マンションには、住戸の中に階段があり、2つの階にまたがるメゾネット型の住戸があります。玄関は共用廊下のある階にだけあり、上の階は住戸の中の階段でしか行けない、というつくりがよくあります。
このとき困るのが、火災を知らせる押しボタン(発信機や非常放送の起動装置)の置き場所です。国の基準は押しボタンを「各階ごとに」置くよう求めているので、そのまま読むと上の階の住戸の中にも必要になります。
大阪市消防局の運用基準は、こうした住戸について、廊下階の目に付きやすい場所に置き、建物の各部分から歩行距離50メートル以下なら、各階ごとの決まりによらないことができる、という特例を置いています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、どの条文のどの部分を外しているのかを順にたどります。東大阪市と堺市の基準とも比べます。
大阪市でメゾネット住戸のあるマンションを計画しています。
上の階の住戸の中にも発信機が描かれていました。
大阪市の運用基準には、2つ以上の階がある住戸の発信機の特例があります。
まず国の基準から確かめましょう。
非常放送の押しボタンも同じでしょうか?
スピーカーの数え方も気になります。
放送設備にも同じ形の特例と住戸単位の区域の扱いがあります。
順に見ていきます。
- 国の基準は、発信機も非常警報設備の起動装置も「各階ごとに」その階の各部分から歩行距離50メートル以下で置くよう定めています
- 大阪市は、メゾネット型などの2以上の階数がある1つの住戸について、廊下階の目に付きやすい場所に置き、建物の各部分から1つまで歩行距離50メートル以下なら、各階ごとの決まりによらないことができるとしています
- 非常放送の起動装置にも同じ形の特例があり、住戸は戸があっても住戸ごと(メゾネットは各階ごと)に1つの放送区域として扱えるとしています
- 東大阪市と堺市は、出入口がない階の住戸部分に発信機を設置しないことができると書き、東大阪市は長屋やメゾネットの警戒区域を2の階以上にできる項目も置いています
- 運用基準は改正されることがあるので、最新の内容は管轄の消防署で確認します
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目次
メゾネット住戸で押しボタンの置き場所が問題になるのはなぜか

イ 各階ごとに、その階(前条第四項第一号ヘに掲げる部分を除く。)の各部分から一の発信機までの歩行距離が五十メートル以下となるように設けること。
メゾネット住戸の上の階は、ふつう共用廊下に面していません。その階の中に発信機を置こうとすると、住戸の中の部屋に置くことになり、ほかの住戸の人は押しに行けません。
もう1つ、柱書の後半にも注目します。非常警報設備を規則第25条の2第2項のとおり設けた場合は、この発信機の決まりから除かれています。その場合は、非常警報設備の起動装置の決まりがかかります。
イ 各階ごとに、その階の各部分から一の起動装置までの歩行距離が五十メートル以下となるように設けること。
国の基準のままだと、上の階の住戸の中にも押しボタンが要るのですね。
はい、「各階ごとに」が引っかかるのです。
大阪市がそこをどう扱っているかを見ましょう。
大阪市でメゾネット住戸の上の階に発信機を置かなくてよい条件は何か

(1) 廊下階の廊下、階段、出入口付近その他の多数の目に触れやすい場所で、容易に操作できる場所に設けること
(2) 当該防火対象物の各部分から1の発信機までの歩行距離が50メートル以下であること
(1)は置き場所です。「廊下階」は、共用廊下がある階を指すと読めます。その階の廊下・階段・出入口の付近など、多くの人の目に触れて、すぐに押せる場所に置きます。
(2)は距離です。国の基準の「その階の各部分から」が、「当該防火対象物の各部分から」に変わっています。上の階の住戸の奥から、住戸の中の階段を下りて玄関を出て、廊下の発信機に着くまでが50メートル以下かを確かめます。
条文のつながりを順に並べると、次のとおりです。
- 消防法施行令第21条で自動火災報知設備が必要な建物に、消防法施行規則第24条第8号の2イが、発信機を各階ごとに、その階の各部分から歩行距離50メートル以下で置くよう求める
- メゾネット住戸の上の階は共用廊下に面していないので、そのままでは住戸の中に発信機が必要になる
- 大阪市は特例基準の柱書で、令第32条又は条例第47条を適用するとする
- 特例基準の9で、2以上の階数がある住戸は廊下階の目に付きやすい場所に置き、建物の各部分から歩行距離50メートル以下なら、規則第24条第8号の2イによらないことができるとする
上の階の奥から、住戸の階段を下りて廊下まで歩いて測るのですね。
はい、建物の各部分から1つの発信機まで50メートル以下が条件です。
図面に歩行経路を引いておきましょう。
非常放送の起動装置とスピーカーの区域はどう扱うのか

(1) 廊下階の廊下、階段、出入口付近その他の多数の目に触れやすい場所で、容易に操作できる場所に設けること
(2) 当該防火対象物の各部分から1の起動装置までの歩行距離が50メートル以下であること
すぐ前の2は、スピーカーを置く単位(放送区域)の扱いです。
国の通知でも、寄宿舎・下宿・共同住宅について同じ趣旨の扱いが示されています。その内容は放送区域の数え方の記事で解説しています。大阪市の2は「令別表第1に掲げるいずれの防火対象物にあっても」と書いているので、共同住宅以外の建物の住戸部分にも当てられる書き方です。
押しボタンは廊下階にまとめて、スピーカーは各階に置くのですね。
はい、押しボタンと区域は別の決まりです。
スピーカーは上の階の部分にも要ります。
メゾネットや長屋の警戒区域は2つの階をまたいでよいのか

ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。
東大阪市消防局の運用基準は、特例基準の中に、さらに一歩進んだ項目を置いています。
- 消防法施行令第21条第2項第1号が、警戒区域を2以上の階にわたらないものとし、ただし書で総務省令に例外を任せる
- 消防法施行規則第23条第1項が、500平方メートル以下で2の階にわたる場合を例外とする(大阪市・東大阪市・堺市はいずれも、この場合に区域内の階段を求めている)
- 東大阪市は特例基準の柱書で、令第32条又は条例第52条を適用するとする
- 特例基準の(3)で、長屋式建築物・階段室型共同住宅・メゾネット型共同住宅等は、500平方メートル以下なら規則第23条第1項にかかわらず2の階以上にできるとする
大阪市と堺市の自動火災報知設備の基準を全文で検索したところ、長屋式建築物や階段室型共同住宅を名指しして2の階以上にできるとする項目は見当たりませんでした。長屋の設備の判定そのものは、大阪市の長屋の住戸ごとの判定の記事で解説しています。
長屋やメゾネットなら、東大阪市では3つの階をまとめてもよいのですか?
東大阪市の(3)は500平方メートル以下で2の階以上と書いています。
区域の切り方は図面で協議しましょう。
東大阪市や堺市と比べると何が違うのか

東大阪市と堺市は、「出入口がない階の住戸の各部分」から「出入口のある階の発信機」までを測ります。大阪市は「当該防火対象物の各部分」から「1の発信機」までを測り、置き場所にも廊下階の目に付きやすく容易に操作できる場所という条件を付けています。
堺市は非常ベル・自動式サイレンの起動装置について、この(2)を借りています。
東大阪市の公開資料(6つのPDF)には非常警報設備の運用基準が含まれていないため、表では「公開資料にない」としています。比べると次のとおりです。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| メゾネット等の発信機 | 第12 特例基準 9(廊下階に置き、建物の各部分から歩行距離50メートル以下なら規則第24条第8号の2イによらない) | 9(4)(出入口がない階の住戸の各部分から出入口のある階の発信機まで50メートル以下なら設置しない) | 11(2)★(東大阪市とほぼ同じ文) |
| 対象の書き方 | スキップフロア型・メゾネット型・そのほか2以上の階数がある1つの住戸 | メゾネット型共同住宅等 | メゾネット型共同住宅等 |
| 根拠として書かれている条文 | 令第32条又は条例第47条 | 令第32条又は条例第52条 | 政令第32条又は条例第72条 |
| 非常放送の起動装置 | 第6 特例基準 3(発信機と同じ2つの条件) | 公開資料にない | メゾネットを名指しした項目は見当たらない |
| 非常ベル・自動式サイレンの起動装置 | メゾネットを名指しした項目は見当たらない | 公開資料にない | 2(3)ア(イ)で11(2)を読み替えて準用 |
| 住戸単位の放送区域 | 第6 特例基準 2(令別表第1のいずれの防火対象物も) | 公開資料にない | 1(2)ア(ケ)◆①(令別表第1(5)項ロ) |
| 2の階にわたる警戒区域 | 区域内に階段(第2 2) | 区域内に階段(エ)、長屋等は500平方メートル以下で2の階以上も可(9(3)) | 区域内に作動状況を確認できる階段((6)ウ★) |
- その住戸が2以上の階数がある1つの住戸(メゾネット型・スキップフロア型など)に当たるか
- 発信機(又は放送設備の起動装置)を、廊下階の廊下・階段・出入口付近など目に付きやすく押しやすい場所に置いているか
- 上の階の住戸の奥など、建物のいちばん遠い場所から1つの押しボタンまで歩行距離50メートル以下か
- スピーカーは、住戸の各階ごとの部分を1つの放送区域として置いているか
- 使う項目(自動火災報知設備の第12 9・放送設備の第6 2・3)を図面に書き添え、所轄の消防署と事前に協議したか
同じメゾネットでも、市によって測り方の書き方が違うのですね。
はい、大阪市は建物の各部分から、東大阪市と堺市は出入口がない階から測ります。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず上の階の奥から押しボタンまでの歩行距離を測ります。
使う項目も図面に書き添えます!
大阪市では、置き場所と距離の2つの条件をそろえるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第2 警戒区域 2、第12 特例基準(柱書・9)、第3章 第1節 非常警報設備(放送設備) 第6 特例基準(柱書・2・3) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 1(3)エ、9 特例基準(柱書・(3)・(4)) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」総則 4 凡例、第12 自動火災報知設備 Ⅱ 細目 1(6)ウ・11 特例適用基準 (2)、第16 非常警報設備 Ⅱ 細目 1(2)ア(ケ)・2(3)ア(イ) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第21条第2項第1号、第32条/消防法施行規則 第23条第1項、第24条第8号の2、第25条の2第2項第2号の2・第3号ロ(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で発信機や起動装置の置き方を特例によって決められるかは、令第32条などの適用について設計の段階で所轄の消防署にご確認ください。





