共同住宅を含む建物の防火対象物点検は、どこまで求められるのでしょうか。
消防庁は令和2年12月25日、令第32条の特例を受けた共同住宅の扱いについて執務資料を通知しました(消防予第392号)。
通知は、特例で消防用設備等の設置が免除等された共同住宅を、規則の「これに類する防火対象物」として認めてよいとしています。
この記事では、通知の中身と現行の規則との対応、点検の範囲がどう変わるか、確認したい点を解説します。
うちのマンションは、特例で消防用設備の一部を免除してもらっています。
防火対象物点検はどこまで受ければよいのでしょうか。
点検の範囲は、建物の用途で変わります。
通知と条文を、順に確認していきましょう。
そもそも共同住宅は、防火対象物点検の対象なのでしょうか。
令第4条の2の2が挙げる対象に、共同住宅そのものである(5)項ロは入っていません。
複合用途の建物などの場合を、次から見ていきます。
- 消防予第392号は、令和2年12月25日に消防庁予防課長が出した通知で、令第32条を適用して消防用設備等の設置が免除等された共同住宅を、規則の「これに類する防火対象物」として認めてよいとしています。
- 対象の規定は、点検基準の適用を絞る規則第4条の2の6第2項で、特定共同住宅等に類する防火対象物も含めています。
- 通知が「第2項第3号」と呼ぶ規定は、現行の規則では第2項第4号にあたります。
- この規定により、宿泊や福祉の用途の部分とそこから地上に通じる通路を除く部分には、点検基準の第1号から第3号まで以外は適用されません。
- 「これに類する防火対象物」として認めるのは消防長又は消防署長です。通知は助言なので、特例の経緯は所轄消防署に確認します。
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目次
特例を受けた共同住宅の扱いを示す通知はなぜ出されたのか

質疑応答を執務上の参考として送る形ですので、通知の冒頭と問1を確認します。
防火対象物定期点検報告制度に係る執務資料の送付について(通知)
標記の件について、別添のとおり質疑応答をとりまとめましたので、執務上の参考としてください。(略)なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。
(答)差し支えない。
通知の注記は、昭和36年、昭和50年、昭和61年、平成7年に出された4つの共同住宅の特例通知を挙げ、いずれも廃止と記しています。
なぜこの問いが出たのかまでは、通知に書かれていません。
読み取れるのは、令第32条を適用して設備が免除等された共同住宅が、規則の「これに類する防火対象物」に当たるかどうかが確認された、という点です。
通知は消防組織法第37条に基づく助言で、個別の建物で認めるのは消防長又は消防署長です。
特例通知はもう廃止されているのに、なぜ今も関係するのでしょうか。
通知は、特例を受けた共同住宅の扱いを確認する内容です。
特例に係る通知は、廃止と注記されています。
防火対象物点検が必要になる建物のうち共同住宅はどこに関わるのか

まず条文で、共同住宅がどこに入るのかを確認します。
第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、定期に、(略)その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない。
法第八条の二の二第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物であつて、次に掲げるものとする。
一 収容人員が三百人以上のもの
二 (略)
特定共同住宅等 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物及び同表(十六)項イに掲げる防火対象物(略)であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。
令別表第一の(5)項ロは、寄宿舎、下宿又は共同住宅です。
一覧にあるのは(5)項イ、(6)項、(16)項イなどで、収容人員300人以上などの要件を満たす建物が点検の対象です。
共同住宅が点検に関わるのは、共同住宅の部分を持つ(16)項イの複合用途防火対象物などの場合です。
特定共同住宅等は、(5)項ロと、(5)項イ・ロと(6)項ロ・ハの用途だけでできた(16)項イのうち、消防庁長官が定める基準に適合するものを指します。
うちは共同住宅と店舗が入ったビルです。
共同住宅の部分はどう考えればよいでしょうか。
店舗が入ると、複合用途として点検の対象になる場合があります。
その中で共同住宅の部分をどう扱うかが、次の話です。
規則第4条の2の6第2項は共同住宅の点検をどう限定しているのか

現行の文言で、条文を確認します。
法第八条の二の二第一項の防火対象物であって、次に掲げる防火対象物又はその部分については、前項の規定のうち、同項第一号から第三号までの規定(第三号に掲げるものにあっては、前項第一号から第四号までの規定)以外の規定を適用しないものとする。
一から三まで (略)
四 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十七年総務省令第四十号)第二条第一号に規定する特定共同住宅等(これに類する防火対象物であつて、火災の発生又は延焼のおそれの少ないものとして消防長又は消防署長が認めるものを含む。)の次に掲げる部分以外の部分
イ 令別表第一(五)項イ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分
ロ イに掲げる部分から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路
| 点検基準の号(規則第4条の2の6第1項) | 内容 | この部分での適用 |
|---|---|---|
| 第1号 | 防火管理者の選任などの届出がされていること | 適用される |
| 第2号 | 消防計画に基づき、消防庁長官が定める事項が適切に行われていること | 適用される |
| 第3号 | 管理権原が分かれている建物などで、消防庁長官が定める事項が適切に行われていること | 適用される |
| 第4号 | 避難上必要な施設及び防火戸が適切に管理されていること | 適用されない |
| 第5号 | 防炎対象物品に表示が付されていること | 適用されない |
| 第6号 | 圧縮アセチレンガス、液化石油ガスなどを貯蔵し、又は取り扱う場合の届出がされていること | 適用されない |
| 第7号 | 消防用設備等又は特殊消防用設備等が設置されていること | 適用されない |
| 第8号 | 法第17条の3の2の届出と検査を受けていること | 適用されない |
| 第9号 | 市町村長が定める基準を満たしていること | 適用されない |
※特定共同住宅等のうち、(5)項イ・(6)項ロ・ハの用途の部分と通路を除く部分の扱いです。第1号の2は表から省いています。
特定共同住宅等の住戸などの部分では、点検基準の第1号から第3号まで以外は適用されません。適用されるのは、届出、消防計画に基づく管理、権原が分かれている場合の管理の3つです。
避難施設と防火戸の管理、防炎表示、危険物等の届出、消防用設備等の設置などは、この部分の点検基準に入りません。
ただし、(5)項イ・(6)項ロ・ハの用途の部分と、そこから地上に通じる主たる廊下、階段その他の通路は、この緩和の外です。
消防用設備等の点検及び報告は法第17条の3の3の規定によるもので、点検基準とは別の仕組みです。
消防用設備が点検されなくなるのは、少し不安です。
点検基準から外れるのは、防火対象物点検の話です。
消防用設備等の点検は、法第17条の3の3に基づく別の点検で行われます。
実務で見落としやすいのはどこか

号番号のずれ、認める主体、緩和の外にある部分です。
| 時点 | 特定共同住宅等の位置 |
|---|---|
| 通知(令和2年12月25日)が引く号 | 規則第4条の2の6第2項第3号 |
| 令和2年12月25日施行時点の規則 | 第2項第3号 |
| 現行の規則 | 第2項第4号 |
令和2年12月25日施行時点の規則をe-Gov法令検索で確認すると、特定共同住宅等は第2項第3号にあり、文言は現行の第4号と同じでした。
現行の第2項では、区画に関する規定が第2号と第3号に分かれて入り、特定共同住宅等は第4号に移っています。
また、通知は「認めてよい」という助言で、実際に「これに類する防火対象物」として認めるのは消防長又は消防署長です。
さらに、緩和が及ぶのは住戸などの部分で、宿泊や福祉の用途の部分と通路は、点検基準の全体が適用されます。
点検の資料に古い号番号が書かれていたら、どうしますか。
特定共同住宅等の規定の文言自体は、変わっていません。
資料は現行の号番号に直して使います。
明日からなにを確認すればよいのか

まず、特例の根拠になる令第32条の条文を確認します。
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
- 建物が令別表第一のどの項に当たるかを確認する
- 共同住宅の部分に令第32条を適用した経緯の書類があるかを確認する
- 免除された消防用設備等の内容を、設備ごとに整理しておく
- 宿泊や福祉の用途の部分と通路が、緩和の外にあたるかを整理する
- 点検の範囲を、点検資格者と所轄消防署に確認する
共同住宅の部分に令第32条の特例が使われている場合は、適用の経緯を示す書類が手元にあるかを見ます。
令第32条は、消防長又は消防署長が認めるときに適用される規定です。
特例で免除された設備の内容と、点検基準が適用されない範囲は、別の話として整理しておきます。
点検の範囲に迷うときは、点検を依頼する点検資格者と所轄消防署に、通知と現行の号番号を示して確認します。
特例の書類が見つからないときは、どうすればよいでしょうか。
令第32条を適用するのは消防長又は消防署長です。
適用の経緯は、所轄の消防署に照会します。
よくある質問
まとめ
まず、うちの建物がどの項に当たるかを確認します!
点検の範囲の確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 防火対象物定期点検報告制度に係る執務資料の送付について(令和2年12月25日 消防予第392号 消防庁予防課長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の2・第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の2・第32条・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の6
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





