給油取扱所で、カードを使って支払いを済ませる場面は、今では珍しくありません。
昭和55年から56年にかけての消防庁の質疑応答には、コンピューター端末機やカードリーダーを給油取扱所に持ち込んでよいかを尋ねる問い合わせが残っています。
この記事では、その三つに、ボイラー室と舗装の二つを加えた五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
何が認められ、どんな条件が付いたのかを、順に確かめます。
カードで給油する設備は、昔からあったんでしょうか。
はい。
昭和55年には、端末機の設置を尋ねる質疑が出ています。
昔の質疑応答は、今の政令とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条番号に読み替えながら読みます。
- 事務室の暖房用ボイラー室を別棟にする計画は、添付図面から判断して、業務に必要な建築物として差し支えないと答えています
- ポリシールコンクリート舗装は、給油空地の舗装に該当するとされました
- コンピューター端末機は設置を認めてよいが、外付ポストは給油作業に支障のない位置にするよう指導する、という回答でした
- キャノピーの下のカードリーダーのボックスは、業務に必要な建築物に準じた工作物として認められ、構造には耐火や火気使用に関する基準が及びます
- 磁気カードリーダーを付けた給油ノズルは、防爆・防滴構造とされたものについて差し支えないと答えています
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目次
事務室の暖房用ボイラー室は、事務所と別の棟に設けてもよいのか

昭和53年には、暖房に使うボイラー室を事務所とは棟を別にして設ける計画について、各都道府県の消防主管部長あてに回答が示されました。
(昭和53年4月13日 消防危第48号 危険物規制課長(各都道府県消防主管部長あて)から回答)
当時の第9号は、現行では政令第17条第1項第16号に当たります。この号は、給油取扱所に、給油その他の業務のための建築物(避難又は防火上支障がないと認められる総務省令で定める用途に供するものに限る)以外の建築物その他の工作物を設けないことを求めています。
規則第25条の4第1項は、その用途を、給油の作業場、事務所、点検・整備の作業場、洗浄の作業場、居住の用などの形で並べています。ボイラー室という語は、この列挙に出てきません。
また、火気を使う建築物には、政令第17条第1項第18号が、漏れた可燃性の蒸気が内部に流入しない構造を求めています。その構造は、規則第25条の4第5項が定めています。
問は「空地内」と書いていますが、添付図面は省略されていて、給油空地や注油空地に当たる場所なのかは分かりません。現行の条文でも、同じ計画が通るかは、条文だけでは決められません。図面を持って、所轄の消防機関に確認します。
図面から判断すれば、という答えなんですね。
はい。
図面の内容が判断の前提になっています。
ポリシールコンクリートの舗装は、給油空地の舗装として認められるのか

昭和53年には、骨材を少量のアスファルトで粘結し、その空げきにポリシールドープを主体とした充てん材を詰めた舗装について、茨城県から照会がありました。
(昭和53年10月5日 消防危第133号 危険物規制課長(茨城県あて)から回答)
当時の第2号は、現行では政令第17条第1項第4号に当たります。給油空地及び注油空地は、漏れた危険物が浸透しないための総務省令で定める舗装をすることとされています。
規則第24条の16は、その舗装の要件を三つ挙げています。漏れた危険物が浸透し、又は危険物によって劣化し、若しくは変形するおそれがないこと、想定される自動車等の荷重で損傷するおそれがないこと、そして耐火性を有することです。
なお、昭和54年には、広島県から、エポキシ樹脂モルタルを舗装のクラック等の補修材として使ってよいかという照会もあり、「さしつかえない」と答えています(昭和54年7月14日 消防危第75号)。
同じ材料を今の計画に使うときは、材料の資料で、三つの要件を満たすことを確かめます。
舗装の材料まで、質疑になっていたんですね。
はい。
浸透しない・壊れない・燃えにくいという三つの要件が、今の条文にあります。
カード処理をするコンピューター端末機は、給油取扱所に設置してもよいのか

昭和55年には、端末機の本体を販売室の中に置き、計量機の横に外付ポストを取り付けて、顧客の磁気カード処理と伝票処理を同じ場所で行う設備について、熊本県から照会がありました。
(昭和55年11月21日 消防危第141号 危険物規制課長(熊本県あて)から回答)
別添資料の電気設備の欄には、カードリーダーが本質安全防爆構造、リーダー・プリンターが安全増防爆構造、流量パルス発信器などの近接スイッチが本質安全防爆構造と記されています。電気工事の一例としては、厚鋼電線管の立上り口にシーリングフィッティングを施す方法が示されています。
現行の政令第17条第1項第21号は、給油取扱所の電気設備を、製造所の電気設備の例によるものとしています。製造所の側の政令第9条第1項第17号は、電気設備を電気工作物に係る法令の規定によることと定めています。
外付ポストの位置については、同項第23号が、給油に支障があると認められる設備を設けないことを求めています。回答の「給油作業に支障のない位置」という指導は、この考え方と重なります。
今の機器が同じ構造や配置で認められるかは、条文だけでは決められません。仕様書と配置図を持って、所轄の消防機関に確認します。
端末機そのものより、外付ポストの置き場所が大事なんですね。
はい。
給油作業の邪魔にならない位置が、条件でした。
キャノピーの下に、カードリーダーを入れるボックスを設けてもよいのか

ところが、周囲が農地で強風の多い給油取扱所では、キャノピーがあっても雨が吹き込みます。昭和56年には、その対策として、カードリーダーをボックスに収める計画について、新潟県から照会がありました。
(昭和56年5月9日 消防危第58号 危険物規制課長(新潟県あて)から回答)
当時の第9号は現行の第16号、第10号は第17号、第11号は第18号に当たります。第16号は建築物のほか、その他の工作物も、業務のためのもの以外は設けないとしています。
第17号は、建築物の壁、柱、床、はり及び屋根を耐火構造とし、又は不燃材料で造ること、窓と出入口に防火設備を設けることを求めています。第18号は、事務所その他火気を使う建築物について、漏れた可燃性の蒸気が内部に流入しない構造を求めています。
回答は、ボックスの構造がこれらの基準に適合することを条件にしました。現行のどの部分がボックスに及ぶかは、条文だけでは決められません。ボックスの図面を用意して、所轄の消防機関に確認します。
ボックスも、建築物に準じて扱われるんですね。
はい。
構造の基準に適合することが条件でした。
磁気カードリーダーを付けた給油ノズルは、設置してもよいのか

昭和56年には、懸垂式の計量機のノズルに磁気カードリーダーを付属させた構造について、富山県から照会がありました。
(昭和56年5月9日 消防危第59号 危険物規制課長(富山県あて)から回答)
回答は、理由を書いていません。資料も省略されていて、ノズルの細かな構造は分かりません。
現行の政令第17条第1項第10号は、固定給油設備を、漏れるおそれがない等火災予防上安全な総務省令で定める構造とするとともに、先端に弁を設けた給油ホース及び給油ノズルに、蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けることなどを求めています。同項第21号は、電気設備を電気工作物に係る法令の規定によるものとしています。
なお、現行では、顧客が自ら給油するセルフ給油取扱所の基準が、規則第28条の2の4以下と第40条の3の10に別に置かれています。カードで操作する設備を今の計画で使うときは、所轄の消防機関に確認します。
ノズルにカードリーダーが付いていても、認められたんですね。
はい。
防爆と防滴の構造とされていたことが前提でした。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの給油取扱所も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第9条・第17条
- 危険物の規制に関する規則第24条の16・第25条の4・第28条の2の4・第40条の3の10
- 昭和53年4月13日 消防危第48号(給油取扱所の事務室の暖房用に使用するボイラー室の設置について)
- 昭和53年10月5日 消防危第133号(給油取扱所空地地盤の舗装材について)
- 昭和54年7月14日 消防危第75号(給油取扱所の空地地盤舗装用補修材について)
- 昭和55年11月21日 消防危第141号(給油取扱所のコンピューター端末機設置について)
- 昭和56年5月9日 消防危第58号(危険物規制事務上の疑義について)
- 昭和56年5月9日 消防危第59号(磁気カードリーダー付給油ノズルの取扱いについて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





