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自家発電設備の保安装置試験は基準と実測値をどう見分けるか|接地抵抗や絶縁耐力試験の実測値も解説

自家発電設備の保安装置作動試験の実測値と消防検査の関係を示すアイキャッチ

自家発電設備の工事が完了すると、設置後の試験で保安装置の作動状況や絶縁性能を確認します。
試験結果報告書にはそのとき測った具体的な数値が記載され、この数値は消防検査でも確認の対象になります。
ただし数値の中には、法令が定める基準値と、機器ごとにメーカが設定する実測値が混在しています。
今回は自家発電設備の保安装置作動試験・切替試験にどんな実測値が記載されるのかを解説します。

試験結果報告書の数値は、全部法令の基準値だと思っていました。

いえ、実は機器ごとの実測値も一緒に載っています。

どこまでが基準で、どこからが実測値なのか気になります。

はい、両方の見分け方を整理しましょう。
まずは保安装置の種類から見ていきます。

この記事の結論
  • 自家発電設備には過電流遮断器や過速度停止装置など8種類前後の保安装置が備わります
  • 保安装置の作動値は定格電流の135%以下、定格回転速度の116%以下のようにメーカが機器ごとに設定します
  • 接地抵抗や絶縁抵抗にも電路の種類ごとに基準値があります
  • 絶縁耐力試験は最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間加えて確認します
  • 始動試験と切替試験はいずれも40秒以内が基準で、報告書は消防検査の照合対象になります

自家発電設備の保安装置作動試験が種類の確認から作動値の設定基準絶縁性能始動切替試験を経て消防検査での照合へ進むことを示した図解

自家発電設備にはどんな保安装置が備わっているのか

制御盤に並ぶ複数の保護装置やメーターを指し示すイメージ
自家発電設備には、原動機や発電機に異常が起きたときに自動的に停止や警報を行う複数の装置が組み込まれています。
消防庁の点検要領は、これらを保護装置の作動としてまとめて整理しています。
問 自家発電設備の保安装置には、具体的にどのような種類があるか。
答 保護装置の作動が第24-2表のとおりで、かつ、正常であること。過電流、過回転、冷却水断水又は冷却水温度上昇(水冷式のみ)、タービン入口ガス温度上昇(ガスタービンのみ)、空気だめ(空気タンク)圧力低下(空気始動式のみ)、蓄電池液面低下(電気始動式で減液警報装置が設けられているもの)を確認する。(消防用設備等の点検要領第24 非常電源(自家発電設備)3総合点検、第24-2表)
自家発電設備の保安装置は大きく8種類前後に分かれます。
過電流を検知する過電流遮断器、回転数の上がりすぎを止める過速度停止装置のほか、水冷式機関のみに備わる断水又は水温上昇停止装置、ガスタービンのみに備わるガス温度上昇停止装置があります。
電気始動式には燃料電池ではなく蓄電池の液面低下を知らせる減液警報装置、空気始動式には始動空気圧低下警報装置と始動空気圧自動充気装置が組み合わせで備わります。
このほかに、非常時に人の手で原動機を止める手動停止装置も欠かせない保安装置のひとつです。

思っていたより種類が多くて驚きました。

はい、機関の方式によって組み合わせが変わります。
次は作動する数値の決め方を見てみましょう。

保安装置の作動値はなぜメーカ指定値の範囲で決まるのか

設定つまみのある保護継電器のダイヤルを技術者が調整するイメージ
保安装置は「異常を検知して止める」という役割は共通ですが、実際に作動する数値までは法令に一律の固定値がありません。
点検要領は、装置ごとに数値の決め方を示しています。
問 保安装置の作動値は、どのように定められているか。
答 保護装置の設定範囲は、過電流にあっては定格電流の135%以下、過回転にあっては定格回転速度の116%以下(ガスタービンは111%以下、多軸式の場合は116%以下)とする。冷却水断水又は冷却水温度上昇、タービン入口ガス温度上昇、蓄電池液面低下、空気だめ(空気タンク)圧力低下は、いずれもメーカ指定値によるものとする。(同点検要領第24-6表 保護装置の設定範囲)
保安装置の作動値は定格値に対する割合やメーカ指定値の範囲で決まります。
過電流遮断器なら定格電流の135%以下、過速度停止装置なら定格回転速度の116%以下という考え方が示されていますが、実際に何アンペア・何回転で作動させるかは機種ごとの設計値です。
試験実務必携に載る記載例では、過電流遮断器の作動電流値85A、過速度停止装置の作動回転数1,950rpm、ガス温度上昇停止装置の作動温度600度、減液警報装置の設定液面+10mmという数値が使われていますが、これらはその機器固有の設定例であって、全国一律の法令上の下限・上限そのものではありません。
試験結果報告書を見るときは、数値そのものを基準と思い込まず、割合やメーカ指定値の考え方に沿っているかを確かめる視点が必要です。

85Aや1,950rpmは、法令の数値ではなかったんですね。

はい、機器ごとの設定例です。
次は接地抵抗と絶縁抵抗の基準を見てみましょう。

接地抵抗と絶縁抵抗にはどんな基準があるのか

接地抵抗計と絶縁抵抗計を発電機の端子に当てて測定するイメージ
保安装置の作動確認とあわせて、電気系統そのものの安全性を確かめる試験も行われます。
接地抵抗と絶縁抵抗は、それぞれ電路の区分ごとに基準値が定められています。
問 接地抵抗と絶縁抵抗には、それぞれどのような基準値があるか。
答 接地抵抗値は第24-4表に示す数値であること。高圧計器用変成器の2次側の一端子(D種)は接地抵抗値100Ω以下(低圧電路に0.5秒以内に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下)とする。絶縁抵抗は第24-5表に示す数値以上であること。300V以下で対地電圧150V以下は0.1MΩ、300Vを超えるものは0.4MΩ、3,000V高圧電路は3.0MΩ、6,000V高圧電路は6.0MΩとする。(同点検要領第24-4表・第24-5表)
接地抵抗はD種で100Ω以下、絶縁抵抗は電路の使用電圧に応じて0.1MΩ以上から6.0MΩ以上までの基準があります。
試験実務必携の記載例では接地抵抗8.2Ω、絶縁抵抗は電機子巻線・主回路(高圧)で100MΩ、界磁巻線や制御回路などで50MΩという実測値が示されており、いずれも基準値を大きく上回っています。
接地抵抗は数値が小さいほど、絶縁抵抗は数値が大きいほど安全側になるため、この余裕は設備が基準を満たしていることの裏づけになります。
点検の記録にある数値を見るときは、まず自分の設備の電路区分がどれに当たるかを確認することが出発点です。

実測値のほうが基準よりだいぶ余裕があるんですね。

はい、余裕のある性能が確認できます。
次は絶縁耐力試験を見てみましょう。

絶縁耐力試験の印加電圧はなぜ最大使用電圧の1.5倍になるのか

高電圧試験器のケーブルが発電機の端子箱に接続されているイメージ
絶縁抵抗の測定だけでなく、実際に高い電圧を加えて絶縁が破壊されないかを確かめる試験もあわせて行われます。
この印加電圧は、設備ごとの最高使用電圧をもとに計算されます。
問 絶縁耐力試験の印加電圧は、どのように定められているか。
答 器に、最大使用電圧の1.5倍の電圧を連続して10分間これに耐えること。(消防用設備等の試験基準に係る運用について(平成14年9月30日消防予第283号)別表 非常電源(自家発電設備)試験基準)
絶縁耐力試験は最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間連続して加える試験です。
つまり印加電圧そのものは全設備共通の固定値ではなく、設備の最大使用電圧から逆算して決まる数値です。
試験実務必携の記載例にある印加電圧10,350Vも、この計算式にその設備の最大使用電圧を当てはめた結果の一例にすぎません。
点検の記録で印加電圧の数値だけを見て高い低いを判断せず、まず最大使用電圧の1.5倍という計算のもとになっているかを確認することが大切です。

10,350Vという数字は、計算から出てきた値だったんですね。

はい、1.5倍という計算式が土台です。
最後に始動試験と切替試験、消防検査との関係を見てみましょう。

始動試験と切替試験はなぜ40秒以内が基準になるのか

ストップウォッチを手に持ち発電機と試験結果報告書を見比べているイメージ
保安装置や絶縁性能の確認とあわせて、実際に停電を模擬して電源が立ち上がるまでの時間も測定されます。
この始動試験・切替試験の結果は、消防検査でも確認される項目です。
問 始動試験・切替試験の合否は、どのように判定するか。
答 常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間は、40秒以内であること。(自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(三))常用運転から非常用運転への切り替え時間が40秒以内であること。(消防用設備等の点検要領第24 非常電源(自家発電設備)切替性能)
始動試験(電圧確立時間)と切替試験(切替時間)は、どちらも40秒以内が基準です。
試験実務必携の記載例では始動試験18.2秒、切替試験1.2秒という実測値が示されており、いずれも40秒という基準に対して大きく余裕があります。
これらの試験結果報告書は、消防法施行規則第31条の3第2項に基づき、消防検査で設置届出書に添付された設計図書と照合しながら確認される対象です。
点検や検査の場で見る数値の多くは、こうして基準値と照らし合わせるためにあることを押さえておくと、報告書の見方が変わってきます。

報告書の数値が消防検査でも見られているとは知りませんでした。

はい、設計図書との照合で使われます。
最後によくある質問を見てみましょう。

よくある質問

Q保安装置の作動電流値85Aや作動回転数1,950rpmは、法令で決まっている数値ですか?
Aいいえ。法令や点検要領が定めるのは定格電流の135%以下のような設定の考え方までで、具体的な数値は機器ごとにメーカが設定する実測値です。
Q接地抵抗や絶縁抵抗の実測値が基準値よりかなり余裕があるのはなぜですか?
A基準値は接地抵抗の上限や絶縁抵抗の下限にすぎず、実際の機器はそれを大きく上回る性能を持つのが一般的なためです。
Q始動試験の18.2秒や切替試験の1.2秒は、どんな意味を持つ数値ですか?
Aどちらも40秒以内という基準に対する実測値の一例です。基準への適合を示す数値であり、それ自体が別の法令上の基準というわけではありません。
Q試験結果報告書の数値は、消防検査でどのように使われますか?
A消防検査は設置届出書に添付された設計図書や試験結果報告書と照合しながら行われるため、報告書に記載された実測値は検査で確認される対象になります。

まとめ

自家発電設備には過電流遮断器や過速度停止装置など8種類前後の保安装置が備わる
保安装置の作動値は定格電流の135%以下、定格回転速度の116%以下のようにメーカが設定する
作動電流85Aや作動回転数1,950rpmなどの実測値は法令上の最低基準ではなく機器ごとの設定例である
接地抵抗はD種100Ω以下、絶縁抵抗は使用電圧に応じて0.1MΩ以上から6.0MΩ以上までが基準になる
絶縁耐力試験は最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間加えて確認する
始動試験・切替試験はいずれも40秒以内が基準である
試験結果報告書の実測値は消防検査で設計図書と照合される対象になる

基準と実測値の見分け方がよく分かりました!
次の点検の記録も見直してみます。

割合と40秒以内の2つを覚えておけば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第31条の3第2項(消防用設備等又は特殊消防用設備等の届出及び検査)
  • 消防用設備等の試験基準に係る運用について(平成14年9月30日消防予第283号)別表 非常電源(自家発電設備)試験基準
  • 自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(三)
  • 消防用設備等の点検要領 第24 非常電源(自家発電設備)(総務省消防庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。保安装置の作動値や試験結果報告書の記載内容は設備の仕様によって異なります。個別の判断は所轄消防署または設備の製造者にご確認ください。

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