給油取扱所には、給油の設備のほかに、事務所や洗車の設備、店舗など、さまざまな建物や機器が設けられます。
昭和43年から47年にかけての消防庁の質疑応答には、建物と設備まわりの可否を尋ねる問い合わせが残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
何が認められ、何が認められなかったのかを、順に確かめます。
給油取扱所の中に置けるものって、どこまで決まっているんでしょうか。
はい。
可否がはっきり分かれた例があるので、条文と合わせて確かめます。
昔の質疑応答は、今の政令とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条番号に読み替えながら読みます。
- 給油取扱所の防火壁の一部を開いて、液化石油ガスの貯蔵庫への搬出入通路を設ける案は、認めるべきでないとされました
- 常時6,000ボルトの高電圧が加わる電撃殺虫器を給油取扱所に置くことは、適当でないと答えています
- 橋を渡って道路に接する敷地は、通路の幅、通路の数、河川への流入防止の三条件を満たせば、政令第23条で間口と同等に扱えるとされました
- 洗車用の温水ボイラーは設置してよく、専用の燃料タンクは地下タンクで容量10,000リットル以下に限って認められました
- 販売室を事務室とは別の建物に設けることも、差し支えないと答えています
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目次
防火壁に開口部を設けて、液化石油ガスの搬出入通路にしてもよいのか

政令第17条第1項第19号は、自動車等の出入りする側を除き、高さ2メートル以上の塀又は壁で、耐火構造のもの又は不燃材料で造られたものを設けることを求めています。
ところが昭和43年には、給油取扱所の空地の外に液化石油ガスの貯蔵庫を置き、防火壁の一部を開けて搬出入の通路にしている例が出てきました。
(昭和43年4月16日 消防予第114号 予防課長から回答)
現行の規則第25条の4の2は、給油取扱所の塀又は壁が開口部を有しないものであることを求めています。ただし、防火設備のはめごろし戸は、開口部から除かれています。搬出入のために壁を開く形は、この要件と合いません。
また、政令第17条第1項第16号は、給油その他の業務のための建築物以外の建築物や工作物を設けないことを求めています。
液化石油ガスのスタンドを併設する場合の防火塀の扱いは、別の記事で詳しく解説しています。ここでは、搬出入の通路を作るために防火壁を開けることは、昭和43年の時点から認められなかったと押さえます。
条件を十個付けても、だめだったんですね。
はい。
防火壁に穴を開けること自体が、認められませんでした。
電撃殺虫器を給油取扱所に設置してもよいのか

昭和43年には、虫を高電圧の格子で感電させて落とす電撃殺虫器を設置したいという申し出について、照会がありました。
(昭和43年7月31日 消防予第180号 予防課長から回答)
読み取れるのは、質問に添えられた性能の説明です。電撃格子には常時6,000ボルトの高電圧が加わっています。給油取扱所は、ガソリンなどの引火しやすい蒸気が漏れるおそれのある場所です。
現行の政令第17条第1項第21号は、給油取扱所の電気設備を、電気工作物に係る法令の規定によるものとしています。電気設備の一般的な規定であり、この機器を個別に名指しした条文はありません。
現行の基準がこの機器をどう扱うかは、条文だけでは決められません。同じ機器を考えるときは、事前に所轄の消防機関に確認します。
理由までは書いていないんですね。
はい。
高電圧の格子が、判断の材料になったと読めます。
橋を渡って道路に接する給油取扱所は、間口を確保しているといえるのか

昭和44年には、敷地の前面を川が流れ、橋を介して道路に接している給油取扱所の設置について、許可してよいかという照会がありました。
(昭和44年3月10日 消防予第50号 予防課長から回答)
当時の第1号の間口の規定は、現行では政令第17条第1項第2号の給油空地に当たります。規則第24条の14第1号は、給油空地に、自動車等が安全かつ円滑に出入りすることができる幅で道路に面していることを求めています。
答えが使った政令第23条は、市町村長等が、周囲の状況などから判断して、基準によらなくても火災の発生と延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに、基準を適用しない特例です。この特例は現行の政令にも残っています。
三条件の数字がそのまま現行の運用に引き継がれているかは、条文には書かれていません。橋を渡る敷地は、実際の図面で所轄の消防機関に確認します。
橋があると、原則は間口の扱いにならないんですね。
はい。
幅・数・流入防止の三つがそろって、はじめて特例です。
洗車用の温水ボイラーと、その燃料タンクは給油取扱所に設けられるのか

昭和45年には、暖房用のボイラーと同じように、洗車用の温水ボイラーを設けてよいか、その燃料の地下タンクはどうするか、という照会がありました。
(昭和45年6月29日 消防予第135号 予防課長から回答)
現行の政令第17条第1項第7号は、固定給油設備などに接続する専用タンクのほか、容量10,000リットル以下の廃油タンクその他の総務省令で定めるタンクを地盤面下に埋没して設ける場合を除き、危険物を取り扱うタンクを設けないことを求めています。
総務省令で定めるタンクは、規則第25条が、廃油タンクと、ボイラー等に直接接続するタンクと定めています。回答の「地下タンクで10,000リットル以下」は、現行の条文の形と重なります。
網入ガラスの点も、現行の規則第25条の4の2は、防火設備のはめごろし戸で、ガラスを用いるなら網入りガラスのものを、塀の開口部から除いています。
なお、タンクの危険物は給油取扱所の取扱最大数量に含まれるという答えは、現行でも指定数量の倍数の計算に含めるという意味で読むのが自然です。個別の計算は所轄の消防機関に確認します。
ボイラーの燃料タンクは、地下にしか置けないんですね。
はい。
地下タンクで10,000リットル以下が、当時の答えです。
販売室を、事務室とは別の建物に設けてもよいのか

昭和47年には、その販売のための部屋を、事務室などの建築物とは別の棟に設けたいという申請について、照会がありました。
(昭和47年1月7日 消防予第12号 予防課長から回答)
現行の政令第17条第1項第16号は、給油取扱所に、給油その他の業務のための建築物以外の建築物や工作物を設けないことを求めています。規則第25条の4第1項は、その用途に、事務所、洗車の作業場のほか、消防法施行令別表第一の一部の防火対象物の用途を挙げています。
同じ条の第2項は、給油取扱所の係員以外の者が出入りする部分の床面積の合計を、300平方メートル以下としています。販売室が別棟でも、この面積の枠の中で考える必要があります。
販売室の具体的な用途がどの号に当たるかは、条文だけでは決められません。計画の段階で、所轄の消防機関に図面を見せて確認します。
別の建物でも、基準に合っていれば大丈夫なんですね。
はい。
建物の数ではなく、構造と面積が問われます。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの給油取扱所も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条・第23条
- 危険物の規制に関する規則第24条の14・第25条・第25条の4・第25条の4の2
- 昭和43年4月16日 消防予第114号(給油取扱所等に隣接して液化石油ガス搬出入専用通路を設けることについて)
- 昭和43年7月31日 消防予第180号(給油取扱所に電撃殺虫器を設置することの可否について)
- 昭和44年3月10日 消防予第50号(河川を前面とした給油取扱所の取り扱いについて)
- 昭和45年6月29日 消防予第135号(給油取扱所内洗車用温水ボイラーと専用地下タンク等を設けることについて)
- 昭和47年1月7日 消防予第12号(給油取扱所の販売室について)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





