消火訓練は、地域や職場で当たり前のように行われている防火の行事です。
ところが平成25年8月、滋賀県東近江市の自治会で、訓練の準備中に児童等10名が重軽傷を負う事故が起きました。
消防庁は、この事故を受けて、訓練の燃料にエタノールを使うことを控えるよう通知しました。
通知の中身と、訓練を計画するときに確認したい点を整理します。
消火訓練で、そんな事故があったのですか。
訓練の準備中に、燃料に引火して炎が飛び散ったと伝えられています。
うちの訓練でも、同じ注意が必要ですか。
通知は、4つの事項を示しています。
順番に見ていきましょう。
- 平成25年8月4日、東近江市の自治会の消火訓練の準備中に、エタノールに引火して児童等10名が重軽傷を負いました。
- 通知は、消防職団員が消火訓練等の指導を行う際に事故防止に万全を期すよう求めています。
- 示された事項は、任務分担と配置、消火器具の配備、退避線と安全管理の人員、燃料の特性確認の4つです。
- 引火点が低い上に炎が見えにくいエタノールは、訓練用の燃料としては不適切とされ、使用は控えるよう求められています。
- 事業所の消火訓練の実施は防火管理者の業務です。実施前に、通知の4項目を確認しておきましょう。
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目次
消火訓練の準備中になぜ児童等が負傷する事故が起きたのか

平成25年8月、滋賀県東近江市で、自治会の消火訓練の準備中に事故が起きました。
消防庁の通知は、事故の状況を次のように伝えています。
事故は、訓練の本番ではなく準備中に起きました。
通知は、消防団員がオイルパンにエタノールを入れたところ、引火したと述べています。
飛び散ったエタノールにより、周囲にいた児童等10名が重軽傷を負いました。
通知の時点で、事故の詳細は調査中とされています。
そのため通知は、原因を断定せず、指導のときの留意事項を市町村へ周知するよう求める形になっています。
準備の段階でも、事故は起こるのですか。
通知は、事故が準備中に起きたと伝えています。
次に、通知がどんな訓練を対象にしているかを確認しましょう。
この通知はだれが行うどんな訓練を対象にしているのか

通知の宛先は、都道府県の消防防災主管部長です。
市町村への周知を求める内容で、消防組織法第37条に基づく助言と書かれています。
通知は、消防職団員が指導する訓練を想定しています。
対象は、消防職員や消防団員が消火訓練等の指導を行う場面です。
宛先は都道府県で、市町村(消防の事務を処理する一部事務組合及び広域連合を含む)への周知を求めています。
通知は、消防組織法第37条の助言として出されたと書かれています。
一方、事業所の消火訓練は、令第3条の2第2項のとおり防火管理者の業務で、消防計画に基づいて行います。
うちの訓練は、消防署の指導を受けないのですが。
通知は消防職団員向けですが、炎を使う訓練の注意点は参考になります。
中身を確認しましょう。
通知は消火訓練の安全管理でなにを求めているのか

通知が示す留意事項は、4つの項目です。
順に引用して確認します。
4つの項目は、準備、器具、立入制限、燃料の順に整理できます。
1つ目は、指導にあたる人の任務分担と会場での配置、万一に備えた消火や救護の役割分担です。
2つ目は、炎を使う訓練での粉末消火器等の消火器具と設備の配備です。
3つ目は、退避線で危険範囲を明示し、安全管理のための人員を周囲に置くことです。
4つ目は、使用する燃料の特性の確認です。
4つの項目は、準備の段階で全部決められますね。
準備の段階で決めておく内容がそろっています。
とくに4つ目は、次の見出しで詳しく見ます。
エタノールは訓練用の燃料としてなぜ不適切とされているのか

通知は、エタノールが不適切とされる理由を、燃料の性質から説明しています。
消防法がアルコール類をどう扱っているかも、あわせて確認します。
燃料の特性は、訓練の準備で必ず確認する項目です。
通知は、引火点が低い上に炎が見えにくいエタノールを、訓練用の燃料としては不適切としています。
消防法は、アルコール類を第4類の引火性液体に区分しています。
エタノールは炭素の原子が2個の飽和一価アルコールなので、別表の定義に当てはまります。
通知は、炎が見えにくいことで生じる具体的な危険までは書いていません。
消毒用のアルコールでも、同じ注意が必要ですか。
消防法では、アルコール類は危険物の区分に入ります。
量や保管の決まりは、あわせて読みたいの記事で確認できます。
明日から炎を使う訓練の前になにを確認すればよいのか

通知は消防職団員向けですが、炎を使う訓練を計画するときの確認の目安にできます。
訓練の実施に関する規則の定めも、あわせて確認します。
訓練の前に、通知の4項目を計画に書き出しましょう。
役割分担、配置、消火器具、退避線、安全管理の人員、燃料の特性を、訓練の計画に書きます。
炎を使う訓練の燃料は、特性を確認したうえでエタノールの使用は控えると通知が求めています。
規則第3条第10項の対象なら、消火訓練と避難訓練は年2回以上行い、実施前に消防機関へ通報します。
実施の可否や燃料などの細かい扱いは、所轄消防署にご確認ください。
訓練の計画に、4項目を書き足してみます。
役割分担と燃料の確認から始めるとよいです。
迷うときは、所轄消防署に相談してください。
よくある質問
まとめ
訓練の前に、燃料と退避線を確かめます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消火訓練等における消防職団員立会い時の安全管理の再徹底について(平成25年8月9日 消防消第170号・消防災第315号)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





