平成29年3月、茨城県稲敷市の廃油処理施設で爆発火災が起き、作業員1人が死亡しました。
原因は、設備や取扱い工程を無許可で変更した部分からの危険物の流出でした。
消防庁はこの事故を受けて改めて事故防止の徹底を求める通知を発出しましたが、実はこれが同じ表題の通知としては三度目でした。
廃油処理施設でなぜ無許可の改造が繰り返され、火災につながるのかを確かめます。
廃油処理施設の火災というと、何か特殊な施設のことでしょうか。
食用油や機械油などを集めて再生する施設です。
平成29年に稲敷市で死亡事故が起きました。
普通の工場とは何が違うんですか。
多品種の廃油を受け入れるため、設備の変更が起きやすいという特徴があります。
そこから見ていきましょう。
- 平成29年3月、茨城県稲敷市の廃油処理施設で爆発火災が起き、死者1人が発生する重大事故となりました
- 原因は設備及び取扱い工程の無許可変更から危険物が流出し、フォークリフトのエンジン部分が着火源となったことでした
- 同じ表題の通知は昭和58年・平成25年・平成29年と三度出されています
- 消防法第11条は、製造所等の位置・構造・設備を変更するときにも許可を義務づけています
- 立入検査での実態把握と許可申請時の品名・性状確認が再発防止の要です
▼
目次
廃油処理施設の火災はなぜ三度目の通知を招いたのか

死者1人・負傷者2人を出す重大事故となり、消防庁は改めて事故防止の通知を発出しました。
事故が起きた施設は、ドラム容器やタンクローリーで受け入れた廃油を廃水と混合してエマルジョン燃料を製造する製造所でした。
設備や工程を無許可で変更した箇所から廃油が広範囲に流出し、そこへフォークリフトのエンジン部分が着火源となって爆発火災に至ったと推定されています。
黒煙の拡散により付近住民749世帯1,931人に避難指示が出され、汚染水は約1.2キロメートルの範囲に拡散しました。
消防危第148号は、この事故を受けて発出されましたが、実は同じ表題の通知が過去にも二度出されています。
死者が出るほどの事故だったんですね。
はい、通知が出たのはこれで三度目です。
なぜ繰り返されるのかを次に見ていきます。
無許可の設備変更はなぜ起きやすいのか

消防庁の通知は、まさにこの構造が無許可の変更を招きやすいと指摘しています。
消防法第11条は、製造所等を新しく設置するときだけでなく、位置・構造・設備を変更するときにも同じ許可を義務づけています。
廃油処理施設は受け入れる廃油の種類や量に応じて配管やタンクを変えたくなる構造を抱えており、変更のたびに許可を取り直す手間を避けようとする誘惑が働きやすいということです。
消防法第12条も、位置・構造・設備が技術上の基準に適合するように維持する義務を事業者に課しており、無許可の変更はこの維持義務にも反することになります。
稲敷市の事故は、この構造的な誘惑が実際に重大事故へつながった実例だということです。
変更するたびに許可を取るのは、手間がかかりますね。
だからこそ、現場での実態把握が欠かせません。
次は立入検査で確認すべき点を見ていきます。
立入検査では何を確認すればよいのか

受け入れている廃油の実態を、許可証と照らし合わせて見ることが求められます。
立入検査では、設置許可を受けた品目以外の廃油等が混在していないかを確認することが求められます。
廃油処理施設は多品種の廃油を受け入れるため、気づかないうちに許可の範囲を超えた危険物を取り扱ってしまう事態が起こりえます。
受け入れ状況を確認したうえで、必要に応じて取扱いの実態に応じた安全対策を指導する、という二段階の対応が求められています。
建物側としては、受け入れている廃油の品名・性状を記録した台帳が許可証の範囲内にあるかを、立入検査の前に自分でも確かめておくと指摘を受けにくくなります。
許可証の範囲を超えているかどうか、自分では分かりにくいです。
受け入れている廃油の品名を一覧にしておくと確認しやすくなります。
次は許可申請の段階での指導を見てみましょう。
許可申請の受理時に何を指導すればよいのか

受け入れ体制と危険物の性状確認が、ここでの焦点です。
設置や変更の許可申請を受け付けるときには、廃油等を受け入れる体制が整っているか、取り扱う危険物の品名や性状をどう確認する仕組みかを指導することが求められます。
参考として挙げられているのが、一般財団法人全国危険物安全協会が平成29年3月にまとめた業種別危険性評価方法(チェックリスト方式)で、廃棄物処理業の危険性評価方法が示されています。
事後の立入検査だけでなく、申請の入り口でも受け入れ体制を点検する仕組みにすることで、無許可変更の温床そのものを減らす狙いがあります。
建物側は、変更許可を申請する段階で受け入れ体制の資料をどこまで提出しているかを、一度担当者に確認しておくとよいでしょう。
申請の段階から見られているんですね。
はい、入り口と現場の両方で確認する仕組みです。
最後に、繰り返されてきた通知の歴史を見てみます。
明日からなにを確認すればよいのか

過去の通知を振り返ると、事故が繰り返されやすい施設だということが見えてきます。
昭和58年・平成25年・平成29年と、同種の通知が約三十年の間に三度出されていることになります。
廃油処理施設は構造的に設備変更の誘惑が強く、事故のたびに通知が出ては一時的に注意が高まり、時間が経つと再び緩む、という繰り返しが続いているとみられます。
建物関係者が明日から確認すべきは、現在受け入れている廃油の品目が設置許可証の記載と一致しているか、そして設備や工程を変更する前に所轄消防署へ相談する手順が社内にあるかの2点です。
変更の相談先が決まっていなければ、まずは所轄消防署に確認しておくことをお勧めします。
三十年前から同じ注意が繰り返されているとは思いませんでした。
だからこそ、今の自分の施設で確認することが大切です。
次はよくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
設備を変える前に相談する習慣をつけます。
変更や更新のご相談は、許可の手続きも含めて承ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 廃油処理施設等における事故防止対策の徹底について(平成29年7月4日 消防危第148号)
- 廃油処理施設等の事故防止について(昭和58年8月19日 消防危第78号)
- 廃油処理施設等における事故防止対策の徹底について(平成25年11月18日 消防危第195号)
- 消防法第11条(設置及び変更の許可)
- 消防法第12条(基準維持義務及び修理等の命令)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





