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ハロン消火設備の使用抑制は駐車場や研究室でどう運用されるのか|発電機室から消費量の全廃まで五つの質疑応答を現行の条文と照らして解説

ハロン消火設備の使用抑制は駐車場や研究室でどう運用されるのか

ハロン消火設備は、オゾン層を守るために、新しく設ける場面が抑えられてきました。
運用の細目は、消防庁が質疑応答 の形で示してきました。
この記事では、駐車場、研究試験室、発電機室と、消費量の全廃についての質疑応答から五つを選び、現行の条文と照らして読みます。
自走式駐車場、併設の区画、研究試験室、発電機室、既設の設備を、順に確かめます。

ハロン消火設備は、もう新しくは設けられないと思っていました。

そこが誤解されやすい点です。
五つの質疑応答で、運用の実際を見ていきます。

質疑応答の回答は、今の条文とどうつながるんでしょうか。

一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。

この記事の結論
  • 共同住宅などに付属する自走式駐車場で、水系の消火設備のために水源水槽を新設する場合は、小規模でコストが非常に大きくなる場合に当たるものとして扱ってよいと答えられました
  • 自走式と機械式の駐車場が併設され、シャッター等で区画されていなければ全体を自走式駐車場として扱い、区画されていれば各々の部分で判断します
  • 研究試験室の禁水性物質や高電圧設備、毒劇物、高価な実験機器のある部分は、水系が適さない、または被害が大きい場合として扱ってよいと答えられました
  • 主たる部分がクリティカルユースなら、通信機室に付属する発電機室のような付属する施設も、同じく該当するものとして扱えます
  • 消費量の全廃には、消火剤の充填も火災時の放出も含まれず、既設の設備を他の消火設備に代える必要はないと答えられました

▼

ハロン抑制の質疑五問として、小さな駐車場は水槽が大きな負担、自走式と機械式は区画で判断が分かれる、研究室は水で被害が大きくなる、付属の発電機室も同じ扱い、充填と放出は消費量に含まれない、を並べた図解

共同住宅の自走式駐車場では、水槽を新設する負担がハロン消火設備を選ぶ理由になるのか

低い集合住宅の脇の小さな駐車場に三台の車が並び、その隣に駐車場に不釣り合いなほど大きな青い貯水槽が立っているイメージ
共同住宅や事業所に付属する自走式駐車場に、水系の消火設備を設けると、水源の水槽が新たに要る場合があります。
その負担が、ハロンを選ぶ理由になるのかが問われました。
問(要旨) 共同住宅、事業所等に付属している自走式駐車場で、水系の消火設備を設置する場合に、新たに水源水槽等の設置を要するものについては、155号通知第1、1、(1)、②、※2(w4)の「防護対象部分が小規模であるため、消火設備の設置コストが非常に大きくなる」場合に該当するものとして取り扱うこととしてよいか。
答 お見込みのとおり。
(平成14年5月22日 消防予第153号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管課長あて)
水源水槽の新設が要る自走式駐車場は、小規模でコストが非常に大きくなる場合に当たるという答えでした。
現行の令第13条は、防火対象物の駐車の用に供される部分について、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のうち、いずれかを設置すると定めています。
対象は、階ごとの床面積が、地階又は二階以上の階で200平方メートル以上、一階で500平方メートル以上、屋上部分で300平方メートル以上のものなどです(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階は除かれます)。
条文の表はハロゲン化物消火設備も並べています。つまり、ハロンを禁じているのは条文ではなく、選ぶ場面を絞る通知の運用です。回答は、水系の設備のために水源水槽の新設まで要る場合を、その運用が認める事情の一つとしました。自分の駐車場がこれに当たるかは、所轄の消防機関に確かめます。

水槽を建てる負担も、理由になるんですね。

はい。
小規模で費用が非常に大きくなる場合として扱えます。

自走式と機械式の駐車場が併設されているときは、どちらの駐車場として判断するのか

地面の高さの駐車場と背の高い灰色の機械式駐車塔が一つの床でつながり、その間を閉じた薄い灰色のシャッターの壁が仕切っているイメージ
一つの建物に、自分で走らせて入れる自走式の駐車場と、昇降機で車を動かす機械式の駐車場が並ぶことがあります。
その境目にシャッター等があるかで、扱いが分かれます。
問(要旨) 自走式駐車場と機械式駐車場が併設されているもので、自走式駐車場の部分と機械式駐車場の部分の間がシャッター等で区画されていないものについては、全体を155号通知別表第1中の「自走式駐車場」として取り扱うこととしてよいか。
答 お見込みのとおり。
なお、自走式駐車場の部分と機械式駐車場の部分がシャッター等で区画されている場合は、各々の部分についてクリティカルユースの判断を行われたい。
(平成14年5月22日 消防予第153号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管課長あて)
区画されていなければ全体を自走式駐車場とし、区画されていれば部分ごとに判断するという答えでした。
現行の令第13条の表は、駐車の用に供される部分を二つに分けています。一は階ごとの床面積で決まる部分、二は昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のものです。
機械式は、床面積でなく収容台数で拾われる別の類型です。回答は、区画がなければ一体の自走式駐車場として、区画があれば部分ごとに、ハロンを使えるかの判断(クリティカルユースの判断)をすると示しています。
ただし、どの程度の仕切りが「シャッター等で区画」に当たるかは、条文に書かれていません。自分の駐車場の仕切りがこれに当たるかは、所轄の消防機関に確かめます。

シャッターで区切るかどうかで、判断が変わるんですね。

はい。
区画の有無が、判断の単位を決めます。

研究試験室では、禁水性物質や高価な機器があると水系の消火設備が適さないことになるのか

小さな実験室の断面で、ベージュの長い作業台にガラスの丸底フラスコと高価そうな小型の分析装置が載り、奥の壁際に灰色の電気盤、作業台の脇に濃紺の小さなドラム缶が並ぶイメージ
研究試験室や実験室は、部屋ごとに、扱う物も機器も大きく違います。
水系の消火設備を避けてよい部分として、四つの場合が示されました。
問(要旨) 研究試験室等で、次の(1)から(4)までに掲げるものについては、155号通知第1、1、(1)、②、※2(w1)「消火剤が不適である」及び(w2)「消火剤が放出された場合の被害が大きい」場合に該当するものとして取り扱うこととしてよいか。
(1) 禁水性物質を取り扱う部分があり、水との反応による危険性があるもの((w1)による。)
(2) 高電圧設備が存在し、感電の危険性があるもの((w1)による。)
(3) 毒劇物、放射性物質を取り扱う部分があり、水による汚染の拡大の可能性が大きいもの((w2)による。)
(4) 高価な実験機器が存在し、水損により多大な損害が発生する可能性が大きいもの((w2)による。)
答 (1)から(4)までお見込みのとおり。
(平成14年5月22日 消防予第153号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管課長あて)
四つの部分は、水系の消火設備が適さない、または放出された場合の被害が大きい場合に当たるという答えでした。
禁水性物質のある部分と高電圧設備のある部分は、水を使うこと自体が危険な場合として、毒劇物や放射性物質のある部分と高価な機器のある部分は、水による汚染の拡大や水損の被害が大きい場合として、整理されています。
現行の令第13条の表には、研究試験室を名指しした行がありません。この回答は、法令が設置を義務づける部分の話ではなく、ハロンを選ぶ場面についての通知の運用を示したものです。
法第17条第1項が関係者に求めるのは、令の技術上の基準に従って消防用設備等を設置し、及び維持することです。ハロンを選ぶ理由が四つに当たるかは、部分ごとに実態を整理し、所轄の消防機関に確かめます。

禁水性物質があれば、水は使えないということですね。

はい。
水が適さない実態を、部分ごとに整理します。

通信機室に付属する発電機室は、同じようにクリティカルユースとして扱えるのか

隣り合う二つの小さな部屋の断面で、大きな部屋に背の高い薄い灰色のサーバーラックが並び、小さな付属の部屋に短い排気管のついた灰色のディーゼル発電機が台の上に据えられているイメージ
通信機室の消火設備には、ハロンが認められる場合があります。
その通信機室に付属する発電機室まで、同じ扱いになるのかが問われました。
問(要旨) クリティカルユースの当否の判断においては、主たる部分の用途がクリティカルユースに該当する場合(通信機室等に付属している発電機室等)には、これに付属する施設等についてもクリティカルユースに該当するものとしてよいか。
答 お見込みのとおり。
(平成14年5月22日 消防予第153号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管課長あて)
主たる部分がクリティカルユースなら、付属する施設等も該当するものとして扱ってよいという答えでした。
現行の令第13条の表は、発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分(床面積が200平方メートル以上のもの)と、通信機器室(床面積が500平方メートル以上のもの)を、別の行に掲げています。
どちらの行も、下欄は不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備で、水噴霧消火設備や泡消火設備は挙げていません。
消火設備を設ける部分ごとに必要性を検討するのが原則ですが、この回答は、主従の関係にある部分を主たる部分の用途でまとめて判断する扱いを示しています。何が「付属」に当たるかは条文に定めがないため、自分の発電機室が当たるかは所轄の消防機関に確かめます。

付属する発電機室まで、まとめて判断できるんですね。

はい。
主たる部分の用途が、判断の軸になります。

既設のハロン消火設備は、消費量の全廃を理由に他の消火設備へ替えなければならないのか

小さな設備室の断面で、三本の濃紺のガスボンベが鋼製の架台に立ち、短い配管に丸い圧力計がついて天井のノズルにつながっているイメージ
ハロンは、必要不可欠な用途を除いて、1994年から生産等が全廃されました。
そこで、既にある設備に消火剤を充填しておくことや、火災で放出することが「消費量」に当たるのかが問われました。
問(要旨) 1 ハロン抑制通知第1、2における「消費量の全廃」の定義として、次のものが該当するのか。(1) ハロゲン化物消火設備・機器にハロゲン化物消火剤を充填しておくこと。(2) 火災発生時等にハロゲン化物消火薬剤を放出すること。
2 1において「消費量の全廃」の定義に(1)、(2)が含まれる場合、既設のハロゲン化物消火設備・機器は、他の消火設備に代替させる必要があるのか。
答 1 (1)、(2)ともに該当しない。「消費量」とは、モントリオール議定書において、消費量=(生産量)+(輸入量)-(輸出量)と定義されており、ハロン消火薬剤を充填しておくこと及び火災発生時に放出することは含まれない。
2 1によって明らかなように、既設のハロゲン化物消火設備・機器を他の消火設備に代替させる必要はないものである。
(平成5年11月5日 消防予第296号 消防庁予防課長から静岡県総務部防災局長あて)
充填も放出も消費量に含まれず、既設の設備を他の消火設備に代える必要はないという答えでした。
消費量の定義は、消防法令ではなく、回答が引くモントリオール議定書のものです。生産量に輸入量を足して輸出量を引いた量なので、設備に充填して置くことも、火災で放出することも入りません。
消防法令の側では、令第13条の表が、ハロゲン化物消火設備を今も選べる設備として並べています。法第17条第1項は、設置した消防用設備等を維持することも関係者に求めています。
同じ質疑応答は、抑制通知が新たな設置を抑えるものであり、既設の設備は抑制の対象外だと述べています。ただし、この回答は平成3年の通知を前提にした当時のものです。現在の運用は、平成13年の155号通知(平成26年に一部改正)で確認します。
なお、同じ質疑応答は、ハロンの供給は相当長期間にわたり可能と見込むという平成5年当時の見通しも述べています。これは当時の見通しなので、現在の供給の状況は、別に確かめます。

充填しておくだけなら、消費量には数えないんですね。

はい。
既設の設備は、代える必要がないと答えられました。

よくある質問

Qハロゲン化物消火設備は、令第13条の表に今も載っているのですか?
A令第13条の表は、駐車の用に供される部分、発電機等の電気設備の部分、通信機器室の下欄に、ハロゲン化物消火設備を挙げています。使用の抑制は、条文ではなく消防庁の通知が示しています。
Q使用の抑制は、どの通知で示されているのですか?
A平成13年5月16日付けの消防予第155号・消防危第61号です。回答に出てくる(w1)(w2)(w4)は、この通知第1の1の(1)の②の※2にある記号です。
Q既設のハロン消火設備は、維持しなければならないのですか?
A法第17条第1項は、関係者に、消防用設備等を令の技術上の基準に従って設置し、及び維持することを求めています。平成5年の回答も、既設の設備を他の消火設備に代替させる必要はないとしています。
Q平成5年や平成14年の回答は、今もそのまま使えますか?
A平成5年の回答は平成3年の通知を前提にし、平成14年の回答は平成13年の155号通知の運用です。現行の155号通知(平成26年の一部改正を含む)と、所轄の消防機関で確認します。

まとめ

✔令第13条の表は、駐車の用に供される部分、電気設備の部分、通信機器室で、ハロゲン化物消火設備を選択肢に挙げている
✔水源水槽の新設が要る自走式駐車場は、小規模でコストが非常に大きくなる場合として扱ってよいと答えられた
✔自走式と機械式の併設は、シャッター等で区画されているかで、判断の単位が変わる
✔研究試験室の四つの部分は、水系が適さない、または被害が大きい場合として扱ってよいと答えられた
✔主たる部分がクリティカルユースなら、付属する発電機室等も同じく扱える
✔消費量の全廃には、充填と放出は含まれず、既設の設備を他の消火設備に代える必要はない
✔個別の適用は、現行の155号通知と所轄の消防機関に確認する

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条
  • 消防法施行令第13条
  • ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について(平成13年5月16日 消防予第155号・消防危第61号)
  • ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等の運用について(通知)(平成14年5月22日 消防予第153号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管課長あて)
  • ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等に係る質疑について(平成5年11月5日 消防予第296号 消防庁予防課長から静岡県総務部防災局長あて)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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