屋内消火栓の箱の扉に貼る操作方法のシールは、扉の外側でなければならないのでしょうか。
ラック式倉庫の冷凍室、複層ガラスの窓、自走式の駐車場、別棟の火災通報装置など、消防用設備等の実務には、条文だけでは判断しにくい場面があります。
消防庁は平成8年と平成9年に、そうした疑問への答えを執務資料として都道府県に送っており、五つの問いと答えが残っています。
この記事では、その質疑を、現行の条文に照らして読みます。五つの問いと答えを順に確かめます。
その質疑には、どんな問いが載っているんですか。
消防用設備等の設置や判断に迷う場面を尋ねた、五つの問いです。
順に、現行の条文と見比べます。
答えは、どれも「お見込みのとおり」なんですか。
はい。
ただし、条件が付いたものや、認められないと答えたものも含まれています。
- 屋内消火栓の操作方法のシールは、「消火栓」の表示が適正に行われている場合には、消火栓箱の扉の内側に貼ってさしつかえないと答えています
- 天井の高さが10メートルを超え、延べ面積が700平方メートル以上のラック式倉庫の冷凍室は、四つの要件を満たす場合に限り、令第32条を適用してスプリンクラー設備を免除してさしつかえないと答えています
- 複層ガラスは、外側3ミリメートル・内側3ミリメートルと外側5ミリメートル・内側3ミリメートルは容易に破壊できるものとして扱え、外側7ミリメートル・内側5ミリメートルは認められないと答えています
- 自走式自動車車庫の長辺の一辺は、柱やはり等を除いて壁面の全面が開放されている必要があり、他の一辺は開放部分を排煙上有効な位置に配置する必要があると答えています
- 別棟に遠隔起動装置を置く方法は、三つの要件に適合する場合に限り、消防機関へ通報する火災報知設備が設置されているものと同等に取り扱えると答えています
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目次
屋内消火栓の操作方法のシールは、扉の内側に貼ってよいのか

(消防庁の質疑応答・平成8年9月2日・消防予第172号)
規則第12条第1項第3号イは、屋内消火栓箱には、その表面に「消火栓」と表示することを定めています。同号ロは、箱の上部に、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10メートル離れたところから識別できる赤色の灯火を設けることを定めています。
私が確かめた規則第12条の条文には、操作方法のシールの貼り位置を定めた部分は出てきません。シールは通知で活用が示されたもので、貼る位置は、この質疑の答えによって整理された、と読めます。
外から見える「消火栓」の表示と、扉の内側に貼る操作方法は、別のものとして扱われています。ただし、内側に貼るときは、扉を開けた状態で見やすい位置にするよう求められています。
外側の「消火栓」の表示があれば、シールは内側でもいいんですね。
はい。
ただし、内側でも扉を開けたときに見やすい位置に貼るよう求めています。
ラック式倉庫の冷凍室は、スプリンクラー設備を免除してよいのか

1 冷凍室の部分における火気使用その他出火危険がないこと。
2 冷凍室の部分とその他の部分とが、耐火構造又は準耐火構造の床又は壁で防火区画されていること。当該区画に開口部を設ける場合には、甲種防火戸とするとともに、開口部には、有効に冷却することにより延焼防止できるスプリンクラー設備、ドレンチャー設備等の冷却設備を設けること。
3 冷凍室の壁、床及び天井の断熱材及びこの押さえが、不燃材料を使用し押さえも不燃材料としたもの、断熱材料をコンクリート若しくはモルタル(塗厚さが2センチメートル以上のものに限る。)等で覆い着火するおそれのない構造としたもの、又はこれらと同等以上の防火性能を有するもののいずれかに該当すること。
4 当該防火対象物の周囲への防火塀の設置、空地の確保等により他の防火対象物への延焼のおそれがないこと。
(消防庁の質疑応答・平成8年9月2日・消防予第172号)
令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の基準によらなくても、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止めることができると認めるときは、この節の規定を適用しないと定めています。
質疑の答えは、免除を自動的に認めるものではありません。認めるかどうかを判断するのは、条文にあるとおり消防長又は消防署長です。要件の2は、冷凍室を防火区画で他の部分から切り離し、開口部に冷却設備を設けることを求めています。要件の3は、断熱材が燃え広がる材料にならないことを求めています。
冷凍室があるだけでは、免除にならないんですね。
はい。
四つの要件すべてを満たして、はじめて令第32条の適用が答えられています。
複層ガラスの窓は、無窓階の判定で容易に破壊できるものとして扱えるのか

昭和53年9月9日付けの消防予第174号の行政実例は、普通板ガラスを用いた開口部については、ガラスの厚さが6ミリメートル程度のものまでは容易に破壊できるものとしてさしつかえない、と示していました。照会は、複層ガラス(2枚以上の板ガラスを一様の間げきをおいて並置し、乾燥空気を満たして周辺を封着したもの)のうち、材料板ガラスがいずれも普通板ガラスである次の3例を尋ねています。
(1) 材料板ガラスの厚さ:外側3ミリメートル、内側3ミリメートル
(2) 材料板ガラスの厚さ:外側5ミリメートル、内側3ミリメートル
(3) 材料板ガラスの厚さ:外側7ミリメートル、内側5ミリメートル
(消防庁の質疑応答・平成9年2月26日・消防予第36号)
質疑には、その理由が書かれていません。数字だけを見ると、認められた2例は外側の板ガラスが5ミリメートル以下で、認められなかった例は外側が7ミリメートルで、前の行政実例の6ミリメートル程度という目安を超えています。ただし、これは私の読みで、質疑がそう説明しているわけではありません。
また、この答えは、材料板ガラスがいずれも普通板ガラスの複層ガラスについてのものです。合わせガラスや低放射ガラスなど、材料が違うガラスは、別の通知で扱われています。窓の判定は、所轄の消防署に確かめてください。
二枚の厚さの組み合わせで、答えが分かれているんですね。
はい。
質疑は、外側が7ミリメートルの組み合わせだけを認めていません。
自走式自動車車庫の「常時外気に開放」は、どこまでを開放と数えるのか

自走式自動車車庫については、平成3年5月7日付けの消防予第84号(1層2段)と、平成6年6月16日付けの消防予第154号(2層3段)が、開放性を満たした場合の取扱いを示しています。照会は、その通知にある開放の言葉の読み方を尋ねています。
(1)ア 「長辺の一辺について常時外気に直接開放されて」いるとは、柱、はり等の部分を除き、当該壁面の全面が常時外気に直接開放されていることをいうと解してよいか。
イ 「他の一辺について当該壁面の面積の2分の1以上が常時外気に開放されている」とは、開放部分の位置にかかわらず、当該壁面の面積の2分の1以上が常時外気に開放されていることをいうと解してよいか。
(2)エキスパンドメタル、グレーチングメタル、パンチングメタル等の部分の面積は、当該部分の有効開口面積により算定してさしつかえないか。
(消防庁の質疑応答・平成9年2月26日・消防予第36号)
アの長辺は、壁面の全面が常時外気に直接開放されている必要があり、柱やはり等の部分だけを除きます。イの他の一辺は、2分の1以上が開放されていれば足りますが、質疑は「位置にかかわらず」とは答えず、排煙上有効な位置に配置する必要があると条件を付けています。
(2)のエキスパンドメタルやパンチングメタルは、金属板に穴を開けたものです。面積は、板の外形ではなく、実際に抜けている有効開口面積で数えてよい、と答えています。
自走式自動車車庫の取扱いそのものは、通知の内容を別の記事で解説しています。この質疑は、その中の開放の言葉の読み方を確かめたものです。
開放の面積は、穴の空いた金属板なら有効開口面積で数えるんですね。
はい。
そして他の一辺は、排煙上有効な位置に開放部分を置くことが条件です。
別棟に遠隔起動装置を置けば、火災通報装置は本体と同じ扱いになるのか

質疑の前提は、同一敷地内に複数の防火対象物があり、いずれも消防機関へ通報する火災報知設備の設置義務がある場合です。主たる棟に火災通報装置の本体を置き、別棟には遠隔起動装置だけを置くことが、令第32条で、火災報知設備が設置されているものと同等に扱えるかを尋ねています。質疑の図は、A棟とC棟が別棟、B棟が主たる棟で本体がある形です。
① 火災通報装置本体及び別棟に設置される遠隔起動装置(代替遠隔起動装置)の一は、防災センター等(常時人がいる場所に限る)に設置されていること。ただし、無人となることがある別棟に設置される代替遠隔起動装置については、多数の者の目にふれやすく、かつ、火災に際しすみやかに操作することができる箇所及び防災センター等(有人のときには人がいる場所に限る)に設置することをもって代えることができる。
② 主たる棟と別棟の防災センター等相互間で同時に通話することのできる設備が設けられていること。
③ 火災時において、通報連絡、初期消火、避難誘導等所要の措置を講じることのできる体制が整備されていること。
(消防庁の質疑応答・平成9年2月26日・消防予第36号)
要件の①は、本体か遠隔起動装置のどちらかが、常時人がいる防災センター等にあることを求めています。別棟が無人になることがある場合は、多数の者の目にふれやすく、すみやかに操作できる箇所にも置くことで、代えられます。要件の②は、棟と棟の防災センター等が、同時に通話できる設備を求めています。要件の③は、通報連絡、初期消火、避難誘導ができる体制を求めています。
この答えも令第32条の適用を前提としていますから、認めるかどうかは、消防長又は消防署長が判断します。別棟に遠隔起動装置を置くだけで、当然に認められるわけではありません。
装置を置くだけじゃなくて、通話設備と体制まで求められるんですね。
はい。
質疑は、設備と体制の両方がそろう場合に限って認めています。
よくある質問
まとめ
条文だけでは迷う場面にも、質疑の答えが手がかりになるんですね。
まずは、うちの建物の図面と設備を確かめてみます!
進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第10条、第11条、第12条、第13条、第23条、第32条、消防法施行規則第5条の5、第12条、第25条
- 消防庁の消防用設備等に係る質疑応答(予防行政の通知)
※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。





