1条の2第2項後段が、従属的な部分は他の用途に含まれるとしているのと、向きは同じです。
なお、令第2条は、同一敷地内で管理について権原を有する者が同じ二以上の防火対象物を、防火管理者の規定の適用では一の防火対象物とみなすと定めています。二つの防火対象物と数えることと、防火管理では一つと扱うことは、別の話です。

隊舎に宿舎の部分があると、二つの防火対象物になるんですね。

答えは、(5)項ロと(15)項の二つです。
ボイラー室などは、主たる用途で判断します。

よくある質問

Q従業員の宿舎は、いつでも病院やホテルの一部になりますか?
A質疑は、当直室と従業員の利便を目的とした宿泊室を(イ)欄の用途部分と答え、勤務に直接関係のない者が泊まる部分は(イ)欄にも(ロ)欄にも当たらないと答えています。個別の使い方は、所轄の消防署に確かめてください。
Q鶏舎は、いつでも消火器だけで足りますか?
A質疑は、周囲に十分な空地があるなど延焼のおそれが少ないと認められるものについて、令第32条を適用すると答えています。認めるのは消防長又は消防署長で、いつでも足りるわけではありません。
Q展望タワーの収容人員は、立見席として数えますか?
A質疑は、立見席として数える案ではなく、規則の表の(15)項の欄で算定するよう答えています。数え方は、現行の規則第1条の3の表で確かめてください。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は昭和53年と昭和38年のものです。令別表第一の区分や、引用された通知はその後の改正で変わっていることがあります。運用が改められていることがあるため、所轄の消防署に確かめてください。

まとめ

✔医師の当直室と従業員の利便のための宿泊室は(イ)欄の用途部分で、勤務に関係のない者が泊まる部分はどの欄にも当たらないと答えられた
✔飲食店の宿舎は、(3)項ロの(イ)欄にも(ロ)欄にも当たらないと答えられた
✔鶏舎は(15)項で、空地が十分なら令第32条で消火器で足りると答えられた
✔展望タワーは(15)項で、階は踊場ごとに1階層と答えられた
✔宿舎の部分がある一般隊舎は、(5)項ロと(15)項の二つの防火対象物と答えられた
✔質疑は昭和のもの。現行の令別表第一と設備の基準は改正されている
✔質疑の回答は当時のもの。現行の条文と通知を、所轄の消防署に確かめる

宿舎や鶏舎のような建物も、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの敷地の建物を区分し直してみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第2条、消防法施行令第1条の2、第2条、第10条、第11条、第21条、第32条、別表第一、消防法施行規則第1条の3
  • 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

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