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木造立体迷路の安全基準ガイドラインはなぜ防火対策まで定めたのか|避難経路と防火処理木材の基準を解説

木造立体迷路の安全基準ガイドラインはなぜ防火対策まで定めたのか|避難経路と防火処理木材の基準を解説

遊園地や公園には、木の壁で仕切られた立体的な迷路型の遊具が設置されていることがあります。
令和3年10月、兵庫県内の遊園地でこの木造立体迷路の床が抜け、利用者7名が転落する事故が起きました。
経済産業省は消防庁などの協力を得て検討会を重ね、令和8年2月に安全基準ガイドラインを公表しています。
消防庁予防課はこのガイドラインについて、火災対策は最寄りの消防署に相談してほしいという一文を添えて全国の消防本部に周知しました。

うちの近くの遊園地にも、木の壁でできた大きな迷路があります。
あんな遊具にも消防が関係してくるんですか。

はい、令和3年の事故を受けて経済産業省がガイドラインを作りました。
その中に防火対策の項目もあります。

屋根がない遊具だから、消防法とは関係ないと思っていました。

屋根がなくて建築基準法の対象外でも、消防法の話は別に確認が必要です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和3年10月の転落事故を受けて経済産業省が「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」を策定し、令和8年5月1日に消防庁予防課が全国の消防本部へ周知しました
  • 対象は主要部材が木材・複層構造で屋根がなく建築基準法の適用対象外となる遊具です
  • 防火対策として廊下の幅員1.2m以上の確保と避難経路の複数設置が求められます
  • 部材は国土交通省が定めるNM・QM・RMいずれかの防火処理が施された木材を使う必要があります
  • 消火器の設置義務は消防法施行令第10条で規定され最寄りの消防署への相談が必要です

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木造立体迷路の防火対策として廊下幅員1.2m以上の確保と防火処理木材の使用を示したインフォグラフィック

木造立体迷路はなぜ安全基準ガイドラインが作られたのか

遊園地に設置された木造立体迷路の外観イメージ
遊園地や公園の遊具のひとつに、木の壁を組み合わせた立体的な迷路があります。
床が抜けるという、遊具では見過ごせない事故がきっかけでした。
「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」の周知について(情報提供) 消防庁予防課 事務連絡(令和8年5月1日) 令和3年10月、兵庫県内の遊園地において、木造立体迷路の床が抜け、利用者7名が転落する事故が発生したことを受け、経済産業省が「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」を作成しました。本ガイドラインにおいて事業者に望まれる取組の一環として、火災対策について最寄りの消防署に相談することが重要である旨が示されていることから、事業者から相談があった場合には適切に対応いただきますようお願いします。
木の壁で仕切られた迷路型の遊具で、実際に転落事故が起きたことが出発点です。
令和3年10月、兵庫県内の遊園地に設置された5層構造の木造立体迷路で、3層目の床の一部が抜け落ち、利用者7名が約2.4m下の層に転落しました。
消費者安全調査委員会が原因を調査し、令和6年11月、経済産業大臣に対して安全基準の策定等を求める意見具申を行いました。
経済産業省はこれを受けて有識者による検討会を行い、令和8年2月に「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」を策定しています。
消防庁予防課は令和8年5月1日付の事務連絡で、このガイドラインを全国の都道府県・消防本部に周知しました。

同じ形の遊具で、こんな事故が起きていたんですね。

はい、遊具そのものの構造にも防火の話が関わってきます。
次に、どんな遊具が対象になるのか見ていきましょう。

どんな遊具のどんな事業者が対象になるのか

屋根のない木造立体迷路と関係事業者の役割分担を示したイメージ
対象になる遊具には、明確な条件があります。
関係する事業者も、役割ごとに整理されています。
「木造立体迷路」とは、施設の入口から出口までの進行方向及び順路が利用者に明らかにされておらず、利用者が水平移動や上下移動を繰り返しながらゴールを目指す遊戯施設であって、以下について全て当てはまるものをいう。主要な部材の材質として木材が使用されている、複層(2層以上)構造である、屋根が設置されていないなどの理由から、建築基準法の適用対象外である、建築基準法第88条の準用工作物でない。
屋根がないという理由だけで、消防の話と無関係になるわけではありません。
建築基準法の対象になるかどうかは屋根の有無等で判断されますが、消防法上の防火対象物にあたるかどうかは別に確認が必要です。
関係事業者は遊具提供事業者(設計・製造・販売・設置)、遊具運営事業者(運営してサービスを提供)、施設管理者(設置施設全体の安全管理の統括)の3者に整理されています。
自治体が遊園地や公園の運営を担う場合も、遊具運営事業者や施設管理者に含まれます。
自社がどの立場にあたるかを最初に確認しておくと、ガイドラインのどの章を読むべきかが分かります。

うちは遊園地の運営を任されている立場なので、遊具運営事業者になるんですね。

はい、その立場では防火対策も運営時の項目として確認が必要です。
次に、具体的な防火対策の中身を見ていきましょう。

ガイドラインは防火対策として何を求めているのか

木造立体迷路の避難階段の幅員と防火処理木材の等級を示したイメージ
防火対策は、設計・設置の段階と、日々の運営の段階の両方に分けて示されています。
まずは設計・設置時に求められる数値を確認します。
木材を主要部材とする木造立体迷路においては、運営時に火災が発生しないようにすることが最も重要であり、万が一に火災が生じても、延焼を防いだり、避難しやすくするなどの対策も設置時点でしておく必要がある。迷路内の廊下の幅員は1.2m以上を確保する。非常時に、利用者が安全に遊具から避難できるよう、各階に避難経路(避難階段)を設置する必要があり、可能であれば複数を用意することが望ましい。
部材(木材の防火処理) 万が一火災が発生した際に初期着火を遅延させるため、部材については国土交通省の認定する耐火性能を満たす防火処理の施された木材を使用する。国土交通省の防火性能基準 NM(不燃)20分間の耐火性能(最も厳しい基準)、QM(準不燃)10分間の耐火性能(中程度の基準)、RM(難燃)5分間の耐火性能(基本的な基準)。
数字ひとつひとつに、避難と延焼防止という目的があります。
廊下の幅員1.2m以上、避難階段は幅員75cm以上・蹴上げ16cm以下・踏面30cm以上・勾配40°以下で両側に手すりを設ける、避難口は異なる方向に2箇所以上・幅75cm以上(最小でも60cm以上)で外開きにする、という数値が示されています。
部材には国土交通省の防火性能基準に沿った処理を施し、NM(不燃・20分間)、QM(準不燃・10分間)、RM(難燃・5分間)のいずれかを満たす木材を使います。
電気配線も、屋根がなく雨や湿気にさらされるため、屋外用コンセントの使用が求められています。
これらはいずれも、火災そのものを防ぐ対策と、火災が起きたときに逃げ切るための対策の両方に対応しています。

数字がたくさんあって、覚えきれるか不安です。

一度に全部覚えなくても大丈夫です。
次は、見落としやすいポイントに絞って整理しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

木造立体迷路への発火性のあるものの持ち込み禁止とリチウムイオン電池対応ロッカーを示したイメージ
基準の数字を満たしていても、運営の場面で見落としやすい点があります。
特に消防法の適用関係と、持ち込み物への対応です。
主要部材が木材の木造立体迷路は火災が発生した際には甚大な被害が発生する可能性がある。万が一の火災に備えて、遊具運営事業者だけでなく利用者にとって分かりやすい場所に消火器を設置する必要がある。なお、消火器の設置義務と詳細基準は消防法施行令で規定されているほか、各自治体の火災予防条例において地域ごとの追加基準が定められている場合がある。そのため、設置義務の有無や必要本数については、最寄りの消防署に相談することが重要である。発火性・引火性のあるもの(スプレー缶、カセットボンベ、花火、モバイルバッテリー、ライター、加熱式たばこなど)の持ち込みは固く禁止する必要がある。
消防法施行令第10条(消火器具に関する基準) 消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。(略)前項に規定するもののほか、消火器具の設置及び維持に関する技術上の基準は、防火対象物の用途、構造若しくは規模又は消火器具の種類若しくは性能に応じ、総務省令で定めるところにより設置すること。
建築基準法の対象外だからといって消防法も対象外とは限りません。
消火器具の設置基準は消防法施行令第10条に定められ、対象になるかどうかは防火対象物の用途・構造・規模で決まります。
屋根のない木造立体迷路がどの区分にあたるかは施設ごとに判断が分かれるため、設置義務の有無や必要本数は最寄りの消防署への相談が欠かせません。
また、近年リチウムイオン電池に起因する火災が急増していることを踏まえ、モバイルバッテリー等の持ち込みは入場時にロッカーで預かるなどの対応が望ましいとされています。
落ち葉や枯れ草、木くずがたまりやすい場所に電気機器を設置しないことも、あわせて確認しておきたい点です。

消火器は自己判断で置けばいいと思っていました。

設置義務の有無は施設ごとに違うので、まず消防署に相談してください。
最後に、明日からの確認の順番をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

木造立体迷路の点検チェックリストと避難経路を確認する様子を示したイメージ
ガイドラインの周知は令和8年5月1日付です。
新設を検討している場合も、既存の施設を運営している場合も、確認する順番は同じです。 確認は消防署への相談・避難経路・部材・持ち込み物の順で進めます。
まず、自施設の木造立体迷路について消火器の設置義務の有無と必要本数を最寄りの消防署に相談します。
次に、各階の避難経路(避難階段)が複数確保され、幅員や蹴上げなどの要件を満たしているかを確認します。
部材が国土交通省の防火性能基準(NM・QM・RM)のいずれかを満たす防火処理木材かどうか、電気配線が屋外用コンセントになっているかも図面や仕様書で照合します。
最後に、発火性のあるものやリチウムイオン電池搭載製品の持ち込み禁止を利用者・運営スタッフの双方に周知する体制を整えます。

消防署への相談・避難経路・部材・持ち込み物の順で確認すればいいんですね。

そのとおりです。
次に進む前に、この4点を書き出しておくと確実です。

よくある質問

Q屋根のない木造立体迷路にも消火器を置く義務はありますか?
A施設の用途・構造・規模によって決まります。消火器具の設置基準は消防法施行令第10条に定められていますが、屋根のない工作物がどの区分にあたるかは施設ごとに判断が分かれるため、設置義務の有無や必要本数は最寄りの消防署に相談することが重要です。
Q平屋(1層)の木造遊具でもガイドラインは参考になりますか?
Aなります。ガイドラインが正式に対象とするのは複層(2層以上)構造の木造立体迷路ですが、主要部材が木材からなる遊具であれば平屋構造でも参考になる内容が少なくないとされています。
Q防火処理木材はどの等級を選べばよいですか?
AガイドラインはNM(不燃・20分間)、QM(準不燃・10分間)、RM(難燃・5分間)のいずれかの耐火性能を満たす木材の使用を求めています。等級は施設の規模や設計内容によって専門家と相談して選ぶことが望ましいとされています。
Q既存の施設にも避難経路の追加が必要ですか?
A既に運営している施設でも、避難経路(避難階段)が設置されていない場合には新たに設置する必要性は大きいとされています。設置が難しい場合でも、万が一の際の避難経路を明確にしておくことが求められます。

まとめ

✔令和3年10月の転落事故を受け、経済産業省が「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」を策定し令和8年5月1日に消防庁が周知しました
✔対象は主要部材が木材・複層構造で屋根がなく建築基準法の適用対象外となる遊具です
✔関係事業者は遊具提供事業者・遊具運営事業者・施設管理者の3者です
✔設計・設置時は廊下幅員1.2m以上と複数の避難経路の確保が求められます
✔部材は国土交通省のNM・QM・RMいずれかの防火性能基準を満たす防火処理木材を使います
✔消火器の設置義務は消防法施行令第10条で規定され最寄りの消防署への相談が必要です
✔運営時はリチウムイオン電池等の発火性のあるものの持ち込み禁止を利用者・スタッフへ周知します

屋根がなくても消防署に相談すべき理由がよく分かりました!

避難経路と防火処理木材、それに持ち込み物の管理を確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」の周知について(情報提供)(令和8年5月1日 消防庁予防課 事務連絡)
  • 「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」の周知について(令和8年4月20日 経済産業省商務サービスグループ文化創造産業課 事務連絡)
  • 木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン(令和8年2月 経済産業省)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第10条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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