個室で映像だけを見せる店や、屋内でテレビ画面を見ながらゴルフをする施設は、消防法の上では、なんという用途の建物なのでしょうか。
また、労災の介護施設や障害者の職業訓練校のように、住まいと訓練や介護が一つになった建物は、何項として扱うのでしょうか。
消防庁は平成4年に、こうした「項の判定」についての疑問へ回答しており、その回答は消防予第108号で各都道府県へ示されています。
この記事では、その質疑を、現行の令別表第一に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
消防法施行令の別表第一が、建物の用途ごとに(1)項から(20)項まで区分しています。
どの項に入るかで、必要な消防用設備等が変わります。
映像を見る個室と、屋内ゴルフと、介護施設と、職業訓練校と、伝統的建造物群保存地区の五つです。
順に、現行の令別表第一と見比べます。
この記事の結論
- カラオケ等の設備も飲食物もなく、ビデオを観賞することだけを目的とした個室が集まる建物は、令別表第一の(15)項として取り扱ってよいと、お見込みのとおりと答えています
- 床に固定したゴルフボールを打ち、テレビモニターを見ながらプレーする屋内施設は、(2)項ロとして取り扱ってよいと、お見込みのとおりと答えています
- 労災特別介護施設は、(6)項ロに該当しないと答え、(5)項ロと(15)項が存する複合用途の(16)項ロとして取り扱うよう述べています
- 障害者職業訓練校は、実習室などが(7)項、上階の寮が(5)項ロで、全体が(16)項ロに当たると答えています
- 伝統的建造物群保存地区として指定された区域の建築物は、条例で重要な文化財に指定されたもの等以外は、(17)項に該当しないと答えています
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ビデオを見るだけの個室が集まった建物は、何項の防火対象物なのか
最初の質疑は、ビデオ上映ルームについてです。この施設は、カラオケ等の設備がなく、飲食物も出さず、ビデオを観賞することだけを目的とした個室が集まったものです。現行の令別表第一の(2)項ニは「カラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるもの」で、(15)項は「前各項に該当しない事業場」です。
問(要旨) 1 カラオケ等の設備がなく、飲食物も提供されず、ビデオを観賞することのみを目的とした個室の「ビデオ上映ルーム」が集合した防火対象物は、消防法施行令別表第一(15)項に該当するとして取り扱ってよいか。
答(要旨) お見込みのとおり。
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あての回答・平成4年5月22日・消防予第108号「1」)
ビデオを見るだけの個室が集まった建物は、(15)項でよいと答えています。
照会は、
遊興のための設備も飲食物もない点を挙げて、
(15)項として取り扱ってよいかと尋ね、答えは「お見込みのとおり」です。
なお、現行の規則第5条第2項は、(2)項ニの店舗として、個室でインターネットを利用させ又は漫画を閲覧させる店舗など三つを名指ししており、この質疑の条件の店は、その列挙には出てきません。答えは、(15)項とした理由も述べていません。
答えは、お見込みのとおり(15)項です。
理由までは述べていません。
ゴルフボールを打ってテレビ画面を見る屋内施設は、何項なのか
次の質疑は、屋内でボールを打つ施設です。床に固定したゴルフボールを打ち、テレビモニターを見ながらゴルフプレーをする施設で、別添には、床に置くマットと、画面を載せた機械の図が付いています。現行の令別表第一の(2)項ロは「遊技場又はダンスホール」です。
問(要旨) 2 屋内で、床に固定されたゴルフボールを打ち、テレビモニターを見ながらゴルフプレーをする施設(別添参照)は、消防法施行令別表第一(2)項ロに該当するとして取り扱ってよいか。
答(要旨) お見込みのとおり。
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あての回答・平成4年5月22日・消防予第108号「1」)
画面を見ながら屋内でゴルフをする施設は、(2)項ロでよいと答えています。
照会は、この施設を
(2)項ロとして取り扱ってよいかと尋ね、答えは「お見込みのとおり」です。
なぜ遊技場に当たるのか、ほかの項でないのかという理由は、答えは述べていません。また、この答えは別添の図のような施設についてで、
ゴルフの施設なら全て(2)項ロとは述べていません。
この質疑の施設は、お見込みのとおり(2)項ロです。
他の形の施設の答えは、載っていません。
労災の介護施設は、老人ホームのような(6)項ロになるのか
三つ目は、労働者災害補償保険法第23条第1項第2号に基づく「労災特別介護施設」の質疑です。照会が示した施設は、北・センターブロックと南ブロックの二つで、北・センターブロックは独立した二以上の居室(ワンルームマンション型)を単位にして、管理室、医務室(医療行為はしない)、食堂等が付いたもの、南ブロックは居室を単位にして、ナースセンター(介護人が詰めている)と健康管理室等が付いたものです。入居するのは、傷病・障害年金受給者のうち、障害等級が第1級から第3級で、日常的な介護が必要なのに家族等の介護が期待しえない、年齢60歳以上の者です。現行の令別表第一の(6)項ロは、老人短期入所施設、特別養護老人ホームなどを列挙しています。
問(要旨) 4 労働者災害補償保険法第23条第1項第2号に基づく「労災特別介護施設」は、令別表第一(6)項ロに該当するか。
答(要旨) 「労災特別介護施設」は、令別表第一(6)項ロに該当しない。設問の場合、北・センターブロック、南ブロックとも、令別表第一(5)項ロに掲げる防火対象物の用途と主たる用途に従属しない令別表第一(15)項に掲げる防火対象物の用途とが存する複合用途防火対象物((16)項ロ)として取り扱われたい。ただし、入居者に自力避難困難者も含まれていることを考慮し、消防用設備等の設置にあたっては、令別表第一(6)項ロに掲げる防火対象物に準じた指導をされたい。
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あての回答・平成4年5月22日・消防予第108号「1」)
(6)項ロには当たらず、複合用途の(16)項ロとして取り扱うよう答えています。
答えは、居室の部分を
(5)項ロ、主たる用途に従属しない部分を
(15)項と見て、二つが存する複合用途の(16)項ロと述べました。一方で、入居者に自力避難困難者が含まれることを考えて、消防用設備等は
(6)項ロに準じた指導をするよう述べています。
現行の令第1条の2第3項第1号を見ると、防火管理者が必要な収容人員は、(6)項ロが10人以上、(16)項ロが50人以上と分かれています。答えは、その点や、(5)項ロと(15)項のどの部分がどれに当たるのかという内訳を、述べていません。
老人ホームとは違う項でも、設備は同じように指導されるんですね。
答えは、(16)項ロと取り扱いつつ、設備は(6)項ロに準じた指導です。
防火管理者の基準の違いは、答えに載っていません。
寮のある障害者職業訓練校は、実習室と寮でどう項が分かれるのか
四つ目は、職業能力開発促進法に基づく障害者職業訓練校の質疑です。この施設は、鉄筋コンクリート造3階建て(建築面積1,955.81平方メートル、延べ面積3,221.95平方メートル)で、1階に実習室・会議室・事務室等、2階と3階に寮・風呂場・舎監室があります。入居できるのは、身体障害者又は精神薄弱者で、原則として高等学校を卒業した者(卒業見込みを含む)又はこれと同等以上の技術習得の能力のある身体障害者手帳保持者などの条件を全て満たす、原則として35歳までの者です。現行の令別表第一の(7)項は「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの」、(5)項ロは「寄宿舎、下宿又は共同住宅」です。
問(要旨) 5 職業能力開発促進法第15条第2項第4号に定める障害者職業訓練校は、令別表第一(6)項ロに掲げる防火対象物に該当するか。
答(要旨) 設問の障害者職業訓練校の実験室、会議室、事務室等は令別表第一(7)項に該当し、上階の寮部分については、「令別表第一に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日付け消防予第41号消防庁予防課長通知)により、(5)項ロに該当するので、対象物全体は令別表第一(16)項ロに該当する。なお、消防用設備等の設置にあたっては、身体上又は精神上欠陥を有する者が訓練等を受け、また宿泊する施設であることを考慮し、令別表第一(6)項に掲げる防火対象物に準拠して指導することが望ましい。
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あての回答・平成4年5月22日・消防予第108号「1」)
実習室などは(7)項、寮は(5)項ロで、全体は(16)項ロと答えています。
照会は(6)項ロに当たるかと尋ねましたが、答えは、実験室・会議室・事務室等を
(7)項、上階の寮部分を昭和50年の通知により
(5)項ロと見て、対象物全体を(16)項ロとしました。消防用設備等は、訓練を受け宿泊する施設であることを考えて、
(6)項に準拠した指導が望ましいと述べています。
現行の(7)項の言葉に、障害者職業能力開発校という名前は出てきません。答えは、(7)項のどの言葉に当たるのかは述べていません。
答えは、部分は(7)項と(5)項ロで、全体は(16)項ロです。
設備は(6)項に準拠した指導が望ましいとしています。
伝統的建造物群保存地区にある建物は、すべて(17)項の文化財になるのか
最後は、伝統的建造物群保存地区の質疑です。文化財保護法第2条第1項第5号に規定する伝統的建造物群(周辺の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの)が存する区域で、都市計画において伝統的建造物群保存地区として指定された区域では、区域ごと(17)項の取扱いとなるかを尋ねています。区域内には、国又は地方公共団体が指定した重要文化財建築物が点在しています。現行の令別表第一の(17)項は、文化財保護法の規定によって重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡若しくは重要な文化財として指定され、又は旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によって重要美術品として認定された建造物です。
問(要旨) 6 文化財保護法第2条第1項第5号に規定する伝統的建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)が存する区域で都市計画において伝統的建造物群保存地区として指定された区域では、区域ごと消防法施行令別表第一(17)項の取扱いとなるか。区域内には、国又は地方公共団体が指定した重要文化財建築物が点在している。
答(要旨) 文化財保護法第2条第1項第5号に規定する伝統的建造物群を構成している建築物等が存する区域で、同法第83条の3の規定に基づき都市計画において伝統的建造物群保存地区として指定された区域内の建築物であっても、地方公共団体が条例の定めるところにより重要な文化財として指定したもの等以外の防火対象物は、消防法施行令別表第一(17)項に該当しない。
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あての回答・平成4年5月22日・消防予第108号「1」)
保存地区に入っていても、指定されたもの等以外は、(17)項に該当しないと答えています。
照会は、保存地区の区域ごと(17)項になるかと尋ねました。答えは、地区として指定された区域内の建築物であっても、地方公共団体が条例で重要な文化財として指定したもの等以外の防火対象物は、
(17)項に該当しないと述べています。
地区の建物が、ふつうの店舗や住宅として、それぞれの用途の項に当たるのかまでは、答えは述べていません。
地区に入っていることだけでは、(17)項にならないという答えです。
地区に入っていれば、まとめて文化財扱いだと思ってました。
答えは、指定されたもの等以外は(17)項に該当しないです。
個々の建物の用途の項は、述べていません。
よくある質問
Qビデオを見るだけの個室の店は、今も(15)項ですか?
A質疑は、平成4年当時の条件で、お見込みのとおり(15)項と答えています。現行の規則第5条第2項が(2)項ニとして名指しする店舗は、個室でインターネットや漫画を見せる店舗など三つです。個別の判断は所轄の消防署に確かめてください。
Qゴルフの施設は、屋内なら全て(2)項ロですか?
A質疑は、床に固定したボールを打ち、テレビモニターを見ながらプレーする施設について、お見込みのとおり(2)項ロと答えています。他の形の施設についての答えは述べていません。
Q介護施設で(6)項ロでなければ、その設備は要りませんか?
A質疑は、労災特別介護施設を(16)項ロと答えたうえで、消防用設備等は(6)項ロに準じた指導をするよう述べています。設備が要らないという答えではありません。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑の回答は平成4年のものです。令別表第一の区分や、法令の条番号はその後の改正で変わっていることがあります。運用が改められていることがあるため、所轄の消防署に確かめてください。
まとめ
✔ビデオを見るだけの個室が集まった建物は、(15)項でよいと答えられた
✔画面を見ながら屋内でゴルフをする施設は、(2)項ロでよいと答えられた
✔労災特別介護施設は、(6)項ロに当たらず、(16)項ロと答えられ、設備は(6)項ロに準じた指導とされた
✔障害者職業訓練校は、実習室が(7)項、寮が(5)項ロで、全体は(16)項ロと答えられた
✔伝統的建造物群保存地区でも、指定されたもの等以外は(17)項に該当しないと答えられた
✔質疑は平成4年のもの。現行の令別表第一と規則は改正されている
✔質疑の回答は当時のもの。現行の条文と通達を、所轄の消防署に確かめる
同じ建物でも、階や部分ごとに項が分かれるんですね。
まずは、うちの建物の用途の使い方を見直してみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
防火管理はプロにお任せ下さい
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 消防法第2条、第17条、消防法施行令第1条の2、別表第一、消防法施行規則第5条
- 消防庁の防火対象物の用途判定に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。