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準防火地域にある建物は外壁を直さず増築できるのか|建築基準法施行令第137条の11が定める緩和の範囲を解説

準防火地域の建物が外壁を直さず増築できるかを示すアイキャッチ

準防火地域にある建物を増築や改築をしようとすると、外壁や軒裏の防火性能を今の基準に合わせなければならないのが原則です。
しかし建築確認を受けて適法に建てた既存の建物には、その基準を満たさない既存不適格の状態のまま増築できる緩和が用意されています。
この緩和の範囲を定めているのが、建築基準法施行令第137条の11です。
この記事では、準防火地域の緩和の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。

準防火地域にある古い建物を増築しようとしたら、外壁を今の防火構造に直すよう言われました。
そのまま増築する方法はないんでしょうか。

増築部分の規模によっては、外壁を直さずに増築できる緩和があります。
建築基準法施行令第137条の11という規定です。

知りませんでした。
防火地域の緩和とは違う内容なんでしょうか。

防火地域の緩和より使える範囲が広いところがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 準防火地域の既存不適格建築物は、条件を満たせば増築や改築をしても外壁など法61条の基準を今のままにできます(建築基準法施行令第137条の11)。
  • 対象になるのは、法第86条の7第1項の政令で定める範囲内の増築・改築に係る部分だけです。
  • ルートは2つあり、136条の2の基準に相当する基準に適合させるか、増築部分50平方メートル以内・階数2以下の小規模な増築にとどめるかを選べます。
  • 防火地域向けの第137条の10と違い、小規模ルートには延べ面積500平方メートルの上限や増築前の延べ面積を超えないという上限がありません。
  • 木造の建物で外壁・軒裏が防火構造でないものは、小規模ルートを使えず136条の2の基準に適合させるルートしか選べません。

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準防火地域における既存不適格建築物の増築緩和の仕組みを示す図解

準防火地域の建物を増築するとなぜ今の外壁の基準に合わせなければならないのか

準防火地域の敷地に建つ建物と外壁を示すイラスト
適法に建てた建物でも、増築や改築の工事に着手すると、既存不適格として保護される前提が崩れることがあります。
まずこの原則を確認しておきましょう。
建築基準法第三条第三項 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物…に対しては、適用しない。 三 工事の着手がこの法律…の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
増築や改築に着手すると、既存不適格として保護されてきた前提そのものが崩れます。
第3条第3項第3号は、工事着手の時点を基準に既存不適格の保護から除外する建物を定めているためです。
そのため原則どおりに考えると、少しの増築でも外壁を含めた建物全体を現行の第61条の基準に合わせる必要が出てきます。
しかしそれでは小規模な増築のたびに全面的な改修が必要になり、現実的ではありません。

少し増築するだけで、建物全体の外壁を直さなければならないのは大変です。
何か救済はないんでしょうか。

そこで第86条の7という緩和の規定が用意されています。
対象になる範囲を次に見ていきましょう。

施行令第137条の11はどんな増築や改築を対象にしているのか

二手に分かれた道が示す二つの緩和ルートのイラスト
第86条の7第1項を受けて、準防火地域の外壁の基準についての緩和の範囲を具体的に定めているのが施行令第137条の11です。
まず条文の枠組みを確認します。
建築基準法施行令第百三十七条の十一 法第三条第二項の規定により法第六十一条(準防火地域内にある建築物に係る部分に限る。)の規定の適用を受けない建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、増築及び改築については、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める要件に該当する増築又は改築に係る部分とする。
建築物の区分ごとに、緩和を受けるための要件が分かれています。
木造以外の建築物や、外壁・軒裏が防火構造の木造建築物(一号)には、136条の2の基準に適合させるルートと、小規模な増築にとどめるルートの2つが用意されています。
一方、外壁・軒裏が防火構造でない木造建築物(二号)には、選べるルートが1つしかありません。
どちらの区分に当たるかで、使えるルートの幅が変わります。

うちの建物は鉄骨造なので、一号の区分に当たりそうです。
ルートは2つとも使えるということでしょうか。

鉄骨造であれば一号に当たるので、2つのルートから選べます。
それぞれの中身を見ていきましょう。

小規模な増築ならどこまで緩和されるのか

建物に増築部分が加わる小規模な増築のイラスト
一号が定める2つのルートのうち、より使いやすいのが小規模な増築にとどめるロのルートです。
具体的な要件を確認します。
建築基準法施行令第百三十七条の十一第一号ロ 次の(1)及び(2)並びに前条第一号ロ(3)から(5)までに該当するものであること。 (1)工事の着手が基準時以後である増築及び改築に係る部分の対象床面積の合計(当該増築又は改築に係る建築物が同一敷地内に二以上ある場合においては、これらの増築又は改築に係る部分の床面積の合計)は、五十平方メートルを超えないこと。 (2)増築又は改築後における建築物の階数が二以下であること。
床面積の合計50平方メートル以内・階数2以下の増築なら、外壁を直さずに済みます。
面積は増築・改築に係る部分の床面積の合計で数え、同一敷地内に対象の建築物が2棟以上あればそれらを合算します。
これに加えて、前条(第137条の10)第一号ロ(3)から(5)が定める外壁・軒裏の防火構造や開口部の防火設備の要件にも該当する必要があります。
どちらか一方だけを満たしても、このルートは使えません。

うちの増築は床面積が30平方メートルほどで、階数も増えません。
それなら外壁を直さなくてよいということですね。

面積と階数の要件に加え、増築部分の外壁や開口部の要件も満たせば使えます。
次は防火地域向けの緩和との違いを説明します。

防火地域の緩和と比べて何が違うのか

木造建築物と非木造建築物で緩和の可否が分かれるイラスト
同じ小規模ルートでも、防火地域向けの第137条の10と準防火地域向けの第137条の11では要件が異なります。
見落としやすい2つの違いを確認します。
建築基準法施行令第百三十七条の十第一号ロ(抜粋) (1)…対象床面積の合計…は、五十平方メートルを超えず、かつ、基準時における当該建築物の延べ面積の合計を超えないこと。 (2)増築又は改築後における建築物の階数が二以下で、かつ、延べ面積が五百平方メートルを超えないこと。/同令第百三十七条の十一第二号 木造の建築物のうち、外壁及び軒裏が防火構造のもの以外のもの 前号イに該当するものであること。
準防火地域向けの小規模ルートには、防火地域のような上限がありません。
防火地域向けの第137条の10には、増築部分が増築前の延べ面積を超えないことと、増築後の延べ面積が500平方メートルを超えないことという上限があります。
準防火地域向けの第137条の11第一号ロには、この2つの上限が付いていません。
一方で、外壁・軒裏が防火構造でない木造建築物(二号)は、この小規模ルート自体を選べません。

うちは木造で、外壁がまだ防火構造になっていません。
その場合はどうすればいいんでしょうか。

その場合は136条の2の基準に適合させるルートしか選べません。
最後に確認の手順をまとめます。

増築を計画するときは何を確認すればよいのか

設計図とチェックリストとルーラーのイラスト
準防火地域で増築や改築を計画するときは、次の点を順番に確認してください。
早い段階で分かれば、その後の計画も立てやすくなります。
  • 自分の建物・敷地が、既存不適格として法第61条の適用を受けていないかを確認する
  • 建物の構造(木造か否か・外壁と軒裏が防火構造か)を確認し、施行令第137条の11第一号と第二号のどちらに当たるかを判定する
  • 増築・改築に係る部分の床面積の合計と、増築後の階数を確認する
  • 第一号イ(136条の2の基準に適合させるルート)と第一号ロ(小規模な増築のルート)のどちらを使うか検討する
  • 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
着工前の早い段階で確認しておくことが大切です。
増築後に要件を満たしていないと分かると、計画のやり直しが必要になります。

手順が分かれば、設計の早い段階でどちらのルートを使うか相談できそうです。
ありがとうございます。

早めに確認しておけば、着工後の手戻りも防げます。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q準防火地域にある建物を増築するときは必ず外壁を防火構造にしなければなりませんか?
A増築部分の規模などの条件を満たせば、既存の外壁のまま増築できます(建築基準法施行令第137条の11)。条件を満たさない場合は、外壁を含めて現行の基準に適合させる必要があります。
Q小規模な増築の上限はどのように数えますか?
A増築又は改築に係る部分の床面積の合計で数えます。同一敷地内に対象の建築物が2棟以上ある場合は、それらの増築・改築部分の床面積を合計して判定します。
Q防火地域の緩和とはどこが違いますか?
A防火地域向けの第137条の10には、増築前の延べ面積を超えないことや、増築後の延べ面積が500平方メートルを超えないことという上限がありますが、準防火地域向けの第137条の11の小規模ルートにはこの上限がありません。
Q木造の建物はこの緩和を使えませんか?
A外壁及び軒裏が防火構造の木造建築物であれば緩和の対象になります。防火構造でない木造建築物は小規模ルート(ロ)を使えず、136条の2の基準に適合させるルート(イ)だけが選択肢になります。

まとめ

✔準防火地域の既存不適格建築物は、条件を満たせば増築や改築をしても外壁など法61条の基準を今のままにできます(施行令第137条の11)。
✔対象になるのは、法第86条の7第1項の政令で定める範囲内の増築・改築に係る部分だけです。
✔ルートは2つあり、136条の2の基準に相当する基準に適合させるか、増築部分50平方メートル以内・階数2以下の小規模な増築にとどめるかを選べます。
✔小規模ルートの面積は、増築・改築に係る部分の床面積の合計で数え、同一敷地内に2棟以上あれば合算します。
✔防火地域向けの第137条の10と違い、小規模ルートには延べ面積500平方メートルの上限や増築前の延べ面積を超えないという上限がありません。
✔木造の建物で外壁・軒裏が防火構造でないものは、小規模ルートを使えず136条の2の基準に適合させるルートしか選べません。
✔増築の計画段階で、対象になる部分の面積と階数、外壁・軒裏の構造を早めに確認しておくことが大切です。

増築の話が出たら、今日の内容を確認しながら進めます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第61条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第136条の2・第137条の10・第137条の11

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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