大きな地震のあと、被害が甚大なときは政令で特定非常災害に指定されることがあります。
令和8年8月7日には、令和八年熊本地震についての指定政令が公布・施行されました。
消防庁は8月10日に、消防法令の期限や特例認定をどう扱うかを通知しています。
この記事では、その通知の中身と、被災した事業所が確認すべき点を解説します。
特定非常災害って何ですか。
消防法令の期限にも関係あるのでしょうか。
被害が甚大なときに政令で指定され、権利利益の延長や義務の免責ができる制度です。
消防法令の期限にも影響します。
うちの建物の特例認定や、点検報告の期限も延びるのでしょうか。
延び方は種類ごとに違います。
特例認定は告示、報告や講習は免責という整理です。
- 令和8年8月10日の消防予第368号・消防危第195号は、特定非常災害の指定に伴う消防法令の運用を示した通知です。
- 防火対象物点検と防災管理点検の特例認定は、認定から3年で効力を失うのが原則ですが、延長の告示に基づいて取り扱うとされています。
- 履行期限が7月28日以後に到来する点検報告や講習は、11月27日までに履行すれば、地震被害で履行できなかったことの責任は問われません。
- 点検資格者の再講習と危険物施設の保安検査は、免責ではなく別の規定で扱われるので、同じ扱いにはなりません。
- 通知は消防組織法第37条に基づく助言なので、個別の扱いは所轄消防署や市町村長等への確認が必要です。
▼
目次
特定非常災害に指定されると消防法令の運用はなぜ通知されるのか

消防法令にも期限のあるものが多いため、消防庁が運用の考え方をまとめて通知しました。
1つ目は、存続期間の定めのある権利利益で、通知が挙げるのは特例認定です。
2つ目は、履行期限の定めのある義務で、通知は特定義務と呼んでいます。
通知は、消防庁の予防課長と危険物保安室長の連名で、都道府県や消防本部などへ出されました。
この整理の根拠は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(以下「特定非常災害法」といいます。)です。
特定非常災害に指定されたら、消防法令の義務はなくなるのですか。
なくなるわけではありません。
通知は、期限の扱いを種類ごとに整理しています。
防火対象物点検の特例認定は3年を過ぎても効力が続くのか

有効期間は認定から3年で、通知は、この3年について延長の告示を定める予定と述べています。
第一項の規定による認定を受けた防火対象物について、次のいずれかに該当することとなったときは、当該認定は、その効力を失う。
一 当該認定を受けてから三年が経過したとき(当該認定を受けてから三年が経過する前に当該防火対象物について第二項の規定による申請がされている場合にあっては、前項の規定による通知があったとき。)。(二は略)
原則は、消防法第8条の2の3第4項第1号のとおり、認定から3年で効力を失います。
通知は、災害救助法が適用された市町村の区域内に所在する等、一定の要件を満たすものを対象に、延長の告示を定める予定と述べています。
全国の特例認定が一律に延びるとは書かれていませんので、自分の建物が対象かどうかは告示で確かめます。
法律上、延長の措置は告示で、地域を単位として、対象者と延長後の満了日を指定して行うものとされています。
うちの特例認定は、もうすぐ3年で切れます。
被災地でなくても延びますか。
通知は、対象を一定の要件を満たす建物と書いています。
延びるかどうかは、告示で確認しましょう。
点検報告や講習の期限を過ぎても責任は問われないのか

通知は、履行期限の範囲と、責任を問われなくなる期日を示しています。
特定非常災害発生日以後に法令に規定されている履行期限が到来する義務(以下「特定義務」という。)であって、特定非常災害により当該履行期限が到来するまでに履行されなかったものについて、その不履行に係る行政上及び刑事上の責任(過料に係るものを含む。以下単に「責任」という。)が問われることを猶予する必要があるときは、政令で、特定非常災害発生日から起算して四月を超えない範囲内において特定義務の不履行についての免責に係る期限(以下「免責期限」という。)を定めることができる。
通知が例に挙げるのは、点検結果の報告、消防設備士講習、甲種防火管理再講習、自衛消防業務再講習、防災管理再講習、危険物取扱者保安講習の受講などです。
問われないとされる責任は、行政上及び刑事上の責任で、過料に係るものも含みます。
通知は義務を免除するとは書いておらず、期限までに履行した場合に責任を問わないという形です。
通知は「地震被害により履行されなかった」ことについて責任を問わないと書いていますので、被害と関係なく怠っていた場合まで免責するとは書かれていません。
報告や講習が間に合わなかったら、罰則を受けるのでしょうか。
地震被害で履行できなかった義務は、11月27日までに履行すれば責任を問われません。
義務そのものがなくなるわけではありません。
点検資格者の再講習と危険物の保安検査はなぜ同じ扱いにならないのか

他の法令に別段の定めがあるときは、その定めるところによるとされているからです。
前三項の規定にかかわらず、特定義務が災害その他やむを得ない事由によりその履行期限が到来するまでに履行されなかった場合について他の法令に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
ただし、災害その他の総務省令で定める事由により、当該時期に法第十四条の三第一項の保安に関する検査を行うことが適当でないと認められるときは、当該特定屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所の所有者、管理者又は占有者の申請に基づき、市町村長等が別に定める時期とすることができる。
各種点検資格者の再講習は、告示のただし書により、受講が困難と認められる場合に受講期限を1年間延長できます。
危険物施設の保安検査は、政令のただし書により、申請に基づき市町村長等が別に定める時期にできます。
どちらも「認められる場合」や「申請に基づき」という条件が付いており、自動的に延びるとは書かれていません。
危険物取扱者保安講習は特定義務に入りますが、保安検査は入りませんので、同じ危険物でも扱いが分かれます。
| 区分 | 通知の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 特例認定(防火対象物点検・防災管理点検) | 延長の告示に基づいて取り扱う | 特定非常災害法第3条第2項 |
| 点検結果の報告・消防設備士講習・防火管理再講習など | 7月28日から11月26日までに期限が来るものは、11月27日までの履行で責任を問われない | 特定非常災害法第4条第1項 |
| 各種点検資格者の再講習 | 受講困難と認められる場合は、受講期限を1年間延長できる | 消防庁告示のただし書 |
| 危険物施設の保安検査 | 申請に基づき、市町村長等が別に定める時期にできる | 危険物政令第8条の4第2項ただし書 |
再講習も、11月27日までに受ければよいのでしょうか。
いいえ。
再講習は告示のただし書で、受講期限の1年間延長として扱われます。
被災した事業所は明日からなにを確認すればよいのか

通知は助言ですので、個別の扱いは窓口で確かめる必要があります。
前項の規定による延長の措置は、告示により、当該措置の対象となる特定権利利益の根拠となる法令の条項ごとに、地域を単位として、当該措置の対象者及び当該措置による延長後の満了日を指定して行うものとする。
特例認定の延長は、告示の対象や延長後の満了日を見て判断します。
点検報告や講習は、履行期限が7月28日から11月26日までに来るかを見ます。
再講習と保安検査は、免責に頼らず、それぞれの規定に沿った手続きを確認します。
次の5点を、自分の事業所の期限一覧と見比べて確認してみてください。
- 手持ちの期限を、特例認定・点検報告や講習・再講習・保安検査に仕分ける
- 特例認定は、延長の告示に自分の建物が含まれるかを、消防庁の公表と所轄消防署で確認する
- 履行期限が7月28日から11月26日までの義務は、11月27日までに履行する
- 点検資格者の再講習は、受講が困難な事情を整理して、所轄消防署へ取扱いを確認する
- 危険物の保安検査は、申請して時期を定めてもらえるか、市町村長等へ確認する
うちも被災地にあるのですが、まず何をすればよいでしょうか。
期限の一覧を作って、種類ごとに仕分けます。
特例認定と再講習と保安検査は、所轄への確認が先です。
よくある質問
まとめ
期限の仕分けを、今週中にやってみます!
期限の確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「『令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令』の公布・施行に伴う消防法令の運用について(通知)」(令和8年8月10日 消防予第368号・消防危第195号 消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長)
- 令和八年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(令和8年政令第260号)
- 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条・第4条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の3・第36条第1項
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第8条の4第2項
- 平成12年消防庁告示第14号・平成14年消防庁告示第9号・平成20年消防庁告示第20号(各点検資格者の再講習の受講期限に関するただし書)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





