壁面線が指定された敷地で、建物を道路や隣地から下げて建てたい場面があります。
建蔽率の上限を超えて建てられるのかが気になります。
建築基準法第53条第4項と第5項が、許可による緩和を定めています。
決め手になるのは、壁面線を越えないことと、特定行政庁の許可です。
今回は建築基準法第53条第4項と第5項が定める壁面線を越えない建築物の建蔽率の緩和について、除かれる部分と手続、防火管理者が押さえておきたい点をあわせて解説します。
壁面線の指定がある敷地に増築を考えています。
建蔽率の上限を超えて建てられるのでしょうか。
建築基準法第53条第4項と第5項に、許可による緩和の規定があります。
まず、条文から見ていきましょう。
壁面線を守れば、自動的に緩和されるのでしょうか。
ひさしが少し出ていても大丈夫ですか。
緩和には、特定行政庁の許可が必要です。
ひさしの扱いは、あとで施行令の条文で確認しますね。
- 第4項は、隣地境界線から後退した壁面線などを越えない建築物で、特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したものの建蔽率を、許可の範囲内で限度を超えられるとしています。
- 第5項第一号は、前面道路の境界線から後退して指定された壁面線を越えない建築物について、同じように許可の範囲内で限度を超えることを認めています。
- 壁面線を越えるかどうかを見るとき、軒、ひさし、ぬれ縁、地盤面下の部分、高さが2メートル以下の門又は塀は、施行令第135条の21により建築物から除かれます。
- 許可をするときは、第9項の準用により、第44条第2項と同じく建築審査会の同意をあらかじめ得る手続が入ります。
- たとえば、建蔽率60パーセントの300平方メートルの敷地で、許可の範囲が70パーセントまでなら、建築面積の限度は180平方メートルから210平方メートルになる例です。消防法令の基準は別に判断します。
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目次
壁面線から後退した建築物は建蔽率の限度を超えて建てられるのか

その限度を超えることを許すのが、第4項です。
条文を確認しましょう。
条件は三つあります。
一つ目は、隣地境界線から後退した壁面線の指定か、条例による壁面の位置の制限があることです。
二つ目は、その線を越えない建築物であることです。
三つ目は、特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したことです。
壁面線を守るだけでは足りないのですね。
前面道路側の壁面線は、どうなるのでしょうか。
前面道路側は、第5項が定めています。
次に、第4項と第5項の違いを見ていきましょう。
第4項と第5項第一号は隣地側と前面道路側でなにが違うのか

前面道路から後退した壁面線を扱うのが、第5項第一号です。
条文を見ましょう。
一 特定行政庁が街区における避難上及び消火上必要な機能の確保を図るため必要と認めて前面道路の境界線から後退して壁面線を指定した場合における、当該壁面線を越えない建築物
(略)
指定の目的は、街区における避難上及び消火上必要な機能の確保です。
第5項には、ほかに三つの類型があります。
特定防災街区整備地区の壁面の位置の制限、防災街区整備地区計画の条例による壁面の位置の制限、外壁の工事を行う建築物の三つです。
この記事は、第5項第一号を中心に扱います。 第4項と第5項第一号は、どちらも「許可の範囲内」でしか限度を超えられません。
壁面線を守っただけで、自動的に限度が上がるわけではありません。
隣地側は第4項、前面道路側は第5項第一号ですね。
壁面線を越えるかは、どこまで見ればよいのでしょうか。
ひさしなどは、判断から除かれる部分があります。
次に、施行令第135条の21を見ましょう。
壁面線を越えるかどうかの判断で建築物から除かれる部分はどこまでなのか

その政令が、施行令第135条の21です。
一 軒、ひさし、ぬれ縁及び国土交通省令で定める建築設備
二 建築物の地盤面下の部分
三 高さが二メートル以下の門又は塀
除かれる部分は、三つの号に並んでいます。
第4項のかっこ書の「次項において同じ」から、第5項の判断でも同じ扱いになると読めます。
高さが2メートルを超える門や塀は、この号に入りませんので、壁面線を越えるかの判断に含まれます。 計算例を示します。
敷地面積が300平方メートル、都市計画の建蔽率が60パーセントの場合、加算がなければ建築面積の限度は、300×0.6=180平方メートルです。
特定行政庁の許可の範囲が建蔽率70パーセントまでだったと仮定すると、限度は、300×0.7=210平方メートルです。
許可の範囲は個別に決まるため、数値は読み方の例です。 ひさしが壁面線を0.5メートル越えて出ていても、それだけでは対象から外れません。
越えるかどうかは、ひさしなどを除いた部分で見ます。
ひさしや地下部分は、越えるかの判断から除かれるのですね。
許可の手続は、どうなっていますか。
許可には、建築審査会の同意が関わります。
次に、第9項を見ていきましょう。
許可がないと限度を超えられず建築審査会の同意まで必要になるのはなぜか

許可の手続は、第9項に書かれています。
(建築基準法第四十四条第二項)特定行政庁は、前項第四号の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。
許可は、特定行政庁の判断だけでは完結しません。
許可の範囲を超えて建てることも、当然できません。
二つの項の違いを、表にまとめます。
| 項目 | 第4項 | 第5項第一号 |
|---|---|---|
| 後退する相手 | 隣地境界線から後退した壁面線、又は条例による隣地境界線に面する壁面の位置の制限 | 前面道路の境界線から後退して指定された壁面線 |
| 指定の目的 | 条文に目的は書かれていません | 街区における避難上及び消火上必要な機能の確保 |
| 対象の建築物 | 壁面線などを越えない建築物で、特定行政庁が許可したもの | 壁面線を越えない建築物で、特定行政庁が許可したもの |
| 効果 | 許可の範囲内で、第1項から第3項までの限度を超えられる | |
| 手続 | 第9項の準用により、あらかじめ建築審査会の同意を得る | |
許可の範囲と同意の手続が決まっているのですね。
防火管理者は、なにを確かめればよいでしょうか。
建蔽率は建築基準法の話ですが、増築や改修のときに関係します。
確かめたい点を、五つにまとめます。
壁面線の指定がある敷地で防火管理者は増築や改修の前になにを確かめておくとよいのか

防火管理者の義務を直接に決めるものではありません。
ただし、増築や改修を考えるときには、関係する場面があります。 第4項と第5項は建築基準法の建蔽率の緩和であり、消防法令の基準を緩めるものではありません
建蔽率の緩和を受けられても、消防用設備等の設置基準は別に判断します。
判断に迷うときは、所轄消防署への相談も欠かせません。
明日から次の点を確認してください。
- 敷地に壁面線の指定や条例による壁面の位置の制限があるかを、特定行政庁の窓口や都市計画の資料で確認して記録する。
- 建築物が壁面線を越えていないかを、図面で確かめる。ひさしなど施行令で除かれる部分は、別に扱われる。
- 許可を受けた建築物なら、許可書の写しと許可の範囲を控えておく。
- 増築や改修の前に、許可の範囲を超えないかを、建築士や特定行政庁に事前に相談する。
- 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建蔽率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。
壁面線と許可の範囲を、まず書類で確認します。
増築の前に、相談してみます。
状況が分かれば、改修のときの相談も早くなります。
相談は、建築の窓口と消防の両方の窓口にしておくと安心です。
よくある質問
まとめ
壁面線と許可の範囲を、確認しておく必要があるんですね。
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許可の範囲が分かれば、増築や改修の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第五十三条・第四十四条・建築基準法施行令第百三十五条の二十一(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。壁面線の指定や許可の運用は特定行政庁ごとに確認が必要な場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





