二酸化炭素消火設備は、火災のときに防護区画へ二酸化炭素を放出して火を消す設備です。
令和5年4月の改正で、誤放出を防ぐ閉止弁の設置が新たに義務づけられました。
消防庁は令和6年に、その設置状況の調査結果と、誤放出を防ぐための留意事項を通知しています。
この記事では、調査結果と、現場で見落としやすい点を解説します。
閉止弁って、そもそも何のために付ける弁なのでしょうか。
設置は義務になったと聞きました。
点検や工事で人が防護区画に入るときに、誤放出を防ぐための弁です。
令和5年4月から、新たに設置が義務づけられました。
義務になって、どれくらいの建物に付いたのでしょうか。
付いていない建物もありますか。
消防庁の調査では、設置率は96.5%でした。
それでも、設置されていない建物が残っています。
- 令和6年6月28日の消防予第318号は、二酸化炭素消火設備の閉止弁の設置状況調査の結果と、誤放出を防ぐ留意点を示した通知です。
- 閉止弁は、規則第19条第5項第19号イ(ハ)により、全域放出方式の二酸化炭素消火設備の集合管又は操作管に設ける弁です。
- 令和6年3月31日時点の全国の設置率は96.5%で、未設置の建物への指導を続けるよう求められています。
- 令和6年5月には、閉止弁を閉めようとして手動起動装置を誤って操作し、二酸化炭素が誤放出された事案がありました。
- 平成13年7月1日より前に設置された制御盤には、閉止弁の開閉の信号を受信・表示できないものがあるとされています。
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目次
二酸化炭素消火設備の閉止弁はなぜ全国の設置状況が調べられたのか

ただし、すでにあった防火対象物には、令和6年3月31日までの経過措置がありました。
この省令の施行の際現に存する防火対象物若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の防火対象物若しくはその部分における不活性ガス消火設備に係る技術上の基準の細目については、新規則第十九条第五項第十九号イ(ハ)の規定にかかわらず、令和六年三月三十一日までの間は、なお従前の例による。
引用の「新規則」は、この省令による改正後の消防法施行規則のことです。
省令は令和5年4月1日に施行され、既存の防火対象物の閉止弁は令和6年3月31日まで従前の例によるとされました。
消防庁は、その経過措置を踏まえて、令和6年3月に設置状況調査を各消防本部へ依頼しています。
通知が挙げる誤放出の背景は、閉止弁の存在を十分に把握していなかったことです。
義務化のあとも、誤放出は起きていたのですか。
通知は、閉止弁を閉めずに作業して負傷した事案を挙げています。
調査は、経過措置の終了を踏まえて行われました。
閉止弁はどの消火設備のどこに設けるものなのか

対象は、全域放出方式の不活性ガス消火設備のうち、二酸化炭素を放射するものです。
全域放出方式の不活性ガス消火設備には、次のイ又はロに定めるところにより保安のための措置を講じること。
イ 二酸化炭素を放射するものにあっては、次の(イ)から(ホ)までに定めるところによること。
(ハ) 集合管(集合管に選択弁を設ける場合にあっては、貯蔵容器と選択弁の間に限る。)又は操作管(起動用ガス容器と貯蔵容器の間に限る。)に消防庁長官が定める基準に適合する閉止弁を設けること。((イ)(ロ)(ニ)(ホ)は略)
集合管に選択弁を設ける場合は、貯蔵容器と選択弁の間に限られます。
操作管に設けるときは、起動用ガス容器と貯蔵容器の間に限られます。
設ける弁は、消防庁長官が定める基準に適合するものでなければなりません。
通知の調査対象は、令別表第一に掲げる防火対象物のうち、二酸化炭素消火設備が設置されているものです。
閉止弁は、どこに付けるものなのですか。
集合管か操作管に設けます。
集合管に選択弁があるときは、貯蔵容器と選択弁の間です。
消防庁の調査結果は閉止弁の設置をどこまで示したのか

数字は、令和6年3月31日時点のものです。
別紙によると、団体数は749(消防本部数+非常備町村)で、義務設置の防火対象物は12,909、閉止弁ありは12,458です。
差し引きの451が、基準日時点で閉止弁が設置されていない防火対象物になります。
都道府県別では、新潟・富山・三重・島根・岡山・愛媛・佐賀・大分の8県が100.0%でした。
一方で、香川は85.0%、鳥取は77.4%で、地域による差があります。
別紙は令和6年11月7日に更新されたもので、表はその一部を抜き出したものです。
| 区分 | 義務設置の防火対象物 | 閉止弁が設置されている防火対象物 | 設置率 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 12,909 | 12,458 | 96.5% |
| 東京 | 3,367 | 3,331 | 98.9% |
| 大阪 | 1,721 | 1,607 | 93.4% |
| 香川 | 100 | 85 | 85.0% |
| 鳥取 | 31 | 24 | 77.4% |
つまり、ほとんどの建物には付いたということですね。
はい。
ただし、設置されていない防火対象物が451残っていて、消防庁は指導の継続を求めています。
閉止弁の運用で見落としやすいのはどこか

通知は、どちらも建物関係者へ周知するよう求めています。
令和6年5月の事案は、閉止するつもりで手動起動装置を操作してしまったものです。
理由までは通知に書かれていませんので、取り違えた原因を推測して書くことはしません。
平成13年7月1日より前に設置された制御盤には、開閉の信号を受信・表示する機能が無いものがあります。
その場合も、建物関係者が開閉状態を正確に把握し、適切に操作できるよう、消防予第210号の附属資料「二酸化炭素消火設備の操作手順」を参考にするとされています。
閉止弁を閉めようとして、逆に放出させてしまうことがあるのですか。
はい。
令和6年5月に、手動起動装置を誤って操作した事案がありました。
明日からなにを確認すればよいのか

人が防護区画に立ち入るかどうかで、閉止弁の状態が決まります。
全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)の維持に関する技術上の基準は、前条に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 閉止弁は、次のイ及びロに定めるところにより維持すること。
イ 工事、整備、点検その他の特別の事情により防護区画内に人が立ち入る場合は、閉止された状態であること。
ロ イに掲げる場合以外の場合は、開放された状態であること。
二 自動手動切替え装置は、工事、整備、点検その他の特別の事情により防護区画内に人が立ち入る場合は、手動状態に維持すること。
(三は略)
四 制御盤の付近に設備の構造並びに工事、整備及び点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書を備えておくこと。
人が立ち入らない通常時は、閉止弁を開放した状態に維持します。
通常時に閉止したままでは、規則の維持の基準を満たさなくなります。
あわせて、自動手動切替え装置も、人が立ち入る場合は手動状態に維持します。
次の5点を、自分の建物で実物と見比べて確認してみてください。
- 二酸化炭素消火設備のある建物で、閉止弁の有無と位置を確認する
- 閉止弁と手動起動装置の位置と見分け方を、実物で確認する
- 制御盤が閉止弁の開閉の信号を受信・表示できるかを確認する
- 人が入る作業の前は閉止、終えたら開放に戻す手順を決めておく
- 制御盤の付近に、手順を定めた図書が備えてあるかを確認する
自分の建物では、まず何を確認すればよいでしょうか。
閉止弁の位置と状態と、制御盤の表示機能です。
作業の前に閉止するのが基本です。
よくある質問
まとめ
閉止弁と制御盤の確認を、今週中にやってみます!
閉止弁の確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「二酸化炭素消火設備の閉止弁の設置状況に係る調査結果等について(通知)」(令和6年6月28日 消防予第318号 消防庁予防課長)
- 「二酸化炭素消火設備の閉止弁の設置状況に係る調査等について」(令和6年3月22日 消防予第137号 消防庁予防課長)
- 「『二酸化炭素消火設備が設置された部分又はその付近で工事等作業を行う際の事故防止対策実施マニュアル』の附属資料の追加について」(令和5年3月31日 消防予第210号)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第19条第5項第19号イ(ハ)・第19条の2
- 消防法施行規則の一部を改正する省令(令和4年総務省令第62号)附則第2条第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





