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新ガス系消火設備は有人の部屋にどこまで置けるのか|平成14年の質疑応答五問を現行の条文と照らして解説

新ガス系消火設備は有人の部屋にどこまで置けるのか|平成14年の質疑応答五問を現行の条文と照らして解説

窒素やIG-541を使う新しいガス系の消火設備は、二酸化炭素と置き場所の決まりが同じなのか、迷いやすい設備です。
その線引きについて、消防庁は都道府県や消防本部からの疑問に、質疑応答 の形で答えてきました。
この記事では、平成14年の質疑応答から五つを選び、現行の条文と照らして読みます。
常時人がいない部分の意味と、令第32条の特例の使い方を、順に確かめます。

窒素を使う消火設備なら、人がいる部屋にも置けるんでしょうか。

そこが質疑応答で問われた点です。
五つの質疑応答を、順に見ていきます。

回答は、今の条文とどうつながっているんでしょうか。

一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みます。

この記事の結論
  • 毎日定期的に点検員が入る電気設備室や通信機械室は、常時人がいない部分に当たる、お見込みのとおりと答えられました
  • 自走路のある機械式駐車場の自走路部分は、原則として常時人がいない部分以外の部分に当たる、と答えられました
  • 常時人がいない部分以外の部分にも、令第32条を適用して新ガス系消火設備を認めてよいかという問いに、十分な検討・評価のうえでお見込みのとおりと答えられました
  • 面積が1,000平方メートル以上や体積が3,000立方メートル以上の部分、多量の火気を使用する部分に置けない理由は、知見が十分に蓄積されたものを規則に書いたためで、規則の外側は令第32条で個別に検討・評価するとされました
  • 放出用スイッチの作動後に開口部を閉め、警報で周知してから容器弁を開く手順は、必要最低限の時間なら「直ちに」開放したものに当たる、と答えられました

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新ガス系消火設備の質疑応答五問として、点検で入る電気室は無人扱い、自走路のある駐車場は有人側、有人の部屋は特例の検討対象、広さと火気で使えるガスが絞られる、閉鎖と警報のあとで放出する、を並べた図解

毎日点検で入る電気室や通信機械室は、「常時人がいない部分」に当たるのか

扉の脇に点検票のクリップボードが掛かった小さな電気設備室で、壁沿いに灰色の配電盤が並び、隅に濃紺のガスボンベの列が天井のノズルへ配管でつながっているイメージ
不活性ガス消火設備は、火災のときに部屋へガスを満たして火を消す設備です。
平成14年に、点検のために毎日入室する電気設備室や通信機械室を、規則の「常時人がいない部分」として扱えるのかが示されました。
問7(要旨) 毎日定期的に点検員が点検のため入室する電気設備室、通信機械室等は、省令第19条第5項第1号に規定する「常時人がいない部分」にあたると解してよいか。
答 お見込みのとおり。
(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
点検のために人が出入りするだけの電気設備室や通信機械室は、常時人がいない部分と扱えるという答えでした。
問が引いた規則第19条第5項第1号は、今も同じ番号で、駐車の用に供される部分及び通信機器室であつて常時人がいない部分には、全域放出方式の不活性ガス消火設備を設けること と定めています。
そのうえで現行は第1号の2が、常時人がいない部分以外の部分には、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備を設けてはならない と定めています。
つまり、常時人がいない部分かどうかが、不活性ガス消火設備を置けるかの分かれ目です。回答は毎日の点検入室を例にしており、常駐者のいる部屋まで同じ扱いにできるとは書いていません。

点検で入るだけなら、無人の部屋と見るんですね。

はい。
点検員の入室だけなら、常時人がいない部分と扱えます。

車が走る自走路のある機械式駐車場は、「常時人がいない部分」として扱えるのか

ゆるやかな傾斜のスロープが階の間を回り込む多層の駐車場の建物の断面で、数台の小さな車が走路と各階に停まっているイメージ
機械式駐車場には、車を自分で走らせて出入りする「自走路」を持つものがあります。
平成14年に、その自走路がある機械式駐車場を、常時人がいない部分として扱えるのかが示されました。
問8(要旨) 自走路を有する機械式駐車場は、省令第19条第5項第1号に規定する「常時人がいない部分」として取り扱ってよいか。
答 自走路部分は、原則として常時人がいない部分以外の部分に該当する。
(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
自走路の部分は、原則として常時人がいない部分以外に当たるという答えでした。
「自走路」は、車が自分で走って階を行き来する通路(スロープ)のことと読めます。回答は自走路の部分について述べており、機械が車を運ぶ収容部分まで同じ扱いとは書いていません。
常時人がいない部分以外に不活性ガス消火設備を置けないのは、第1号の2のとおりです。ハロゲン化物消火設備も、規則第20条第4項第2号の2の表で、駐車の用に供される部分のうち常時人のいない部分以外の部分は、ハロン1301に限る と定めています。
駐車場の設置対象は令第13条が、水噴霧、泡、不活性ガス、ハロゲン化物、粉末のいずれかの消火設備と定めているので、自走路のある建物では、どの設備を選ぶかを条文に当てはめて考えることになります。

自走路のところは、人がいる場所として見るんですね。

原則はそうです。
自走路部分は、常時人がいない部分以外に当たります。

常時人がいない部分以外にも、令第32条を適用して新ガス系消火設備を設けられるのか

机と椅子とパソコンのある小さな事務室の断面で、壁の外に並ぶ濃紺のガスボンベが配管で壁を貫いて天井のノズルにつながっているイメージ
条文が置けないと定める部分に、特例で置く道はないのか、という疑問が出ます。
平成14年に、令第32条を使って新ガス系消火設備を設けてよいかが問われました。
問9(要旨) 消防法施行規則の一部を改正する省令(平成13年3月29日総務省令第43号。以下「改正省令」)の施行日以前には、令第32条の規定を適用し、常時人がいない部分以外の部分にも窒素、IG-55、IG-541及びHFC-23、HFC-227eaを用いるガス系消火設備(以下「新ガス系消火設備」)が設置されていたが、改正省令の施行日以後も引き続き十分な検討・評価のうえ、常時人がいない部分以外の部分にも、令第32条の規定を適用し、新ガス系消火設備の設置を認めてよいか。
答 お見込みのとおり。
(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
常時人がいない部分以外の部分でも、十分な検討・評価のうえで令第32条を適用し、新ガス系消火設備の設置を認めてよいという答えでした。
令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときは、その基準を適用しないと定める特例です。
ただし現行の規則第19条第5項第1号の2は、常時人がいない部分以外の部分に全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備を設けてはならない と定めています。
この回答は平成14年のものなので、現行の条文を前提に令第32条が使えるかは、この回答だけでは決められません。有人の部分に置く計画は、事前に所轄の消防機関に確かめます。

条文と違う置き方も、特例で認められたんですね。

はい。
ただし令第32条は、消防長か消防署長が認めるものです。

広い部屋や火気を使う部屋で、新ガス系消火設備が絞られるのはなぜか

高い屋根と広い床面を持つ空の大きな倉庫の断面で、片隅にベージュ色のボイラーと濃紺の煙突が置かれているイメージ
新ガス系消火設備には、使える場所が条文の表で決められています。
平成14年に、その理由が二つ問われ、同じ考え方で答えられました。
問10(要旨) 省令第19条第5項第2号の2及び第20条第4項第2号の2の表中「防護区画の面積が千平方メートル以上又は体積が3千立方メートル以上のもの」には、新ガス系消火設備が設置できないこととされたが、その理由如何。
問11(要旨) 同じ表中「鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分、ガスタービンを原動力とする発電機が設置されている部分又は指定可燃物を貯蔵し、若しくは取り扱う防火対象物若しくはその部分」には、新ガス系消火設備が設置できないこととされたが、その理由如何。
答(問10・問11とも) 改正省令は、これまでに知見の十分に蓄積されたものについて本則化したものである。法令で規定されている部分以外の部分に不活性ガス消火設備及びハロゲン化物消火設備を設置しようとする場合には、消火剤の消火特性、安全性にかんがみ、当該部分の建築構造、空間の形状、人員の状況、避難経路等を踏まえ、避難安全性、消火の確実性について、個々の防火対象物の実情に応じ、十分検討・評価を行い、令第32条の運用により対応されたい。
(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
制限は知見が十分に蓄積されたものを規則に書いたためで、規則の外側は令第32条で個別に検討・評価するという答えでした。
現行の規則第19条第5項第2号の2の表は、次のように読めます。多量の火気を使用する部分、ガスタービンを原動力とする発電機が設置されている部分、指定可燃物を貯蔵し又は取り扱う防火対象物やその部分は、二酸化炭素に限られます。防護区画の面積が1,000平方メートル以上又は体積が3,000立方メートル以上のものも、二酸化炭素に限られます。それ以外のものが、二酸化炭素、窒素、IG-55、IG-541の中から選べる部分です。
ハロゲン化物消火設備も、規則第20条第4項第2号の2の表で、多量の火気を使用する部分はハロン1301 と定めています。回答は、表の外側を令第32条で個別に評価するとしただけで、面積や体積の限度を緩める数値は示していません。

広い部屋や火気のある部屋は、使える消火剤が絞られるんですね。

はい。
表の外側は、令第32条で個別に評価します。

閉鎖と警報のあとに容器弁を開いても、「直ちに」開放したことになるのか

壁の開口の前に大きな灰色の閉鎖板が半分まで下りた密閉された設備室の断面で、天井に丸いスピーカーがあり、濃紺のガスボンベの列と橙色のランプがあるイメージ
窒素やIG-541の起動装置は、二酸化炭素と違って自動式が定められています。
平成14年に、閉鎖と警報を挟んでから放出しても「直ちに」に当たるのかが問われました。
問12(要旨) 起動装置の放出用スイッチの作動に連動して、自動閉鎖装置を設けた開口部を閉鎖し、音響警報装置により消火剤が防護区画内に放射される旨を周知した後、貯蔵容器の容器弁又は放出弁を開放することは、省令第19条第5項第16号ハに規定する「起動装置の放出用スイッチ、引き栓等の作動により直ちに貯蔵容器の容器弁又は放出弁を開放するもの」に該当するか。
答 必要最低限の時間であるものについては、お見込みのとおり。
(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
開口部の閉鎖と警報のあとに開放しても、必要最低限の時間なら「直ちに」に当たるという答えでした。
現行の規則第19条第5項第16号ハは、窒素、IG-55又はIG-541を放射するものについて、起動装置の放出用スイッチ、引き栓等の作動により直ちに貯蔵容器の容器弁又は放出弁を開放するもの と定めています。
二酸化炭素には第19号イ(イ)が20秒以上の遅延装置を求めていますが、窒素等にはこの遅延の定めがありません。一方で、開口部は第4号ロが消火剤放射前に閉鎖できる自動閉鎖装置を求め、警報は第17号イが消火剤放射前に遮断されないものとしています。
回答は、閉鎖と警報に要る時間を秒数では示していません。必要最低限の時間を超えないかは、個別の設計で所轄の消防機関に確かめます。

警報を鳴らしてから放出しても、「直ちに」でいいんですね。

はい。
必要最低限の時間であれば、直ちに開放したことになります。

よくある質問

Q新ガス系消火設備には、どんな消火剤が含まれますか?
A質疑応答は、窒素、IG-55、IG-541及びHFC-23、HFC-227eaを用いるガス系消火設備を新ガス系消火設備 と呼んでいます。前の三つは規則第19条第5項第2号が定める不活性ガス消火剤で、後ろの二つは規則第20条第4項第2号が定めるハロゲン化物消火剤です。
Q窒素やIG-541の起動装置は、手動式でよいですか?
A規則第19条第5項第14号ロが、窒素、IG-55又はIG-541を放射するものは自動式とすること と定めています。手動式が原則の二酸化炭素とは逆です。
Q令第32条の特例は、誰が認めるのですか?
A令第32条は、消防長又は消防署長が、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ被害を最少限度に止められると認めるときに、基準を適用しないと定めています。設置する側が自分で判断できるものではありません。
Q平成14年の回答は、今もそのまま使えますか?
A引用された規則の号は、第19条第5項の第1号、第2号の2、第16号ハのように、現行でも同じ箇所を指せます。ただし現行には第1号の2があり、常時人がいない部分以外への設置を禁じています。当時の運用が今も通るかは、所轄の消防機関に確認します。

まとめ

✔点検のために入室するだけの電気設備室や通信機械室は、常時人がいない部分と扱える
✔自走路のある機械式駐車場の自走路部分は、原則として常時人がいない部分以外
✔当時は、令第32条を適用して有人の部分にも新ガス系消火設備を認める余地
✔現行の規則第19条第5項第1号の2は、常時人がいない部分以外に不活性ガス消火設備を設けてはならないと定める
✔多量の火気を使用する部分などは、表で二酸化炭素(ハロゲン化物ではハロン1301)に限られる
✔放出用スイッチのあと、閉鎖と警報を経る手順は必要最低限の時間なら「直ちに」に当たる
✔個別の適用は、回答を現行の条文で確かめ、所轄の消防機関 に確認する

回答が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!

質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第13条・第16条・第32条
  • 消防法施行規則第19条・第20条
  • 新ガス系消火設備に関する基準の改正に係る質疑応答(平成14年9月30日 消防予第281号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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