危険物の施設が火事で焼けました。
その施設は、直せばまた使えるのでしょうか。
それとも、新しく建てる扱いになるのでしょうか。
消防の実務書には、この分かれ目を確かめた質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。焼けた施設の直し方で、手続きがどう変わるかを、順に確かめます。
焼けた部分を直すだけなら、届出だけで済むんじゃないんですか。
いいえ。
どこまで焼けたかとどう直すかで、手続きが変わります。
そこが、よく分からないんです。
一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。
- 火災で損壊した施設を部分修理で復旧するなら、消防法第11条の変更の許可が必要だと答えています
- 元の場所で直すと空地が足りなくなる場合でも、危険物の規制に関する規則第13条の要件に適合すれば、空地の特例を適用してよいと答えています
- 許可は事業所ごとではなく、施設又は場所ごとに与えられるものだと答えています
- 焼失した施設を再建するなら、新しく設置するものとして設置の許可が必要で、焼けた施設は廃止の届出が必要だと答えています
- 隣の住居との距離は、防火上有効な塀を設けて市町村長等が安全と認めれば、10メートルより縮められると答えています
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目次
火災のあとの手続きは、どの条文で決まっているのか
消防法第11条第1項は、製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者に、施設ごとに市町村長等の許可を求めています。同じ項の後段は、位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様に許可が要ると定めています。
許可を受けた者は、設置や変更のあとに完成検査を受け、技術上の基準に適合していると認められるまで、施設を使えません(同条第5項)。
条文は、「設置」と「変更」を分けていますが、焼けた施設をどちらとして扱うかまでは書いていません。以下の5問は、その分かれ目を確かめた質疑です。
火災で損壊した施設を部分修理で復旧するとき、許可はいるのか

新しく設置する扱いなのか、変更の扱いなのかが問われました。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和37年4月6日・自消丙予発第44号)
消防法第11条第1項の後段は、位置、構造又は設備を変更しようとする者にも許可を求めています。回答は、焼けて壊れた部分を直す工事を、変更の許可の対象として扱っています。
直したあとは、同条第5項のとおり、完成検査を受けて基準に適合していると認められるまで、その部分を使えません。
どこまでが許可の要らない軽微な変更にあたるかは、別の記事で整理しています。
元に戻すだけでも、変更の許可なんですね。
はい。
部分修理なら、変更の許可です。
元の場所で直すと空地が足りなくなるときは、認められないのか

火災の前から空地が足りなかった施設は、復旧のときにどうなるのでしょうか。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和37年4月6日・自消丙予発第44号)
現行の危険物の規制に関する政令第9条第1項第2号は、製造所の建築物等の周囲に、指定数量の倍数に応じた幅の保有空地を求めています。ただし書は、隔壁の設置その他の防火上有効な措置を講じたときの特例を認めています。
その措置は、危険物の規制に関する規則第13条が定めています。現行の同条は、製造所と一般取扱所について、防火上有効な隔壁や、耐火構造の塀と散水設備等の措置を挙げています。
回答は、政令第23条の一般的な特例ではなく、第9条のただし書で足りると読めます。
空地が足りなくても、すぐ不許可にはならないんですね。
はい。
規則の措置を講じるかどうかで見ます。
許可は事業所ごとか施設ごとか、焼けなかった施設はどうなるのか

火災で一つが焼けたとき、他の施設の許可は影響を受けるのでしょうか。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和37年9月17日・自消丙予発第91号)
消防法第11条第1項は、製造所、貯蔵所又は取扱所ごとに許可を受けると定めています。回答は、この読み方を確かめたものです。
同じ工場の敷地でも、焼けた施設と焼けなかった施設は、別の許可として扱われます。焼けた施設の手続きが、そのまま焼けなかった施設に及ぶわけではありません。
施設をどう数えるかは、別の記事で整理しています。
同じ工場でも、施設ごとに別々なんですね。
はい。
施設又は場所ごとに許可です。
焼失した施設を建て直すと、設置の許可からやり直しになるのか

その工場が、再建の計画を立てています。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和37年9月17日・自消丙予発第91号)
前の問で見た部分修理は、変更の許可でした。これに対し、全焼した施設を再開するときは、新しく設置されるものとして現行の基準に従うことになります。
煉瓦造の倉庫は、壁と扉が残っていても、屋根と内部が焼けたことから、火災統計上は全焼とされています。
焼けた施設は、廃止の届出も要ります。回答の「第12条の3」は当時の条番号で、現行の廃止届は消防法第12条の6です。現行の第12条の3は、緊急使用停止命令の条文ですので、取り違えないでください。
壁が残っていても、全焼になることがあるんですね。
はい。
全焼なら、新設からやり直しです。
隣の住居との距離は、防火上有効な塀で縮められるのか

住居との間には、決められた距離が要ります。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和37年9月17日・自消丙予発第91号)
現行の危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号は、住居の用に供する建築物から製造所の外壁までを10メートル以上と定めています。同じ敷地内の住居は、対象から除かれています。
ただし書は、不燃材料で造った防火上有効な塀を設けること等により、市町村長等が安全であると認めた場合は、市町村長等が定めた距離とすることができると定めています。
回答は、このただし書が、政令第23条の一般的な特例とは別に適用できることを確かめています。塀の高さは、質疑の事例のもので、現行の条文には数値がありません。
住居が近くても、塀で対応できる場合があるんですね。
はい。
市町村長等が安全と認めることが条件です。
よくある質問
まとめ
火災のあとにも、手続きの分かれ目があるんですね。
うちの施設は、どちらになるのか確かめてみます!
直す前に、どこまで焼けたかを確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第11条・第12条の6
- 危険物の規制に関する政令第9条・第23条
- 危険物の規制に関する規則第13条
- 消防庁の危険物規制に関する質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





