危険物施設の技術上の基準は政令で細かく定められていますが、現場には基準がそのまま当てはまらない設備が出てきます。
コンプレッサーで圧力をかけて油を押し出す蓄圧式の簡易貯蔵タンクは認められるのか。
1年で移動する組立式の貯蔵倉庫に土間の床でよいのか。
タンクのうしろに油ろ過器の操作室を積んだタンクローリーは移動タンク貯蔵所になるのか。
ドラム缶を野積みしている場所は屋外貯蔵所として扱えるのか。
危険物の規制に関する政令第23条がどこまで使えたのかを昭和38年から昭和40年の質疑をもとに解説します。
うちで扱いたい蓄圧式の簡易貯蔵タンク、政令の基準にそのまま当てはまらへんねん。
これって最初からアウトなん?
いいえ、危険物の規制に関する政令第23条後段で道が開かれています。
昭和38年の回答では6つの条件をすべて満たすなら簡易タンクと同等の効力を有すると認めて支障ないとされました。
ほな条件さえ書いといたら何でも通るってこと?
ドラム缶の野積みも屋外貯蔵所にしてええんかな。
そこは線が引かれていて、野積みを屋外貯蔵所として規制することは適当でないとされました。
通る事例と通らない事例を並べると考え方が見えてきます。この記事でまとめて解説します!
- 蓄圧式の簡易貯蔵タンクは6つの条件に適合する場合に限り政令第17条第1項第6号の簡易タンクと同等の効力を有するものと認めて支障ない
- 条件の柱は厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板と1.5倍の水圧試験および1.1倍以下で作動する安全装置
- 給油ホースの元と加圧用空気の配管にはそれぞれ遮断できるバルブ等が必要でタンクは地盤面に固定する
- 作業現場の組立式の屋内貯蔵所は移転可能であり床面附近の蒸気が排出される隙間があると推測されるので差し支えない
- 油ろ過器と乾燥器の操作室を有するタンク車は政令第23条を適用し政令第15条の移動タンク貯蔵所として許可して差し支えない
- ドラム缶の野積みを屋外貯蔵所として規制することは適当でなく貯蔵を目的としない場合に限り一般取扱所として規制される
- 屋外貯蔵する場所の上部に不燃材料による屋根または上屋等を設けることは政令第23条を適用して認めて支障ない
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目次
蓄圧式の簡易貯蔵タンクは6つの条件に適合すれば認められる

東京消防庁の予防部長から、管内で簡易貯蔵タンクのうち蓄圧式による特殊な構造のものを販売したいという相談があったとして照会が出されました。
この種の簡易貯蔵タンクを危険物の規制に関する政令第23条後段により同等以上の効力があるものと認めて、政令第14条の規定を適用しなくても支障ないかという問いです。あわせて、特例を適用して支障ない場合には具備すべき位置および構造ならびに設備の技術上の基準を列挙してほしいという要望が付けられていました。
照会された装置は、コンプレッサーの一次空圧を減圧弁により0.5キログラム毎平方センチメートルに減圧して貯油タンク内に送圧し、タンク内に蓄圧された圧力により吐油するという機構です。ポンプで汲み上げるのではなく、空気の圧力で押し出す仕組みになっています。
条件をすべて示したうえでの適用です。1つでも欠ければ同等以上の効力があるとは認められません。
- タンクは、政令第14条第5号および第7号に規定する基準に適合すること
- タンクは、厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板で気密に作るとともに、使用最大常用圧力の1.5倍の圧力で10分間行なう水圧試験において漏れまたは変形しない構造であること
- タンクには、使用常用圧力の1.1倍以下の圧力で作動し、かつ、使用するコンプレッサーとの関係において十分な吐出能力を有する安全装置を設けること
- 給油ホースの元には、給油を行なうとき以外は、給油ホースとタンクとの間の危険物を遮断できるバルブ等を設けること
- 加圧用空気を送入する配管の途中には、非常等の場合に容易に空気の送入を遮断できるバルブ等を設けること
- タンクは、容易に移動しないように地盤面に固定すること
6つの条件は蓄圧という仕組みが持ち込む危険に一対一で対応している

この6つは、ばらばらに並べられたものではありません。
タンクの中に常時圧力がかかっているという蓄圧式の特徴から生まれる危険を、1つずつ潰していく構成になっています。
まず第1号は、簡易貯蔵タンクではなく専用タンクや廃油タンク等の基準である政令第14条第5号および第7号を引いています。給油取扱所のタンクとしての土台をそこで確保したうえで、第2号以降で蓄圧式固有の上乗せをかけていく形です。
第2号の厚さ3.2ミリメートル以上という鋼板の指定と、使用最大常用圧力の1.5倍で10分間の水圧試験は、圧力に耐える器としての強度を担保します。気密に作ることが求められているのは、空気圧を保持できなければそもそも吐油できないためでもあります。
圧力を逃がす弁は付いていればよいのではなく、作動圧力と吐出能力の両方が指定されています。使用するコンプレッサーが送り込む量に対して十分に逃がせなければ、弁があっても圧力は上がり続けるからです。
第4号と第5号は、いずれも異常時に流れを止めるためのバルブです。危険物側と空気側の両方を独立して遮断できるようにしておくという考え方で、給油ホースからの流出と加圧の暴走を別々に止められる構成になっています。
第6号の地盤面への固定は、簡易貯蔵タンクに共通する要求です。圧力がかかっている以上、配管が引っ張られて外れることの影響はより大きくなります。
作業現場の組立式の屋内貯蔵所は土間の床と屋根上放出なしでも許可できる

岩手県の厚生部長から、県下の各営林署が国有林地内の作業現場に指定数量の4倍程度の第一石油類を貯蔵する屋内貯蔵所を設置したいとして許可申請書を提出してきた、という照会がありました。
申請書によれば、貯蔵倉庫の周囲20メートルの区域内には立木がなく、周囲の表土ははぎ地肌となっています。一方で倉庫の構造には政令の基準に適合しない部分が2つありました。
- 政令第10条第11号に規定する床は強く打ち固めた土間とし、床にはためますを設けない
- 政令同条第12号に規定する蒸気を屋根上に放出する設備を設けない
この貯蔵倉庫は組立式で、1年ほどの作業が終了すれば他の作業地区に移動するものなので、政令第23条を適用して許可してよいかという問いです。
理由が2つ示されているところが読みどころです。仮設であることと隙間があることの2点です。
ためますや屋根上放出の設備は、床にたまった危険物や滞留した蒸気を処理するためのものです。組立式の倉庫は板を突き合わせただけの構造になりやすく、そこに設備の代わりを果たす隙間があると読んだわけです。
周囲20メートルに立木がなく表土がはぎ取られているという申請内容も、この判断を支えています。基準を外す申請では外した部分を何が埋めるのかを自分で示す必要があります。
油ろ過器と乾燥器の操作室を積んだタンク車も移動タンク貯蔵所になる

富山県の総務部長から、北陸電力株式会社が富山市長宛に移動タンク貯蔵所の設置許可を申請してきたという照会がありました。
その車の設備は、4,000リットルの絶縁油タンクの外に油ろ過器ならびに乾燥器を有する操作室を備えたもので、これらの装置を含む移動タンク貯蔵所を許可することができるかという疑義です。
照会には運用の実態が丁寧に添えられていました。この車の危険物の貯蔵および取扱いの主たる目的は、一般のタンクローリーと同じく絶縁油の輸送です。そのうえで、変電所の突発的な事故に対して当該変電所に油ろ過器がない場合に、本タンク車で絶縁油を輸送するとともに操作室の油ろ過器により油処理を行ない、事故復旧を早めようとするものだと説明されています。
運行中の操作はやらないことも明記されていました。
移動タンク貯蔵所の基準は、車両に固定されたタンクで危険物を貯蔵し運ぶことを前提に組み立てられています。ろ過や乾燥という処理を行なう装置は、その想定の外にあります。
それでも別の施設を足すのではなく1つの移動タンク貯蔵所として通しました。
効いたのは、主たる目的があくまで輸送であること、そして運行中は操作しないと限定されていたことだと読めます。走りながら危険物を処理する車ではなく、現場に着いてから使う装置を積んだ輸送車だという整理です。
ドラム缶の野積みは屋外貯蔵所にはできないが屋根を設けることは認められる

大阪府の民生部長から、製油所または油槽所の構内において第一石油類または第二石油類をドラム罐充てん作業から出荷までの過程で容器入りのまま野積みの状態で取り扱っている場合について、4項目の照会が出されました。
一般取扱所として規制することは昭和36年5月10日付け自消甲予発第25号通達および昭和40年1月19日付け自消丙予発第8号回答により指示されているが、なお疑義があるという前置きが付いています。
- ドラム充てん作業と野積状態が隣接する場所で行なわれている場合、これらを含む単一の一般取扱所とする意味か、それぞれ別個の一般取扱所とする意味か → 後段お見込みのとおり(それぞれ別個の一般取扱所)
- 自消甲予発第25号通達の記第2の3には空地の条件が付されていないが、製油所または油槽所の場合も当然に屋外貯蔵所の空地の幅に準ずると解してよいか → お見込みのとおり
- 継続的な野積みは事実上屋外貯蔵の状態と考えられるので、政令第23条を適用して屋外貯蔵所として規制することは支障ないか → 適当でないが、貯蔵を目的としない場合に限り一般取扱所として規制される
- 屋外貯蔵する場所の上部に不燃材料による屋根または上屋等を設けることを政令第23条を適用して認めて支障ないか → お見込みのとおり
照会側は、充てんが継続している限り当該場所には常に充てん済ドラムが野積みされているのが実態であり、これは事実上屋外貯蔵の状態だと主張しました。実態を見ればそのとおりです。
それでも結論を分けたのは目的でした。貯蔵を目的としない場合に限り一般取扱所として規制されるという書き方で、出荷までの流れの中で置かれているものは貯蔵ではなく取扱いの一部だという整理です。
4項目めの屋根については認められました。屋外貯蔵できる危険物が第四類の乙種危険物または第六類に限られている趣旨は、日光の直射による化学変化や温度上昇に伴う危険性の増大、禁水性物質への雨水浸透の防止にあると照会側が読み解き、屋根はその趣旨に沿うものだと示したことが通った理由です。なお当該屋根等が建築物に該当するときも考えられる、と照会側が自ら申し添えている点も見逃せません。
よくある質問
まとめ
- 蓄圧式の簡易貯蔵タンクは6つの条件に適合する場合、政令第17条第1項第6号に規定する簡易タンクと同等の効力を有するものと認めて支障ない
- タンクは厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板で気密に作り、使用最大常用圧力の1.5倍で10分間の水圧試験に耐える構造とする
- 安全装置は使用常用圧力の1.1倍以下で作動し、使用するコンプレッサーとの関係において十分な吐出能力を有すること
- 給油ホースの元と加圧用空気の配管の途中にそれぞれ遮断できるバルブ等を設け、タンクは容易に移動しないよう地盤面に固定する
- 作業現場の組立式の屋内貯蔵所は、移転可能であり床面附近の蒸気が排出される隙間があると推測されるので土間の床と屋根上放出なしでも差し支えない
- 油ろ過器と乾燥器の操作室を有するタンク車は、政令第23条を適用して政令第15条に定める移動タンク貯蔵所として許可して差し支えない
- ドラム缶の野積みを屋外貯蔵所として規制することは適当でなく、貯蔵を目的としない場合に限り一般取扱所として規制される
- 屋外貯蔵する場所の上部に不燃材料による屋根または上屋等を設けることは、政令第23条を適用して認めて支障ない
基準を外すんやったら、代わりに何があるかを自分で書かなあかんってことやな。
そのとおりです。
蓄圧式のタンクは6条件、組立式の倉庫は隙間と移転可能性、タンク車は運行中は操作しないという限定と、どれも代わりになるものが具体的に示されています。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第2条・第9条・第10条・第14条・第15条・第17条・第23条 e-Gov法令検索
- 蓄圧式簡易貯蔵タンクの取り扱いについて(昭和38年4月6日付け自消丙予発第12号 予防課長から東京消防庁予防部長あて回答)
- 作業現場に屋内貯蔵所を設置することについて(昭和38年9月16日付け自消丙予発第53号 予防課長から岩手県厚生部長あて回答)
- 特殊な移動タンク貯蔵所の設置許可について(昭和39年12月16日付け自消丙予発第152号 予防課長から富山県総務部長あて回答)
- 危険物を容器入りのまま野積み状態で取り扱つている場合について(昭和40年4月15日付け自消丙予発第71号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
- 「危険物の規制に関する政令第23条の特例基準について」(昭和36年5月10日付け自消甲予発第25号 各都道府県消防主管部長あて予防課長通達)記第2
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)基準の特例に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。



