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特定屋外貯蔵タンクの底部溶接部はコーティングの上から試験できるのか|フェーズドアレイ超音波探傷の扱いを解説

タンク底部の溶接部はコーティング上から検査してよいのか

特定屋外貯蔵タンクの底には、溶接でつなぎ合わせた鋼板が使われています。
その底部の溶接部を、内面のコーティングの上から試験できる探傷装置が開発されています。
消防庁は令和4年9月2日、その試験の扱いを、消防危第195号の執務資料で示しました。
この記事では、フェーズドアレイ超音波探傷法による底部溶接部の試験の位置づけを解説します。

タンクの底の溶接部は、コーティングを施したままで試験できるのでしょうか。

コーティング上から行うことを目的にした、フェーズドアレイ超音波探傷の扱いが通知に示されています。

その試験は、消防法令が定めている試験と同じ扱いになるのですか。

規則第20条の8の試験方法と同等と見なしてよいとされています。

この記事の結論
  • 消防危第195号は、令和4年9月2日に消防庁危険物保安室長が出した通知で、別紙に問答が1問だけ付いた執務資料です。
  • 問答の対象は、特定屋外貯蔵タンクの保安検査等のうち、底部溶接部の試験をコーティング上から行うために開発されたフェーズドアレイ超音波探傷装置(PA探傷装置)です。
  • 対象は、第三者機関から性能の評価を受けた装置に限られ、検討委員会が示した性能確認方法と運用方法に基づく試験です。
  • 答えは「差し支えない」で、その試験は規則第20条の8に規定される試験方法と同等と見なしてよいとされました。
  • 規則第20条の8は、底部の溶接継手に磁粉探傷試験を行い、困難なら浸透探傷試験、条件を満たせば渦電流探傷試験を認めています。

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コーティング上からの底部溶接部試験を、底部の溶接部を試験する、規則の試験方法は三つ、コーティング上から探傷する、同等と見なして差し支えないの4つで整理した概要図解

特定屋外貯蔵タンクの底部の溶接部はなぜ保安検査で確かめられるのか

円筒形のタンクと底板の溶接線を示した断面のイラスト
保安検査は、タンクを使い続けるうえで受ける検査です。
その検査事項に、底部の溶接部が入っています。
危険物の規制に関する政令第八条の四第三項
法第十四条の三第一項の屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものは、次の各号に掲げる特定屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。
一 特定屋外タンク貯蔵所(次号に掲げるものを除く。) 液体危険物タンクの底部(略)の板の厚さに関する事項及び液体危険物タンクの溶接部に関する事項(液体危険物タンクの底部に係るものに限る。(略))
保安検査では、底部の板の厚さと、底部の溶接部が検査の事項になります。
消防法第14条の3第1項は、政令で定める屋外タンク貯蔵所の所有者等に、政令で定める時期ごとに、市町村長等が行う保安に関する検査を受けることを求めています。
政令第8条の4第1項は、この対象を、液体の危険物の最大数量が1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所としています。
不等沈下などが生じた場合の検査は、法第14条の3第2項と政令第8条の4第4項から第6項が定めており、この場合も底部の板の厚さと溶接部が事項に挙がっています。
第3項の事項のうち底部の溶接部に、今回の通知が関わってきます。

底の板の厚さだけでなく、溶接部も検査の事項なのですね。

はい。
政令第8条の4は、底部の溶接部に関する事項を明記しています。

規則第20条の8では底部の溶接継手をどんな試験で確認するのか

鋼板の溶接線と検査用の工具を並べたイラスト
通知が比べている相手は、規則第20条の8が定める試験方法です。
まず、その条文の中身を見ます。
危険物の規制に関する規則第二十条の八第一項
特定屋外貯蔵タンクの側板とアニュラ板(アニュラ板を設けないものにあつては、底板)、アニュラ板とアニュラ板、アニュラ板と底板及び底板と底板との溶接継手(以下この項において「底部の溶接継手」という。)並びに重ね補修に係る側板と側板との溶接継手(接液部に係るものに限る。)は、磁粉探傷試験を行い、次項に定める基準に適合するものでなければならない。ただし、磁粉探傷試験によることが困難な場合には浸透探傷試験を、底部の溶接継手(磁粉探傷試験又は浸透探傷試験により、それぞれ次項又は第三項に定める基準に適合していると認められたことがあるものに限る。)が対象となる場合には渦電流探傷試験を行うことができる。(略)
試験使う場面合格の基準(主なもの)
磁粉探傷試験底部の溶接継手などに、まず行う試験割れがないこと。磁粉模様の長さが4ミリメートル以下であること
浸透探傷試験磁粉探傷試験によることが困難な場合割れがないこと。指示模様の長さが4ミリメートル以下であること
渦電流探傷試験磁粉探傷試験又は浸透探傷試験で基準に適合したことがある底部の溶接継手基準となる傷(長さ4ミリメートル、深さ1.5ミリメートル)を走査したときの電圧又は電流の値を超えないこと
規則第20条の8は、底部の溶接継手の試験を、磁粉、浸透、渦電流の順に定めています。
底部の溶接継手には、側板とアニュラ板、アニュラ板どうし、アニュラ板と底板、底板どうしの溶接継手が含まれます。
原則は磁粉探傷試験で、それが困難なときに浸透探傷試験を行います。
渦電流探傷試験は、磁粉探傷試験か浸透探傷試験で基準に適合したことがある底部の溶接継手に限って行えます。
このほかの項に、割れの有無や模様の長さの合格基準が細かく定められています。

三つの試験のどれかで、底部の溶接継手を確認する決まりなのですね。

はい。
通知はこれと同等かどうかを答えています。

消防危第195号の問答はフェーズドアレイ超音波探傷の試験を何と同じ扱いにしたのか

コーティングを施した鋼板の上を小型の探傷装置が進むイラスト
通知の別紙には、問い1つと答え1つが書かれています。
問いの前提が長いので、順に整理します。
消防危第195号(令和4年9月2日)の別紙には、特定屋外貯蔵タンクの保安検査等のうち底部溶接部の試験をコーティング上から行うことを目的として開発されたフェーズドアレイ超音波探傷法を用いた探傷装置(屋外貯蔵タンクの構造について高度な知見を有する第三者機関から装置の性能に関して評価を受けたものに限る。以下「PA探傷装置」という。)について、危険物保安技術協会に設置された「コーティング上からの溶接線検査に係る検討委員会」で検討が行われ、底部溶接部のうち特定の部位に対しては、一定の溶接欠陥を検出することが可能であるとの結論が得られたとあります。
同じ問いには、あわせて、PA探傷装置の性能確認方法及び保安検査等における運用方法(適用可能なタンクの要件を含む。)が示されたことが書かれています。そのうえで、当該運用方法に基づく底部溶接部に係る試験は規則第20条の8に規定される試験方法と同等と見なしてよいかと問い、答えは「差し支えない。」とされています。
問答が同等と見なしたのは、運用方法に基づくPA探傷装置による底部溶接部の試験です。
装置は、第三者機関から性能の評価を受けたものに限られます。
検討委員会が、底部溶接部のうち特定の部位について、一定の溶接欠陥を検出できると結論づけています。
同等と見なせるのは、装置の性能確認方法と保安検査等での運用方法に従った試験です。
装置さえあればどの試験でもよい、とは書かれていません。

どんなPA探傷装置でも、規則の試験と同じ扱いになるわけではないのですね。

はい。
性能の評価と運用方法に従うことが前提です。

同等と見なされると保安検査の判断にどうつながるのか

保安検査済証と円筒形のタンクを並べたイラスト
規則第62条の3は、保安検査の結果の扱いを定めています。
この条文が、規則第20条の8を名指ししています。
危険物の規制に関する規則第六十二条の三第三項
市町村長等は、保安に関する検査を行つた結果、特定屋外タンク貯蔵所(略)にあつては第二十条の四第二項第二号及び第二十条の八に定める技術上の基準(略)に適合していると認めたときは、別記様式第三十の保安検査済証を交付するものとする。
保安検査済証の交付には、規則第20条の8の技術上の基準への適合が入っています。
通知は、運用方法に基づくPA探傷装置の試験を、その規則第20条の8の試験方法と同等と見なしてよいと答えました。
そのため、保安検査等での底部溶接部の試験に、この探傷装置による試験を用いる道が開かれたと読めます。
なお、消防法第14条の3第3項は、市町村長等が審査を協会に委託できるとしています。
個々の検査でどう運用されるかは、検査を行う市町村長等の判断になります。

同等と見なされたので、保安検査でもこの試験を使えるということですね。

はい。
実際の運用は、検査を行う市町村長等に確認してください。

保安検査を受ける事業所は何を確認しておけばよいのか

書類の束と携帯用の探傷装置のケースを並べたイラスト
通知は、装置の性能確認方法や運用方法の中身までは書いていません。
そのため、確認したい点を先に整理しておきます。 確認したいのは、装置・運用方法・対象の部位・タンクの要件の4点です。
1点目は、使う装置が第三者機関から性能の評価を受けたものかどうかです。
2点目は、示された性能確認方法と保安検査等の運用方法に沿った試験になっているかどうかです。
3点目は、試験する底部溶接部が、検出できるとされた特定の部位に当たるかどうかです。
4点目は、運用方法が定める適用可能なタンクの要件に、自分のタンクが当てはまるかどうかです。
通知にはこれらの詳細が書かれていないので、検査を担当する消防機関に確認しておきましょう。

装置の評価と部位とタンクの要件を、確かめておけばよいのですね。

はい。
保安検査の前に、消防機関へ相談してください。

よくある質問

Q消防危第195号は、法令と同じ効力を持つのですか?
Aこの通知は、危険物規制事務に関する執務資料を送るもので、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたと書かれています。
Qフェーズドアレイ超音波探傷装置なら、どの装置でも使えますか?
A問答の対象は、屋外貯蔵タンクの構造について高度な知見を有する第三者機関から装置の性能に関して評価を受けたものに限るとされています。
Q底部溶接部のすべてを、この装置で試験できるのですか?
A検討委員会の結論は、底部溶接部のうち特定の部位に対して一定の溶接欠陥を検出できるというものです。すべての部位を対象にするとは書かれていないので、検査を行う消防機関に確認してください。
Q規則第20条の8の試験方法は、磁粉探傷試験だけですか?
A原則は磁粉探傷試験で、困難な場合に浸透探傷試験、基準に適合したことがある底部の溶接継手には渦電流探傷試験を行えると定められています。

まとめ

✔消防危第195号は、令和4年9月2日の執務資料で、別紙に問答が1問付いている
✔対象は、コーティング上から底部溶接部を試験するために開発されたPA探傷装置である
✔装置は、第三者機関の性能評価を受けたものに限られる
✔答えは「差し支えない」で、運用方法に基づく試験は規則第20条の8の試験方法と同等と見なされる
✔規則第20条の8の試験は、磁粉が原則で、困難なら浸透、条件付きで渦電流
✔保安検査済証の交付には、規則第20条の8の技術上の基準への適合が含まれる
✔装置・運用方法・部位・タンクの要件を、検査前に消防機関へ確認する

保安検査の前に、探傷装置の評価と運用方法を消防機関に確認します!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和4年9月2日 消防危第195号 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第14条の3
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第8条の4
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第20条の8・第62条の3
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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